顧客体験(CX)とは?向上のポイントや事例を徹底解説
近年インターネットやSNSの普及により企業と顧客の接点が増え、「顧客体験」の注目度が高まっています。商品やサービスそのものだけでなく、顧客とのあらゆる接点において優れた価値を提供することが、これからのビジネスを成功に導く一助として重要視されているのです。
顧客体験(CX)とは
顧客体験(CX)とはカスタマーエクスペリエンスとも呼ばれ、顧客が商品やサービスに興味を持った段階から、その商品やサービスを利用し続ける間に触れるすべての感情や体験を指します。
例えば商品をWebサイトで購入する際、商品に興味を持つきっかけとなる広告の好感度、購入時のWebサイトの見やすさ、商品そのものを利用して得る価値や満足度、アフターサポートのきめ細やかさまで、顧客と企業の一つひとつの接点(顧客接点)すべてで得る価値の集合体が顧客体験です。
それぞれ独立した顧客接点におけるサービス向上だけでなく、部門を超え、一貫して高品質なサービスを提供することが求められているのです。CXはよく似た概念であるUXやDXと混同されやすいため、まずは基本的な概念を整理しましょう。
なぜCXを高める必要があるのか?
CXが大切なのは頭ではなんとなく理解している方も多いでしょうが、具体的に重要な理由を把握していない方もいるでしょう。そこで企業がCXを高める重要性について3つ紹介します。
認知を獲得しやすくなる
CXを考えるにあたって「多くの顧客から自社商品を認知してもらう」こと、すなわち認知を獲得する方法について考えます。販売する瞬間だけでなく、認知獲得まで綿密に設計できれば、現状を打開して売上を伸ばすことも可能になります。
かつてインターネットが発達していない時代では、テレビや新聞など、認知拡大の方法はある程度限られていました。しかしインターネットやデジタル技術の発達した現代においては、インターネット広告やSNS、デジタルサイネージなど、リードから認知を獲得する機会が増えています。
そこでCXを考えるうえで、単に販売するだけに着目するのではなく「どのようにして認知を獲得するのか?」という戦略を明らかにします。
SNSを運用するのか?インターネットに広告を打つのか?など、どのようにして自社商品を知ってもらうか戦略を練ることは、長期的に企業活動を継続するのに必要不可欠です。
リピート客を獲得しやすくなる
CXを高めるには、単にモノ・サービスを販売するだけでなく、その後の顧客との接点も重視します。商品販売後の顧客とのつながりをつくれると、リピート客を獲得しやすくなります。
マーケティングを考えるうえで、商品を販売してそれで終わりではありません。商品の販売後にも、たとえば次のような顧客との接点があります。
<商品販売後の顧客との接点>
- 商品の使い方がわからない顧客のアフターサポート
- アプリのクーポン発行
- SNSの情報発信
- メルマガ配信 など
このように販売後の顧客とのつながりを強化できれば、リピート客を生み出しやすくなります。リピート客は自社商品に価値を感じている証なので、比較・検討の段階において、優先して選択するようになるのです。
顧客獲得単価が下がる
顧客体験が向上すれば、必然的に自社の評判は上がることになります。よい評判を獲得できると顧客自ら自社商品を求めるようになるので、広告費を下げながら顧客を獲得できるようになります。つまりCXの向上は、顧客獲得単価を下げることにつながるのです。
現代社会は「評判社会」と言われるほど、企業の評判・口コミが非常に大切です。実際にスマホが発達した現代においては、商品を購入する前にインターネットやSNSで情報を収集しています。
CXを高めるにあたって「顧客にどうやって簡単に自社のことを知ってもらえるか?」「どうやって顧客にとって快適に商品を購入してもらえるか?」「商品購入後も顧客に手厚いサポートを提供できるか」などを綿密に設計します。
そうすると評判は高まっていき、商品が顧客を呼ぶような状態をつくり出せます。このようにCX向上は顧客獲得単価の低下にもつながるので、広告費の高騰や成果が出ないことに頭を悩ませている企業は、一度顧客体験の流れを見直してみるのがおすすめです。
CXとUXの違い
UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、ユーザーが商品やサービスそのものに関する利用を通して得る体験のことです。例えばマッサージ機を購入した場合、「マッサージ機のデザインが美しく満足した」「使用感が気持ちよく、肩こりが解消できた」など、実際にマッサージ器を購入したことで得た体験や感情がUXです。
これに対しCXは、「購入時のWebサイトがきれいで分かりやすかった」「マッサージ器を使用して満足感を得た」「故障した際のアフターサポートが素早かった」など、それぞれのUXを総合した購買プロセス全体での体験を指します。CXは広範囲のUXを包括するものであると捉えると分かりやすいでしょう。
CXとDXの違い
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業がデジタル技術を活用することによって、サービスやビジネスモデルを向上する変革のことです。DXとCXは、DXの推進によってCXを向上させるといった手段と目的の関係にあります。
DXによって製品購入時に得た顧客情報をデータベース化し、アフターサポートの際の情報共有を円滑にしたり、顧客のニーズを掴んで新たな製品を提案したりといったことが可能になれば、顧客体験(CX)の改善につなげることができるでしょう。モノも情報もスマホ1台で手に入る現代では、CXの向上にデジタルやデータの利用が不可欠なのです。
顧客体験が注目される背景
顧客体験が重要視される以前から、ユーザーアンケートなどをもとに顧客満足度を評価し製品価値を高めていく考え方は、マーケティング業界において重要な手法のひとつとされてきました。しかし、なぜ近年急速に顧客体験が取り上げられるようになってきたのでしょうか。以下に4つの背景を解説します。
SNSなどのタッチポイント数の増加
まず一つ目の要因として、企業と顧客とのタッチポイントが増えたことが挙げられます。
急速なIT化やスマホ・タブレットなどの普及により、企業と顧客とのタッチポイントは以前よりもはるかに増加しています。特にInstagramやTwitterをはじめとしたSNSの発達は顕著で、新たな顧客の獲得には従来型の広告のような企業からの一方向の発信だけでなく、個人がSNSで発信する口コミが大きな影響を及ぼすようになりました。
これまで企業が発信する情報や実際の店舗での体験を通して感じていたことも、今ではWebやSNSから得る情報によって先にイメージが固まってしまいます。オンライン上でのタッチポイントを含め、顧客体験全体を通しての印象を高めることが企業のブランドやイメージアップ戦略に欠かせないものとなっているのです。
データ活用技術の発展
マーケティングに携わるデータ活用技術の進化も顧客体験に大きな影響を及ぼしました。
技術の発展により、これまで把握が難しかった顧客の属性や居住エリア、他製品の購買情報、購買のきっかけとなった広告など様々な情報を取得できるようになり、分析につなげることが容易となっています。
顧客ごとに詳細な情報を集めることでより顧客の求める商品や接客を提供し、あらゆる顧客体験において最適な対応が実現できるかが、他社に対する優位性を得るポイントとなってきています。
モノよりコト消費に重きが置かれている
モノがあふれる現代では、コト消費と呼ばれる体験を対象とする消費活動がメジャーとなりました。商品そのものの「所有」よりも、それによって生じる「体験」を大切にしたいという考え方は、まさに顧客体験そのものが商材とも言える価値観です。
また、20代を中心にSNSへ投稿する写真や動画を撮影することを目的とした行動も増加しています。特に外食や旅行などの産業でこの傾向が顕著で、SNSで自らの体験を公開して「いいね」やコメントを得ることでの満足感は「コト消費」に拍車をかけます。
さらに、近年ではハロウィンやフェスなど、その瞬間・場所でしか体験できない「トキ」を楽しむことに価値観を見出すなど「コト消費」から「トキ消費」への欲求にシフトしてきています。このような消費のトレンドの移り変わりも、顧客体験の重要性を位置付ける要因となっているのです。
サブスクリプションの普及
モノの所有にこだわらない価値観の変化やデジタル技術の進化を背景に、サブスクリプションサービスが普及しています。映画や音楽はもちろん、ファッション、車、家具、旅行や外食に至るまで、様々な商品やサービスでサブスクリプションが利用されるようになりました。
購入に比べ少額から始められるサブスクリプションは新たな顧客の参入ハードルを下げる反面、優れた顧客体験を提供しなければすぐに離脱されてしまうリスクがあります。これにより、企業は顧客体験を向上させることがますますの課題となっています。
顧客体験を向上させるポイント
では、実際に顧客体験を向上させるにはどのような施策を行えばよいのでしょうか。効果を最大限に上げるためには以下のようなステップで取り組みます。
現状分析
まず初めに取り組むべきは、現状の把握と分析です。現在の商品・サービスにおける顧客とのタッチポイントを徹底的に洗い出し、時系列に沿って整理していきましょう。「カスタマージャーニーマップ」と呼ばれる時系列での顧客の行動、思考、感情などを視覚化するマップを作成すると、顧客体験を把握しやすくなります。
例えば、洋服を購入する際に顧客がたどるプロセスは次のような5つのステージに分けることができます。
- 認知、興味・・・Webや雑誌の広告、SNSなどで商品を目にし、興味を持つ
- 比較検討・・・Webサイトなどで情報を収集する、他社との比較や、購入の検討を行う
- 来店、試着・・・店舗に足を運んで商品に触れる、接客を受ける
- 購入・・・決済を行い、商品を購入する
- 購入後・・・商品を着用、返品交換対応、次回利用の案内などを受ける
ここでは、顧客の目線に立って項目をピックアップすることが重要です。また、全体を俯瞰することで、今まで見えなかった課題の発見が容易になります。
課題分析
現状の顧客体験が把握できたら、それぞれのタッチポイントにおける課題を分析します。その時々の顧客の要望に寄り添えているか、顧客の期待を上回る価値を提供できているかなどを考慮しながら課題を探りましょう。
この段階では、サイトのアクセス解析や顧客アンケート、ソーシャルリスニングなど幅広い角度から顧客の声や感情を拾い上げ、課題の分析に活用します。
また、NPS (ネットプロモータースコア)と呼ばれる指標を用いて、今後商品やサービスを人に薦めたいかどうかといった観点から課題を設定することも重要です。単なる顧客満足度の向上にとどまらず、プラスアルファの価値を提供することが顧客体験の向上に繋がります。
改善するKPI設定
続いて、課題を改善するためのKPI(重要業績評価指標)を設定しましょう。KPIとは、事業目標に到達するために実行するべきプロセスの達成度合いを評価する指標です。目標に対して適切なKPIを設定することで、抽出した課題を解決するために個人個人が取るべき行動が明確になります。
ここでもNPSは重要な指標のひとつです。このほかにも、例えばWebサイトでの離脱が課題になるのであれば、平均ページビュー数やCV率、カゴ落ち率など具体的な数値目標の改善を目指します。具体的な数値目標があれば、そこに向けて何が効果的か、効果的でないかの検討がしやすくなります。
仮説検証などのPDCA実施
特定した課題を改善するための仮説検証を繰り返します。具体的なアクションを実行しながらデータを集め、その都度KPIを修正していきましょう。顧客体験を向上させる施策に対する効果は、明確な数値では測りにくい部分もあります。ここでも実際の顧客の声を拾い上げて、施策がどのように作用しているかを確かめることが大切です。
どのような施策でも一朝一夕で成功することはありません。PDCAサイクルを回しながら少しずつ軌道修正し、新たな改善策を実行していくことが求められます。
全社で課題に取り組む
顧客体験を向上させるには、部門を横断して全社で取り組む必要があります。広告、Webサイト、店頭、商品、アフターサポートなど、商品やサービスに関わるすべてのタッチポイントでどこかひとつでも顧客の期待を裏切ることがあれば、顧客体験全体の満足度が下がってしまうからです。
開発部門独自の取り組みで商品の価値を高めたとしても、顧客体験向上の効果は限定的です。全社を挙げて取り組むためには経営層がビジョンを策定し、課題解決に向けた意識をすべての部門で共有することが重要です。
現代のCXではインバウンド営業が可能
CXでは、認知獲得の手段も綿密に分析し、多くのリード客に自社商品を知ってもらうことを重視します。先ほど延べたとおり、かつて認知を獲得する方法は限られていました。営業も「アウトバウンド営業」が主流でした。訪問営業や電話営業など、企業自らが顧客にアプローチし、営業する方法です。
一方で現代では、認知を獲得する方法も多岐にわたり、また営業の手法も「インバウンド営業」を実践する企業も増えています。インバウンド営業とは、顧客自ら企業に問い合わせる営業手法のことです。
インバウンド営業には、たとえば「オウンドメディアでコンテンツマーケティングを実施する」や「SNSで情報を発信する」などの方法があります。営業に回すリソースを減らせるため、CX向上を意識したい場合インバウンド営業の導入も検討してみましょう。
CXの一連の流れ
CXとは、商品の認知から購入後のアフターサポートまで、企業と顧客のあらゆる接点を指しています。そこで、顧客体験の一連の流れについて紹介します。
商品・サービスを認知する
生活や企業活動になんらかの困りごとをもった見込み客は、課題を解決できる商品・サービスに関心を寄せるようになります。そのような見込み客にインターネットやSNS、広告などで商品を知ってもらうと、この見込み客は製品に興味をもち始めます。
この見込み客は商品・サービスのことをより知りたいと考えるため、そこに企業が愛的な形で情報を提供できると、次に比較・検討の段階に入ります。
商品・サービスの認知段階で企業が顧客と接点をもつには、次のような方法が考えられます。
<顧客に商品・サービスを認知してもらう方法>
- テレビやラジオ、新聞などの広告
- リスティング広告やディスプレイ広告などのインターネット広告
- TwitterやInstagramなどをSNS
- オウンドメディアやペイドメディアなどのメディア
- 郵便や電話などの営業 など
このように、認知獲得の段階で企業と顧客が接点をもつにはさまざまな方法があります。そのため決して限られた方法にとらわれるのではなく、複数の手段を検討するのが重要です。
比較検討する
商品・サービスに興味をもち始めた見込み客は、次に比較・検討の段階に入ります。同じような商品・サービスのなかで価格や商品内容を比較し、どれを購入するのか検討します。
比較・検討の段階で企業に大切なのは、競合他社と差別化することです。差別化する方法は、単に価格を安くするだけではありません。商品の見せ方や商品力、ターゲット層の明確化などによってオリジナリティを出すことで「自社商品だから顧客が購入する」という状態をつくれるのが理想です。
商品・サービスを購入する
比較・検討を終えて顧客が自社商品を選んだ場合、ついに商品・サービスを購入してもらえることになります。ちなみにご存じのとおり、商品・サービスの購入はオフラインに限らず、オンラインで購入してもらうことも可能です。
オフライン・オンラインのどちらか、あるいは両方で売るかは、市場環境や商品の特性などによって異なります。ただCX向上の観点で大切な点は「顧客にとって快適な方法で商品・サービスを提供すること」です。
多くの企業や店舗では、商品の販売方法が固定概念にとらわれており、柔軟な考えをもつのが難しくなっています。1つの販路にとらわれることなく、オフライン・オンラインの両方で最適な商品・サービスの提供方法がないか、常に考えるようにしましょう。
商品・サービスを利用する
CXの観点から見ると、商品・サービスを売ったらそれで終わりません。商品・サービスを利用する顧客体験の価値を向上させることも、CX向上の一環となります。
商品・サービスの利用を考えるうえで、見るべき視点は次のとおりです。
<商品・サービスの利用シーンで見るべき視点>
- どのようなシチュエーションで利用するのか
- どのような目的でその商品・サービスを利用するのか
- どのような機能・オプションなどがあれば便利か など
商品・サービスをより快適に利用してもらうことで、顧客体験の価値を向上させることが可能です。顧客体験の価値が向上すれば、次に商品・サービスを購入する時の「比較・検討段階」で、自社商品を優先的に選んでもらえるようになります。
つまり商品・サービスを利用満足度を上げれば、自社のファンをつくれるのです。
購入後のアフターサポート
先述したとおり、購入後のアフターサポートもCXの一環です。購入後も顧客とよい関係を築けることで、リピート客を生むことにもつながります。
商品・サービス販売後のおもなアフターサポートは次のとおりです。
<商品販売後の顧客との接点>
- 商品の使い方がわからない顧客へのアフターサポート
- 商品が故障した際の修理窓口
- お問い合わせ対応 など
このように商品・サービスを提供したあとのアフターサポートに力を入れられば、顧客は自社商品に対してよい印象をもちます。リピート客を生み出せると、無駄な広告費を打つのを減らせるようになります。
顧客が安定して定着せず、新規の顧客獲得にリソースを割いてばかりいる企業は、一度アフターサポートの視点から自社の課題を洗い出してみるのもおすすめです。
CXを高める具体的な手順
CX(顧客体験)の価値を向上するための具体的な手順について紹介します。
顧客の声を集める
CXを高めるにあたって、まずは顧客体験を言語化する必要があります。そこで大切なのは、顧客の声を集めることです。顧客の生の声を聞き、どのような点で顧客体験にプラスになっているのか、またどのような点が課題なのかを明らかにします。
顧客の声を集めるには、次のような方法があります。
<顧客の声を集める方法>
- インターネット調査
- 電話調査
- アンケート
- 郵便調査
- インタビュー など
このように顧客の声を集める方法は多岐にわたります。また顧客の声を集める際は、なるべく自社商品を利用した消費者の意見を集めるようにしましょう。
たしかに自社商品を利用したことのない消費者の意見を取り入れるのも重要です。一方で、自社商品を利用したことのない消費者には偏見があるケースもあり、正確なデータを集められない懸念もあります。
そこで顧客の声を集める際は、なるべく自社商品を使ったことのある消費者の情報を取り入れるようにしてください。そのほうがより客観的で、より正確な情報を集めるのに役立ちます。
自社や商品・サービスと相性のよい顧客の声の集め方を選定し、実行するように意識しましょう。
顧客の声をもとに仮説を立てる
顧客の情報を集めたあとは、それをもとに仮説を立てます。PDCAでいう「PLAN」の部分です。よりよい顧客体験を提供するために「どのような施策を実行すればいいのか」を綿密に考えます。
たとえば「とある和菓子を購入したものの、家から遠くて手に入れるのが難しかった」という顧客の声があったとします。そうすると、次のような仮説が考えられます。
- 遠方からわざわざ購入してくれるというのは、商品に満足している可能性は高い
- 地方の外れた場所にあるので、買いたいけど来店できない機会損失が発生している可能性が高い
- オフラインのみで販売しているが、オンラインで商品を発送できれば機会損失を補えるかもしれない
- 売上は順調なので、利便性の高い場所に2店目を出店してもいいかもしれない
このように得られた顧客の声から、あらゆる仮説を立ててみましょう。なお、現段階で仮説が合っている必要はなく、この仮説を立てる行為が大切になります。仮説を立てることで、自社の課題を洗い出しやすくなるのです。
仮説を実行してフィードバックを得る
先ほど立てた仮説を、実行に移します。実践してみて得たデータや経験などを集計し、仮説に対してどれほどの結果を得られたのかを明らかにしましょう。
立てた仮説に対して予想以上の成果を得られることもあれば、思ったように結果が出ないケースもあるでしょう。そこでこの実行をそのまま放置せず、あとで振り返り、また改善する機会を設けるようにしましょう。
そして振り返りや改善によって得られた結果と合わせて、最初の「顧客の情報を得る」ことを忘れないようにしましょう。振り返りや改善では主観的な意見が入ることも多いですが、自社商品を利用した顧客の声は客観的で、往々にして正しいことが多くなっています。
顧客の情報を得たあとは、また仮説を立てる→実行の繰り返しです。この流れを何度も繰り返すことで精度を上げていくことで、より満足度の高い顧客体験を提供できるようになります。
顧客体験を向上させるマーケティング事例
ここからは顧客体験向上のための施策に取り組み、実際に業績をアップさせた成功事例を紹介します。具体例をもとに自社商品に応じた施策を策定する参考にしましょう。
事例1: オムニチャネル戦略
ファッションブランドを展開する企業では、実店舗・ECサイト・その双方を利用できるアプリでのシームレスな購買体験を提供しています。ECサイトで購入した商品を実店舗で受け取ることで送料を無料とし、ユーザビリティの向上を実現。同時に店舗への送客にもなり、ついで買いを誘う仕掛けとしても効果を発揮しています。
オムニチャネル化によって、店舗とECサイト双方から顧客の行動データを集積することができるため、顧客に対するより細かな分析が可能となります。また、集めたデータを顧客一人ひとりの好みに合わせた商品の案内や、購買頻度に合わせた施策の立案に活用することもでき、さらなる顧客体験の向上を目指せるでしょう。
事例2: ECサイトのカゴ落ち改善
ECサイトでのカゴ落ちに焦点を当て、顧客体験を向上させた事例もあります。この企業ではカートページを表示したままポップアップで「よくある質問」を表示することで、ページを遷移せずに疑問を解消する手法を導入し、スムーズに購入へつなげることが可能になりました。送料や支払方法、返品ルールなどをその場で確認できることで、顧客のストレスを和らげることに成功したのです。
また、購入金額時応じて送料が無料になるしくみを利用し、「あと○円の購入で送料が無料になります」というメッセージを表示することでカゴ落ちを防止した事例もあります。いずれも顧客目線に立ち、求める情報を適切なタイミングで提示することが改善のカギとなっています。
事例3: チャットボットの活用
ネット通販事業を行う企業では、ユーザーと自動的に会話するプログラムであるチャットボットを設置しました。
有人窓口での問い合わせは営業時間が限られるため、すぐに回答がもらえない場合があります。人を必要としないチャットボットであれば、顧客の抱く疑問をタイムレスで解消でき、利便性をより高めることが可能です。
チャットボットでは、チャット上で質問を選択または入力すると、キーワードをもとにあらかじめ用意された回答文のなかから適切な答えを提示します。さらに、この企業ではチャットボットにキャラクター設定を加えることで親しみやすさと対話性を高め、問い合わせ比率の増加を実現しました。約600種類の回答文を用意して様々な質問に対応しており、今では問い合わせ数の約半数をチャットボットが占めています。
まとめ