ビジネスインテリジェンス(BI)について解説!活用例などもお伝えします
現代のビジネスでは、膨大なデータが日々生まれており、その量は年々増加しています。Statsiaのレポートによれば、2025年までに世界で生まれるデータ量は180ゼタバイト以上(1ゼタバイト=1兆ギガバイト)に達すると予測されています。この膨大なデータをどのように活用するかが、企業の競争力を左右する重要な要素です。
勘や予測だけで経営をおこなう企業と、データ分析を踏まえて意思決定する企業では、1年後の売上は大きく違っているはずです。このように今後はデータドリブン(データに基づいて意思決定や行動をとるアプローチ)な経営判断が求められますが、こうした中で注目を集めているのが、ビジネスインテリジェンス(BI)です。
ビジネスインテリジェンスとは?
ビジネスインテリジェンス(BI)とは、データを見える化し、経営者やマーケティング担当者をはじめ、さまざまな部門の意思決定を手助けするツールです。BIツールは膨大なデータを分析・可視化し、人が新たな洞察をえる手助けをしてくれます。今後、企業が新しいビジネスチャンスを見つけたり競争力を高めるために、BIが大いに役立つと期待されています。
BIを活かした意思決定が重要な理由
BIは、企業が蓄積した大量のデータを分かりやすく視覚化し、データドリブンな意思決定を可能にします。具体的には、顧客の購買行動の分析、市場のトレンド予測、製品の需要予測などのシーンで活用されます。従来は担当者の勘や推測にもとづいていた判断を、確かな事実を踏まえておこなうことができるため、業績向上や効率化につながる可能性があります。
BIツールの主な機能
ここではデータ収集から予測分析まで、BIツールの基本的な機能をわかりやすく解説します。導入によって、どのようなことができるのか疑問なら、ここで解決してください。
データ収集
もっとも基本的なBIツールの機能として、データ収集があります。企業内外のさまざまな場所から必要なデータを集め、蓄積します。具体的には、CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)、専用データベース、クラウドサービスなどのリソースから最新情報を取り込みます。集めるデータ形式も多様で、スプレッドシートにまとめられた整理済みの情報はもちろん、SNS投稿のような煩雑になっているタイプのものも収集可能です。
レポート作成と視覚化
BIツールは、集めた情報をもとに表やグラフを作成し、視覚的に理解しやすい形でアウトプットします。このようにビジュアル化された情報があれば、担当者はトレンドやパターンを一目で確認できます。もちろん、その視覚化されたグラフや表をどう解釈するかは担当者に委ねられますが、現状把握や問題点の特定、将来予測などが格段にスムーズになります。
オンライン分析処理 (OLAP)
応用的な機能として、オンライン分析処理(OLAP)があります。これは、平たくいえば、データをさまざまな角度から分析する技術のことです。この機能を使うことで、大量のデータを効率的に深掘りし、担当者がさまざまな洞察をえられるようになっています。例えば、「今年度の東日本と西日本の売上を前年と較する」といった複雑な要望にも、簡単に答えることができます。
例.OLAPで可能な操作
- ドリルダウン: データをさらに細かいレベルまで掘り下げる
- ドリルアップ: 細かいデータをまとめて、大きな傾向を確認する
- ドリルスルー: 関連データをさらに掘り下げて詳しく調べる
予測分析
BIは予測分析も可能です。過去のデータと現在の傾向をもとに、将来の結果を予測する機能です。この機能により、企業は今後の状況を見据えた意思決定がおこなえます。具体的には次のような予測が可能です。
- 売上予測: 季節ごとの変動を読み取り、将来の売上を予測
- 顧客行動分析: 複雑な顧客の購買サイクルを予測
- リスク評価: 潜在的なリスクを特定
このようなBIツールの予測分析機能を使えば、市場トレンドや将来の需要を予測でき、マーケティング戦略を最適化することが可能です。
マーケティング分野のBI活用例
ここでは、BIツールをマーケティング分野でどう活用できるのか、さまざまな活用シーンをとりあげ解説します。BIを導入する際のイメージができるので、ぜひ参考にしてください。
顧客セグメンテーション
BIツールがあれば簡単に顧客セグメンテーションをおこなうことができます。顧客セグメンテーションとは、年齢、性別、居住地、購買履歴、WEBサイトでの行動など、顧客の特徴をもとにグループ分けする手法です。例えば「特定の商品を頻繁に購入する顧客」と「WEBサイトを頻繁に訪問する顧客」のようにセグメント化し、その相関関係を調べることができます。
マーケティング分野でセグメント情報を活用すれば、ターゲットを絞ったキャンペーンを展開したり、顧客ごとに提供するサービスをカスタマイズするといった施策を打つことができます。
参考ページ: セグメンテーションとは?ターゲティングとの違いや活用方法を解説!
競合分析
競合他社を詳しく分析し、自社の強みや改善点を明確にすることができます。例えば、他社のWEBサイトへのアクセス数や滞在時間、直帰率などのデータと、自社のデータを比較し、自社が競合に対してどのような戦略を展開していけば良いのか判断しやすくなります。このように、BIツールを活用すれば、差別化や競争力を高めることに役立ちます。
参考ページ: 競合分析・競合調査とは?フレームワークやテンプレートを使ったやり方を解説
マーケティングチャネル分析
BIツールを使ってマーケティングチャネルの効果を比較・検討することができます。例えば、検索エンジンやソーシャルメディア、メール、ディスプレイ広告、アフィリエイトなど、さまざまなチャネルが顧客獲得にどれだけ効果的なのかを評価できます。こうしたデータをもとに、マーケティング担当者は、成果の高いチャネルに予算を集中させたり、効果の薄いチャネルを見直したりするなどの施策を打つことができます。
営業分野のBI活用例
営業にもBIツールを活用することができます。例えば、売上目標達成率や顧客単価の分析、効率的な人材配置などの利用シーンが考えられますが、それぞれの詳細についてお伝えします。
担当者別のパフォーマンス分析
各営業担当者の売上目標の達成率、受注率、顧客単価といったデータを分析してわかりやすく可視化することができます。例えば、ダッシュボードを使って営業担当者ごとのパフォーマンスを一覧表示すれば、誰が成果をあげているのか、どこに課題があるのかが一目でわかります。こういったデータを活用すれば、営業マネジャーは各担当者に適切なアドバイスや支援を提供することができます。
販売予測
過去の売上データや市場トレンドを分析し、将来の販売予測ができます。この予測を活用することで、営業目標の設定やリソースの配分、在庫管理などを効率的におこなえます。
例えば、特定のシーズンで、商品の需要が増えると予測できたら、事前に生産量を増やしたり、営業担当者を増員したりするなどの対応が可能です。データにもとづいた予測なので、営業マネジャーは質の高い意思決定ができます。
予算分野のBI活用例
予算の配分・管理などを効率的におこないたい場合もBIツールが役立ちます。無駄を減らし、効果的な配分をすることで、経営効率が向上します。そこで、部門間の比較分析、コスト削減策など、予算分野の活用シーンを取りあげ解説します。
部門別予算の分析
各部門の予算状況(支出額、残高、予算消化率など)をリアルタイムで確認できます。部門ごとの予算消化率を比較しながら、どの部門が費用超過しているか、どの部門に余裕があるのかといった状況を一目で把握できます。
さらに、予算オーバーしている部門があれば、その原因を詳しく分析し、具体的な改善策を検討することも可能です。このように、BIツールは予算の過不足を正確に把握し、経営資源を効率的に分配できます。
コスト削減
費用項目ごとの支出額や前年比の増減をBIツールで分析できます。この結果をもとに、無駄が発生している項目を特定し、コスト削減の具体策を検討できます。
例えば、ある消耗品の購入費用が前年比で大幅に増加している場合、その原因を調べることで、取引先を見直したり、購入方法を改善したりといった対策が可能です。
プロジェクト予算管理
プロジェクトごとに予算を設定し、BIツールで実績を管理すれば、プロジェクトの収益性を効率よく向上させることができます。プロジェクトの進捗に応じて予算の消化状況をリアルタイムで確認できるので、突発的な事態が生じても予算の追加・配分などを柔軟に見直すことができます。
また、プロジェクトの費用対効果を分析することで今後、より効果的な予算の使い方を検討することもできます。このように、BIツールをプロジェクト予算管理に活用すれば、成果の最大化につながります。
人事分野のBI活用例
BIツールを活用すれば、データにもとづいた人事管理が可能です。適切な人材配置や従業員のパフォーマンス向上を期待できるため、組織全体の効率を高められます。具体的には、スキルや保有資格などによる最適な人材配置、高業績者の行動パターンの活用などが挙げられますが、詳しく解説します。
従業員のパフォーマンス分析
BIツールを使うと、従業員のパフォーマンスをさまざまな視点で分析できます。例えば、売上目標の達成率や顧客満足度、プロジェクト完了率といったデータをわかりやすく可視化することで、各従業員の強みなどを人事部が正確に把握できます。さらに、成果をあげている従業員の行動パターンを分析すれば、それをもとに他の従業員のスキル向上に活かせます。
人材配置の最適化
従業員のスキルや経験、資格といった情報を分析し、最適な人材配置がおこなえます。例えば、新しいプロジェクトに必要なスキルを持つ従業員を見つけたり、欠員が出たポジションに適切な候補者を社内から特定するなどのことが可能です。BIツールがあれば、従業員のさまざまな能力を最大限に活かしながら、組織全体の生産性向上につなげることができます。
採用活動の効率化
採用活動の効率化もBIツールでおこなえます。例えば、応募者の属性や応募経路を分析すれば、どの採用チャネルが最も効果的かを把握できます。また、採用プロセス全体を可視化すれば、各段階でどれくらいの時間やコストがかかっているかを分析できるので、無駄になっている採用期間や予算などを削減することもできます。
BIツールの選定ポイント
現在はさまざまなBIツールが提供されていますが、選定する際には、自社の課題やニーズに合ったものを見極めることが重要です。そこで、BIツール選びの押さえておきたいポイントを具体的に解説します。
機能面のニーズ
企業がBIツールを導入する際には、事前に解決したい課題や分析対象を明確にし、それに合った機能を持つツールを選ぶようにしてください。例えば、売上向上を目指すなら、顧客の購買履歴や行動パターンを分析する機能が必要です。一方で、在庫管理の効率化が目的ならリアルタイムで在庫状況を把握し、需要予測に基づいた発注管理ができる機能などが重宝します。
すべての企業に同じ機能が必要なわけではありません。そのため、他社に人気のあるツールでも、必ずしも自社に適しているわけではないので注意してください。
導入・運用コスト
ツール導入の際には、運用にかかるコストを考慮することが重要です。一般的にBIツールでは、ライセンス費用や導入費用、運用費用など、さまざまなコストが発生します。また製品によっては、ユーザー数や扱うデータ量などによっても異なります。自社の予算に合ったツールを選ぶために、初期費用だけでなく、長期的な運用費用も含めた全体のコストを検討してください。
使いやすさ
使いやすさもツール選定の際の重要ポイントです。BIツールはデータ分析の専門家だけでなく、現場の担当者が使用することも想定しなければいけません。そのため、誰でも簡単に操作できるインターフェースが求められます。
例えば、ドラッグ&ドロップで簡単にグラフやダッシュボードを作れる機能、直感的に操作できるメニュー、充実した操作マニュアルなどがあれば、ツールを使う負担を減らすことができます。
拡張性
将来のビジネスの成長や変化に柔軟に対応できる拡張性も重要です。BIツールが会社に浸透すれば、次第に扱うデータ量やユーザー数が増加し、新たな分析ニーズが生まれることが予想できます。そういった将来の拡張性に対応できるBIツールが望ましいです。
よくある質問(Q&A)
ここでは、BIのよくある質問を取りあげ解説します。自社で導入する際には、さまざまな疑問が生じると思いますので、下記の項目を確認して解消してください。
Q:BIツールを導入すべき業種・企業は?
Answer)小規模企業から大企業まで幅広く利用可能です。例えば次のような業種とその活用例が考えられます。
- 小売業: 売上データや在庫管理の分析
- 金融業: リスク管理や顧客分析
- IT業界: サービス利用状況やシステムパフォーマンスの監視
Q:セキュリティは大丈夫ですか?
Answer)一般的なBIツールは、データの送受信や保管時に暗号化をおこなっているため、外部からの不正アクセスを防止できます。また、ユーザーごとにアクセス権限を設定できる機能があるため、重要なデータは閲覧できないようにするといった対応も可能です。
Q:利用者数の多いBIツールは?
Answer)TableauやMicrosoft Power BIなどが挙げられます。特に、Microsoft Power BIは、コストパフォーマンスが良くPower BI Proというプランなら月額1,499円から利用可能です。また、Googleが提供するLooker Studioも利用者数が多く、GA4などのGoogle提供ツールと相性が良いです。
Q:ExcelやAccessとはどう違いますか?
Answer)ExcelやAccessに比べて扱えるデータ量が大きく異なります。例えば、ExcelやAccessでは、数万行規模のデータだと、現実的に処理が難しいですが、BIであればまったく問題ありません。また、BIの場合、リアルタイム分析やデータ可視化に優れているといった特徴もあります。
Q:BIツールは将来どう進化しますか?
Answer)さまざまな進展が期待できますが、セルフサービスBI(Self-Service Business Intelligence)が現在注目されています。これは専門知識がなくても、新人担当者が自分でデータにアクセスし、分析・洞察をえられる機能のことです。
従来のBIツールは、IT部門やデータアナリストなど、ある程度、専門知識を持った人の活用が一般的でしたが、セルフサービスBIは非専門家が、簡単にデータ分析をおこなえるよう設計されています。普及すれば、IT部門に依存することなく、必要なタイミングでデータ分析をおこない、現場の人間が迅速な意思決定をすることが可能になります。
まとめ
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