DMCAとは?デジタルミレニアム著作権法の侵害への対処方法を解説
DMCAとはデジタルミレニアム著作権法のことで、2000年10月にアメリカで施行された連邦法のことです。
当たり前の話ですが、インターネットはデジタルの世界です。アナログと比較し、デジタルの非常に優れている点はコピー、バックアップが非常に容易になったことです。しかし、コピーが簡単になったということは著作権への侵害の敷居が低くなったとも言い換えられます。
DMCA(デジタルミレニアム著作権法)とは?
DMCAとはデジタルミレニアム著作権法(Digital Millennium Copyright Act)のことで、2000年10月にアメリカで施行された連邦法(連邦議会で制定した法律)です。
DMCAそのものはアメリカのものですが、Google、Apple、Meta(Facebook)、Amazon、Microsoftのような世界的なインターネット企業はアメリカの企業であるため、事実上、DMCAがインターネット上の著作権に関する基準となっています。
DMCAにより盗用サイトへの対処が現実的になった
インターネット黎明期よりコンテンツの無断盗用は問題になってきました。従来は自社コンテンツの盗用があった場合には、盗用したサイト運営者に連絡し削除要請をする必要がありました。
しかし、盗用をするような悪質なサイトですので連絡して削除要請をすれば解決するということはほとんどなく、そもそも連絡先がわからない場合が通常です。
そのため、まずは運営者の特定が必要になりますが、そのためには裁判所を通じた長い時間とコストがかかることから、事実上、紳士協定で運営されていたのが実態です。
このような背景があるなか、DMCAが施行したことにより盗用サイトへの対応を検索エンジンのようなプラットフォームが引き受けることができ、対処が非常にスムーズになったのです。
日本でもDMCAが適用される
日本で著作権侵害があった場合でもDMCAに沿って著作権を侵害しているコンテンツの削除申請が可能です。Googleに申請が通ればGoogleの検索結果から消えることになり、日本の検索エンジンシェアはGoogleが9割(Yahoo!JAPANはGoogleエンジンを使用)ですので事実上、検索エンジンから該当コンテンツへアクセスできなくなります。
ただし、検索結果から消えるだけであり、対象サイトからコンテンツが消えるわけではありません。URLは存在し続けますので閲覧そのものは可能です。
なお、日本では2002年よりプロバイダ責任制限法が施行され、著作権を侵害している情報発信者が特定できない場合でもプロバイダへの削除申請ができたり、情報発信者の情報開示請求をすることが可能になりました。
プロバイダ責任制限法とは
画像引用:インターネット上の違法・有害情報に対する対応(プロバイダ責任制限法)
プロバイダ責任制限法とは、正規名称は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」といいます。
権利を侵害するコンテンツが発信された場合、当該侵害情報の発信者情報の開示請求をしたり、プロバイダが提供するサーバーや電子掲示板などを利用して、権利を侵害する情報が発信されたときに侵害情報の削除依頼をしたりすることができます。
なお、令和3年4月21日に参議院本会議において、プロバイダ責任制限法の改正法が可決、成立しています(施行日は2022年5月時点では未定)。現在でもなお、権利侵害は続いており、注目されている法律です。
フェアユースの概念
フェアユースとは、特定の条件を満たしていれば著作権の保有者から許可を得なくても、著作物を再利用できるとした原理原則のことです。Googleをはじめ、アメリカにはフェアユースの概念が浸透しており、Googleはフェアユースの概念に乗っ取り著作権を考えています。
Googleでは次の4つの観点でフェアユースを考えており、著作権の保有者の権利を守りつつも情報をうまく利活用しようという姿勢がみえます。
- 利用の目的と特性(その利用が、商用か非営利の教育目的かなど)・・・裁判所では通常、その利用が「変形的」であるかどうか、つまり、新しい表現や意味がオリジナルのコンテンツに追加されているかどうか、あるいはオリジナルのコンテンツのコピーにすぎないかどうかという点を重視します。
- 著作権のある著作物の性質・・・主に事実に基づく作品のコンテンツを利用する方が、完全なフィクション作品を利用する場合に比べフェアユースであると認められる可能性が高くなります。
- 著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性・・・オリジナルの作品から引用するコンテンツがごく一部である場合は、コンテンツの大半を引用する場合に比べフェアユースであると認められる可能性が高くなります。ただし、ごく一部の利用であっても、それが作品の「本質的」な部分である場合は、時としてフェアユースではないと判断されることもあります。
- 著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する利用の影響・・・その作品の需要に対する代替品となることにより、著作権者がオリジナルの作品から受けることができる利益を損ねるような利用は、フェアユースであると認められる可能性は低くなります。
Googleにおける削除申請方法
DMCAはアメリカの連邦法ですが、日本であっても著作物が不当に利用された場合にはGoogleの申請フォームよりDMCAの申請をすることができます。これにより、申請が通ればGoogleの検索結果から対象コンテンツが消え、結果的に著作権を守ることにつながります。
オンラインフォームにアクセスします
まずは著作権侵害による削除のページにアクセスしてください。ただし、Googleサーチコンソールにログインした状態でアクセスする必要があります。
必要情報の入力
上図のように連絡先情報の入力を求められます。会社名は任意ですが、それ以外の項目(下記参照)はすべて埋めてください。
- 名前
- 苗字
- 自分が代理を務める著作権所有者(通常は「本人」)
- メールアドレス
- 国/地域
著作権侵害内容の記入
著作権の侵害を受けているURL、内容など詳細を記述してください。ここでは客観的に正しいと判断できるだけの十分な内容の記載が求められます。
- 著作権対象物を特定する情報とその著作物の説明
- 当該著作物が許可を受けて掲載されている場所
- 権利を侵害している著作物の場所
宣誓供述書にチェックと署名をします
最後に次の3点について同意を求められます。内容を確認し、チェックを入れ、署名日と署名(記入)をして、送信することで手続きが完了します。
- 自分が著作権を保有していること
- 内容がすべて真実であること
- 申請内容がLumenに公開されること
Lumenプロジェクトとは
Lumen(ルーメン)とは、ハーバード大学バークマンセンターによるプロジェクトで、さまざまな国際調査機関と連携して、世界中のオンラインコンテンツ削除リクエストに関する情報を提供しています。
LumenにはDMCAに対する削除リクエストの内容が公開されますので、申請時の氏名やリクエスト内容の閲覧が可能です。これにより、誰が著作権を保有し、どのような理由で削除されたのかが明確にわかります。
SNSにおけるDMCAの削除申請
日本ではDMCAはGoogleの削除申請に関わるものと誤解している方もいますが、Googleに限らず著作権問題を扱っています。
そのため、SNSであっても各社、独自の取り組みで削除申請を受け付けています。
Twitterの例
Twitterのヘルプセンターでは知的財産に関する問題のヘルプにより著作権侵害を申請することが可能です。
Facebookの例
FacebookではMetaのデジタルミレニアム著作権法(DMCA)指定代理人に連絡するにはどうすればよいですか。からオンラインフォームに行くことができ、場合によっては指定代理人に直接連絡することも可能です。
Instagramの例
Instagramでも著作権侵害の報告よりフォーム申請が可能です。
DMCAの悪用について
DMCAの本来の目的は著作権の侵害を防ぐものです。しかし、著作権を侵害した側(加害者側)が著作権保有者に対して先行してDMCA申請をすることで、自社に都合の良いように検索結果を操作するという事案が各所で見られます。
DMCAの悪用は明確に著作権を侵害していますのであってはならないことですが、現状では明確な対処法はないため、適切な防衛策を取っておく必要があります。
DMCAの悪用ができる理由
DMCAでもっとも問題になっているのは世界最大のプラットフォームになっているGoogleです。Googleでは削除申請の審査を適宜おこなっていると宣言していますが、50億件近い削除申請があるなかで、1つ1つの審査を完璧におこなうことはむずかしいのではないかというのが実情です。
DMCAはその制度の特徴として、誰でも申請をおこなうことができます。そして、申請を受け取った会社は形式を守っている通知が届けば、本当に著作権を侵害しているかどうかの判断をおこなわずに該当する情報を削除するという形式をとっている節が見られます(これをNotice and Takedown(ノーティスアンドテイクダウン)といいます)。
つまり、申請が嘘であっても審査に通過してしまう可能性があるということです。
DMCAを悪用した事例
DMCAを悪用した事例について有名な事例を2つほどご紹介いたします。
2016年、とある企業の海外への社員旅行で社員が全裸になり警察沙汰に発展した騒動を話題にする記事やtweetが非常に多く出回りました。これに対して、該当企業はDMCAを利用し、記事を削除しました。自社に不利益な情報を隠ぺいした事例です。この企業は後に不都合な情報を削除したとして批判を集めることになります。
2018年、有名ゲームの公式Twitterアカウントが凍結されるという事案が発生しました。Twitter者へのDMCAの虚偽申請により誤った情報が審査を通過した事例です。その際は100万人以上のフォロワーがいるアカウントであったため、大きな騒動に発展しましたが、運営側の動きにより即日、凍結は解除されました。
このように、DMCAは誰でも申請できることから運営側がルールを守っていても被害を受けるケースがありますし、本来の使い方ではない申請をすることで炎上してしまうというリスクがあります。
虚偽DMCA削除申請の予防策
2022年5月時点では、DMCAの不正利用についての明確な防衛策はありません。虚偽の申請に対して異議申し立てをおこなう際に自身が著作権を保有しているということを事前に用意しておくくらいです。
このDMCAへの予防策について、弁護士法人東町法律事務所では次のような予防策を記事にしています。非常に有益な情報ですので、下記に引用いたします。著作権保有者であれば一度目を通すようにしてください。
- イラストであれば、イラストにアカウント名やご自身のサインを入れてアップロードする。
- イラストの作成過程がわかる絵(下絵など)や文章のドラフトなどを残しておき、完成品だけでなく、完成に至るドラフトを保有していることが客観的に示せるようにしておく。
- 定期的にご自身のアカウント画面のスクリーンショットを保存しておき、作品がアップロードされた日時や紐づいているアカウントが明確になるようにしておく。
- Wayback Machine(インターネットのデジタルアーカイブ)に定期的にホームページの情報を保存しておく。なお、Wayback Machineは自動でクローリングした情報も保存されているため、ご自身で情報を保存していない場合でも、過去のホームページの情報が残っている可能性がありますから、異議申立ての裏付けとなる証拠が見つかる可能性があります。
引用:DMCAに基づく削除申立と悪用事例への対応(弁護士法人東町法律事務所)
まとめ