リテンションマーケティングとは?重要性や具体的な手法など
マーケティングを進めるうえで「リテンションマーケティング」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。このリテンションマーケティングとは、どのような意味なのでしょうか?
リテンションマーケティングとは
リテンションマーケティングとは、既存顧客の維持や定着を重視するマーケティング手法です。よく、新規顧客の獲得と対比して使われる用語です。
リテンションとは、もともと「維持」や「保持」という意味合いがあります。この用語の意味から派生して、ビジネス用語として、既存顧客の維持・定着が目的で使われるようになりました。
今のビジネスでは、新規顧客の獲得と同等以上に、既存顧客の維持・定着が重要視されています。なぜなら既存顧客との接点を増やすほうが、利益を出しやすいと考えられているからです。
リテンションマーケティングが重視されている詳しい理由については、次から詳しく解説します。
なぜリテンションマーケティングが重視されるのか?
先ほど、新規顧客の獲得以上にリテンションマーケティングが重要視されているとお話しました。なぜリテンションマーケティングが、重視されているのでしょうか?
その理由について3つ紹介します。
既存顧客のLTVを高めるほうが利益が大きいから
リテンションマーケティングが重視されている理由の1つに、既存顧客のLTVを高めるほうが利益が大きいという理由があります。
LTV(顧客生涯価値)とは、顧客が売り手にもたらす一生分の利益を指します。
このLTVは、次の計算式で求められます。
ただしこの顧客生涯価値には、新規顧客の獲得も含まれています。そのためLTVから見た利益は、次のような計算式で求められます。
この計算式で見たとき、既存顧客から成約を得られるようになれば、上記の「新規顧客の獲得コスト」がかからない計算になります。このように新規顧客を獲得するよりも、既存顧客のサポート力を入れるほうが利益が大きい、というのがリテンションマーケティングの考え方です。
新規顧客の獲得コストを削減できるから
先ほどの「LTVによって既存顧客に力を入れると、利益が大きくなる」という話を深掘りすると、新規顧客の獲得コストを削減することが利益に大きく貢献する、という説明をしました。
まさにリテンションマーケティングの大きなメリットの1つに、新規顧客の獲得コストを削減できるメリットがあります。ビジネス用語の1つに「1:5の法則」という法則があります。
これは、新規顧客を獲得するには、既存の5倍のコストがかかるという法則です。たとえば既存顧客から成約を得るのに20万円かかるとしたら、新規顧客の獲得にはその5倍の100万円がかかる計算になります。
このようにモノ・サービスがあふれる現代社会では、新規顧客の獲得にもコストがかかる市場があるのが現実です。そこですでに既存顧客を獲得している場合は、コスト面で考えると、そこにアプローチするほうが最適な方法であるケースもあります。
休眠顧客を掘り起こせるから
リテンションマーケティングによるメリットは、休眠顧客を掘り起こせる点にあります。休眠顧客とは、過去に取引や商談があったが、今は取引のない顧客を指します。休眠顧客は過去に接点があったぶん、少しアクションを起こすだけで取引にいたる可能性が高い顧客といえます。
また、休眠顧客は過去に接点があったため、メールアドレスや電話番号などの情報をすでにもっているでしょう。そのため「新規顧客のリスト獲得」のような手間がかからず、ダイレクトに取引先の社内まで連絡可能です。また過去に取引があるので、こちらの話を聞いてくれる可能性も高くなります。
このように休眠顧客に焦点を当てて、より取引までつなげやすくするのがリテンションマーケティングのメリットです。
リテンションマーケティングの具体的な手法
リテンションマーケティングの具体的な手法について見ていきましょう。
イベントへの招待
リテンションマーケティングの1つめの方法が、既存顧客限定のイベントを開催することです。「今まで取引していただいたお礼に」というようなプレミア感を演出することで、顧客の参加意欲も高まります。
このイベントの招待は、BtoB、およびBtoCのどちらでも効果の高いおすすめの手法です。
SNS上で情報発信
既存顧客とSNSでつながっている場合、情報発信によって再度取引にいたる可能性が高くなります。SNSは、現代のWebマーケティングにおいても重要視されている手法の1つです。
現在、企業アカウントとして活発に利用されているSNSは、おもに「Instagram」「Twitter」「Facebook」の3つです。そして、既存顧客を成約までつなげるSNS情報発信の内容は、おもに次のとおりです。
<SNS上の情報発信内容>
- クーポンやキャンペーンなど、顧客にとってお得な情報
- ふだんの営業の様子を共有する内容(ファンを増やす)
- イベント情報 など
このように顧客にとって有益であったり、得のあったりする情報を共有することで、既存顧客が再度購入したくなるような要因をつくっていくのがポイントです。
そのため特にBtoCにおいては、企業用のSNSアカウントを発行し、新規顧客が購入にいたる時点でフォローしてもらうように誘導するのがおすすめです。フォローしてもらうことで常に既存顧客との接点ができ、今後何度も購入までいたるチャンスをつくり出せるのです。
関連記事: SNS集客で欠かせない対策と運用のポイントを紹介
メールマガジン
既存顧客と接点をもつ方法の1つに「メールマガジン」があります。すでに顧客にメー-ルマガジンを登録してもらっている場合、新商品の紹介や情報発信によって再度成約にいたる可能性が高くなります。
メールマガジンはSNSと同様、一度接点をもてばその後も既存顧客と関わり続けられるツールです。メールマガジンは現代においても、依然重要なツールの1つです。既存顧客との定着に力を入れたい方は、メールマガジンの運用も視野に入れてみましょう。
CRM
より多くの商品を、より長く購入してもらうために活用するツールが「CRM」です。CRMとはCustomer Relationship Management(顧客関係管理)の略で、顧客の購買や商談履歴などを管理し、より長期的な関係を築くためのツールです。
CRMでは、おもに次のような機能を使えるようになっています。
<CRMの主要な機能>
- 顧客管理(購買や取引履歴などの記録)
- プロモーション管理(アンケートやセミナー管理など)
- マーケティング分析(ニーズや属性に応じた顧客の分析など
このように既存顧客と長期的に良好な関係を築くために、CRMは非常に役立つツールです。
既存顧客を維持するには、新規顧客の獲得を容易にするのがポイント
このように、利益を伸ばすには新規顧客以上に、既存顧客との維持・定着を考えることが重要視されています。しかし、これは新規顧客の獲得にまったく力を入れない、という意味ではありません。
既存顧客との関係性を良好にするには、より新規顧客との獲得を容易にするのがポイントです。新規顧客の獲得が容易になるほど、より既存顧客のサポートに力を入れられるようになります。
そこで新規顧客の獲得を容易にする方法の1つが「コンテンツSEO」です。
新規顧客を獲得しやすい「コンテンツSEO」とは
コンテンツSEOとは、コンテンツマーケティングをインターネット上に活用したマーケティング手法です。インターネット検索結果で自社サイトが上位表示されることで検索ユーザーの流入数を増やし、成約までつなげる手法を「コンテンツSEO」といいます。
コンテンツSEOは、新規顧客を獲得するのにおすすめのマーケティング手法の1つです。その理由について、次から紹介します。
コンテンツSEOが新規顧客獲得に向いている理由
コンテンツSEOが新規顧客の獲得に向いている理由について紹介します。
自ら顧客にアプローチする必要がなくなる
コンテンツSEOは、顧客が自社商品を認知してから成約にいたるまでコンテンツを通じて育成するマーケティング手法です。インターネットの検索を通じて顧客自らがお問い合わせする仕組みをつくれるので、自ら顧客に営業をかける必要がなくなります・
これらコンテンツSEOが、新規顧客に向いていると言われる理由の1つです。
自動で顧客を育成できる
コンテンツSEOでは、顧客の段階別に「カスタマージャーニーマップ」を作成するのが一般的です。このジャーニーマップに基づいて、顧客のフェーズ別にコンテンツを提供することで、自動で顧客を育成できるのはコンテンツSEOの強みです。
カスタマージャーニーマップでは、顧客の流れを「認知」「情報収集」「比較・検討」「購入」の4段階にわけて考えます。記事制作の際は、ペルソナがこの4つの段階のどこにいるのかを明確にし、そのフェーズにあったコンテンツを提供することで、自動で顧客を購入までつなげる仕組みをつくれるのです。
お客様対応の手間を軽減できる
コンテンツを通じて自社にお問い合わせのあった顧客は、すでに自社商品に関する知識をもっていることが多くなります。そのためお客様対応の手間を軽減できるメリットがあります。
特に単価の高い商品の場合、顧客がその製品情報を知らないと、どうしても問い合わせ対応の手間が増えてしまいます。そのぶん、コンテンツSEOを通じてお問い合わせする顧客は、すでに知識をもっているため、新規顧客にかかるコストも下がるのが大きな魅力です。
コンテンツSEOの大まかな流れ
それでは具体的に、コンテンツSEOの流れについて紹介します。
ゴールを設計する
コンテンツSEOでは、まずゴールを設計しましょう。ゴールが曖昧な場合、日々のメディア運用でなにをすればいいのか、具体的なアクションが決まりません。またアクセス解析の精度が低いので、思うような効果を得られず途中で挫折してしまうのです。
そこでオウンドメディア運用を考えるときは、まずゴールを明確化しましょう。ゴール設計はKGI(重要目標達成指標)とKPI(重要業績評価指標)の設定から始めます。まずは、次のようにKGIの設定から始めてみましょう。
<コンテンツSEOのKGI設定例>
- 自社製品をWebサイトから販売する
- 自社製品に関するお問い合わせが入る
- 資料請求される など
次に上記で設定したKGI設定を、KPIで目指すべき数値に落とし込みます。
<コンテンツSEOのKPI設定例>
- Webサイト経由の売上月間100万円
- お問い合わせ数毎月30件
- 資料請求が毎月10件 など
このように、WebサイトのKGI・KPIを設定するところから始めましょう。
ペルソナを設計する
コンテンツSEOのゴールを決めたあとは、ペルソナを設計します。ペルソナとは、自社がターゲットとするユーザー像のことです。ペルソナ設計では仮の人物像を作成し、どのようなユーザーに向けてオウンドメディアを運用するのか明確にします。
ペルソナ設計は1人だけでなく、2~3人で設定するのが一般的です。「年齢」や「職業」などの基本情報のほかに「休日に出かけるところ」や「よく読む書籍」など、細かく人物像を設定するのがペルソナの特徴です。
関連記事: ペルソナとは?マーケティングに必要な理由と設定方法
カスタマージャーニーマップを作成する
ペルソナを設計したあとは、カスタマージャーニーマップを設計します。ジャーニーマップとは、顧客が自社製品を認知してから成約にいたるまでの一連の流れを設計したものです。
顧客は商品・サービスを購入するまでに次のような流れをたどります。
- 認知
- 情報収集
- 比較・検討
- 購入
この一連の流れに、先ほど作成したペルソナをカスタマージャーニーマップに当てはめます。ペルソナが上記のどの購入段階にいるのかを分析することで、次にどのようなコンテンツを出すべきかを明らかにします。
関連記事: カスタマージャーニーマップとは?作る目的と作り方
顧客フェーズごとにコンテンツを作成する
ジャーニーマップをつくったあとは、顧客の購入フェーズに合わせてコンテンツを企画・作成します。さきほど設計したペルソナに、ジャーニーマップの「認知」「情報収集」「比較・検討」「購入」の段階に当てはめ、執筆します。
またコンテンツを作成する際は、検索ユーザーの深層心理である「検索意図」に応えるコンテンツを意識しましょう。
アクセスを解析し、改善とテストを繰り返す
コンテンツを公開したらそれで終わりではありません。公開後は定期的にアクセスを解析して、Webサイトの精度を高めていきます。
アクセスを解析するには、Googleが無料で提供しているツールが便利です。たとえば「Googleアナリティクス」や「Google Search Console(サーチコンソール)」などが無償のツールに該当します。
これらのアクセス解析ツールを駆使して自社サイトを分析することで、日々クオリティを高めていきましょう。たとえば成約までつなげられないコンテンツがある場合、導線設計が悪いのかもしれません。
そこで「お問い合わせボタンを見やすいイラストにする」「シンプルなデザインにする」などの改善を図れます。
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