Google、海底ケーブルに1,500億円の投資を発表 日米間のインフラ強化へ
Google社は、日本に対するデジタル通信の強化を目的に、1,500億円(約10億ドル)を投資して、海底ケーブルを強化する旨を2024年4月11日に発表しました。投資資金は、新たな2つの海底ケーブルの開通、太平洋接続構想の拡張に充てるとのことです。
参考(外部):日本へのデジタルコネクティビティの拡張に1,500億円を投資
発表によると、新たな海底ケーブルは、Proa、Taiheiと名付けられ、各国の関連企業と協力して海底ケーブルを構築するとのことです。また、本プロジェクトは、2022年10月にGoogle社が提唱した、日本デジタル未来構想の一環にあたる施策と説明しています。
日本デジタル未来構想を2022年10月に発表
2022年10月、Google社のCEOのサンダー・ピチャイ氏が日本に来日した。あわせて、日本社会のデジタル化を支援する、日本デジタル未来構想について岸田文雄内閣総理大臣に伝えました。
参考(外部):日本社会の更なるデジタル化に貢献するために 〜インフラとデジタル人材の育成に投資するデジタル未来構想
計画の内容は、日本のインフラに対する投資、デジタルトレーニングの提供を通じて、日本のネットワークインフラとデジタル人材の育成を図るとのことです。
このうち、インフラの投資では、2024年までに、1,000億円を投資しています。そして、国内にGoogleのデータセンターを開設しました。さらに、日本と各国を結ぶ海底ケーブルを構築してきました。こうした経緯で、国内からGoogleをはじめとする海外サーバーに快適にアクセスできるようにし、安定した海外ネットワークの利用を実現しました。
Googleが日本に接続する海底ケーブルに1,500億円を投資
Google社は、日本のネットワークインフラを強化するために、1,500億円(約10億ドル)を投資すると2024年4月に発表しました。
参考(外部):日本へのデジタルコネクティビティの拡張に1,500億円を投資
今回発表された投資資金の利用用途は、大きく2つにわかれます。
1つめは、Google社が2023年10月に発表した太平洋接続構想を拡張します。具体的には、太平洋を横断する海底ケーブルとして敷設されたTabuaを伸ばして、ハワイにつなぐといった内容です。あわせて、アメリカ、台湾、フィリピン、アメリカ大陸を結ぶ海底ケーブルのTPUを延伸して、北マリアナ諸島自治連邦区(CNMI)につなげるとのことです。
そして、2つめは、新たな海底ケーブルを2つ構築します。そして、この新たな海底ケーブルは、それぞれProa(プロア)、Taihei(タイヘイ)と名付けられました。この計画は、日本デジタル未来構想の一環として実行し、日米間におけるデジタル接続の信頼性と可用性の向上を目指すとのことです。なお、新海底ケーブルでは、Google社が中心となって、日本のKDDI社、アルテリア・ネットワークス社、フィリピンのCITADEL Pacific Ltd.、CNMIが協力して構築すると発表されています。
引用:日本へのデジタルコネクティビティの拡張に1,500億円を投資
投資対象の海底ケーブル | 解説 |
---|---|
Proa | 新設される海底ケーブル。日本、CNMI、グアムをつなぐことになる。 |
Taihei | 新設される海底ケーブル。日本、ハワイをつなぐことになる。 |
TPU | CNMIに延伸されることになった、既存の海底ケーブル。アメリカ大陸、CNMI、グアム、台湾、フィリピンをつなぐことになる。 |
Tabua | ハワイに延伸されることになった、既存の海底ケーブル。アメリカ大陸、フィジー、オーストラリア、ハワイをつなぐことになる。 |
ProaとTPUで三重県とアメリカ大陸間のインフラ強化に
Proaは、GoogleとNECが構築する新たな海底ケーブルです。そして、Proaは、日本、CNMI、グアムの3箇所を結ぶ役割を果たします。あわせて、TPUがCNMIに延伸されることになります。こうしたことから、日本としては、三重県志摩市とアメリカ間のネットワークインフラが強化される形となります。
なお、ProaとTPUの開通によって、CNMIとしては、初の国際的な海底ケーブルが設置されることになります。こうした背景から、Proaのケーブル名の由来として、マリアナ諸島における、伝統の帆走カヌーを採用したとのことです。これに対して、CNMI知事のArnold I. Palacios氏は、次のようにコメントを表明し、これからのネットワークインフラ強化に期待を寄せつつ、Proaに対する想いを伝えています。
Proaという名前は、私達のつながりや文化の根幹を表しています。また、本プロジェクトにおいて私達が具現化する共同事業を意味し、島々にとってチャンスと繁栄に満ちた未来に向かって一丸となって進んでいくための、強靭性や発展性を反映しています。
引用:日本へのデジタルコネクティビティの拡張に1,500億円を投資
TaiheiとTabuaで茨城県とアメリカ間のインフラ強化に
Taiheiは、GoogleとNECによって構築される新海底ケーブルです。この海底ケーブルは、日本とハワイを結ぶものです。あわせて、Tabuaがハワイに延伸されます。日本としては、茨城県高萩市とアメリカ間で複数のインフラが開通されることになります。
なお、Taiheiというケーブル名の由来は、日本語の「太平洋」と「平和」から命名したとのことです。
海底ケーブルの強化で、日本はどのように変化するのか
今回発表があった海底ケーブルが強化されることで、日米間のネットワークインフラが強化されることになります。そして、日本には、次のような好影響が見込まれています。
- デジタルサービスを手がける企業の利益が伸びる
- 日本のGDPが増加する
- デジタルにおけるスキルが高まる
デジタルサービスを手がける企業の利益が伸びる
日米間のネットワークインフラが強化されると、国内のデジタルサービスの品質が改善されますので、サービス利用者が増加します。そして、国内における、デジタルサービスを手がける企業の利益が伸びます。
ここでいうデジタルサービスの品質が改善とは、具体的には、クラウドサービスのセキュリティやパフォーマンスの向上を指します。つまり、これまでよりも安全に、かつ快適にサービスを利用できる環境が整うということです。これは、クラウドサービスのニーズ拡大のきっかけになりますので、新たな雇用機会の創出も期待できます。
日本のGDPが増加する
ネットワークインフラが強化されると、デジタルサービスのニーズが高まりますので、雇用機会の創出につながります。その効果もあって、国内総生産(GDP)が増加します。
通信やメディア分野に強みを持つイギリスにおける調査会社のAnalysys Mason社の調べによると、Googleが日本のインフラ整備をしたことにより、2010年から2021年の間で、日本国内の実質GDPに対して、6兆円(約400億ドル)以上の追加効果をもたらしたと推定しています。そのため、今回、Googleが発表した海底ケーブルの強化によって、日本国内の実質GDPが底上げされるのではと期待されています。
引用:ECONOMIC IMPACT OF GOOGLE’S APAC NETWORK INFRASTRUCTURE 2022 UPDATE – FOCUS ON JAPAN
デジタルにおけるスキルが高まる
デジタルサービスの利用者が増加することで、デジタルに対するリテラシーを持つ人材が育成されやすくなります。さらに、デジタルサービスの雇用機会が増えることと相まって、デジタル領域における、スキルやキャリア形成につながります。
また、Google社は、日本デジタル未来構想のプロジェクトの一環として、デジタルスキルトレーニングの機会を提供しています。具体的には、Grow with Googleと呼ばれるサービスを展開して、スキル形成の習得をサポートするものです。Grow with Googleでは、ビジネス、学生、開発者など、さまざまな立場の人に向けた講義が用意されています。
Googleが推進する海底ケーブルのよくある質問
Googleが推進する海底ケーブルに関する、よくある質問をまとめています。
Q:海底ケーブルとは何ですか?
Answer)海底ケーブルとは、海底に設置された通信用、または電力用のケーブルのことです。インターネットで国際間で通信する際は、海底ケーブルを利用してデータ送受信されるケースが多々あります。そして、インターネットでは、高速でデータ送受信する技術が必要です。そのため、一般的には、光ファイバーの技術を応用した海底ケーブルが利用されています。
Q:海底ケーブルは必要ですか?
Answer)海底ケーブルは、国際間における高速通信を可能にするネットワークインフラです。海底ケーブルがなくなると、たとえば、インターネットで動画視聴する場合に、通信速度が大幅に低下します。現代社会では、インターネット上のサービスが生活の一部になっていますので、海底ケーブルは不可欠な存在です。
Q:新たな海底ケーブルのProaとTaiheiの読み方は?
Answer)Proaは、プロアと読みます。また、Taiheiは、タイヘイと発音します。
マリアナ諸島(CNMI)をカバーするProa(プロア)は、同島における伝統的な文化の帆走カヌーがケーブル名の由来となっています。そして、Taihei(タイヘイ)は、日本語の「太平洋」と「平和」をもとに名付けられました。
Q:なぜ、Googleは海底ケーブルに出資しているのですか?
Answer)これはGoogleに限ったことではありませんが、Google、Amazon、Meta、AppleといったITの世界的な大企業は、クラウドサービスを提供するにあたって、膨大なトラフィックを要します。そして、自国と国外間でデータの送受信をするケースが多く、海底ケーブルを多用しています。こうした背景から、ここ10年ほどで、Googleをはじめとする世界的な大企業が海底ケーブルの事業に乗り出すようになりました。
Q:日本に海底ケーブルを事業とする会社はありますか?
Answer)NECをはじめ、複数の企業が海底ケーブルに関わる事業を持っています。
まず、NECは、海底ケーブルの製造や敷設の業界シェアにおいて、世界3位に名を連ねています。
参考(外部):総務省|令和4年版 情報通信白書
このほか、国内の上場企業では、KDDI、NTT、富士通、三井物産などが海底ケーブルの事業を展開しています。
まとめ