Google社、サイトの評判の不正使用を適用開始
Google社は、新たなスパムポリシーとなる、サイトの評判の不正使用を2024年5月5日より適用しました。
参考:2024年3月のコアアップデートとスパムに関する新しいポリシーについてウェブ クリエイターが知っておくべきこと
サイトの評判の不正使用は、いわゆる、ドメイン貸しを規制するためのスパムポリシーです。違反した場合は、Google検索エンジンにおけるスパムポリシーに反するとして、サイトが検索結果に表示されなくなるといったペナルティを課されることになります。
2021年からドメイン貸し(寄生サイト)が増加
2021年ごろからドメイン貸し(寄生サイト、サイト貸し)と呼ばれる手法の増加が目立ってきました。
ドメイン貸しとは、主に、大手企業が自社サイトのサブディレクトリなどをアフィリエイターに貸す行為のことです。そして、サイト貸与の報酬として、アフィリエイターから売上の一部を受け取ることになります。つまり、大手企業としては、業務や作業することなく一定の収入を継続してえられるということです。
一方、アフィリエイターとしては、Google検索エンジンから高い評価を持つWEBサイトでコンテンツを公開できることから、上位表示を狙いやすいといった利点があります。そのため、企業に対して、サイトを間借りしようと営業活動するケースが散見されました。
企業とアフィリエイターの利害が一致したことで、近年では、ドメイン貸しが横行していました。
Google、サイトの評判の不正使用を新スパムポリシーに導入へ
ドメイン貸しの横行を問題視したGoogle社は、スパムポリシーに追加する形で、サイトの評判の不正使用を2024年5月5日に適用しました。
As a reminder, the last part of the March 2024 announcements, the new Google Search spam policies about reputation abuse, take effect after May 5, 2024. Find out more about these changes in the blog post https://t.co/FB8boxCFof and in our policies at https://t.co/2VxQuTF5pu . https://t.co/SHCWtk5tWv
— Google Search Central (@googlesearchc) April 30, 2024
ただし、実際の施行は、同7日に開始されたとのことです。
It'll be starting later today. While the policy began yesterday, the enforcement is really kicking off today.
— Google SearchLiaison (@searchliaison) May 6, 2024
もともと、同3月5日には、Google検索エンジンに新スパムポリシーが導入されることが明らかにされていました。今回のサイトの評判の不正使用の適応は、新スパムポリシー導入の一環としておこなわれたものです。
関連記事:2024年3月のコアアップデート、新スパムポリシーの対策を解説
なお、同15日前後には、Google検索セントラルのガイド「Googleウェブ検索のスパムに関するポリシー」内に新項目「サイトの評判の不正使用」が追加で加筆されています。
「サイトの評判の不正使用」の概要
Googleウェブ検索のスパムに関するポリシーによると、サイトの評判の不正使用は、ファーストパーティ(サイト所有者)が関与することなく、サードパーティ(第三者の人物)に対して、サイトの一部を貸与する行為を指すとのことです。つまり、借りる側だけでなく、貸す側もスパムポリシー違反の対象になるということです。
サイトの評判の不正使用の問題点に関して、Googleウェブ検索のスパムに関するポリシーには、つぎのとおり記されています。
通常ホストサイトの主な目的とは無関係であったり、ホストサイトの十分な監督や関与なく作成されたりしており、ユーザーにほとんどまたはまったく価値をもたらさないものです。
要するに、サイト所有者の意図と異なるコンテンツが掲載されることで、検索ユーザーの利便性を損なう点が問題だとGoogle社はいいます。さらに、サイトを借りる側の立場としては、ランキング操作を目的としており、Google検索結果の品質を下げる行為として、問題視しているものとみられます。
対象となるサイト
今回加筆された、サイトの評判の不正使用に抵触する対象となるのは、サイト運営に無関係の人物が記事を公開していて、かつ、サイトテーマと異なるジャンルの記事のケースが該当します。わかりやすくいうと、次のような条件を満たしていると、規制対象になるということです。
- サイト運用に無関係の人物が作成したコンテンツが掲載されている
- サイトテーマと無関係のコンテンツが掲載されている
- サイト運用の関係者がコンテンツに関与していない
- コンテンツの目的がランキング操作にある
※本項目の情報は、Googleウェブ検索のスパムに関するポリシーのテキストを要約したものです
対象とならないサイト
WEBサイトに無関係のコンテンツが掲載されると、直ちにペナルティが発生するわけではありません。次のようなサービスサイトの事例は、サイトの評判の不正使用として見なされないとのことです。
- プレスリリース配信のためのサービスサイトで、第三者が執筆したプレスリリースを配信している(例:PR TIMESなど)
- 複数のニュースメディアの記事を配信するサービスサイト、メディア各社のニュース記事を配信している(例:Yahoo!ニュースなど)
- ユーザーがコンテンツ作成に参加できるサービスサイトで、ユーザーがコンテンツを作成している(例:掲示板、Wikiシステムなど)
また、次のようなコンテンツもサイトの評判の不正使用の対象外となります。
- サイト運用者が作成に関与しているコンテンツ
- サイト運用者が作成に関与していて、かつ、読者に広める目的で公開される記事広告
- 広告ユニット、アフィリエイト広告
今回追加されたスパムポリシーで違反に該当するのは、あくまでも、検索ランキングの操作を目的にして設置されていて、かつ、サイト所有者がコンテンツの監修に関与していないケースです。そのため、常識的なWEB広告やコンテンツであれば、スパムポリシー違反の対象にはなりません。
※本項目の情報は、Googleウェブ検索のスパムに関するポリシーのテキストを要約したものです
「サイトの評判の不正使用」の適用でなにが変わるのか
Google検索エンジンの新たなスパムポリシーとして、5月5日より、サイトの評判の不正使用が適応されました。今後、違反の対象となるサイトは、ペナルティを課されることになります。もしペナルティが課されると、検索順位が大幅に低下して、ランキング圏外(100位外)にまで落とされるケースもありますので注意して下さい。また、スパム行為の通報窓口に、「サイトの評判の不正使用」が問題点として新設される予定となっています。
ペナルティを受けたときにすべきこと
サイトの評判の不正使用を含む、新たなスパムポリシーに違反するサイトに対して、Google検索エンジンのアルゴリズムによる検知のほか、スタッフの手動による対策も進めていくとGoogle社は語っています。手動による対策とは、Google社の担当者がWEBサイトを目視で審査して、手動でペナルティを付与する施策のことです。
参考(外部):手動による対策レポート
手動による対策が実行された場合、登録済みのGoogle Search Console(サーチコンソール)のアカウントにて、「メッセージ」欄、またはメニュー「手動による対策」にレポートを通知するとのことです。このレポートを確認する方法は、次のとおりです。
- Googleサーチコンソールにアクセスし、ログインする
- 画面右上のアイコン「メッセージ」、またはメニュー「手動による対策」をクリックする
▲画像中、左の青印=メニュー「手動による対策」、右上の青印=アイコン「メッセージ」
Google社から通達された内容を参考にして、ペナルティの原因となる問題を取り除いてください。その後、レポート内の「審査をリクエスト」から修正した旨をGoogle社に伝えることができます。再審査には、数日〜数週間程度かかるようです。ただし、数週間以上かかるケースもあるとのことですので、再審査の結果を待ってください。
スパム行為の通報窓口が更新予定
Googleサーチコンソールには、スパム行為を通報するための窓口が設置されています。そして、現在、次のような行為をするWEBサイトやページのURLを指定することで、通報できます。
- スパムに該当するコンテンツがページに表示される
- ページがスパム行為に関与している
- 虚偽のページである
- ページの品質が低い
- このページには有料リンクが含まれています
- その他
引用:スパム行為や不正行為のあるページ、または質の低いウェブページを報告する
Google社は、Xアカウント上にて、この通報項目に「サイトの評判の不正使用」が追加される予定としています。
Yes, it should get updated to allow reporting of that spam type when that policy takes effect.
— Google SearchLiaison (@searchliaison) April 26, 2024
「サイトの評判の不正使用」の対策方法
仮に、自社サイトがサイトの評判の不正使用の規制対象になっていたとしたら、スパムポリシー違反となる問題を取り除く必要があります。その対策としては、次のようなものが挙げられます。
- ドメイン貸し行為を停止する
- スパムポリシーに反するコンテンツをGoogle検索エンジンからブロックする
このうち、コンテンツをGoogle検索エンジンからブロックする場合、下記のフローで作業してください。
- Google検索エンジンからコンテンツを削除する
- コンテンツに対してnoindex設定する
参考(外部):Googleと共有するコンテンツを制限する
1.Google検索エンジンからコンテンツを削除する
Googleサーチコンソールの機能である削除ツールを利用することで、Google検索結果に表示される自社コンテンツを削除できます。
- 削除ツールにアクセスする
- 「一時的な削除」中の「新しいリクエスト」をクリックする
- スパムポリシー違反に該当するページURLを入力して、「次へ」をクリックする
「一時的な削除」でリクエスト申請したページURLは、約6ヶ月間、Google検索結果に表示されなくなります。
2.コンテンツに対してnoindex設定する
続いて、スパムポリシーに違反するページをnoindexで設定します。noindexとは、指定のページを検索エンジンに登録させたくない際に利用されるmetaタグのことです。HTMLファイルのmetaタグにて、次のコードを記述することで設定できます。
<meta name="robots" content="noindex" />
「サイトの評判の不正使用」施行に対する対策の実例
アメリカのフォーラム情報をまとめるSearch Engine Roundtableが公開した記事によると、世界的な経済誌の情報サイトのForbes社がサイトの評判の不正使用の対策を実行したとのことです。
参考(外部):フォーブス、(410サーバーステータス)クーポンディレクトリを完全に削除
それによると、Forbes社のサイトでは、2024年4月中旬にクーポン情報を扱うディレクトリに対して、noindexを追加したとのことです。さらに、数日後には、クーポン情報を扱うディレクトリが削除されたようで、HTTP ERROR 410で処理されているとのことです。Search Engine Roundtableでは、この一連の動きを、Google社によるサイトの評判の不正使用の対策とみていると報じています。
実際に、該当のクーポンディレクトリにアクセスすると、HTTP ERROR 410で応答することが確認できました。
引用:Forbes
さらに、4月29日時点では、クーポンディレクトリの存在をWayBack Machine上で確認できました。しかし、翌日の30日には、ディレクトリが削除されていたようです。
サイトの評判の不正使用の影響
サイトの評価の不正使用は、5月5日に適用とされましたが、Google社が実際に対策に乗り出したのは、日本時間でいうと5月7日のことです。以降、国内外を問わず、さまざまな影響が出ているとWEB関係者が報告しています。
まず、Google社が取り組んだのは、スパムポリシー違反に対する手動対応でした。
Not sure if you're still online, Barry — but we're only doing manual actions right now. The algorithmic component will indeed come, as we've said, but that's not live yet.
— Google SearchLiaison (@searchliaison) May 7, 2024
5月7日に投稿されたポストでは、手動対応している旨、自動対応(アルゴリズム実装)の導入予定はあるものの、時期は未定である旨が記載されています。
そして、Google社の告知どおり、規制対象サイトのオーナーのGoogleサーチコンソールには、手動対応した旨の連絡が届いていることが報告され始めています。
Well… Google did warn sites. We just got the word that they're now rolling out manual actions (algorithmic component to follow) for "site reputation abuse". This change directly targets Parasite SEO and looks to have had a significant impact. pic.twitter.com/IkyhVgEdh4
— Brodie Clark (@brodieseo) May 7, 2024
オーストラリアの検索エンジンで知名度が高いSEOコンサルタントのBrodie Clark(ブロディ・クラーク)氏によると、スパムポリシー違反の対応を開始した旨のメッセージが届いたとのことです。それによると、本対策では、パラサイトSEOを展開するサイトをターゲットにしていて、大規模な影響が起きていると報告しています。
また、2012年来、Google検索エンジンを研究し、情報発信するカナダのMarie Haynes(マリー・ヘインズ)氏は、自身のブログで、LA Timesのサブディレクトリ(クーポンページ)が3月のコアアップデート後にランキング変動したこと、ペナルティを受けたことを指摘しています。同氏は、今後、スパムポリシーがアルゴリズムに導入される点を考慮して、大規模な影響が懸念されると分析しています。
参考(外部):What is going on with the Site Reputation abuse policy?
サイトの評判の不正使用のよくある質問
サイトの評判の不正使用に関する、よくある質問をまとめています。
Q:サイトの評判の不正使用とはどのような意味ですか?
Answer)ここでいうサイトの評判とは、ドメインに対するGoogle検索エンジンの評価を指します。そして、不正使用とは、検索ランキングを故意に操作することを意味します。つまり、Goole検索エンジンに高い評価を受けるサイトを利用して、ランキング操作することを違反行為とみなすということです。違反行為に該当する条件としては、次のような状況が挙げられます。
- サイト所有者が第三者の人物にサブディレクトリ(またはサブドメイン)を貸与する
- 第三者の人物が作成したコンテンツに対して、サイト所有者が十分な関与をしていない
- サイトと関係がないジャンルのコンテンツを作成している
Q:サイト貸しとは、どのような行為ですか?
Answer)サイト貸しとは、サイト所有者がサブディレクトリやサブディレクトリをアフィリエイターなどに貸し出すことです。そして、アフィリエイターが生み出した利益の一部を受け取ります。別名では、サイト貸し、寄生サイトとも呼ばれています。
サイト所有者としては、手を動かすことなく、継続して収入をえられることからアフィリエイターを受け入れることが多々あります。一方、アフィリエイター視点では、Googleの評価が高く、上位表示しやすいサイトでコンテンツを作成できるという利点があります。このように、両者の利害が一致している行為であることから、2021年ごろからサイト貸しが増加していました。
Q:サイトの評判の不正使用は、なにを問題としているのですか?
Answer)サイト貸しするとなると、サイト所有者の意図と異なるコンテンツが生まれることになります。すると、検索ユーザーとしては、Googleに高く評価されているサイトに期待して該当コンテンツにアクセスする機会が発生します。サイト貸しのポイントがランキング操作を目的とした行為である以上、検索ユーザーに混乱をもたらすことから、Google社は問題視しました。そして、スパムポリシーとして、サイトの評判の不正使用を追加するに至りました。
Q:記事広告は、サイトの評判の不正使用の規制対象になりますか?
Answer)原則的には、記事広告やネットワーク広告はスパムポリシー違反に該当しません。サイトの評判の不正使用は、あくまでも、サイト所有者の意図と異なるコンテンツの生成、不正なランキング操作を目的とした行為の2点を問題視しています。そのため、記事広告であっても、サイト所有者が十分に監修していて、かつ、読者に情報を広めるために用意されたのであれば規制対象にはなりません。
まとめ