サジェスト汚染とは?原因と対策方法(削除方法)を解説
検索エンジンには検索者の利便性を向上させるため、あるキーワードに関連した単語を複数表示するサジェスト機能が搭載されています。近年このサジェスト機能を用いて、特定のキーワードのサジェストをネガティブなキーワードで埋め尽くす「サジェスト汚染」が問題となっています。
サジェスト汚染とは
そもそもサジェストとは、特定のキーワードを検索窓に入力したときに表示される関連キーワードを指します。
サジェストに表示されるキーワードは、入力した単語と同時に検索された単語です。そのため私たちの検索をサポートしてくれる機能と言えるでしょう。
しかしサジェストに表示される単語が「ネガティブなワード」で埋め尽くされていた場合、検索している人に悪い印象を与えてしまいます。これを俗にサジェスト汚染と言います。
サジェスト汚染の何が問題なのか?
検索窓にネガティブキーワードが表示されるサジェスト汚染は、企業活動にさまざまな問題を及ぼします。そこで、ここではどのようなデメリットが生じるのか整理してお伝えします。
企業・商品の信頼性が損なわれる
企業名や商品名で検索された際、ネガティブキーワードと同時に表示されれば、イメージが格段に悪くなります。例えば、商品を購入しようと思っている見込み客が購入を控えることになるかも知れません。また「会社名 ブラック」のような表示があれば、たとえ事実と異なっていたとしても、検索者に誤った認識を与える可能性があります。
サジェスト機能の特性による被害拡大
検索エンジンのサジェスト機能は、より検索されるキーワードを優先的に表示します。ネガティブキーワードは人の注目を引くため、他のキーワードより注目を浴びやすいといえます。結果として、汚染されたキーワードが益々表示されるという悪循環に陥ります。
求職者の減少
会社名で検索された際、サジェストに「会社名 ブラック」「会社名 パワハラ」と表示された場合、検索者はその会社がブラックな職場で、パワハラを行っていると勘違いする可能性があります。少なくとも検索者は、企業に対して良いイメージを持てません。そのため、求職者が応募を控えることにつながります。
取引企業からのイメージダウン
取引企業が自社の会社名で検索した際「会社名 詐欺」のようなサジェストが表示されると、無用な不安を与えます。特に新規の取引相手からはまだ信頼がないため、取引額を制限されるなどのことにつながります。
検索者の利便性が低下
サジェスト汚染が進めば、次第に検索者の利便性が低下します。本来検索したいと思っていたキーワードではなく、ネガティブな別のキーワードに注目し、偏った情報を知ることになります。
このようにサジェスト汚染は企業や検索者に様々な実害を及ぼします。またこのサジェスト汚染の特に厄介な点は、サジェスト機能の仕組みを知っていれば個人でも簡単にサジェスト汚染を行えることにあります。
サジェスト汚染の仕組み
ここではサジェスト汚染が生じてしまう仕組みについて解説します。最初にまずはGoogleとYahoo!のサジェスト機能がどのような仕組みになっているのか解説します。
GoogleとYahoo!のサジェスト機能
GoogleやYahoo!などの検索エンジンでは、既存のWEBサイトで使われているキーワードを分析し、検索履歴・トレンドなどのデータを元にサジェストで表示するキーワードを決めています。トレンドというのは、多くの場合、SNSやニュース記事などで使用され検索数が急上昇しているものが該当します。
Yahoo!Googleではこのようなデータに基づいてサジェストで表示するキーワードを決めます。
サジェスト汚染の仕組み
上述したとおり、GoogleやYahoo!は検索履歴やサイトで使用されたキーワードから判断してサジェストを表示します。この仕組みを逆手にとり、繰り返しネガティブなキーワードを検索したり、掲示版等に書き込むことでサジェスト汚染をおこないます。
恣意的なサジェスト汚染の方法は上述の通りですが、一方で悪意のないユーザーの行動がGoogleやYahoo!の検索によって誤解され、サジェストを汚染してしまうケースもあります。
例えばある企業の商品性能を知りたいユーザーが、悪い評価も調べようと「○○(商品名) 使えない」と調べたとします。同様の考えを持ち、同じ行動を起こしたユーザーが複数人いた場合、この検索キーワードがGoogleによって「ユーザーが求めている情報」と判断され「商品名 使えない」と表示してしまう場合があるのです。
サジェスト汚染の違法性について
誰でも簡単に実行できるサジェスト汚染は、悪意を持って行えば私たちが想像する以上の実害をもたらします。では、そもそもサジェスト汚染は違法行為なのでしょうか?
一見すると風評被害を受け、社会的信用を落とす可能性があることから、名誉棄損として訴えることもできそうです。しかし全てのサジェスト汚染=違法とは限りません。
名誉棄損になる場合とならない場合
なぜサジェスト汚染が違法行為にならない場合があるのか、それは「検索ユーザーが事実を想起できない」からです。
例えば「○○(人物名) 犯罪」というサジェストが出てきたとします。本人からすると、サジェスト汚染によって自分が犯罪を犯したかのように思われると、危機感を感じるかもしれません。しかしこれだけでは以下のような様々な事実が予想できます。
○○(人物名)が犯罪に巻き込まれた
○○(人物名)の犯罪に関する供述
○○(人物名)は犯罪心理学者である
このようにサジェストの汚染によって「社会的信用が落ちているとは断定できない」と判断されるケースでは、名誉棄損に当たりません。例に挙げたケースでも、実際に検索するとすぐに誤解が解ける点から、名誉棄損になる可能性は低いでしょう。
続いてサジェスト汚染に関する裁判の事例を見ていきましょう。
サジェスト汚染に関わる裁判事例
裁判では被害を受けた側を原告、被害を与えた側を被告とします。サジェスト汚染に関する裁判では、サジェストを汚染された方を原告としますが、誰を被告とするのかで結果が大きく異なります。
またサジェスト汚染によって本当に原告が不利益を被ったのか、社会的信用を落としているのかも注目ポイントです。名誉棄損に当たらない事例と当たる事例の順で見ていきましょう。
名誉棄損に当たらない場合
ある裁判では自分の名前のサジェストに犯罪を連想する単語が表示された男性が、アメリカのGoogle本社に対して裁判を起こしています。
第一審ではGoogle本社の名誉棄損とプライバシーの侵害が認められましたが、最終的には「単語だけで男性の名誉が傷つけられたとは言えない」として棄却されました。
また「表示停止でサービス利用者が受ける不利益より大きくない」と付け加えています。このように裁判所では、サジェストを汚染された側の被害と検索エンジン利用者の利益を平等に評価しています。
今回の事例では表示停止することによって検索エンジン利用者の不利益が大きいと判断されましたが、サジェスト汚染によって被害者の実害が大きいと判断されれば、名誉棄損に当たると判断されるかもしれません。
名誉棄損に当たる場合
別の裁判事例では弁護士である原告のサジェストが複数の単語で汚染されたことに対して訴えを起こしています。裁判所はこれらのサジェスト汚染単語が、検索ユーザーに組み合わせて受け取られることで、原告に対する悪い印象を与える可能性があるとして名誉棄損を認めました。
先ほどの裁判事例では単語の羅列だけでは名誉棄損にならないと判断されましたが、今回の裁判事例では事実を誤解するのに十分なサジェスト汚染だったとして有罪判定されています。
サジェスト汚染を未然に防ぐ方法はない
サジェスト汚染だけでは名誉棄損にはならない、事実を想起できないからと言って、「○○(自分の名前) 犯罪」「△△(自分が勤める会社) ブラック」などと表示されるのは避けたい事態といえます。
しかし検索エンジンのサジェスト結果はユーザー全員の利便性を考慮しています。そのため自分のサジェスト結果や、特定の単語を表示するのをやめて欲しいと申請しても受け入れてもらえない場合が多いのです。
こうした検索エンジンの特性から、サジェスト汚染を未然に防ぐというのも現実的ではありません。したがって「いつの間にかサジェストが汚染されている」という事態が往々にして起こることになります。
特定の単語に対するサジェスト結果が気になる方は定期的にサジェスト結果を確認し、サジェスト汚染を発見次第、削除方法を検討してください。
サジェスト汚染対策が重要な理由
不正行為などをおこなっておらず、商品内容に自信があったとしてもサジェスト汚染対策をおこなってください。どんな企業にとってもサジェスト汚染対策は重要です。
なぜなら、サジェストされる内容は真偽を問わず表示されるからです。例えば、自社が詐欺など一切おこなっていないにもかかわらず、サジェストに「会社名 詐欺」と表示される可能性があります。これは上述したサジェストの仕組みから考えて仕方がありません。
こういったサジェストによって実害を被ることがあるため、どの企業も定期的にサジェスト対策に取り組む必要があります。
サジェスト汚染の見つけ方
具体的なサジェスト汚染の見つけ方を紹介していきます。
サジェスト汚染といっても、検索エンジンによって表示されるキーワードは異なります。基本的には利用者の多いGoogleのサジェストを確認しておけば問題ありませんが、もし不安な方はBingやFirefoxなど、別の検索エンジンでも確認してください。
方法1.Google検索から見つける
まずはシークレットブラウザを立ち上げます。(自分の検索履歴に基づいたサジェストを表示させないため)
その後確認したいキーワードを入力すれば、検索欄の下に検索候補が表示されます。
例:「○○株式会社」
さらに、スペースキーで空白を加え、検索候補を確認します。
例:「○○株式会社 」
こうして特定のキーワードと空白を加えたキーワードの両方で検索候補を確認し、サジェストが汚染されていなければ問題ありません。
方法2.ツールを使って見つける
検索候補に挙がっていなかったとしても、検索エンジンには「関連キーワード」として汚染キーワードが認められているかもしれません。この場合、現状は検索候補がサジェスト汚染されていなかったとしても、将来的に汚染される可能性があります。
関連キーワードの汚染に不安を感じる方は、関連キーワードを丸ごと確認するのも良い方法です。関連キーワードを調べるツールは有料のものも多いですが、有料版は検索ボリュームも同時に調べてくれるなど、コンテンツマーケティングに役立つ機能も搭載されている場合が多いため、使用ツールを1つにまとめたい方におすすめです。
関連キーワードを調べてサジェストが汚染されていないかを確認するだけであれば無料のツールで十分です。
ラッコキーワード
ラッコキーワードはブラウザから利用できる無料の関連キーワード検索ツールです。検索窓に関連キーワードを調べたい言葉を入力し検索すると、関連キーワードの一覧が表示されます。
会員登録をすれば一日に何度も関連キーワードを検索できるようになりますが、登録しなくても一日に5回まで検索可能です。
サジェスト汚染されているか知りたいワードが複数ある場合を除いて、会員登録をする必要はないので安心してご利用ください。
Uberusuggest
Ubersuggestもラッコキーワードと同様にブラウザから利用できる無料のSEOツールです(無料版は調査回数に上限があり、有料版は制限がありません)。
検索窓から調べたいキーワードを入力すると、検索ボリュームやSEO難易度が表示されます。その後、左側の「キーワード候補」をクリックすると、入力したキーワードの関連キーワードを閲覧できます。
ラッコキーワードと異なり検索ボリュームも調べられるので、サジェスト汚染された場合、汚染されたキーワードでどれだけ検索されているのかも確認できます(実害の影響度合いが検索ボリュームから推測可能)。
サジェスト汚染の対策方法(削除方法)
Google検索や各種ツールを用いてサジェスト汚染を発見した場合、直ちに削除するよう動きましょう。放置する時間が長いだけ、汚染されたサジェストが多くの人の目に触れてしまい、あらぬ風評被害が広まる可能性があります。
今回はサジェスト汚染を削除する4つの方法をご紹介します。
検索エンジンの運営元に削除申請する
裁判の事例から分かる通り、サジェスト汚染を検索エンジン運営元の責任とするのは難しいといえます。
しかし近年のサジェスト汚染を実行するツールの普及や、サジェスト汚染による影響力増大といった時代の流れを受け、検索エンジンの運営元もユーザーの削除申請に対し、表示するサジェストを整える方針がとられています。
サジェスト表示が不当なものと判断されれば、数日から数週間で指定したサジェストを手動削除してもらえるため、サジェスト汚染を発見した場合は、まず運営元に申請してみましょう。
Googleの場合
Googleでサジェスト汚染を発見した場合、「法律に基づく削除に関する問題を報告する」から削除申請を行うことができます。
「居住国」「名前」「メールアドレス」を入力します。その後、削除したサジェストに関しては、「権利侵害に当たるとお考えのコンテンツ」の欄にて以下の内容を入力します。
コンテンツを見つけるのに使用した検索キーワード
検索キーワードの入力中に表示された、不適切とお考えの予測キーワード
権利侵害にあたるとお考えのコンテンツが表示される国、その検索候補が違法となる理由
続けて検索画面のスクリーンショットの添付や、デジタル署名を記入し、送信すれば完了です。
Yahooの場合
Yahooは公式で「Yahoo!検索 – 関連検索ワードに関する情報提供フォーム」を設置しているため、こちらのフォームから削除申請を行います。
フォームに移動した後、「検索結果ページのURL」「(削除したい)関連検索キーワード」「削除したい理由」を記入して、送信すれば完了です。
ただし問い合わせを送信するには自分のYahoo! Japan ID アカウントにログインする必要があるため注意しましょう。
Microsoft Bingの場合
Microsoft Bing の場合「Bing に関する問題を報告」のサイトページにて削除申請を送信できます。
サイトにアクセスした後「問題点について教えてください」というメニューで「もう一つ問題があります」を選択します。
するとさらに「問題点について教えてください」というメニューが表示されるため、そこで「Bing に関する問題を報告します」を選択します。最後に「名前」「メールアドレス」「問題視している検索候補」「削除申請する理由」などを記入して送信すれば完了です。
記事作成者に削除するよう連絡する
サジェスト汚染がされる原因は多数の人間による検索だけでなく、特定のサイトや掲示板である可能性もあります。原因のサイトが見つかっている場合は、記事制作者またはサイト運営者に削除申請します。
多くのwebサイトでは管理者への問い合わせフォームやメールアドレスを記しているため、そこから直接連絡してください。
サジェスト汚染には悪意のあるものだけでなく、サイトや記事制作者が意図せず汚染している場合もあります。記事が原因でサジェスト汚染が発生している旨をサイト運営者が理解してくれれば、指定した記事の削除、もしくは問題箇所をリライトするなどの対応を取ってくれます。
弁護士に相談する
サジェストの削除申請、記事作成者への該当記事の削除申請のどちらの方法をとるにしても、なぜ削除しなければならないのかを検索エンジン運営元、webサイトの運営者に説明しなければいけません。
自分たちのサジェストが汚染されたことによって、どのような権利が侵害されたのか、本当に社会的信用を落としているのかなど、法的に主張できれば削除申請を受け入れてもらえる可能性も高くなります。
法律に関することなので自分だけで調べるのではなく、インターネットの誹謗中傷や風評被害に詳しい弁護士に削除申請を代行してもらうのが良いです。
法的に説明できる弁護士であれば、サジェスト汚染を改善できる確率も高くなります。もしサイト運営者への削除申請が許可されなかった、あるいは説得力のある理由を説明するのが難しいと感じた場合は、弁護士に相談してみるのがおすすめです。
専門業者に依頼する
サジェスト汚染されたキーワードの削除を専門業者に依頼することも可能です。
業者が対応してくれる方法は2種類です。1つはサジェストされるキーワードをポジティブなものに置き換えていく方法です。サジェストに表示されるキーワード数は限られているため、この方法なら高確率でネガティブキーワードを削除できます。ただし、結果が出るまでには一定時間が必要です。
もう1つの方法は、Googleなどに対して削除申請を代行しておこなうものです。多くの場合、業者が委託している弁護士を通して依頼します。
費用は月に5-10万円前後が相場ですが、キーワード数などに応じて異なるため直接業者に見積もりをとることが必要です。
サジェスト汚染に関するよくある質問(Q&A)
最後にサジェスト汚染のよくある質問にお答えします。
Q:サジェスト汚染対策をする際のポイントは?
Answer)とにかくスピードです。検索は24時間おこなわれているため、放置する時間が延びるほど被害が拡大します。1日も早く着手することが大切です。
Q:サジェスト汚染を放置することの影響は?
Answer)離職者が増えたり、求職者が減るといった被害があります。場合によっては取引先からの契約停止となることもあります。
Q:依頼する弁護士はだれでも良い?
Answer)削除申請をする弁護士はインターネットトラブルに熟知している方がおすすめです。法律の知識があってもインターネットに詳しくなければ、対応が思ったように進まないので注意してください。
まとめ