産直ECとは?注目される理由やメリット、人気プラットフォームなど解説
近年、産直ECのニュースが増えています。そのような話題を見聞きして、早速自分でも始めてみたいとお考えではないでしょうか。
産直ECとは?
「産直EC」とはインターネットを使って、生産者が収穫した生産物を消費者に直接販売する形を指します。たとえば、農家が自分で育てた野菜や果物を、インターネットのオンラインショップで直接販売するケースがこれに該当します。
一般的な流通は、商品が生産者から卸売業者を経由し小売店に届き、最終的に消費者が買うという流れです。しかし、産直ECではそういった中間業者がいないため、消費者はより新鮮な商品を手軽な価格で購入できます。生産者も中間業者を通さない分、より多くの利益をえられるというメリットがあります。
参考ページ: EC物販とは?基本概念からメリット、始め方などについて詳しく解説
DTCモデル
DTC(Direct-to-Consumer)とは、生産者や企業が中間業者を介さずに直接消費者に商品を販売するビジネスモデルを指します。産直ECは、このDTCに該当します。
一般的にDTCは商品の価格を抑えることができ、企業と消費者との直接的な関係を強化するといったメリットがあります。近年、農業や漁業だけでなく、多くの業界でこのDTCモデルが採用されています。
海外の産直EC(DTC)
アメリカの農産物市場でも、対面による取引より、オンラインに切り替えたDTCモデルを採用することで収益を増加させる事例が増えています。
特に田舎で農場を営む経営者が大きな恩恵をうけています。オンラインに切り替えることによって、対面販売の制約を乗り越え、地元食材をあらゆる地域に提供できるようになりました。
参考ページ: Could Online Sales Be a Direct Marketing Opportunity for Rural Farms? – ExtensionUniversity
産直ECが注目される理由
近年、産直ECが急速に注目を集めています。消費者と生産者を直接つなげるこのビジネスモデルが、どのような理由で人気を集めているのか詳しく解説します。
新鮮な商品
産直ECでは、消費者が生産者から直接商品を購入するため、新鮮で高品質なものを手に入れることができます。これは中間業者がいなくなったことで、従来より生産者から消費者に商品を届けるスピードが格段に速まったからです。そして、新鮮な食材は、そうでないものと比較して、消費者がおいしいと感じることができるため多くの支持を集めています。
環境への配慮
近年、食の安全性や環境問題、地域の活性化などに対する意識が高まってきており、その要望に応える形として産直ECが注目されています。消費者は中間業者を介さず、生産者から商品を直接購入することで環境にやさしい選択をすることができます。生産者から直接購入すれば、輸送によって生じる炭素排出量を減らすことができるからです。
信頼性
年々、食の安全性に対する懸念が高まっています。そのような背景の中、産直ECが注目を集めるようになりました。産直ECでは商品の産地や生産者が表示されるため、消費者がその情報をもとに購入を決定することができるからです。こういった透明性により、食の安全を求める多くの消費者から支持されています。
産直ECのメリット
産直ECの仕組みは消費者だけでなく、生産者にも数多くのメリットがあります。そこでここでは、生産者側のメリットを整理してお伝えします。
販路を拡大できる
産直ECのメリットには販路拡大があります。特に小規模な生産者にとって、インターネットを利用することで地域や国境を超えて商品を販売できる点は、収益の点で大きな魅力です。地元の市場だけでなく、全国や世界中の消費者にアクセスできるようになり、販売機会が格段に広がります。
この販路拡大は、生産者にとっても消費者にとってもメリットがあります。生産者は新たな市場で販売するチャンスが広がり、消費者は特色のある地域商品を手に入れることができるからです。産直ECは双方にとって有益な仕組みです。
直接、消費者の声を聞ける
産直ECでは、消費者の声を直接聞ける点がメリットとして挙げられます。通常の販売方法では、中間業者が介在するため、生産者は消費者の反応を知ることができません。しかし、産直ECでは生産者と消費者がオンラインでつながるため、商品に対する感想や改善点を直接聞き取ることができます。
消費者の声は、生産者にとって非常に有益なフィードバックといえます。例えば、商品の品質を向上させるための具体的なアドバイスや、新たな商品アイデアのヒントなどをえられる可能性があるからです。また、消費者も自分の意見が生産者に聞き届けられたと実感できれば、それがクチコミや満足度につながります。
認知拡大できる
認知拡大できるというのも、産直ECのメリットです。地元でしか知られていない特産品でも、インターネットで販売することによって、世界中の人々にその存在を知ってもらうことができます。これは、特に小規模な生産者や新規参入者にとって大きなチャンスです。
また、認知拡大は、長期的に見てもメリットが大きいです。というのも、一度商品が評価されると、その評判はSNSを通じて広がり、次第に固定客を築くことができるからです。また、認知度が向上すればメディアに取りあげられる機会も増え、さらなる販路拡大やブランド力向上なども期待できます。
産直ECのデメリット
産直ECには数多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。そこでここでは、デメリットについて整理してお伝えします。
本業以外の仕事が増える
産直ECのデメリットは、本業以外の作業が増加することです。オンラインで商品を販売すると、ECサイトの制作・管理、商品の梱包や発送、そしてお客様からの問い合わせ対応など、多くの追加業務が発生します。これは、特に小規模な生産者にとって、負担が大きいといえます。
収穫量によっては信頼を失う可能性も
農作物などの収穫量は安定しないため、定期便などで商品を販売する場合、注文された分の収穫量を確保できず、お客様から信頼を失うことがあります。
通常、収穫物は気候などによって変動します。例えば、晴れた日が多ければ収穫量が増え、逆に雨が多いと減少するなどのことです。しかし、こういった見通しを立てることは困難なため、商品を安定供給できず、固定客を失ってしまうこともあります。
在庫管理が困難
農作物などの収穫物は通常、日持ちしないことが多いです。そのため、在庫管理が非常に困難です。たとえば、野菜や果物は長期間保管すると腐ってしまい、それを避けるためには在庫を最小限に抑える必要があります。しかし、在庫が少なすぎると、注文が入った際に販売できないという問題が発生します。
産直ECプラットフォームの仕組み
産直ECプラットフォームとは「産地直売・直送」をインターネットでおこなうための仕組みです。生産者はこのプラットフォームに商品を出品し、消費者はそれをオンラインで注文できます。
この産直ECプラットフォームの特徴は、商品が生産者から直接消費者に送られる点です。つまり、一般的な小売りとは違い、中間業者が介在しないので、商品の鮮度が保たれやすく価格も抑えられます。
消費者は生産者の情報を確認して購入することができるので、透明性が高く、信頼性も高いです。このような仕組みで、産直プラットフォームは運営されています。
代表的な産直ECプラットフォーム
産直で商品を購入したい消費者が増えたため、「産直ECプラットフォーム」も増加しています。プラットフォームごとに特徴がありますので、ここで代表的なものを取りあげ解説します。
食べチョク
参考ページ:食べチョク
「食べチョク」は、日本全国から厳選された7,500軒以上の農家や漁師が参加する産直通販サイトです。一般的なスーパーや市場を通さず、生産者から直接新鮮な農作物や花、魚、お酒などを購入できます。2023年時点で、45,000点以上の個性豊かな商品が出品されています。最大の特長は、収穫から最短で24時間以内に商品が手元に届くという鮮度の高さです。
出品者、つまり農家や漁師にとっても食べチョクには多くのメリットがあります。1つは、送料が大幅に安くなる独自の契約があることです。これで、出品者は間接費を減らすことができます。
また、収穫量が天候や季節によって変わる生産者の事情を考慮し、固定費がかからない点も魅力的です。仮に、トラブルが起きた場合には、食べチョクスタッフが仲介してサポートをおこなってくれます。
ポケットマルシェ
参考ページ: ポケットマルシェ
「ポケットマルシェ(ポケマル)」は、日本全国の農家や漁師がオンラインで食材を販売するプラットフォームです。消費者は、専用アプリを使って食材を注文でき、生産者と直接コミュニケーションを取ることが可能です。
ポケットマルシェに出品する際にも、すべての業務をスマートフォンで完結できるので非常に手軽です。伝票は自動で作成され、顧客管理の手間も省けます。また、固定費は無料で、売れた分だけ手数料が発生するため、販売リスクが低く、安心して出品することができます。
ギョギョいち
参考ページ: ギョギョいち
「ギョギョいち」は日本全国の漁師と消費者をつなぐオンライン通販サイトで、JF全漁連(全国漁業協同組合連合会)が運営しています。
WEBサイトでは旬の魚を産地直送で販売しています。漁師が特に自信を持っておすすめする魚は「プライドフィッシュ」として販売することができます。プライドフィッシュとは、全国的にあまり知られていない地元特有の魚などが該当します。このようにギョギョいちでは、お客さんを楽しませる仕組みを整えています。
産直アウル
参考ページ: 産直アウル
「産直アウル」は日本全国の農家や漁師など1,500軒以上と提携した、大規模な産直ECサイトです。このWEBサイトでは6,500種類以上の食材が扱われており、生産者が収穫してから最短で翌日に消費者の元へと届きます。ユーザーはレビューを確認したり、コミュニティ機能を利用することもできます。
産直アウルは、珍しい野菜や賞を受賞したフルーツなどを豊富に取りそろえています。
出品者は、最短で5分で商品を登録でき、特別な伝票の用意も不要です。そして「アウル配送」と呼ばれる配送システムを利用すれば、配送料を最大で50%削減できます。また、市場に出回らない規格外や訳ありの食材も販売可能で、生産者にとって嬉しい仕組みが用意されています。
JAタウン
参考ページ: JAタウン
「JAタウン」は全国農業協同組合連合会(JA全農)が運営するオンライン通販サイトです。「おいしい日本と暮らそう」というテーマのもと、全国47都道府県のJAグループ関連ショップが出店しており、旬の農畜産物や地域の特産品を販売しています。
食材に対する安全性も高く、残留農薬検査や放射能検査が徹底しているため、消費者は安心して購入できます。
出店する際には1ショップにつき1人のコンサルタントがつくため、不安や不明点をすぐに解消できます。さらに、ショップページのデザインやオンライン操作の研修も無料で提供されるため、ECに不慣れな出品者でも安心です。JAタウン事務局のサポートを受ければ、最短1か月でショップをオープンすることが可能です。
産直ECのよくある質問
ここでは、産直ECについてよくある質問を取りあげ解説します。
Q:ファーマーズマーケットとの違いは?
Answer)ファーマーズマーケットは、農家などの生産者が直接消費者に商品を販売する市場やイベントのことです。消費者は新鮮な野菜や魚などを直接生産者から購入することができ、生産者も中間業者を介さずに商品を販売できます。
産直ECも基本的には同じ仕組みですが、これがインターネットを介しておこなわれる点が異なります。産直ECは地理的な制約が少なく、全国、場合によっては全世界の消費者に商品を販売することが可能です。
Q:発送は自分でおこなう必要がありますか?
Answer)多くの場合、生産者自身が商品の発送をおこなう必要があります。ただし、一部のプラットフォームでは発送代行サービスを提供していることがあります。
このサービスを利用することで、生産者は商品を指定された場所にまとめて送るだけで、あとの発送作業はプラットフォーム側が代行してくれます。梱包・発送をおこなえる環境や人材が不足している場合、検討してください。
Q:購入者とトラブルが発生したら?
Answer)トラブルが発生した場合の具体的なサポートは、プラットフォームごとに異なります。プラットフォームによっては、トラブルに対するガイドラインや解決策をFAQページにまとめてくれています。出品を開始する前に各プラットフォームのサポート体制やトラブルの対応方針をしっかり確認し、出品するかどうか検討してください。
Q:商品の魅力をどう伝えたらいいですか?
Answer)多くの場合、商品詳細ページには、写真や詳しい説明文を掲載することができます。例えば、生産過程の写真やビデオ、生産者のコメントなどを掲載することで、商品の魅力や特徴を伝えることができます。
特に一番のアピールポイントとなるのは写真です。高解像度でクリアな写真を掲載し、商品の色や形などがはっきりと分かるように撮影してください。
Q:出品に必要な資格や条件などはありますか?
Answer)一部の産直ECプラットフォームでは、有機栽培や特定の認証を持っている生産者のみが出品できるという条件を設けている場合があります。具体的な条件はプラットフォームによって異なるので、詳細は事前に確認してください。
まとめ