MECEとは?ロジカルシンキングを支えるフレームワークの活用法について
ビジネスにおいてロジカルシンキングの重要性については浸透していますが、ロジカルシンキングを語るうえで大切になってくる考え方がMECEです。MECEの考え方はWEBマーケティングにおいても広く活用することが可能です。
MECEは一見難しそうに感じますが、MECEを理解するためのフレームワークがいくつか存在します。MECEは、企業経営者においても知っておくべき思考法で、確度の高いビジネスを実現するためのカギを握っているといっても過言ではありません。
MECE(ミーシー)とは
MECE(ミーシー)とは、Mutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの頭文字をとっており、これを訳すと「漏れなくダブりなく」となります。それぞれの英単語の意味は以下になります。
- Mutually=お互いに
- Exclusive=重複せず
- Collectively=全体に
- Exhaustive=漏れがない
「漏れなくダブりなく」という概念については、我々は学生のころから算数や数学で学んでいます。具体的には、場合の数や集合論、確率といった分野で学習しています。
MECEの利用シーンについて
MECEが利用されるシーンについてですが、一般的にはビジネスにおいて広く活用されています。
ビジネスにおいては、ある課題に対して解決策を導き出すということが命題となります。特に企業の経営者はビジネスを進めていくとさまざまな課題に直面します。課題に対する解決策を考えていくうえで、課題が大きく複雑であればあるほど、論理的に考えシンプルかつ小さい形に場合分けをしていかなければなりません。小分けにしたそれぞれの要素ごとに検討をおこない、積み上げていく作業をしていきます。
このような論理的切り分けをおこなう際、切り分け方が肝になります。もし切り分け方に漏れが生じていると、課題解決においてミスが起きている状態になります。また、重複がでてしまうような切り分け方をすれば、検討を繰り返さなければならなくなり効率が悪くなります。
こうした場合に、MECEという考え方が必要になってくるのです。
なぜMECEが必要とされるのか?
MECEが必要とされる理由は次の3点です。
- ビジネスにおいて論理的な思考の整理ができる
- ロジカルシンキングのベースとなる
- マーケティングに活用できる
ビジネスにおいて論理的な思考の整理ができる
ビジネスにおいてMECEの有用性はさまざまです。MECEの最大のメリットは、主観的な思考にとらわれることなく、客観性をもたせて論理的に整理することができる点です。
例えば、相手に対して何か説明をするシーンでは、漏れやダブりがあると説得力がなくなってしまい、話の結論も理解されにくくなってしまいます。
MECEを活用すれば、話を論理的に組み立てることができ、相手にも納得されやすいストーリー展開が可能となります。
MECEは思考をおこなう際に視野が狭くなりがちな人や細かいことに固執しすぎる人などにとって、部分的な思考から全体的な思考に変換できるため特に有効です。
ロジカルシンキングのベースとなる
ロジカルシンキングを考えるうえではMECEの概念が基本となります。ロジカルシンキングをおこなう際のポイントは、「物事を順序立てて考えること」、「矛盾がないこと」です。このような場合に漏れなく、ダブりなくという考え方が大切になってきます。
マーケティングに活用できる
ロジカルシンキングを取り入れることの多い職種はマーケターです。WEBを専門分野とするWEBマーケターも同様です。マーケターは客観的かつ論理的に物事を考える力が求められています。
マーケターがおこなう分析では、そもそも対象が複雑でそれぞれの要素の因果関係がわかりづらくなっているケースが多く、それを1つずつシンプルに整理していく作業が必要となります。
ロジカルな思考を可能にするためには、結論を導き出すための主張がしっかりとしていなければなりません。抜けや漏れがあっては、ロジカルシンキングはおこなうことは不可能です。そのためMECEを活用することで、導き出した結論に対して説得力を持たせることが可能となるのです。
MECEにおける漏れなくダブりなくの考え方
MECEにおいては、漏れなくダブりなくという考え方が基本となります。ここでは、MECEとなるパターンと、MECEとならないパターンについて解説していきます。
MECEは漏れなくダブりなくが基本
MECEの漏れなくダブりなくという考え方の具体的な例として、雇用形態を分類することを以下に挙げます。
- 正社員
- 派遣労働者
- パートタイマー
- アルバイト
- 短時間正社員
- 契約社員・嘱託社員
これらはすべて雇用形態が異なるため重複しておらず、漏れもない状態であるといえます。
MECEとならないパターン
MECEにならないパターンには次の3つが考えられます。
- 漏れがあり、ダブりがない状態
- 漏れがなく、ダブりがある状態
- 漏れがあり、ダブりもある状態
漏れがあり、ダブりがない状態
例えば、缶コーヒーを飲むターゲット層を分類しようとした場合、10代、20代、30代と分類したと仮定します。それぞれ重複はしていませんが、40代、50代、60代や10代未満が要素として入っていないため漏れが生じています。
漏れがなく、ダブりがある状態
例えば、ターゲットを大人と子供、男性と女性の4つで分類したとします。大人と子どもにはそれぞれ男性と女性が含まれているため漏れはありませんが、重複が起きてしまっています。
漏れがあり、ダブりもある状態
例えば、次のように学生を絞り込み、分類したとします。
- 小学生
- 中学生
- 高校生
- 予備校生
- 受験生
このように分類した場合、まず大学生、専門学校生が含まれないので漏れがある状態です。また、予備校生には受験生や中学生、高校生も含まれるため、重複が起きてしまっています。
MECEで論理的思考をおこなう方法(アプローチ)
MECEには2つのアプローチ手法が存在します。MECEのアプローチの仕方として、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチの二軸が存在します。
MECEにおいては、トップダウンアプローチで要素の洗い出しや切り分けが基本となってきます。ただし、全体集合が見えにくい場合などでは、ボトムアップアプローチをまずは試し、その後トップダウンアプローチで随時修正していくというのも、有効な手段であるといえます。
トップダウンアプローチ
トップダウンアプローチは簡単にいえば、上から全体をみて大枠を決定し、その枠に要素を当てはめていく方法です。いわば演繹的なアプローチともいえます。トップダウンアプローチが有効なケースとして、分類の方法が明確な場合や全体像が把握できている場合が挙げられます。
トップダウンアプローチのメリットとして、俯瞰的に物事を考えることができること、ゴールとなる目標を設定して分類しやすくなることなどがあります。
ボトムアップアプローチ
ボトムアップアプローチは、どのように分類していけばよいのかわからない場合や、ブレストで要素を洗い出していくシーンで有効な方法です。トップダウンアプローチは演繹的アプローチですが、それに対しボトムアップアプローチは、帰納的アプローチともいえます。
ボトムアップアプローチは思いつくかぎり要素をまず並べ、グルーピングを行い分類の仕方を決めていく手法です。これは未知の領域であっても思考をすすめることができる点でメリットがあるといえますが、分類の仕方を誤ってしまうと重複が発生してしまうというデメリットも存在します。
MECEで論理的思考をおこなう方法(切り口)
MECEを考えるうえで、どのようにして切り口を設定するかがポイントとなります。MECEには切り口の例を4つ挙げます。
要素分解
全体像を把握したうえで、各要素へと分解していきます。分解した要素すべてが全体像になるようにし、部分集合をつくっていきます。これをおこなうことで各要素に着目して分析可能になります。要素分解は積み上げ型や足し算型ともよばれることもあります。
因数分解
因数分解とは分析をおこなう対象に対して、計算式を用いて要素を分解していく方法です。こちらは掛け算型といわれることもあります。
例えば、売り上げを考える際には以下の式が成り立ちます。
相互関係を考えながら、あらゆる切り口で分解することができます。
時系列
時系列ごとに分解をしていく方法です。例えば、あるプロジェクトを進行していく際に準備、実行、改善のようにフェーズごとに分類していくことをいいます。
対照概念
対照概念とは、二つの対照的な概念について、可能な限り挙げていくという手法になります。
例えば、以下のような関係性が対照となります。
- 主観・客観
- 固定・変動
- メリット・デメリット
- 個人・法人
- 量・質
- クオリティ・スピード
対照となる関係性について考えることで、誰かに説明する際に伝わりやすくなります。
MECEを活用したフレームワークについて
MECEの考え方がむずかしいと感じられる場合、フレームワークに落とし込んでみると考えやすくなります。
要素分解のフレームワーク
ここでは、要素分解を行ううえで役に立つフレームワークを4つ紹介していきます。
3C分析
3Cとは、以下の3つの頭文字をとっています。
- Customer(市場)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
3Cはマーケティング戦略を考える場合や、事業計画を立てる場合などに広く活用されることの多いフレームワークです。
自社分析だけにとどまらず、市場や競合といった視点からも分析が可能であるため、漏れなくダブりなくといった市場分析ができるようになります。
4P分析
4P分析の4Pとは、以下の4つの頭文字をとっています。
- Place(流通)
- Price(価格)
- Product(製品)
- Promotion(販売促進)
4P分析はマーケティング・ミックスともよばれ、マーケティング戦略を考えるうえで大事になるフレームワークです。4つに分類をおこない、製品開発から価格の設定、物流、販売促進まで相互に考えていくことで、漏れなくダブりなくという状況設定が可能になります。
SWOT分析
SWOT分析のSWOTとは、以下の4つの頭文字をとっています。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunities(機会)
- Threats(脅威)
自社がビジネスを成功させるためのストーリーを考えるのに必要となるフレームワークです。SWOT分析の特徴として、プラス要因、マイナス要因や内部環境、外部環境に分類することで分析できるようになります。
7S分析
7S分析は、コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーが生み出した分析手法で、ソフト4S、ハード3Sに分けられます。
ソフト4Sとは、以下の4つの頭文字をとっています。
- Skills(能力)
- Staff(人材)
- Shared Value(価値観)
- Style(経営スタイル)
一方ハード3Sとは、以下の3つの頭文字をとっています。
- Systems(仕組み)
- Structure(組織構造)
- Strategy(戦略)
これらは、7つの経営資源について相互関係を表し、組織戦略の分析に役立ちます。
時系列のフレームワーク
時系列におけるフレームワークについて紹介していきます。
バリューチェーン
バリューチェーンとは、バリュー(価値)とチェーン(連鎖)を掛け合わせ、価値連鎖を指すフレームワークのことです。事業活動のプロセスごとに、主な活動(原料調達、製造、販売など)と主な活動をサポートする支援活動に切り分けて、それぞれどのような付加価値を生み出すことができるかについて分析をおこないます。このフレームワークでは、改善点の洗い出しや競合他社との差別化についても考えることができます。
製品ライフサイクル
製品ライフサイクルとは、製品が市場に登場し、衰退していくまでの過程を表したフレームワークのことです。製品ライフサイクルには、以下の4つのステップに分けることができます。
- 導入期:市場の認知度アップ
- 成長期:ブランド力の向上
- 成熟期:シェア拡大
- 衰退期:支出の削減
これらについてそれぞれ分析を行い、ステップごとに適したマーケティングを行っていきます。
AIDMA
AIDMA(アイドマ)とは、消費者が購入を検討し、購入に至るまでの意識の変化について着目し、各段階でマーケティング戦略を行っていくフレームワークのことを指します。
AIDMAは、以下の5つの頭文字をとっています。
- Attention(注意)
- Interest(関心)
- Desire(欲求)
- Memory(記憶)
- Action(行動)
購買プロセスごとに分析していき、それぞれの家庭において最適なマーケティング戦略を仕掛けていくことで、マーケティングの効率がアップします。
ロジックツリー
ロジックツリーとは、MECEの考え方で切り分けた要素を、ツリーのように並べたものを指します。ロジックツリーを活用することで、分析内容を可視化することができ、全体像の把握や、メンバー間での共有も簡単になります。
ロジックツリーを作り上げていくうえでポイントとなるのが、縦軸をロジックで結びつくようにして、横軸では同程度の要素がMECEに並ぶように配置していきます。