定性分析と定量分析とは?メリット・デメリットと組み合わせ方法などデータ分析について解説
定性分析と定量分析とは、ビジネスや研究におけるデータ分析の手法です。定量分析(Quantitative analysis)は、数値データを基に行う分析で、客観的な事実を数値化して現状を把握し、課題を特定するために使用されます。一方、定性分析(Qualitative analysis)は、数値化できないデータを基に行う分析で、ユーザーの感情や行動の背景を理解するために使用されます。例えば、WEBサイトのアクセスデータやコンバージョン率は定量分析に適し、訪問者へのインタビューやアンケート結果は定性分析に適しています。
定量分析ではデータを数値化し、その大小を比較することで現状の問題点を明らかにし、具体的な改善策を導き出すことができます。一方、定性分析は数値に反映されないユーザー心理や行動の背景を多角的に判断し、状況を深く理解するのに役立ちます。定量分析と定性分析は、それぞれの強みと弱みを補完し合う関係にあり、両方を効果的に使い分けることで、より精度の高い分析と施策の策定が可能となります。
定量分析、定性分析とは
定量分析(Quantitative analysis)とは定量的な数値データを基に行う分析、定性分析(Qualitative analysis)とは数値化できないデータを基に行う分析のことです。
例えば、WEBサイトではアクセスデータ(ユニークユーザー数、ページビュー数、コンバージョン数、コンバージョン率など)は数値で表せる量的データですので、この数値を基に分析することは定量分的、訪問者へのインタビューやアンケート結果など数値では表せない文字や感情などを基に分析することを定性分析といいます。
定量分析で重要なことは分析したい情報を数値化することです。数値の大小を計測し、数値を大きくしたり、小さくするためにはどうするかを考えるのが定量分析です。必然的に数値化できないことは分析できませんし、反対に数値化できるものはどのようなものであっても定量分析できるということになります。
反対に定性分析は質的データを分析する手法ですので、口コミやユーザー行動などから状況を多角的に判断する分析です。数値に反映されないようなユーザー心理を予測し、状況分析することが定性分析です。
定量分析と定性分析の使い分け
定量分析は客観的な数値データを基に現状の問題点をあぶりだすことができますが、定量分析だけでは起こっていることの背景や理由の特定はできません。また、定性分析はユーザー行動の理由や意見を把握できますが、ユーザーの主観的な意見が多く、改善策として反映するには根拠として不十分であるため検証が必要です。
定量分析と定性分析はお互いに強みと弱みがありますので、定量分析で現状を把握し、問題点の背景を確認するために定性分析を行うというような使い分けが重要です。
定量分析、定性分析のメリット
定量分析と定性分析は互いに補完関係にあるため、片方でできることはもう一方ではできません。数値データで判断できる定量分析は誰が分析してもある程度同じ結果になるはずですが、定性分析は全体を俯瞰して見るため個別具体的な事項では分析者によって判断が変わってくる可能性があります。どちらが良い悪いではなく、状況に応じて使い分ける必要があります。
定量分析のメリット | 定性分析のメリット |
● 結果を数値化できる
● 解釈の差が生じにくい ● 比較的コストを抑えて実施できる |
● 数値では表せないデータを分析できる
● 全体の問題点を俯瞰できる ● ユーザーの心理を施策に反映できる |
定量分析のメリット
定量分析は客観的な事実に基づき分析できるという点がメリットです。数値は誰が見ても同じですので、分析者が共通の認識を持つことができます。WEBサイトであればアクセス数や問い合わせ数のようなKPIを設置しているはずですので、KPIを基に昨年や前月と比較した数値はどうなのか、数値が上下したのであれば原因は何なのか、改善するための施策はどうするのかと落とし込むことができます。
また、感覚的な判断ではなく数値をベースにした客観的事実を基に分析をしていますので、施策の優先度に違いが出たとしても最終的な目的がずれることはありません。課題を共有することは、その後の施策にも影響するため非常に重要です。上司やクライアントを説得する場合にも現状の数値がどうなっていて、将来的な数値がどうなるのかを共有することで進捗確認や現状把握ができます。
定性分析のメリット
定性分析では定量分析ではわからない背景や理由に迫ることができます。数値を目で見て共有できる定量分析は客観的事実を把握するには適していますが、行動や結果の理由や背景までを把握することはできません。また、定量分析は数値を基に分析するため、数値が多ければ多いほど有効な分析ができますが、定性分析はデータの量は必ずしも必要としません。核となる調査ができれば少数であっても判断できるのが定性分析のメリットといえます。
定量分析、定性分析のデメリット
定量分析のデメリットは一定以上のデータ量がない場合にはそもそも分析ができず、分析ができたとしても理由や背景などはまったくわからないことがデメリットです。対して、定性分析は客観的に数値化できないため、調査を行ったとしても分析者の力量によって判断が変わってしまい、結果的に時間の無駄に終わるという可能性がある点がデメリットです。
定量分析のデメリット | 定性分析のデメリット |
● データの量が必要になる
● ユーザー心理や思考は分析できない |
● 分析者による解釈の差が生じる
● 結果を数値化できない ● 時間もコストもかかる |
定量分析のデメリット
定量分析のデメリットはデータには十分な量が必要になるという点です。WEBサイトを公開して間もなくはアクセスも集まりづらいため十分な量のデータがたまりません。必然的に何か月か待つ必要があるのですが、待ったからといって十分な量のデータが揃うとは限りません。仮に、アクセス数が非常に多いサイトであっても数日では曜日ごとの傾向が見えない場合、数週間では月ごとの動きが見えない場合、数か月では季節ごとの動きが見えない場合などがありえます。どのような目的のために定量分析をするか次第ですが、量がたまっていない場合には定量分析はできないと覚えておいてください。
また、数値に表せないユーザー心理についてはまったく対応できないのが定量分析です。ユーザー行動の「なぜ」を明確にするためには定量分析だけではなく定性分析を視野に入れた対応が必要です。
定性分析のデメリット
定性分析はアンケートを基に理由や背景を分析する手法です。そのため、問題の原因を把握することにはつながりますが、客観的ではないデータを基に分析するため、分析者によって判断が変わります。定量分析と比較すると説得力に欠けてしまう点は否めません。仮説を基に施策を打ったとしても、その結果が数値では表しにくいものが多く、結果的に成功要因の特定が難しいというのが実態です。
定量分析の手法
定量分析は数値で表せるデータがあれば、どのようなものでも分析できますが代表的な分析方法には次のようなものがあります。ただし、いずれも一定以上の量が必要になりますので、アンケートを取得して分析する場合には、とにかく数を集める施策が必要です。
- アクセス解析
- ABテスト
- アンケート結果の分析
- POSデータ解析
アクセス解析
アクセス解析として代表的なものにGoogleアナリティクス4やGoogleサーチコンソールがあります。アクセス解析ツールでは訪問者数、閲覧数、問い合わせ率などのデータが簡単に取得でき、期間ごとの比較も容易です。分析結果をもとにコンテンツへの導線を強化したり、SEO強化をしたりすることでサイト改善につながります。
ABテスト
ABテストとは、LPやバナーなどのデザインを複数パターン用意して、一定期間内での成果を比較するテストのことです。ABテストの結果からコンバージョン率を比較することで、もっとも効果の高い施策がどれなのかを特定することができます。
アンケート結果の分析
アンケートには自由記述のものと5段階評価や10段階評価のような数値で表せるものがあります。数値で答えることができるアンケートであれば、ユーザー満足度や意見を数値化して集計することができますので定量分析をすることができます。
POSデータ解析
POSデータ(Point of Sales)とは、販売の際に得られる店舗売上や顧客の購買履歴などのデータのことです。POSデータをモニタリングすることで、商品の売れ行きや購買行動を把握することできます。
定性分析の手法
定性分析は数値に現れない分析手法全般を意味しますので、非常に多岐に渡る手法があります。代表的なものとして次のものを挙げますが、数値化されないものはすべて定性分析の範囲だとご理解ください。
- デスクリサーチ
- ユーザーインタビュー
- ヒートマップ分析
- WEBアンケート
- コレスポンデンス分析
- クラスター分析
- コンジョイント分析
デスクリサーチ
デスクリサーチ(デスクトップリサーチ)とは、インターネット上のサイトやSNSなどにある調査結果や情報を集めて分析する手法です。定性分析に限らず、定量分析でも広く利用されています。コストも時間もかからない手法であるため、最初にデスクリサーチを行い、不足している情報を他の調査で補うというのが通常です。
ユーザーインタビュー
ユーザーインタビューで顧客の生の声を集めて、意見や感想を分析するのは非常によく取られる定性分析の手法です。マイナス意見からは理由と背景を確認することで改善策を導くことができます。1対1でのデプス調査(デプスインタビュー)と複数人を集めて対象者同士の会話からインサイトを見つけるグループインタビューがありますが、どちらも高いインタビュースキルが必要です。
ヒートマップ分析
ヒートマップ分析とは、WEBサイトのどのコンテンツがよく見られているかを色の濃淡で表して分析する手法です。どこをクリックしたか、どこで離脱したかなどを目視確認することでサイトやコンテンツの改善に役立ちます。
WEBアンケート
アンケートで顧客の意見を集め、分析する手法です。アンケートサイトで質問を作成し、報酬を支払って情報を集めることが一般的ですが、短時間で大量のデータを集めることができるため非常によく利用されます。ただし、十分に浸透していないサービスの場合にはアンケートサイトでも情報が集まらないことがありますので、対象が絞られてしまう可能性があります。
コレスポンデンス分析
コレスポンデンス分析とは、アンケート調査のようなクロス集計結果を散布図にして見やすくする手法です。調査データはクロス集計表にすることが多いため、項目が多いと内容を把握しにくい場合がありますが、項目間の関係性を視覚的に分かり易く表現するために、コレスポンデンス分析は頻繁に使われます。
クラスター分析
クラスター分析とは、個々のデータから似ているデータ同士をグルーピングする分析手法です。クラスターの数に決まりはなく、必要に応じて任意の数のクラスターにグループ分けすることが可能です。顧客の属性や商品の特徴など、複数の変数を同時に分析し、似た傾向を持つデータをクラスター(グループ)にまとめることで有為なデータを取ろうという手法です。
コンジョイント分析
コンジョイント分析とは、商品やサービスの特徴を比べるのではなく、特徴をまとめて商品全体の価値を評価することで、個々の要素がどの程度商品の売れ行き等に影響を与えるのかを分析する手法です。
定量分析と定性分析からデータを集める方法
繰り返しですが、定量分析と定性分析は互いに補完関係にあるため、どちらか一方ではうまくいきません。双方を組み合わせて対応することで分析と施策に高い効果を得ることができます。
1.定量分析で課題抽出
まずはアクセス解析のような数値データを基に現状を把握し、改善すべき課題を抽出してください。改善できそうな項目を出し、仮説を立てることが重要です。
2.定性分析で課題の原因を特定
課題の仮説を立てたら、原因がどこにあるのかを定性分析を実施することで特定する作業に入ってください。
3.課題の精査
定性分析を実施することで原因が特定できますが、一度の作業だけで特定することは難しいのが一般的です。定量分析と定性分析を繰り返すことで精度が高い課題特定が可能になります。
4.定性分析で課題検証
課題の精査が終わったら定性分析で課題検証を始められます。分析に慣れていない場合には課題精査のステップを飛ばしてしまうことがありますが、精度が高い改善を行う場合には入念な課題性を行ってからの検証が必須です。
5.定量分析で施策の決定
課題検証が終わったら、再び定量分析で数値の変化を探ります。検証によって数値にどのような変化が出たのかを計測し、改めて仮説を出して施策を決めます。
6.定量分析で効果測定
施策が決まったら優先順位を決めて実施、出てきた成果を数値で計測して改めて分析を行います。この段階で成果が出れば改善策として成功していますが、思った以上に数値が伸びなかった場合には最初の課題抽出の段階からやり直すことになります。
まとめ