KPIとは?KGI、KSF、OKIとの違いとKPIマネジメントの方法や達成までの手順を解説
KPIは、目的を達成するために行う日々の行動の指標の事です。目標管理としてKPIを設定します。
例えば、SEOで10位以内に入るには、1日2記事を最適サイトへアップするとKPIを設定すれば、2記事/日を管理します。その結果、10位となった場合、10位がKSF(主要成功要因)で、KGI(最終的な目標)が売り上げアップです。
KPIとは
KPIとはKey Performance Indicatorの頭文字をとったもので、ビジネスパフォーマンスを測定・モニタリングするための指標です。KPIをチーム内で共有し、ターゲットに対する遂行率を数値で把握することで、組織活動を適切に行うことができます。
KPIをメンバー内で設定して共有することにより、メンバーの意思統一ができモチベーションとパフォーマンスがあがります。
KPI導入のメリット
KPIを設定し活用するメリットは、「目的に対して達成度合いを数値化することで、プロジェクトなどを客観的に評価できる」ことです。
プロジェクトを始めた時に、KPIをあやふやにしておくと、プロジェクトの進捗を聞かれた時に、報告に困ってしまいます。KPIをしっかりと決めて事前に合意したKPIがあれば、プロジェクトが成功しているかどうかを客観的に判断することができます。組織が大きければ大きいほど、その効果は大きくなります。
KPI導入のデメリット
KPIのデメリットは、高すぎるKPIはプレッシャーになってしまい、KPIを意識しすぎて、他がおろそかになってしまう可能性があることです。プロセスの見える化が逆に適切な設定値でないとデメリットとなります。
KGI、KSF、OKIとの違い
KPI以外にも様々な行動目標の指標があります。ここでは、KGIとKSFとOKIについて解説します。
KGIとは
KGIとは、Key Goal Indicatorの略で、重要目標達成指標と言われます。KGIは組織が目指すべきターゲット(ゴール)を数値化した指標で、KPIはKGI遂行のためのより細かい日常の目標を数値化した指標です。 例えば、「売上目標1億円」というKGIが制定されたとします。
この遂行のために定義できるKPIの例として、次のようなものがあります。
- 新規問合せ1,000件
- 新規商談100件
- 新規顧客獲得件数 20件
- 平均受注額 500万円 など
これらは、KGIを成し遂げるための具体的なKPIという事です。
多くの企業では、売上や利益の目標金額など、大まかなKGIを制定しています。KGIを設定するとゴールが明確になり、外部に対しても説明しやすく理解を得やすくなります。
KSFとは
KSFとは、Key Success Factorの略語であり、「主要成功要因(ゴールを達成するのに必要な要因)」と呼ばれています。事業の成功に必要な条件を示す指標です。KPIは、ターゲットに対する遂行度合いの「指標」であるのに対して、KSFとはターゲットまでに何をするかという「要素」を表しています。KSFに該当するメルクマール(指標)としては以下のようなものが挙げられます。
- 規模
- 技術力
- 顧客対応力
- ブランド力 など
これらのKSFは、競争構造の変化により変化する場合があります。よって「成功の鍵を握る要素」として、市場の変化に注視した上で、KSFを絞り込んでいくことが重要です。
OKRとは
OKRとは、Objectives and Key Resultsの略で、組織が遂行すべき目標(Objectives)と、そのターゲットを遂行するために必要な結果(Key Results)を扱う目標管理手法です。
アメリカのインテル社で生まれた管理方法で、GAFAの有名企業が取り入れています。
OKRはよりシンプルで短期的なターゲット設定のアプローチとなっています。そのため、ターゲット設定にかかる時間が短く、より高い頻度で施策の評価・見直しを行うことができます。
KPIは組織が確実にゴールを遂行するための具体的なアクション目標であり、100%の遂行を前提とします。
その一方、OKRは個人に対して設定されるものとなっています。また、全力で打ち込んでも100%達成することは難しいターゲット設定になる傾向があり、これは、個人に対してギリギリのラインをターゲットにすることで、その人がコミットできる高い成長を促す狙いがあるためです。
OKRは、目標設定をロジカルにするので、スタッフの納得感が増し、エンゲージメント向上が期待できます。
KPIマネジメントの注意点
ここまで、KPI導入のメリットやほかの指標との違いについてご紹介してきましたが、以下の点はKPIマネジメントで注意したいポイントです。
- 目標が明確でない場合
- 定量化が欠如している場合
- 目標値が現状に即していない場合
- 目標がぶれている場合
- KGIと連動していない場合
これらの5つのケースでは、特にKPIが名ばかりとなりうまく機能しないので注意が必要です。
1.目標が明確でない場合
KPIを設定するときに、目標を導入することによって得られる効果や原則、仕組み、設計方法などを理解せずに、なんとなく導入しているケースが少なくありません。そのような場合、導入の目的すら理解されず、トップダウンで行われた指示が失敗につながる可能性があります。導入する目的を全員が理解して、明確な目標(KPI)を定めてください。
2.定量化が欠如している場合
KPIは、KGIのメルクマール(指標)となる中間目標値です。そのため、数値が具体化されなければ、その役割を果たすことができません。しかし、これらはデータに基づいて算出されるので、基礎となるデータがなければ、定量化は難しくなります。このような場合、まずはデータを活用することが必要になります。
3.目標値が現状に即していない場合
KGIは最終的な目標値ではありますが、その性質上、恣意的に制定することができます。
- 極端なことをしても、売上を大きく伸ばしたい。
- 前年を下回らなければよい(現状維持)。
など、向き合い方によって、途中指標の設計・制定方法は大きく異なります。 前者の場合、強化や改善といった別の指標を追加せず、既存の値を上げるだけではKGIは決して遂行されません。
4.目標がぶれている。
KPIは基本的に一度設定したら、一定期間が経過するまで変更しない方がよいです。
期待通りに遂行されないので値を下げる、逆に進捗が順調に推移しているので値を上げる、または効果がないので別のメルクマールを制定する、などのような変更を頻繁に実施すると、社員のモチベーションが下がり、ターゲット遂行に向けた活動から外れてしまうことになります。
また次のサイクルへの適切なエビデンスとしての役割を果たさなくなる危険性もあります。
ターゲットの見直しや対策、改善はPDCAサイクルで定められたルールに従って行われるべきであり、そのルールからの逸脱は時として失敗を招くことになります。
5.KGIと連動していない
KPIとKGIは論理的にリンクしている必要があり、因果関係のない要素で制定しても、その効果は全く期待できません。
両者を通じて、具体的なアクションを段階的に提示することで、企業の立場から状況を把握し、組織や社員が具体的な活動に集中できるようになります。
効果的な目標設定の流れ
ここまでKPIマネジメントの基本について説明してきましたが、ここからはマネジメントの実践について詳しく説明します。
KPIは、ターゲットへの遂行度を測定・監視するためのメルクマール(指標)であり、はじめにKGIとKSFを設定する必要があります。
流れは、
- KGIの設定
- KSFの設定
- KPIの設定
の順です。
1.KGIの設定
まず初めに、KGIの最終目標を設定します。目標設定のためには、チーム内でターゲットをすり合わせることが必要です。目的がどうあるべきかを話し合い、どのポイントをKGIとして設定すべきかを全員で確認します。ポイントが決まったら、測定可能なメルクマール(指標)に作り直し、期限を設定するなどの工夫が必要となります。その際、「SMARTの法則」というフレームワークが役に立ちます。
「SMARTの法則」とは、
- Specific:具体的、わかりやすい
- Measurable: 測定可能、数字になっている
- Achievable:遂行可能、達成可能、
- Relevant:関連性がある
- Time-bound:明確な期限 がある
という5つの要素からなっており、これらの頭文字をとって「SMARTの法則」と呼ばれます。
この5つの要素を意識してターゲットを設定することで、ターゲット遂行の確度を高めることができるのです。KGIをSMARTのフレームワークに従って設定することで、効果的なターゲット(ゴール)が生まれます。
2.KSFの特定
KGIを設定したら、遂行するためのプロセスを明らかにして、KSF(Key Success Factors)を特定します。KSFの特定には、以下の4つのステップがあります。
- プロセスの把握
- プロセスの定量化
- プロセスの分類
- KSFの選定
1)プロセスの把握
まず、ゴールに到達するために必要なステップを時系列に整理してみましょう。例えば、営業マンがある商品(ゴール)を受注するためには、次のようなプロセスが確認できます。
1回目の訪問>2回目の訪問(提案・見積り)>3回目の訪問(クロージング)>申込書の回収>注文の受領
このように一度プロセスを時系列順に整理して、把握することが最初のステップとなります。
2)プロセスの定量化
プロセスを並べたら、ゴールを具体的に数値化しましょう。 ゴール=P(プロセス)1×P2×P3 このモデル式を使って、先ほどの営業部の例で考えてみましょう。
ゴール(売上)=受注件数×平均受注単価=(訪問件数×受注率)×(商品A単価×商品A受注率+商品B単価×……)={(問い合わせ件数×アポイント獲得率)×(提案率×成約率×申込書回収率)}× ……
というように定量化することができます。
3)プロセスの分類
プロセスが具体的に数値で表現されると、そのプロセスが制御可能かどうか、ターゲットにどの程度影響を与えるかによって、様々なタイプに分類できるようになります。
まず、数値化できるプロセスのうち、コントロールできるものとできないものに分類します。分類後、コントロールしやすいものから、プロセス全体に大きな影響を与えるものとそうでないものに仕分けしていきます。
4)KSFの選定
最後に、プロセスを整理してKSFを決定します。
KSFは、2つの軸で考えて「コントロールしやすい」「ターゲットへの影響が大きい」ものを選びます。KSFを選定したら、導き出されたKSFが本当にKSFになり得るのか、必ず過去の実数で検証しましょう。
3.KPIの設定方法
KSFの仕分けと選定が終わったら、KPIを途中まで設定します。絞り込まれたKSFの数値を使って、適切なものを基準に設定します。
KGIを設定する場合と同様、SMARTルールの枠組みでレベルを定めるとよいでしょう。以下はSMARTルールに沿って定める例です。
具体的(Specific)
- 顧客訪問数
- 成約率
- 不良品発生率
など、現場で実感しやすい項目を制定すると分かりやすいメルクマール(指標)になります。
測定可能(Measurable)
測定結果が数値化しやすい項目の例として、以下のようなものがあります。
- 受注件数
- 歩留まり率
- 販売数
達成可能(Achievable)
目標の達成は、社員の自信やモチベーションを高めるきっかけになります。本人の評価につながりやすい達成感のあるターゲットを制定することが効果的です。
- 新製品受注数
- 顧客ごとの契約販売数
など、頑張って到達することで遂行可能となる項目や、本人の評価へとつながりやすい項目を選びましょう。
関連性(Relevant)
KGI、KSF、KPIは、それぞれ強い関連性を持っています。例えば、製造現場の場合、在庫管理であれば生産品目ごとの滞留在庫を含めたリードタイム、工程管理であれば工数遂行率など、目標が適切に関連していることがポイントとなります。
明確な期限がある(Time-bound)
期間を制定しなければ、ターゲットに対する危機感を煽ることができません。
- 週次、月次、四半期、上期、下期
など、あらかじめ期限を決めておくことで、行動に現実味と具体性を持たせることができます。
職種別に見るKPIの事例
営業や経理、人事などの職種別にどういったKPIが設定されるのか指標の例をご紹介します。
営業・マーケティングで重視すべき例
1)重要な指標の例
重要なメルクマールの例としては、以下のようなものがあります。
- 新規顧客獲得数
- リピーター率
- 顧客満足度
- PV数
- 直帰率
2) マーケティングでKPIを設定するメリットと活用例
マーケティングにおいてKPIを活用することで、KGI(売上などの最終目標)達成のための数値を明確にすることができます。
例えば、月商500万円というゴールを設定した場合、顧客単価を考えると必要な顧客数がおのずと明らかになり、目標が達成されない場合は、マーケティング施策に改善の余地があると判断できます。そして、マーケティング施策を修正・最適化することで、より多くの収益を上げることができます。
会計・財務で重視すべき例
1)主な指標の例
財務でのメルクマール(指標)の例としては、以下のようなものがあります。
- ROE(自己資本利益率)
- ROA(総資産利益率)
- 流動比率
- 固定資産比率
- 棚卸資産回転率
- 固定資産回転率
2) 財務KPIを設定するメリットとその活用例
職種や業種の観点に加え、財務の観点からの目標を設定することも重要です。これを用いることで、会社全体の現状を把握した上で、合理的な全社的意思決定が可能になります。
例えば、ROEやROAといった指標は、収益性(利益率)を表しています。当初設定した利益率と、その結果の利益率を比較することで、収益性の変化を可視化することができます。また、流動比率や固定比率は財務の安定性を、在庫回転率や固定資産回転率は効率性を表しています。
業種や職種を問わず、財務の観点からのメルクマールは、全社的な観点からも非常に重要です。また、財務の観点から目標を設定することで、長期的な全社目標(KGI)を遂行することができます。
人事で重視すべき例
具体的なメルクマール(指標)の設定例を紹介します。
- 人材採用
- 人材育成
- 人材マネジメント(配置)
以下、3つのテーマについて例を見ていきましょう。
採用
- 採用数
- 応募者数
- 面接回数(二次面接、最終面接)
- 内定辞退者数
- 紹介による採用率
- 採用者の入社後満足度
人材育成
- 研修実施回数
- 従業員一人当たりの平均研修時間
- 研修参加率
- 研修満足度
- 資格・スキル取得者数
- 新規資格取得者数
- OJT計画実施率
- OJTの満足度
人的資源管理(配属)
- 従業員の配属先に対する満足度
- 管理職の配属先満足度
- 異動希望者数
- 部門別ターゲット遂行率
- 部門別遂行率
このように、その目的によって定めるKPIは変わってきますので、正しいKPIの設定をしてください。
施策別に見るKPI設定の参考例
指標の設定の原則は先にも述べたように、KGIの制定→KSFの特定→KPIの詳細制定、という流れで進めます。
営業活動に関する各部門でどのような設定を行なうのか、具体的にまとめています。設定例はKGIを頂点に、ツリー上にKSFとなる要素→具体的なアクションの例を記しています。
インサイドセールスの場合
インサイドセールスは、主に電話などで利用して見込み顧客や休眠顧客に能動的にアプローチする部門です。営業活動において必要とされるアクションの流れ、またそのアクションから生まれたアウトプットの結果を検討する必要があります。
アウトプットとして求められる項目は、
- 架電件数
- 商談件数
- 商談単価
といったものになります。これらをKPIに設定します。
メールマーケティングの場合
コロナ禍の長期化と相まって、近年の営業手法としてメールマーケティングがよく知られるようになってきました。従来のようにアポイントを取った上で対面営業をすることはなく、メールを活用したアプローチを行ないます。
メールマーケティングに関するKPIとして有効な項目は、以下のようなものになります。
- メルマガやメールを送信できるメールアドレス総計
- メール開封率
- デジタルツールによる業務効率化の定量的データ
これらをKPIとして設定します。
コンテンツマーケティングの場合
コンテンツマーケティングは、自社のサービスなどは前面に出さず、役に立つ情報や知識の無償提供を通じて間接的なプロモーションを行なう施策です。
営業活動を前面に出さないことから、売り上げ、商談件数といったような指数はありません。
直接的な商談案件とはなりにくいものの、情報提供の過程で企業姿勢なども伝わるので、後のロイヤルカスタマーを育てる効果が期待できます。
例として以下の項目で効果を確認します。
- セミナーに参加した人の情報取得件数
- 見積依頼の件数
- コンテンツ作成数
などをKPIに設定できます。
KPIの運用方法
運用設計の手順は下記の通りです。
- 設計の準備を整える
- 運用のルールやプロセスの設計
- 補足的な検討事項の確認
1)設計の準備を整える
まず、設計の準備を整えていきます。
運用設計の準備に際して、
- KPIに対する認識を社内で共有するために、指標の定義を確認・整理
- KPIのスムーズな測定のため、データ取得方法を確認
- 運用の柔軟性をより高いものにするベく、代替案となるKPIの検討
などを実施します。
2)運用のルールやプロセスの設計
次に、運用のルール、プロセスの設計をします。
- PDCAサイクルのプロセスの設計
- 組織メンバー一人ひとりに対して運用時の役割を付与
- 可視化するためのルールなどの仕組みの制定
- 結果の振り返り方法などの制定
などを設計します。設計した内容は、組織内で情報共有しておきましょう。
3)補足的な検討事項の確認
最後に、補足的に検討すべき事項の確認をします。通常ルールやプロセスを設計しても、何らかの漏れが生じることは頻繁にあります。そこで、補足的に検討すべき事項を確認しておくことが重要になります。
- 社内外への情報開示に関する共通のルール
- バッティングしたKPIへの対応方法
- PDCAを活かした振り返りの結果から、KPIや目標値を見直すプロセス
- 外部環境といった状況変化への対応方法
などについて、事前に検討しておきます。
効率的なKPIを管理・分析・達成をするためのコツ
設計を行う際は、達成、測定が可能な数値を置き、単純で誰にとっても理解できるターゲットを制定することを意識しましょう。
また、多くの要素を取り入れ過ぎると評価基準も複雑化するため、業務効率が悪化したり、生産性の低下に繋がり、KPIを遂行することが目的化してしまうことがあります。
そのため、スタートからゴールが分かりやすい設計を心がけ、目的と結果が理解しやすいフレームを構築することを意識しましょう。
CRMやSFAを有効活用
CRMやSFAを活用すると、受注するまでの営業活動をはじめ、顧客への営業やサポートなどあらゆるデータが管理でき、営業活動の見える化を進めることができます。
また、営業活動の情報の蓄積によって、状況の把握や分析が迅速かつ効率的に行えるようになります。
これによって、KGIの遂行に向けて決めたKPIが、ターゲットとする数値から乖離した原因の追及ができるようになり、PDCAサイクルの有効活用もできるようになります。
まとめ