アパレル業界のオウンドメディア構築や運用のポイントを徹底解説
アパレル業界のなかには、オウンドメディアを運用して集客を図る企業があります。オウンドメディア運用には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
結論を言えば、アパレル企業はECサイトをオウンドメディア化すると、ZOZOTOWNや楽天市場などのモール型ECサイトでは難しい潜在顧客の獲得を可能にします。集客力を上げたいアパレル企業は、オウンドメディア運用を検討するべきです。
アパレル業界がオウンドメディアを運用するメリット
アパレル業界がオウンドメディアを運用すると、次のような恩恵を享受できます。
- モール型ECサイトではアプローチが難しい潜在顧客を獲得できる
- ブランディング効果がある
- 価格競争から脱却できる
モール型ECサイトではアプローチが難しい潜在顧客を獲得できる
モール型ECサイトでは難しい潜在顧客の獲得も、オウンドメディアなら実現できます。なぜならオウンドメディアのコンテンツは、潜在顧客を獲得するための方法の1つだからです。
モール型ECサイトとは、ZOZOTOWNや楽天市場など、自社で所有しないECサイトを指します。モール型ECサイトでは基本、購入を考えている顧客しか取り込めません(「もうすぐ客」や「今すぐ客」と呼びます)。ZOZOTOWNや楽天市場は商品名を入力して探すので、すでにニーズが顕在化している状態です。
一方でECサイトをオウンドメディア化すれば、なんらかの悩み・不安を抱えつつも、商品・サービスへのニーズが明確になっていない「潜在顧客」にもアプローチできます。たとえばオウンドメディアで「冬 寒い」のようなキーワードに対してコンテンツをつくり、それを解決する方法の1つとして「インナー」を提案するとします。
そうすると「冬の寒さに対して対応策を考えていた(インナーの購入を考えていない)」潜在顧客に対して、インナーを販売することも可能になるのです。
ブランディング効果がある
オウンドメディア運用には、ブランディング効果があります。なぜなら、検索ユーザーの悩みや不安に対して最適な答えを返せるコンテンツをつくると「このメディアから服を買いたい」という考えが生まれるからです。
モール型ECサイトの場合、販売元はあまり重視されないので、商品を販売するだけでブランディングを形成するのは困難です。一方でオウンドメディアの場合、ただ商品を販売するだけでなく、検索ユーザーの生活に寄り添ったコンテンツで信頼を獲得することに重きを置いています。
これがブランディングにつながり「この企業から購入する商品は信頼できる」という状態が生まれるのです。
価格競争から脱却できる
ブランディング効果に関連する話で、モール型ECサイトでは難しい価格競争からの脱却も、オウンドメディアなら可能にします。なぜなら「このメディアなら信用できるから服を買いたい」という状態が生まれれば、ある程度価格が高くても販売できるからです。
モール型ECサイトの場合、同じような商品やサービスが比較されるため、基本的に顧客には「安く買いたい」という考えが働きます。そのため独自の強みを出しにくいと、価格を下げざるを得ないのが実情です。
一方でオウンドメディアの場合、質の高いコンテンツを通じてユーザーからの信頼を獲得することで、自社の価値を高めてブランディングできます。このブランディングの効果によって「この会社だから買いたい」という心理が顧客に働き、結果、価格競争からの脱却も可能にすることがあります。
オウンドメディアを構築する手順
オウンドメディアを構築するための具体的な手順について紹介します。
- 戦略を設計する
- 運用体制を決める
- オウンドメディアを構築する
オウンドメディアを制作する前に、まずは戦略を設計しましょう。オウンドメディアのゴールを決めなければ、失敗するのが関の山です。
オウンドメディアの戦略設計は、企業がマーケティング戦略を練って商品やサービスを開発し、市場に売る流れと変わりありません。オウンドメディアの戦略で決めることは多数ありますが、最低限次のような項目は決めておきましょう。
- 運用のゴール…成約月5件、資料請求10件など
- ペルソナ…オウンドメディアがターゲットとする顧客の具体的な人物像
- エディトリアルカレンダー…どれぐらいの頻度で投稿するのか、どのようなコンテンツを公開するのか、など
このようなゴールを設計することで、短期の結果に惑わされず、長期的な成果を求められるようになります。
運用体制を決める
戦略を設計したあとは、オウンドメディアの運用体制を決めましょう。戦略が明確でも、日々の運用体制が曖昧であれば継続するのが難しくなります。
オウンドメディアでは、次のような運用体制を決めるようにしましょう。
- 編集者とライターの担当者選任
- 編集者とライターを外注するか内製化するか
- HTMLやCSS、JavaScriptなどのコーダー選任
- オウンドメディア運用自体を内製化するか外注するか など
オウンドメディアで成果を出すには、継続が非常に重要です。予算と相談しながら、オウンドメディア制作の前に継続できる体制をつくりあげましょう。
オウンドメディアを構築する
オウンドメディアを構築するには、次の2つの方法があります。
- Web制作会社またはフリーランスに発注する
- ショッピングカートASPを使う
オウンドメディアを制作する場合、Web制作会社に発注するのが一般的な方法です。要件定義から可能なため、自社が希望する仕様のオウンドメディアを制作できます。また予算を抑えたい場合は、フリーランスへ発注する方法もあります。
なお、外部に発注する方法以外に「ショッピングカートASP」を使ってオウンドメディアを構築する方法もあります。ショッピングカートASPとは、ECサイト構築に必要なアプリをクラウド上で提供しているサービスです。ショッピングカートASPのメリットは、知識がなくても簡単にECサイトを構築できる点です。代表的なショッピングカートASPに「BASE(ベイス)」や「STORES(ストアーズ)」があります。
すでにECサイトをもっている場合のWebマガジン化
アパレル業界の場合、すでにECサイトをもっていることも多いでしょう。この場合、すでにもっているECサイトの下層に「コンテンツ」のページを追加して、Webマガジン化する方法もあります。
このようにメインサイトの下層に、新たにサイトを追加する方法を「サブディレクトリ」といいます。サブディレクトリでWebマガジン化することで、すでにもっているECサイトのパワーを引き継ぎながらコンテンツを制作できるため、検索結果の上位に表示されやすくなるメリットもあります。
アパレル業界のオウンドメディアの具体的な運用手順
アパレル業界のキーワードを例に、オウンドメディアの具体的な運用手順を紹介します。
- 検索クエリを洗い出す
- 検索意図に応えるコンテンツをつくる
- アクセス解析で改善を繰り返す
検索クエリを洗い出す
まずは検索クエリを洗い出しましょう。検索クエリとは、GoogleやYahoo!などで検索ユーザーが調べる単語(の組み合わせ)です。
検索クエリを洗い出すときは、オウンドメディアのターゲットとなるペルソナがどのような単語で検索するのか、分析するようにしましょう。たとえばアパレルのオウンドメディアの場合、次のような検索クエリを想定できます。
- 冬コーデ
- 着る服がない
- 古着通販 人気
- 服 どこで買う
- ファッション 詳しくなるには など
このようにターゲット層が調べそうなクエリを選び、抽出します。この検索クエリをもとに、次にコンテンツを制作します。
検索意図に応えるコンテンツをつくる
検索意図とは、ユーザーが検索ボックスに単語を入力する目的です。たとえば「着る服がない」と検索するユーザーには、次のような検索意図があると分析できます。
- 着る服がないことに気づいた
- 自分にどの服が合うのかわからない
- 自分に合ったおすすめの服を知りたいと考えている
このような検索意図に対して、次のようなコンテンツを制作できるのが理想です。
- 着る服がないと考える原因
- 着る服がないときの解決法
- 自分に合った服の一覧 など
このようなコンテンツで返すことで、ユーザーの悩みや不安を解決しながら、その解決方法の1つとして自社商品を販売することも可能です。
関連記事: SEOにおける検索意図の重要性!調べ方から利用方法まで
アクセス解析で改善を繰り返す
コンテンツを投稿したあとは、オウンドメディアへのアクセス状況を解析します。PV数やUU数などを解析して、コンテンツの質を上げていくのが重要です。
サイトのメリットは、何度でもコンテンツの内容を変更できる点です。そのため一度コンテンツを公開したあとに、アクセス解析ツールでサイトの流入数や成約率などを分析し、悪い部分があれば改善します。
アクセス解析には次の2つの無料ツールが必須なので、ぜひ導入しておきましょう。
- Googleアナリティクス・・・サイトへのアクセス状況を解析できるツール。PV数やCV数など、細かな数値を高精度で解析できる。
- Google Search Console・・・サイトでの検索結果の見え方や、被リンクなどを解析できるツール。ページのインデックス状況も管理できるので、SEOには不可欠。
アパレル業界がオウンドメディアで成功させる3つのポイント
アパレル業界がオウンドメディアを運用するには、次の3点を意識しましょう。
- コンバージョンポイントを意識する
- 検索キーワードごとにユーザーを細かく分析する
- ユーザーの悩みや不安を解決するコンテンツを意識する
コンバージョンポイントを意識する
コンテンツを制作するときは、コンバージョンポイントを意識しましょう。オウンドメディア運用の目的がどこにあるのかを明確にすると、目標やコンテンツの内容、アクセス解析で見るべき数値なども自ずと明らかになります。
コンバージョンポイントは企業ごとに異なります。アパレルで言えば、たとえば「服の販売」がコンバージョンポイントになるでしょう。そのため「服の販売」を軸に、ユーザーが求めるタイミングで商品を紹介するのがポイントです。
検索キーワードごとにユーザーを細かく分析する
アパレル業界がコンテンツをつくるときは、キーワードの検索意図だけでなく「顧客の購入段階」を分析するようにしましょう。顧客がどのような行動を経て購入までいたるのかその流れを知り、顧客のフェーズごとに最適なコンテンツを提供することが大切です。
顧客が購入まで至る一連の流れを、旅(ジャーニー)のように可視化したものを「カスタマージャーニーマップ」といいます。カスタマージャーニーマップでは、顧客は次のようなフェーズを辿って購入、リピートまでつながると考えられています。
- 認知・・・コンテンツを通じて商品・サービスを認知する
- 情報収集・・・どのような商品があるのか調べて、2~3の商品に絞る
- 比較検討・・・商品を絞ったあとに、それぞれどのように役立つのか調べる
- 購入・・・購入するメリットを知り、商品を買う
成約率を高めるためにも、検索キーワードごとに検索意図だけでなく、顧客がどの購入フェーズにいるのかも見極めるようにしましょう。
ユーザーの悩み・不安を解決するコンテンツを意識する
先述のとおり商品を販売することも大切ですが、そればかりに注力していると成果を出すのは難しくなります。なぜならオウンドメディア運用は、コンテンツで検索ユーザーの悩み・不安を解決することで信頼を獲得し、商品販売までつなげる手法だからです。
そのため商品の販売のみに注力していては、モール型ECサイトと変わりありません。成果を出すには、まず検索ユーザーの悩み・不安に対して最適な答えを返せるようなコンテンツを意識しましょう。
オウンドメディア運用における3つの注意点
オウンドメディア運用はメリットばかりではありません。注意点も3つ紹介するので、こちらも前もって理解しておきましょう。
- すぐに成果は出ない
- SEOの知識が必要
- コンテンツ制作のリソースを確保する必要がある
すぐに成果は出ない
オウンドメディア運用は、すぐに成果が出るものではありません。成果が出るまで早くとも6ヶ月以上、1年以上かかるのが一般的です。そのため短期の成果を期待すると失敗するので、必ず長期で計画を組むようにしましょう。
SEOの知識が必要
オウンドメディア運用では、コンテンツを検索結果の上位に表示させるために「SEO」の知識が必要です。SEOの知識がない場合、オウンドメディア運用の成果は出づらいので注意しましょう。
SEOとは「Search Engine Optimization」の略称です。「検索エンジン最適化」と呼ばれる、検索結果からサイトへの訪問を増やし、成約までつなげるマーケティング手法です。SEOの施策は主に「内部対策」と「外部対策」の2つにわけられます。
- 内部対策・・・サイトの内部を調整する施策。ページの表示速度の向上や、内部リンクの最適化などを行う。
- 外部対策・・・被リンクを獲得するための施策
このような専門知識や経験が必要になるので、勉強して内製化するか、SEOの専門業者に依頼するかを検討しましょう。
コンテンツ制作のリソースを確保する必要がある
コンテンツを制作するには、リソースを確保する必要があります。コンテンツ制作は時間がかかるもので、リソースに余裕のない企業が取り組めるものではありません。
コンテンツ制作のリソースを確保するなら、自社で専門の人材を用意するのがおすすめです。なぜなら自社商品を一番知っているのは、自社の従業員だからです。ただし、コンテンツ制作のノウハウやSEOの専門知識がないときは、外注も検討してみましょう。