アトリビューションとは?仕組みやモデルからメリット、始め方などを解説
デジタルの仕組みが高度に発展するにつれて、デジタルマーケティングそのものがどんどん複雑になってきます。2010年からSEOやリスティング広告を中心に、twitter、Facebook、Instagram、TikTokなどのSNS、MA、CRM、SFAなどのDXソリューション、AIなどの分野まで、デジタルの世界は拡大し続けています。
その結果、ユーザーの行動や導線が劇的に多様化し、コンバージョンに至る成功要因が不明瞭になっていきます。デジタルマーケティングにおいて成功要因からノウハウを生み出すことは、事業の大きな収益の軸を作ることに繋がります。
アトリビューションとは
アトリビューションとは、直接的な結果以外の、過程を含めた要素を分析し、結果の原因を探ることを指します。アトリビューションとは、「間接効果」とも呼ばれ、直接的な原因などからより以前のプロセスに視点を戻し、間接的な要素から、成功に対する貢献度を計測します。
スポーツで例えるなら、逆転ホームランや逆転シュートを決めた選手のパフォーマンスを原因とするのではなく、そのプレーをアシストしたプロセスや、試合そのもの流れ、試合までの準備、ベンチでのチームワークなど、様々なものから、結果に対する寄与や貢献度を割り出していくことが、アトリビューションです。
デジタルマーケティングにおけるアトリビューションとは、ユーザーの初期的な行動からコンバージョンまでをまでの幾つかのプロセスに区切ります。そして、そのプロセスを評価、分析することで、成功に対するより点ではなく、線として分析することができます。
アトリビューションの仕組みとモデル
定義や意味を聞くだけでは、非常に曖昧なイメージがあるアトリビューションですが、具体的な以下の5つのモデルが存在します。
- 終点モデル(ラストクリックモデル)
- 起点モデル(ファーストクリックモデル)
- 線形モデル(リニアモデル)
- 減衰モデル
- 接点ベースモデル
以下、説明します。
終点モデル(ラストクリックモデル)
終点モデルとは、ユーザーが最後に見た広告やページのみを重視する方法です。例えば、(1)オーガニック検索からのブログ閲覧、(2)SNSのフォロー、閲覧、(3)メルマガ登録、(4)ランディングページでの購入といった接点を経た場合、ランディングページの分析のみに重点を当てる手法です。
最後の終点のランディングページの訴求性等が、コンバージョンを直接的に決め、残りの接点はコンバージョンそのものに貢献はしていないと見なします。分析の中では、最も従来から行われているベーシックなモデルで、アトリビューションを意識せずに行っているデジタルマーケターも多く存在します。
競合性が低く、ニッチなB to Bの分野でデジタルマーケティングを行っている場合等は、終点モデルが効果的です。
起点モデル(ファーストクリックモデル)
起点モデルとは、コンバージョンに対して、ユーザーの最初の接点のみを重視して分析する方法です。(1)インフルエンサーへのSNSのフォロー、閲覧、(2)インフルエンサーによる広告投稿、(3)自社ECへのランディング、閲覧、(4)モールでの購入となった場合、最初の接点に分析の焦点を当てます。この場合、インフルエンサーの選定こそが、コンバージョンへの貢献度だと分析できます。
通販業界などは、競合性が高く、終点の訴求性がどこもハイレベルであり、こうした起点に着目することで、成果の改善が期待できます。
線形モデル(リニアモデル)
線形モデルとは、ユーザーがコンバージョンするに至る最初の接点から終点までをどれも平等に分析する手法です。経路が4点ある場合、25%の割合で、各接点がコンバージョンに寄与したと考えます。
各接点である程度のユーザー離脱が起こる場合などには、効果的な成果へ結びつけることができます。
減衰モデル
減衰モデルとは、接点が終わりに向かうにつれてコンバージョンへの寄与が大きく割り振る手法です。最初の接点から終点までの経路が5つある場合、10%、 15% 20%、25%、30%と終点に向かってスコア付けします。
オーガニックなSEO流入やユーザー別に行動分析に差の出にくいメールマガジンからの流入が起点となり、そこから施策を盛り上げていく場合、こうした減衰モデルの分析が最適になると言えます。
接点ベースモデル
接点ベースモデルとは、最初の接点と最後のコンバージョンした接点の貢献度を高くスコア付けする分析方法です。途中の接点は品質が固定的で、最初と最後の接点に変動性がある場合は、この手法が最適です。
例えば、最初の接点がオウンドメディアの記事の場合、ユーザーが検索したキーワードの内容や記事の質によって、最後の接点が複数のデザインパターンを抱えるランディングページといったような場合です。
アトリビューションモデルは、提供しているツールによって、その詳細やタイプが異なります。例えば、Adobe Analytics でのアトリビューションの場合、前述した5つのモデル以外に、U字型、J字形、逆J形、パーティシペーションといったような種類が存在します。
アトリビューションのメリット
結果に対して段階的な各プロセスから、間接的な寄与を吟味するアトリビューション分析には、以下の3つのメリットがあります。
- 細かい成功パターンがノウハウ化できる
- マーケティング効果を最大化できる
- マーケティングコストが最適化できる
以下、説明します。
細かい成功パターンがノウハウ化できる
アトリビューションの最もパワフルなメリットは、デジタルマーケティングにおける詳細な勝ち筋を抽出し、その施策だけにコミットすることができるという点です。成功パターンのみに特化した施策を打つことができれば、スピーディーに取り組み、予算をより多く投資し、短期的に大きなリターンを得ることができます。
参考:ネット広告の仕組みとは?ネット広告の種類や有効な運用方法を紹介
マーケティング効果を最大化できる
コンバージョンの周辺を分析するだけでは特定できずにデジタルマーケティングに行き詰まるというリスクを減らすことに繋がります。そのため、施策の改善の際にアトリビューションを挟むことで、次の施策ではマーケティング効果を最大化させることができます。掛けている広告費が多い場合やオーガニックな流入が多い場合は、アトリビューションの分析対象が増えるため、適切なアトリビューションにコミットすれば、細かい勝ちパターンを発見し、デジタルマーケティングの効果を最大化させることがより期待できます。
参考:マーケティングにおけるデータの重要性や活用手順について解説
マーケティングコストが最適化できる
アトリビューションとは、プロセスから深く見極め、失敗に対する多様な導線を取り除くことに貢献します。その結果、余計な予算を減らすことができ、マーケティングのコストを最適化することができます。総じて、アトリビューションのメリットとは、実際の施策に関する細やかなパフォーマンスを完成させるメソッドと言えます。
参考:CAC(顧客獲得コスト)とは?計算方法やLTVとの関係など解説
アトリビューションのデメリット
アトリビューションのデメリットとは、多くの場合、アトリビューションそのものを行う際の負荷や難易度に由来します。アトリビューションのデメリットは、以下の3つがあります。
- データ収集に時間とコストがかかる
- データを扱うためのスキルが必要
- 分析が無駄になるケースがある
以下、説明します。
データ収集に時間とコストがかかる
アトリビューションは、判断に必要な情報の分野が増えるため、データ収集に時間とコストを要します。また、各プロセスに対して正しいデータ取得の仕方を選定し、正しく分析する必要があります。
参考:データドリブンとは?概要やメリット、実践プロセスなど解説
データを扱うためのスキルが必要
段階的なプロセスから多様な視点で情報を扱うスキルが必要になります。数値から表層的に結論付けるのではなく、ユーザーの行動やストーリーなどを想像する力も必要になります。また、アトリビューションそのものが曖昧性を含んでいるため、自社に合ったアトリビューションを見つけられずに、正しいスキルがそもそも具体化できないなど、データを扱う難しさがあります。
参考:マーケティングに欠かせないデータサイエンスを5つの事例から解説
分析が無駄になるケースがある
そもそもアトリビューションをする必要がないようなマーケティングやプロモーションも存在します。成功原因に対する結果はシンプルなものであれば、アトリビューションを行うこと自体は無駄なコストとなるでしょう。また、アトリビューションをして改善された数値が、アトリビューション自体に掛けたコストが上回れば、アトリビューションは不適切な分析となります。
アトリビューション分析の始め方
アトリビューション分析を実際に始めるには、ツールを導入し、そのツール内の機能で、実際のデジタルマーケティングを改善するというのが、現実的な方法です。実際にアトリビューションを行い、マーケティングへ生かす方法は、以下の8つの工程になります。
- 接点をピックアップし、仮説を立てる
- アトリビューション分析の評価モデルの選定と設定を行う
- 自社な最適なツールを選定する
- 分析の設定を行い、分析を開始する
- 分析結果にもとづき予算配分を改善する
- 仮説検証と改善を繰り返す
以下、説明します。
接点をピックアップし、仮説を立てる
まず、アトリビューションを行いたいマーケティングを選びます。そのマーケティングにおけるユーザーの起点から、途中経路、コンバージョンを全てピックアップしていきましょう。
そうした中で、各接点の予算の使い方やユーザーへの訴求性や役割など、様々なことが浮き彫りになってきます。考察した情報を基に、各経路または、起点から終点までの流れなどに対して仮説を立てます。その仮説が、アトリビューションのモデルを決定付けることになります。
アトリビューション分析の評価モデルの選定と設定を行う
各接点の仮説などに基づいて、既存のアトリビューション分析モデルから、最適なモデルを選定します。モデルを選定した後は、各接点への貢献度を割り振っていきます。多くの場合、全体の貢献度を100%として、各接点の貢献度をパーセンテージで割り振っていきます。広告の特徴や予算などが異なる様々な経路に対して、それに合わせたアトリビューションを複数設定していきます。
自社な最適なツールを選定する
次にアトリビューション分析が行えるツールやサービスを選び、導入します。自社で主に行うマーケティングの特徴に合わせたツールを選ぶのが良いでしょう。また、既存のデジタルマーケティングツールの中で、既に機能として用意されているものや、追加料金で機能を追加できるものがないかなど、幅広い視点でツールの選定を行います。アトリビューション分析は、Google広告やGoogleアナリティクスでも可能です。
アトリビューションツール、もしくは、既に使っているツール内のアトリビューション機能に対してある程度使いこなせるようになれば、実際に分析を行います。
参考:おすすめのMAツールを比較!選び方や製品ごとの機能などを紹介
分析開始し、結果にもとづき予算配分を改善する
ピックアップされた経路における複数のアトリビューションを設定し、分析を開始します。各接点における間接貢献CVなどの分析ツールの結果を確認します。ツールの結果を見れば、それぞれの接点がコンバージョンへどれだけ貢献しているかが理解できます。その後、接点ごとに、コンバージョンを1件獲得するためにかかった費用等を割り出し、予算を割り当てていきます。
仮説検証と改善を繰り返す
アトリビューションを繰り返し、より効果が最大化する最適な費用の割り当ててを繰り返していきます。
アトリビューションに関するよくある質問
Q:アトリビューションとはどういう意味ですか?
Answer)アトリビューションとは、ユーザーがコンバージョンに至るまでに関わったすべての接点から、コンバージョンへの貢献度を計測することです。アトリビューションは、間接効果とも言われ、アトリビューションを行うことをアトリビューション分析と呼ばれます。
Q:アトリビューションの目的は?
Answer)アトリビューションの目的は、コンバージョンに至るまでの各施策の貢献度を可視化し、そこから適切な予算配分を考えることにあります。予算配分の最適化、マーケティング施策の勝ちパターンを明確にすることができます。
Q:アトリビューションの仕組みは?
Answer)ユーザーがコンバージョンに至るまでのプロセスを設定し、そのプロセスから、ツール等の解説データに基づき、どのプロセスがコンバージョンに貢献しているのかを分析し、各プロセスの貢献度を割り出します。割り出された貢献度に対して、実際の広告や予算の改善を行うことで、アトリビューションがマーケティング等の成果へ結びつきます。
Q:Google広告のアトリビューションとは?
Answer)Google広告の中で利用できるアトリビューションの機能を指します。ラストクリック、ファーストクリック、線形、減衰、接点ベース、データドリブンなどのモデルが使用可能です。
まとめ