ソーシャルセリングとは?メリットやはじめ方と海外の成功事例を解説
現代のビジネスシーンではじつに多くの営業手法がありますが、その中でとくに注目を集めている手法が「ソーシャルセリング」です。主にSNSを活用した営業活動ですが、どんな手法で、どのように始めるべきかわからない方はいらっしゃると思います。
ソーシャルセリングとは?
ソーシャルセリングとは、SNSを活用して顧客との信頼関係を築き、ビジネスにつなげる営業手法です。従来の営業のように電話や飛び込み訪問で接触を試みるのではなく、SNS上でのコミュニケーションを通じて相手との関係性を深めるのが大きな特徴です。
SNSの普及も相まって、とくにBtoBビジネスで注目され始めました。日常的に情報を発信し、顧客が抱える課題に寄り添うことで、信頼を得ながら自然な形で商談のきっかけをつかむのが特徴です。
一般的な営業との違いは?
ソーシャルセリングと一般的な営業との違いは、一言でいうと「顧客へのアプローチ方法」です。従来の営業は電話や訪問など、直接的な手段で限られた顧客にアプローチするのが一般的です。
短期間で成果を出せる可能性も高い一方で、門前払いを食らう可能性も否めないのが特徴です。一方ソーシャルセリングはSNS上でのやり取りを通じ、顧客に寄り添いながら信頼関係を構築する方法です。
見込み客が自発的に興味を示すタイミングを待つようなスタンスなので、中長期的なアプローチ方法として選ばれています。
両者の違いを一覧表にまとめると、以下のようになります。
従来の営業 | ソーシャルセリング | |
特徴 | 限られた個人、法人にアプローチする 門前払いの可能性が高い |
SNSを活用する サービスに興味のある層に幅広くアプローチする |
ユーザーとのつながり | 既存の連絡先に依存 | 膨大なネットワークからユーザーニーズに合わせ関係を構築 |
接触方法 | 面識、およびサービスに関心のない層にアプローチ 営業により認知してもらい、興味をもってもらう |
すでにサービスに関心のある層にアプローチ 見込み客が自発的に購入してくれるタイミングを待つ |
いまソーシャルセリングが注目される理由
SNSが普及している現代において、顧客との関係構築がより個別的かつ迅速に行える手法だからです。従来の営業手法では電話や訪問が中心でしたが、現代の顧客はSNSを通じて商品やサービスの情報を自ら収集し、購入を検討することが一般的です。
この背景から、営業担当者はSNSで顧客と接点をもちつつ、信頼関係を築いていくことが現代の手法としては効果的とされています。
また顧客からのフィードバックをSNS上で直接得られるため、迅速な対応が可能なのもメリットです。
このようにソーシャルセリングは、顧客と信頼を築きながらニーズに即応できるという観点で、営業活動の新しいスタンダードとなりつつあります。
国内のソーシャルセリングの浸透状況
2024年現在、日本でようやく普及し始めてきました。日本のビジネスでは企業名の信用に依存する傾向が強く、個人が主体的に人脈を広げようとする意識はまだ薄いのが現状でした。
また、そもそもSNSをビジネスのBtoBに活用する文化が根付いていなかったことに加え、炎上や情報漏洩といったリスクを懸念する声も少なくありませんでした。
近年では電話や訪問による営業からインバウンドセールスのオンラインアプローチへの移行が進み、SNSやWebを通じた顧客情報の収集も増えてきています。
こうした変化に伴ってオンラインでの信頼構築が少しづつ注目されるようになっているため、これから重要性はさらに高まると考えられます。
ソーシャルセリング実施で得られるメリット
次に、ソーシャルセリングの実施によって得られるメリットについて紹介します。
ランニングコストがかからない
他の営業手法と違い、広告費や営業ツールの導入に多額の費用をかけずに始められるのが大きな利点といえます。各種SNSアカウントの運用自体は基本的に無料となっているものが多く、かつ投稿やメッセージを通じて顧客にアプローチできるため、運営コストはほとんどかかりません。
また従来の訪問営業や電話営業で必要とされていた、多額の移動費や通信費も一切かからないのもポイントです。こうした低コストな営業手法はとくにスタートアップや小規模な事業に有効であり、少ないリソースで成果を最大化することが可能です。
見込みユーザーに最新情報の提供が可能
新商品やキャンペーン情報をリアルタイムで見込み顧客に届けられるのも大きなメリットになります。タイムリーな情報提供は顧客の関心を引くだけでなく、購買行動を促す効果も期待できるからです。
とくにSNSは現代で使っている人も非常に多いため、更新頻度を定期的に保つことで顧客との接点を持ち続けることができます。企業が提供する商品やサービスについての理解を深めてもらい、信頼関係を強化する手段としてうってつけです。
SNSユーザーへのアプローチが可能
SNSを活用している多様なユーザーへの効率のいいアプローチが可能になる点もメリットとして挙げられます。効率の良いアプローチというのは、たとえば特定のターゲット層に向けた広告配信だったり、フォロー・コメントを通じたダイレクトなコミュニケーションといったものです。
またSNS上ではユーザーの興味や関心を明確に把握できるため、より効果のあるアプローチも期待できます。こうした利点により企業はマーケティングの精度を高め、見込み客との接触回数を増やすことで、ビジネスチャンスを広げることも可能になります。
ファンの獲得が見込める
商品やサービスの魅力を継続的に発信することで、企業やブランドに共感するファンを増やせます。ファンを獲得することで単なる顧客の枠を超え、口コミによる宣伝や商品購入のリピートにつなげられる可能性が高くなります。
さらにファンが積極的に投稿やシェアをすることで、新たな顧客との接点も生まれることも、SNSならではの強みと言えます。
ブランド価値向上につながる
SNS上での継続的な情報発信や顧客との交流は、企業やブランドのイメージを向上させます。たとえば企業が社会貢献活動やサステナビリティに関する情報を発信することで、ブランドの価値もいっそう高まります。
またSNSユーザーやファンのリアルタイムの意見に素早く対応する姿勢を示すことで、信頼の醸成や顧客満足度の向上にもつながります。SNSを通じたソーシャルセリングは、営業活動だけでなく、企業のブランディング戦略としても有効な手段とされています。
ソーシャルセリングのデメリット
ソーシャルセリングにはメリットのみならず、デメリットも存在します。代表的なものを4つに絞ってご紹介します。
認知度向上や信頼構築に時間がかかる
効果が現れるまでに時間がかかる点がデメリットとなります。
SNS上で認知を拡大し、顧客との信頼関係を築くには、定期的な情報発信をコツコツ継続していかなければなりません。即効性のある広告とは異なり、ユーザーの関心を引きつけ、ブランディングしてファンを育てるスタンスなので、地道な努力が求められます。
またオンラインのつながりだけでは信頼を得るのが難しく、リアルな営業活動と併用する必要があるケースもあります。
根本的な知名度がなく窮屈
世界的にはスタンダードになりつつあるものの、国内ではまだまだ知名度が低いことから、窮屈さ・やりにくさを感じてしまうこともデメリットです。
とくに周囲の理解を得られない状況、たとえばレガシーな考え方が抜けない上層部といった方々の下だと、SNSでの情報発信を継続するモチベーションが保ちにくくなります。
また企業の伝統的な営業手法に依存せざるを得ない企業もあるため、新しい手法に対する抵抗感も少なくありません。
成果を数値化するのが困難
成果や効果、たとえばROI(投資利益率)などを明確な数値で算出するのが難しいこともデメリットになります。
そもそもSNSをはじめとする対話型のコミュニケーションやブランド認知の向上といった要素は、定量的な評価が難しく、効果を測定するのが一筋縄ではいきません。どの程度の活動が効果的だったかを評価するためには、投稿の反応や顧客とのコミュニケーションを細かく分析のうえ、長期的な視点で効果を判断する必要があります。
炎上のリスクは避けられない
SNSでの活動は思わぬ批判や誤解を招く可能性があり、炎上リスクを完全に避けることはできません。発信する内容が消費者の感情を刺激したり、誤った情報が広がることで、企業の評判が大きく傷つくことがあります。
またSNSは拡散力が強いため、問題が起きた場合には迅速な対応が求められることから、運営側への負担も大きくなります。炎上を防ぐためには発信内容を慎重に管理し、万が一に備えた対応策をあらかじめ準備しておくことが重要です。
ソーシャルセリングをはじめる手順
はじめる手順として、4ステップに分けてご紹介します。
ソーシャルセリングの目的・ゴールを定める
始めるには、まず目的やゴールを明確にすることが重要です。たとえば売上向上や顧客との信頼関係構築、新規リードの獲得など、具体的な目標を設定することで活動の方向性が定まり、よりアプローチが効果的になるためです。
ゴールが曖昧だと成果の測定や戦略の見直しが難しくなるため、開始時にしっかりと計画を立てましょう。
情報発信を行うSNS媒体を決める
次に情報発信を行うSNS媒体を選びます。たとえばBtoB企業であればLinkedIn、一般消費者向けの商品ならInstagramやX(旧Twitter)など、対象顧客層に合わせて選ぶことが推奨されます。
複数の媒体を活用する場合も、それぞれの特性に応じて内容を調整することで効果を最大化できます。
SNSプロフィールを作り込む
SNSプロフィールの作り込みも、欠かせない要素として挙げられます。プロフィールは第一印象につながる重要な要素になるので、信頼性および専門性が伝わる内容にしましょう。
とはいえ長文すぎると逆に印象が良くないので、具体的な実績や提供できる価値を簡潔に伝えることが重要です。
プロフィール写真やカバー画像も企業や個人のブランドイメージに関連するもので、なるべく統一感のあるものを選びましょう。
発信活動を定期的に行う
目標やプロフィール作成などの準備が整ったら、あとは発信活動を定期的に行うことが大切です。継続的な情報提供によって、フォロワーとの信頼関係を構築し、関心を引き続けられるようになります。
投稿頻度はサービス内容にもよりますが、なるべく1日〜2日に1回など、高すぎない頻度を意識することが大切です。
コメントやメッセージへの迅速な対応も心がけましょう。
ソーシャルセリング成功のためのポイント
ここでは、ソーシャルセリングを成功させるためのポイントについて3つご紹介します。
複数のSNS媒体を活用する
ソーシャルセリングの成功には複数のSNS媒体を活用することが重要です。ターゲット層によって利用するプラットフォームが異なるため、LinkedIn、X(旧Twitter)、Instagramなどを適切に組み合わせてアプローチすることで、幅広い層にリーチできるからです。
また各SNSの特徴を理解し、媒体ごとに最適化したコンテンツを発信することで、ユーザーの関心をより効果的に引き付けられます。
見込みユーザーに積極的にリアクションする
見込みユーザーに積極的にリアクションすることもポイントです。たとえばコメントや「いいね」などを通じて相手に関心を示すといったように、双方向のコミュニケーションを築くことが重要です。
とくにエンゲージメントが高いユーザーとの関係を深めることで、見込み顧客の獲得につながりやすくなります。
更新頻度をあまりに多くしすぎない
頻繁な投稿はフォロワーに負担を与え、逆効果になることがあるため、更新頻度をあまりに多くしすぎないことも大切です。品質の高いコンテンツを一定の間隔で提供することで、ユーザーに価値を感じてもらいやすくなり、より興味を持続してもらいやすくなるからです。
また、適切な頻度を維持することで運営側の負担も軽減され、長期的に発信活動を続けやすくなるのもメリットです。
量よりも質を重視することが、効果的なソーシャルセリングの鍵といっても過言ではありません。
ソーシャルセリングの成功事例
ソーシャルセリングを実施した方々の成功事例をご紹介します。
ジャスティン・ウェルシュ氏
ジャスティン・ウェルシュ氏は、LinkedInを中心にソーシャルセリングを実施し、年間100万〜200万ドルを稼ぐことに成功しています。戦略としてはプロフィールの閲覧数を増やし、情報商品を販売する仕組みを構築。
なんと3年間にわたる毎日投稿を実施し、フォロワーとの積極的な交流を行い、すべてのコメントに反応しました。また半年ごとにパフォーマンスの良い投稿を再利用、つまり同じ内容を再公開または少し変更するといった手法も実施。
最近はX(旧Twitter)にも活動を広げ、週2〜3件のスレッドも投稿しています。
アルノー・ベリンガ氏
アルノー・ベリンガ氏は、X(旧Twitter)を活用したソーシャルセリングでわずか6か月でフォロワーを0から8,000人以上に増やしました。
1日3回のツイートを通じ、トピックキーワードを効果的に使用。さらにLinkedInでも見込み客と積極的に交流し、「いいね!」やコメントを活用して関係を深めています。
その後、交流した相手にはコールドメールやLinkedInのダイレクトメッセージを送るなど、営業機会を創出する手法を積極的に取り入れています。
ウィル・オルレッド氏
ウィル・オルレッド氏は主にコールドメール投稿で成果を上げており、LinkedInでの影響力を発揮しています。
自身はTikTokでは知名度が低いため、TikTokの動画をLinkedInに再利用するなどの手法を実施。TikTokではコールドメールのヒントを共有し、新しいアイデアも発信しています。
またInstagramやTwitterでも多くの人にDMを送り、見込み客との関係を築くことに時間を投入しています。
こうした戦略もあって、見事セールスプロスペクトの開拓に成功しました。
まとめ