DSP(Demand Side Platform)とは? メリットや選び方を解説
一般的に、広告主は、WEB広告で訴求する商品やサービスの売上を高めることを目的として広告配信します。広告配信に一定のコストがかかる以上、効果が向上するための施策は不可欠です。
この広告効果を高めるうえで活躍するツールがDSP(Demand Side Platform)です。DSPを導入すると、自社が希望する広告単価で相性がよいメディアに掲載されやすくなります。その結果として、自社広告の情報を求めているユーザーに視認される頻度が高まっていきます。
DSPとは
DSP(Demand Side Platform / デマンドサイドプラットフォーム)とは、WEB広告の効果を高めるために、広告主が利用するサービスのことです。
DSPを導入すると、自社がWEB広告を出稿する際に、自動で適切な広告枠を確保して、広告を配信してくれます。具体的には、DSPでWEB広告の単価、ジャンル、訴求内容などを設定すると、広告配信までの工程を自動化できます。さらに、複数のWEB広告を一括管理することが可能です。
DSPとSSPの関係性
DSPは、SSP(Supply Side Platform / サプライサイドプラットフォーム)と呼ばれるメディア側が利用する広告配信ツールと連動して、はじめて機能します。そのため、DSPとSSPは、広告配信におけるツールとしてセットで扱われます。
DSPではWEB広告(広告主側)の情報を、SSPでは広告枠(メディア側)の情報を管理します。そして、互いに情報を共有して、WEB広告を適切な広告枠に配信します。
DSPとSSPの具体的な仕組みとしては、RTB(Real Time Bidding / リアルタイム入札)と呼ばれるオークションで広告の掲載枠が決定します。これは、広告主がオークション形式で広告枠に入札して、高値がついたWEB広告をその枠で配信するといったものです。そして、この入札は、リアルタイムでおこなわれます。そのため、広告枠が無闇に高騰化することなく、健全な市場相場が維持されます。
関連記事:SSP(Supply Side Platform)とは? 仕組みをわかりやすく解説
DSPとアドネットワーク
DSPを利用すると、複数のアドネットワークのなかから配信先となるメディアが選択されることになります。そのため、特定のアドネットワークに参加するよりも、DSPを利用した方が広告の配信先となる候補が多くなります。さらに、複数のアドネットワークを一元管理できるという特徴があります。
そもそも、アドネットワークとは、広告と広告枠を束ねる、広告配信のネットワークのことです。一般的には、広告代理店が広告主とメディアを営業活動などを通じて集めて、1つのネットワークを形成します。
関連記事:アドネットワークとは
DSPを導入するメリット
広告主がDSPを導入するメリットは、主に次の2つです。
- ターゲットを細かく設定でき、広告効果が向上する
- 広告配信における業務の工数が減る
ターゲットを細かく設定でき、広告効果が向上する
DSPでは、広告のターゲットを細かく絞ることができます。そのため、適切なユーザーにアプローチしやすく、WEB広告効果の向上を期待できます。DSPを導入したら、まずは、WEB広告の情報を設定します。このとき、広告出稿において、次のような条件をつけることができます。
- 広告のジャンル
- 広告のクリエイティブ形式
- 広告の下限、上限単価
- ターゲットとなるユーザー属性
このうち、ユーザー属性を細かく設定すると、広告効果が高まりやすくなります。
広告配信における業務の工数が減る
DSPを導入すると、広告配信に必要な業務の工数が減ります。
DSPに広告情報を設定すると、SSPと連携して自動的にWEB広告がメディアに掲載されます。さらに、広告効果を測定してレポートを発行してくれる機能が搭載されているケースもあります。そのため、次のような業務を簡略化できます。
- メディアや代理店との商談
- 広告のアクセス解析業務
DSPサービスの選び方
DSPサービスを選ぶうえでポイントになるのは、自社広告と相性がよいか、また、細かくターゲティング設定できるかという2点が挙げられます。具体的には、次のようなサービスが該当します。
- 自社広告のジャンルと提携先SSPの相性がよいサービス
- 細かくターゲティング設定できるサービス
- メディアを指定できるサービス
自社広告のジャンルと提携先SSPの相性がよいサービス
自社広告のジャンルに適切なメディアの広告枠を確保する必要があります。そのため、DSPの提携先のSSPをチェックして、相性の良し悪しを判断してください。
SSPサービスは多数ありますが、サービスによって強みとする業界が異なります。DSPを利用してみたものの、自社広告と親和性が低い広告枠ばかりだと広告効果を活かせないケースがありますので注意してください。
関連記事:SSP(Supply Side Platform)とは? 仕組みをわかりやすく解説
細かくターゲティング設定できるサービス
DSPを利用すると、広告の情報を設定することになります。このとき、できうる限り細かく設定できるDSPを選ぶと、自社が希望する広告枠を確保しやすくなります。たとえば、広告におけるターゲティング設定の項目としては、次のようなものがあります。
- ユーザーの性別や年齢、職業
- ユーザーの居住地域
- ユーザーが興味を持つジャンル
- ユーザーの購入履歴
- ユーザーのライフスタイル
メディアを指定できるサービス
DSPのサービスによっては、掲載を希望するメディア、または、掲載を希望しないメディアを指定する機能があります。そして、前者をホワイトリスト、後者をブラックリストとそれぞれ呼びます。DSPを選ぶ際には、この機能がついているかをチェックしてください。
なお、ホワイトリストに指定したメディアには、必ずしも掲載されるわけでなく、あくまでも掲載の優先度が高まるというものです。
代表的なDSPサービスをご紹介
国内における、代表的なDSPサービスをご紹介します。
- ディスプレイ&ビデオ360(DV360)
- UNIVERSE Ads
- GENIEE DSP
- Red
- Amazon DSP
ディスプレイ&ビデオ360(DV360)
ディスプレイ&ビデオ360(DV360 / 旧DoubleClick Bid Manager)は、Google社が提供する広告主向けのマーケティングプラットフォームです。原則的に、デジタルメディア全般に対応しています。
WEB広告においては、Google広告のほか、国内における有名どころのSSPと連結しており、広告枠の在庫を多数有している点が強みです。また、メディアをカテゴリ別で指定できます。たとえば、自社広告のターゲットが女性であれば、大手の女性向けメディアを中心にWEB広告を配信できます。
サービスURL:ディスプレイ&ビデオ360
UNIVERSE Ads(ユニバーサルアド)
引用:UNIVERSE Ads
UNIVERSE Ads(ユニバーサルアド)は、マイクロアド社が提供するDSPサービスです。DSPとしては、国内最大規模の売上シェアを誇り、導入アカウント数が2700件を超えています。
UNIVERSE Adsでは、同社が提供するマーケティングデータのプラットフォーム「UNIVERSE」を利用することで、業界特化型の広告配信を実現します。具体的には、次のような業界に強みを持っています。
- BtoB業界
- 飲料や食品業界
- エンタメ業界
- 医療や製薬業界
- 自動車業界
- 美容業界
そのため、こうした業界のメディアに優先して広告出稿したいケースでは、UNIVERSE Adsの利用を検討してください。
サービスURL:UNIVERSE Ads
GENIEE DSP(ジーニーDSP)
引用:GENIEE DSP
GENIEE DSP(ジーニーDSP)は、ジーニー社が提供するDSPサービスです。メディアの参加数が5,000を超えています。
本サービスでは、プライベートマーケットプレイスという機能が備わっています。この機能では、広告主側で媒体の指定設定ができます。そのため、自社や商品ブランドを大切にする広告主でも安心して利用できます。
サービスURL:GENIEE DSP
Red
引用:Red
Redは、フリークアウト社が運用するマーケティングプラットフォームです。国内最大規模の広告枠の在庫を扱い、その数は月間で8,500億インプレッションにものぼります。
本サービスには、独自の機械学習エンジンが搭載されており、バナー広告、ネイティブ広告、動画広告、アプリケーション広告など、さまざまな形式のWEB広告を適切に配信してくれます。
サービスURL:Red
Amazon DSP(アマゾンDSP)
引用:Amazon DSP
Amazon DSP(アマゾンDSP)は、アマゾンが提供するDSPサービスです。
本サービスでは、ECサイトのAmazonだけではなく、提携する外部メディアを活用して広告配信できます。Amazon DSPの最大の強みとしては、Amazonのビッグデータを応用した広告配信が可能である点です。具体的には、同サイトにおける、WEBショッピングの購入パターンをもとにして、効果的な広告配信を実現します。
サービスURL:Amazon DSP
DSPを導入する際に知っておくべきこと
2024年現在では、Google社がサードパーティクッキーの利用を廃止する動きが広告業界内で話題になっています。WEB広告のターゲティングに関する重要な事柄ですので、DSPを導入するにあたり、この話題について把握しておいてください。
これまでは、ブラウザのクッキー(Cookie)を利用した、ターゲティング広告と呼ばれる技術を用いて、適切なユーザーにWEB広告を配信してきました。
しかし、このユーザーのアクティビティ追跡のシステムが変更されることが予測されています。その理由は、Chromeブラウザにて、サードパーティクッキーと呼ばれる機能を段階的に廃止するとGoogle社が発表しているためです。
参考(外部):Chrome ブラウザでのサードパーティCookieの段階的廃止に向けた次のステップ
Google Chromeのサードパーティクッキー廃止について
そもそも、サードパーティクッキーは、WEB広告の表示にも利用されているものなのですが、ここ数年ではユーザーのプライバシーを守る観点から問題視されてきました。
そこで、Google社は、Chromeブラウザにて、2024年1月4日から段階的にサードパーティクッキーを廃止していくことにしました。そして、同年後半には、すべてのユーザーに対して廃止が適用される予定です。
このプロジェクトは、プライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)と呼ばれています。そして、Chromeブラウザに対して、テスト的にトラッキング保護機能を導入していくとのことです。プライバシーサンドボックス採用の狙いに関して、Google社は次のように語っています。
ユーザーのオンラインでのプライバシーを保護しながら、デジタル ビジネスの成功につながるツールを企業や開発者に提供することを目的としています。
引用:プライバシーサンドボックス:プライバシー保護を強化したウェブのための技術です
つまり、サードパーティクッキー廃止にともない、代替となる技術を提示するということです。
サードパーティクッキーの代替について
プライバシーサンドボックスのプロジェクトの一環として、「関連性の高いコンテンツや広告の表示」に対する施策が進められています。つまり、これがサードパーティクッキーの代替案になるということです。それによると、次のようなスケジュールで施策が進行しているとのことです。
サードパーティクッキーの代替として、APIという技術を用います。具体的には、Google社は次の3つのAPIを開発しています。
API | 解説 |
---|---|
Topics API | ユーザーのWEB閲覧履歴をもとに、ブラウザが関心の高いカテゴリを推察する技術。 |
FLoC API(※開発終了) | ユーザーのWEB閲覧履歴をもとに、集団にわけることで、個人ではなく、クラスターとしてWEB閲覧パターンを特定する技術。 |
Protected Audience API | ユーザーのブラウザ(ローカル環境)で広告表示の意思決定が完結する技術。 |
DSPのよくある質問
DSPに関する、よくある質問をまとめています。
Q:DSPを導入するとどのような効果がありますか?
Answer)DSPを導入すると、WEB広告の効果が高まります。具体的には、広告のジャンルと関連性が高いメディアに掲載されやすくなります。そして、広告情報を求めるユーザーに視認されますので、広告で訴求する商品の認知拡大、購入機会が増加します。
Q:DSPとSSPの違いは?
Answer)DSPとアドネットワークは、そもそもの概念が異なります。DSPは広告主がWEB広告を配信するためのツールです。その一方で、アドネットワークとは、WEB広告を配信するネットワークを指します。
関連記事:アドネットワークとは
Q:ターゲティング広告とはなんですか?
Answer)ユーザーの行動履歴をもとに、関連性が高いWEB広告を配信することです。このとき、ユーザー情報を取得するために、クッキー(Cookie)が利用されています。
さらに、自社サイトに再訪問したユーザーにWEB広告を配信する、リターゲティング広告と呼ばれる手法もあります。
まとめ