医療系オウンドメディアが集患で重要な理由は?運用手順や注意点など
医療機関のなかには、オウンドメディアを運用して集患を図るところもあります。オウンドメディア運用は、医療機関にどのようなメリットをもたらすのでしょうか?
なぜ医療系オウンドメディアの運用が重視されるのか
なぜ医療系オウンドメディアが重視されるのでしょうか?主な理由を3つ紹介します。
- 患者は病院選びでホームページを重視しているから
- 信頼を獲得できるから
- 効率的に集患できるから
患者は病院選びでホームページを重視しているから
オウンドメディア運用が重要な理由は、患者が病院を選ぶときにホームページをもっとも重視しているからです。
実際にメディケア生命保険会社が「病院を選ぶ際に参考にしている情報」のアンケートを実施したところ、もっとも多かったのは58%の「病院のホームページ」でした。
オウンドメディアの運用では、検索ユーザーの悩みを解決するコンテンツの投稿を続けることで集患を図ります。質の高いコンテンツを投稿している医療機関のオウンドメディアは、ただ基本情報を載せているホームページよりも信頼を獲得しやすくなるのです。
オウンドメディア運用は、患者からの第一印象をよくすることにも役立ちます。新規患者の集患に力を入れたいと考えている医療機関は、オウンドメディア運用も検討してみましょう。
出典:病院選び・医者選びに関する調査2019(メディケア生命保険)
信頼を獲得できるから
オウンドメディアのコンテンツは、検索ユーザーからの信頼獲得にもつながります。
たとえば普段より調子が悪く、寒気を感じている人がいるとします。そのようなユーザーが、インターネットで「寒気 原因」と調べたとしましょう。そのとき、次のような記事を提供すればユーザーからの信頼獲得につながります。
- 寒気を感じるいくつかの原因
- すぐに寒気を解消する方法
- 病院に行ったほうがいいケース など
このような検索ユーザーの悩み・不安に対して最適な答えを返すと、検索ユーザーはオウンドメディア運用元の医療機関を信用するようになります。この信頼が、新規患者の来院動機にもつながるのです。
患者は自身の大切な身体を預ける病院を慎重に選びます。患者からの信頼を獲得するためにも、オウンドメディアで役立つコンテンツを提供することが重要です。
効率的に集患できるから
広告とは異なり、オウンドメディアで一度公開したコンテンツはインターネット上に残り続けるため、長期に渡って集患が可能です。
たとえばWeb広告を出稿した場合、広告宣伝費を支払い、その契約期間内で広告を表示できます。しかし当然期間が終了すれば掲載できないため、広告は一過性の集客手段として捉えられています。
一方で、オウンドメディアに公開したコンテンツは、非公開にしない限りインターネット上に残り続けるのです。そのため検索ユーザーに読まれるコンテンツである限り、ずっと広告を掲載できる状態が生まれます。
そのため効率的に多くの新規患者を集患したいと考える場合、オウンドメディアの運用を検討する価値があります。
具体的な医療系オウンドメディア運用の手順
今回「コンテンツ制作」に焦点を当て、医療機関を例にしながら、具体的なオウンドメディア運用の手順を紹介します。
- 検索キーワードを洗い出す
- 検索意図を解決するコンテンツをつくる
- アクセス解析で改善を繰り返す
検索キーワードを洗い出す
まずはコンテンツを制作するために、検索キーワードを洗い出します。今回は「内科クリニック」を例に、コンテンツ制作の手順を見ていきましょう。
内科クリニックが検索キーワードを洗い出す場合、まずは来院する患者の悩み・不安を分析します。たとえば内科へ来院する可能性があるユーザーは、次のようなキーワードで検索すると考えられます。
検索キーワード(一例)
- 頭 痛い
- 腹痛 原因
- 下痢 続く
- 発熱 対処法
- 倦怠感 眠気 など
このような内科の患者が検索しそうな検索キーワードを抽出して、制作できそうなコンテンツを考えます。ただし検索キーワードによっては、検索回数が多くても、競合のサイトが強いと検索上位に表示させるのが難しいケースもあります。
そのため検索キーワードを抽出したあとは、実際に検索してみて、検索結果に表示されているページを確認しましょう。競合サイトでは悩みや不安を解決できていない場合、コンテンツを投稿すると検索結果の上位に表示される可能性も高くなります。
検索意図を解決するコンテンツをつくる
検索キーワードを抽出したあとは、その検索意図を解決するコンテンツをつくります。検索意図とは、キーワードを入れて検索したときに、ユーザーの深層心理にある目的を指します。
たとえば「発熱 対処法」と検索したユーザーには、以下のような検索意図があると考えられます。
「発熱 対処法」の検索意図
- 発熱が出ていつもより調子が悪い
- 仕事や家事などがあり、簡単に休んで病院に行くわけにはいかない
- 発熱に対してすぐにできる対処法を知り、実践したいと考えている
- 症状によっては病院に行くしかないと考えているので、通院の基準を知りたい など
このような検索意図に対し、次のようなコンテンツをつくるのが理想です。
「発熱 対処法」に対するコンテンツ例
- 発熱の原因
- 発熱したときにすぐできる対処法
- 病院に行くかどうかの基準
- 病院で治療を受けるメリット
- 病院に行かないことによるリスク など
このように検索ユーザーが求める情報に対し、網羅的かつ的確な答えを返すようなコンテンツをつくりましょう。
アクセス解析で改善を繰り返す
コンテンツを制作したらそれで終わりではなく、その後のアクセス解析も重要です。サイトは新聞や雑誌などと異なり、一度公開した情報を書きなおすことが可能です。そのため、アクセス解析で精度を高めることで、より検索ユーザーに寄り添ったコンテンツに仕上げられます。
アクセス解析には無料・有料のツールがありますが、まずは無料のもので十分です。無料ツールはGoogleの提供しているものが便利なので、ぜひ使ってみてください。
無料のアクセス解析ツール
- Googleアナリティクス…サイトのアクセス状況を確認できるツール。PV数やCV数などの数値を細かく解析できる
- Google Search Console…サイトの検索表示回数やインデックスの有無などを確認できるツール。検索での見え方を分析できるので、検索順位を改善したいときに必須のツール
これらのアクセス解析ツールを用いて成約率の高いページを参考に、数値の悪いコンテンツを改善していくのが基本となります。
無料のアクセス解析ツールを使ってみて、より幅広く数値を分析したいと考えたときに、有料ツールの導入も検討してみましょう。下の記事では無料・有料別におすすめの解析ツールを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:Webマーケティングツール10選!(+おまけ1)無料・有料別のおすすめツール
医療系オウンドメディアで成果を出す3つのポイント
オウンドメディアを運用するからには、成果を出さないとコスト損になります。そこで、医療系オウンドメディアで成果を出すポイントについて3つ紹介します。
- 専門性をアピールする
- 患者の不安・悩みの解決を最優先する
- 解決方法に自院の治療を提案する
専門性をアピールする
医療系オウンドメディアは、専門性をアピールするのが重要です。なぜなら医療系オウンドメディアの主な目的は「新規患者の来院」であり、そのためには何よりも信頼獲得が欠かせないからです。
患者は、大切な身体を預ける病院が適切に治療してくれるか、不安になっています。その不安を払拭するためにも、専門的な立場から検索ユーザーの悩み・不安を解決するのが不可欠です。
また専門性をアピールすることは、SEOの観点からも重要です。Googleは検索品質評価ガイドラインで「E-A-T」という評価基準を定めており、そのなかにExpertise(専門性)が定められています。医療系オウンドメディアは、雑多な内容を書くのではなく、医療に特化したコンテンツで一貫性をもたせるのが重要です。
患者の不安・悩みの解決を最優先する
オウンドメディア運用でよくありがちなのが「ユーザーの不安・悩みを解決するより前に自社商品を宣伝するケース」です。これではオウンドメディアの成果が出にくいので、患者の悩み・不安の解決を最優先としたコンテンツづくりを意識しましょう。
ユーザーの悩み・不安を解決した先に、自社商品を売るのがオウンドメディア運用の流れとなっています。医療機関で言えば、患者の症状に関する不安や悩みを解決する情報を提供し、またその方法として自院の通院をおすすめするのがオウンドメディアの意義です。
そのため新規患者の集患を増やしたければ、まずは検索ユーザーの悩みや不安を解決するコンテンツをつくるのが一番の近道です。
解決方法に自院の治療を提案する
オウンドメディアでは、ユーザーの悩み・不安を解決するためにコンテンツをつくるのが重要です。しかしよく勘違いされがちなのが、オウンドメディア運用が「まったく商品を売らない方法」だと捉えられることです。
オウンドメディア運用では、ユーザーが求めるタイミングで商品を紹介するのが重要になっています。医療機関で言えば「患者が通院を決めるかもしれないタイミング」で、自院の治療をおすすめします。
たとえば「腹痛 原因」のキーワードに対するコンテンツをつくるのであれば、自力で腹痛を解決する方法を紹介するのも大切ですが、自院への通院をおすすめする内容も付け加えるようにしましょう。
ただしコンテンツの内容を考えずに、ただ自院への通院をおすすめしても効果は半減します。そうではなく、コンテンツごとに「ユーザーが何を求めているのか」を分析し、それに合った形で自然に自院への通院をおすすめするように意識しましょう。
医療系オウンドメディア運用での3つの注意点
医療系オウンドメディアは、SEOの観点からも運用面で注意しないといけない点がいくつかあります。運用を考えている医療機関は必須の情報なので、ぜひ参考にしてください。
- 地方病院は集患のコスパが落ちる
- コンテンツ以外にも注意が必要(YMYL)
- 広告に規制がかけられている
地方病院は集患のコスパが落ちる
地元の患者をターゲットとする地方病院がオウンドメディアを運用する場合、集患のコスパが落ちる点は理解しておきましょう。
サイトは国内のどの場所からでも閲覧できます。そのためオウンドメディア運用は、集客面で考えると基本的に、全国で商品・サービスを提供している企業のほうがコストパフォーマンスはよくなります。一方で患者は、近くの病院を選ぶため集客面で無駄が生まれてしまうのが欠点です。
ただし医療機関が、オウンドメディアを運用しない理由にはなりません。多くのユーザーに目が留まることは、病院にとってもプラスになります。そのため地方をターゲットとする医療機関でオウンドメディアを運用するときは、ある程度地域の患者にターゲットを絞るためにも「地域名」のキーワードを含めるのがおすすめです。
コンテンツ以外にも注意が必要(YMYL)
医療に関するコンテンツをつくる場合、記事の内容以外にも注力しないといけない点があります。
医療系のコンテンツは、Googleが定める「YMYL」に該当します。YMYLとは、検索ユーザーの人生に大きな影響を与えるトピックです。YMYLには金融や法律のほか「健康・安全」が含まれています。
そのため医療系のオウンドメディアを運用するときは、コンテンツに加えて、次のような点に注意しましょう。
- 情報を裏付ける信憑性の高い論文や研究結果などを明記する
- 著者のプロフィール情報を記事内で紹介する(著者は医師が望ましい)
- 頻繁にコンテンツを見直す(ガイドラインに違反して検索順位が落ちていないか確認する) など
広告に規制がかけられている
医療系オウンドメディアのコンテンツは、医療広告ガイドラインの規制を受けます。この広告の定義には「オウンドメディアのコンテンツ」も含まれるため、制作の前に内容を理解しておきましょう。
広告規制の重要な部分を抜粋してお伝えすると、医療広告ガイドラインでは基本的に次のような内容が規制されています。
- 比較優良広告
- 誇大広告
- 公序良俗に反する内容の広告
- 患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告
- 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告
出典:医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針 (医療広告ガイドライン)
このように患者に誤解を与える形で、コンテンツをつくらないように細心の注意を払ってください。規制に抵触しないためにも、コンテンツ制作のチェックリストを作成しておくのがおすすめです。
オウンドメディア運用と組み合わせたい集患方法
オウンドメディアは単体で運用するよりも、ほかの媒体と組み合わせると集客の向上を図れます。特に医療機関が組み合わせたい、おすすめの集患方法を2つ紹介します。
- MEO
- SNS
MEO
MEOとは、Map Engine Optimization(マップエンジン最適化)の略称です。Googleで地域名×施設名のようなキーワードで検索したとき、サイトの検索結果の一番上(広告の下)にあるGoogleマップ上で検索上位に表示させるための対策です。
たとえば「渋谷 内科」で調べれば、次のような検索結果が表示されます。
地方名を含んだ検索キーワードで上位に表示されると露出が増え、来院する患者数を伸ばせる可能性が高くなるので、こちらもぜひ対策しておきたいところです。なおMEOは「Googleマイビジネス」と呼ばれる、基本無料のツールを管理・運営することで対策できます。
関連記事: Googleマイビジネスは強力な集客ツール!メリットや登録方法など
SNS
TwitterやFacebookなどのSNSも、来院機会を増やすための集患媒体の1つです。
ただし医療機関の場合、患者を増やすために、SNSで積極的に情報を発信するのは批判を受ける可能性があります。そのためオウンドメディアのコンテンツを拡散する目的に絞って使うのもおすすめです。
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