マーケティング戦略とは?プロセスや重要ポイントについて解説
マーケティングの施策を成功させるためには、市場や競合分析から自社の強みを打ち出していくマーケティング戦略が重要です。戦略無しに施策を行ったとしても、成功した理由や失敗した原因を判断出来ないため、成功し続けることは難しいといえるでしょう。
マーケティング戦略とは?
マーケティング戦略を簡単に表すと「誰に向けて」「何を」「どの価格で」「どうやって提供するか」になります。
商品やサービスを販売するうえでは、市場のニーズに当てはめることや競合と差別化を図ることなど、さまざまな観点から戦略を考える必要があります。
またマーケティングでは考える順番も重要です。ターゲティングが決まっていないのに販売方法を考えても、効果の最大化はできません。
したがって最適な市場や手法でマーケティングを行うためには、最初にマーケティング戦略を考えることが重要になります。
ここではマーケティング戦略の重要性と、経営戦略との違いについて詳しく解説していきます。
マーケティング戦略と経営戦略の違い
マーケティング戦略と類似したもので「経営戦略」という言葉があります。一見同じことを示すように感じますが、両者の意味はまったく異なるため注意をしましょう。
- マーケティング戦略: 市場ニーズやターゲットから、自社商品を提供するための道筋を決める取り組み。
- 経営戦略: 会社を経営するうえで、長期的に利益を出すための戦略。主に企業戦略・事業戦略・機能戦略の3種類に分けられる。
大きな違いはマーケティング戦略が顧客やターゲットを軸に考えること、経営戦略が会社を軸に考えることです。
経営戦略では会社を継続的に成長させるために、ヒト・モノ・カネ・情報の配分を行います。そのため経営戦略の中に含まれる、機能戦略の一つがマーケティング戦略です。
マーケティング戦略の重要性
マーケティング戦略が重要な理由は、経営資源を有効活用し、市場で勝ち抜くためです。
そもそもマーケティングで成果を出すためには、事前に市場を分析し根拠のある取り組みが必須になります。
仮に考えが無く取り組んだとしても、市場ニーズと合致していなければ予想した成果を出すことはできないでしょう。
特に現代では市場に商品やサービスが多く、簡単に売れるわけではありません。一昔前までは商品を作れば売れる時代でしたが、今では市場のニーズが多様化し、より具体的な戦略が求められます。
したがって競合の多い市場を勝ち抜くためには、経営資源を無駄にすることなく緻密に考えられたマーケティング戦略が重要です。
マーケティング戦略策定のプロセス
マーケティング戦略を考える際は、段階ごとに目的や行う施策を明確化する必要があります。仮にプロセスを無視して考えた場合、成功したポイントや失敗したポイントを判断できません。その後の改善にも移せないため、以下の手順に沿って考えていきましょう。
- 市場調査
- セグメンテーション
- ターゲティング
- ポジショニング
- 実行・分析
各々、解説していきます。
市場調査
まずは市場調査によって、自社が属する業界の環境を分析しましょう。市場調査では、外部環境と内部環境に分けて考えることが重要です。
具体的には以下のポイントを押さえましょう。
外部環境
- 自社が属する業界の成長率・市場規模
- 顧客の平均購入額
- 競合商品・サービスの特徴
内部環境
- 自社の売上高・顧客数
- 自社商品・サービスの特徴
- 業界内における自社の立ち位置
- 業界内における自社の強み・弱み
また市場分析を行う際に活用できるフレームワークがこちら。
- 3C分析
- SWOT分析
- PEST分析
商品やサービス、そして業界の特徴によっても適するフレームワークは異なります。そのため複数の種類から、自社に当てはまるフレームワークを見極め活用しましょう。
詳しくは後述の「マーケティング戦略で大切なフレームワーク」にて解説していきます。
セグメンテーション
セグメンテーションは市場細分化とも言い、自社に適する市場を見つけることが目的です。一般的に市場には数多くのニーズがあります。顧客によって細かいニーズは異なるため、すべての人間にあてはまる商品やサービスは存在しません。
そのため複数のカテゴリーによって市場を細分化し、自社の強みを活かせる顧客をグループとして考えることが大切です。
具体的には、以下のようなカテゴリーによって分けましょう。
- 年齢
- 性別
- 職業
- 居住地
- 価値観
- 行動ニーズ
はじめは価値観や行動ニーズによって、大枠の細分化を行います。その後、居住地や年齢によってより詳細なカテゴリーに絞り込んでいきましょう。
ターゲティング
ターゲティングは前段階のセグメンテーションで細分化した中から、自社に最も適するグループを見極めることが目的です。
グループごとに競合会社、需要のある商品やサービスは異なります。そのためグループ内で競争がどのように行われているのかを考えていきましょう。
例えばパーソナルジムを運営している会社の場合、セグメンテーションを地域で考えると「新宿・渋谷・池袋の副都心」と「港区・千代田区・中央区の都心」に分けられます。
それぞれのグループを深堀りすると、以下の特徴が考えられます。
地域 | 港区・千代田区・中央区の都心 | 新宿・渋谷・池袋の副都心 |
年齢 | 40代〜50代が中心 | 20代〜30台が中心 |
来店時間 | 時間に関係なく来店がある | 仕事後のサラリーマンが多い |
競合 | 老舗の企業が置い | 新規参入企業が多い |
価格設定 | 月額20,000円コースが平均 | 月額5,000円コースが平均 |
仮に自社が24時間営業であれば、都心側のほうが強みを活かしやすいといえるでしょう。夕方以降に絞った営業時間や価格設定が安い場合は、副都心側が向いていると考えられます。このようにグループの特徴を考え、自社の売上が見込める市場を探すことが重要です。
ポジショニング
ポジショニングはターゲティングで決めたグループの中で、競合との差別化を考える段階です。
自社にとって良いターゲティングが行えたとしても、競合と同じコンセプトやサービスでは顧客を獲得できません。そのため競合には無い、自社だけの強みを考えることが重要になります。
前述の例から考えると、都心側に価格設定の高いジムが多いのであれば自社の価格を下げることで来店を促せます。対して価格設定の安いジムが多い副都心側であれば、自社の価格をあげつつ、サービスの質を高めるなどの戦略が効果的です。
必ずしも価格だけで差別化を図るわけではないため、競合分析から項目を見極め効果的な差別化を行っていきましょう。
実行・分析
ポジショニングまで考えられたら、戦略の実行に移りましょう。
実行を行う際に重要視すべきことが、マーケティングミックスです。マーケティングミックスとは、4C・4P分析などのフレームワークによって具体的な戦略を策定し、マーケティング業務と組み合わせることをいいます。
また実行後の分析も、マーケティング戦略には欠かせない要素です。どうしてもマーケティングを実施した後の結果だけを重視しがちですが、戦略を考えた過程も大切にしましょう。
各段階でどのような問題があったのか、どのような改善策を取れるのかを考え、常により良い結果に向けて対策することが成功のポイントです。
マーケティング戦略で大切なフレームワーク
マーケティング戦略を実施する際は、段階ごとにフレームワークを活用しましょう。フレームワークとは、情報や分析項目を当てはめる枠組みのことです。
ここでは、マーケティング戦略で大切なフレームワークについて詳しく解説していきます。
STP分析
STP分析とは、マーケティング戦略のセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの頭文字から名付けたフレームワークです。
基本的な流れは前述のプロセスで紹介した内容と同一のため、各段階で重要視すべき指標や分析方法を紹介いたします。
セグメンテーションで重要な指標
- デモグラフィック:人口統計的変数
- ジオグラフィック:地理的変数
- サイコグラフィック:心理変数
- ビヘイビアル:行動変数
ターゲティングで重要な分析方法
- 無差別型ターゲティング
- 差別型マーケティング
- 集中型マーケティング
ポジショニングで重要な項目
- 価格
- 品質
- 所在地
- 販売チャネル
- 店舗数
ポジショニングは競合との差別化が目的なため、どの項目で考えても問題ありません。ただし比較する項目は4つ程度に限定し、シンプルに考えることが重要です。
4P/4C分析
4P分析とは、企業側の視点でマーケティングを捉えるためのフレームワークになります。
- Product:製品
- Price:価格
- Place:流通
- Promotion:販促
対して4C分析とは、顧客側の視点でマーケティングを捉えるためのフレームワークです。
- Customer Value:顧客価値
- Cost:経費
- Convenience:顧客利便性
- Communication:コミュニケーション
従来までは良い商品を開発することが軸に考えられていたため、企業側の視点である4P分析が主流でした。しかし現代ではインターネットの普及によって顧客が商品を選ぶようになり、顧客側の視点で考える4C分析が重要視されています。
3C分析
3C分析とは3つの観点から、市場調査における外部環境と内部環境を分析するためのフレームワークです。各項目で重要なポイントはこちら。
Customer:市場・顧客
- 業界の市場規模
- 市場の将来性
- 顧客のニーズ
- 顧客の行動・心理
Company:自社
- 自社の理念
- 自社サービスの状況
- 自社サービスの特徴
Competitor:競合
- 競合サービスの特徴
- 競合サービスの優位性
- 業界内の競合のシェア率
環境分析を行ううえで、自社の情報から判断するだけでは最適なマーケティング戦略は決められません。
そのため市場や競合など外部環境からも分析し、成功要因を見つけましょう。
SWOT分析
SWOT分析も3C分析と同じく、市場調査における外部環境と内部環境を分析するためのフレームワークです。3C分析と違う点は、異なる4つの項目から分析を行うことになります。
SWOT分析の4項目はこちら。
- Strength:強み
- Weakness:弱み
- Opportunity:機会
- Threat:脅威
SWOT分析は自社を軸にした分析手法となり、状況に応じてマーケティング戦略を切り替える対策を行います。
そのため競合との差別化によって自社を明確にしたい場合は3C分析を、自社に焦点を当てて強みや弱みを明確にしたい場合にはSWOT分析を行いましょう。
PEST分析
PEST分析とは、4つの項目から外部環境を分析するためのフレームワークです。マクロ環境と呼ばれる世の中の流れや業界の動向などを、中長期的な視点で考えることが目的となります。
PEST分析の4項目はこちら。
- Politics:政治的
- Economy:経済的
- Society:社会的
- Technology:技術的
外部環境は常に変化しているため、PEST分析は定期的に実施すること重要です。また分析をまとめるだけではなく、将来的な動きや課題の仮説を立てましょう。
仮説を立てることによって、競合との比較から自社の戦略までを具体的に決められます。
マーケティング戦略で重要なポイント
マーケティング戦略では、現代に合わせた施策が重要なポイントです。具体的には顧客データを活用し、個人に向けた取り組みになります。継続率やリピート率の向上にもつながるため、安定した売上を求める場合にも効果的といえるでしょう。
ここでは、マーケティング戦略で重要なポイントについて詳しく解説していきます。
ポイント1: 顧客データを集める
顧客に効果的なマーケティング戦略を考えるうえでは、できるだけ多くの顧客データを集めましょう。顧客データとは、以下のような項目です。
- 氏名
- 年齢
- 性別
- 居住地
- 生年月日
- 趣味
- 商品・サービスの購入頻度
仮に顧客の生年月日データがあれば、誕生月に割引クーポンを配布することや特別なプレゼントを送るなどの施策が行なえます。居住地や趣味のデータがあると、より顧客を満足させられる施策に取り組めます。
しかし何も情報がない場合は、大衆に向けた施策は行えても、個人に合わせたマーケティング戦略には取り組めません。
将来的に自社の商品やサービスを利用し続けてもらうためにも、顧客データの活用は重要となります。
ポイント2: 企業フェーズやターゲットに適した施策を考える
マーケティング戦略ではフレームワークの活用やさまざまな施策の実行が大切ですが、あくまで企業のフェーズやターゲットに合わせて考えることを重視しましょう。
例えば顧客データによる個人に合わせた施策の場合、顧客のニーズが多様化した現代に適した方法ではあるものの、創業間もない企業であれば効果を発揮できません。顧客を満足させることも重要ですが、目先で取り組むことは多くの顧客を獲得することです。
このように企業の状況に合わせなければ無意味なマーケティング戦略となってしまうため、企業フェーズやターゲットを踏まえたうえで施策を考えましょう。
ポイント3: アフターサポートによって継続率やリピート率を強化する
マーケティング戦略と聞くと、どうしても新しい商品やサービスにおける新規顧客の獲得というイメージを持ちやすいです。
しかしマーケティング戦略では新規顧客だけでなく、既存客に向けたアフターサポートも強化しなければいけません。
仮にアフターサポートができていない状態であれば、多くの顧客を獲得してもすぐに離れてしまうでしょう。なぜなら市場には多くの商品やサービスがあり、他の競合へ簡単に流れてしまうからです。
そのため新規顧客だけを考えるのではなく、継続率やリピート率を強化するためのサポートが欠かせません。上手なバランスを取ることで、長期的に安定した売上を目指していきましょう。
まとめ