旅行・観光業界のSEO対策!最新トレンドや具体策など詳しく解説
パンデミック後の現在、旅行業界は急速な回復が進んでいます。日本政府観光局によると2023年12月の訪日外客数は273万4千人を記録しており、これは12月単月の記録としては過去最高となっています。さらに、国連世界観光機関(UNWTO)の『International Tourism Highlights』では2024年の世界観光客数は、コロナ前の水準を上回る見込みと予測されています。
旅行・観光業におけるSEOの重要性
旅行・観光業界では、SEOが非常に重要な集客の鍵を握っています。多くの顧客は旅行の計画を立てる際に検索エンジンで情報を探しているからです。そこでここでは、SEOが重要である具体的な理由を整理して解説します。
信用力が高まる
無形商品を販売する旅行代理店にとって、顧客から選ばれるためには、何より信頼性が鍵を握っています。もし、検索エンジンの結果で上位表示することができれば、この信頼獲得に役立ちます。多くの顧客は、検索結果で上位ランクされている会社のWEBサイトは、信頼性が高いと見なすからです。
事実、株式会社オンジンが2023年7月おこなった調査結果では、検索結果に表示される記事の商品・サービスに対して「完全に信頼している/大部分を信頼している/一部だけを信頼している」と一定の信頼を寄せている人は88.4%に達していると報告されています。検索結果に表示されるというだけで、これだけの信頼を獲得できるのは非常に効果的といえます。
参考ページ:検索結果に表示される商品やサービスに関する意識調査
オールシーズンの集客に備えるため
旅行会社の収益は主に仲介手数料に依存しており、この手数料は旅行費用の約10-15%に過ぎません。しかも、近年は格安旅行の人気が高まっており、利益率も5%以下に低下しています。
参考ページ: 旅行業界 利益率ランキング – 業界動向サーチ
また、観光シーズンが到来したからといって、旅行会社は供給可能な商品に限界があります。例えば、繁忙期だけ宿泊施設を増やして、通常以上の商品数を販売することは不可能です。このように、利益率が低く、オン・シーズンだからといって売上の大幅な伸びが期待できないのが旅行業界の現状です。
こういった背景から、旅行業界ではオールシーズンの集客に備える必要があります。できる限り年間を通して一定数以上の旅行客を確保することが重要です。そして、それにはSEO対策が非常に相性の良い集客方法です。
そもそも、大手旅行会社でない限りWEB広告を活用して、短期間で大量の商品を販売するのは困難ですし、オフシーズンには広告費をカバーするだけの収益を確保するのも難しいからです。一方、SEOで検索上位に表示させることができれば、長期的に安定した集客が期待できます。
オンシーズン | オフシーズン | |
WEB広告 | 繁忙期だからといって大量の商品を販売できないので、WEB広告をする意義が薄い | 利益率が低いため、オフシーズンは広告費をカバーすることが困難 |
SEO | 繁忙期に検索数が増えるに伴い、販売数も増えていく | オフシーズンでも、余分な広告費がかかるわけではないので、利益を確保しやすい |
差別化に有効
旅行商品は主に「食事・交通・宿泊」という3つの基本要素から成り立っています。しかし、この基本要素は、会社の規模にかかわらず、内容に違いを出すことが困難です。そのため、基本要素だけをWEBページで説明しても、他社との差別化ができません。結果として、価格競争に陥ってしまいます。
そこで、3つの基本要素に加え、どのような体験や出会いが期待できるのかといった付加的な魅力をWEBサイトで伝えることが重要です。
実際、公益社団法人日本観光振興協会の『令和5年度版 観光の実態と志向 ~第42回国民の観光に関する動向調査~』によると、旅行先で地元の人と交流したいと考える顧客が15-40%程度存在しています。具体的には「地元の方がよく利用するお店に行き、地元の方と交流したい」「地元の方のガイドで観光施設を巡りたい」などのニーズです。
こういった「食事・交通・宿泊」以外のニーズをとらえ、それを体験記や紹介文としてWEBサイトに記載することで、他社との差別化が可能です。
こういった差別化戦略には、コンテンツマーケティングが最適です。WEB広告では伝えられる情報に限界がありますが、コンテンツマーケティングなら、豊富な情報量を掲載できるからです。
しかも情報が充実しているほど、検索エンジンからも高く評価されます。このように、コンテンツマーケティングに取り組むことは、他社との差別化とSEOの集客効果の両方につながります。
参考ページ:令和5年度版 観光の実態と志向 ~第42回国民の観光に関する動向調査~
旅行・観光業のSEO最新トレンド
ここでは、旅行・観光業のSEO最新トレンドを取り上げ解説します。SEO対策をおこなうときには、ここでお伝えしている傾向を踏まえて進めてください。
参加者を含むキーワード
旅行は「誰と参加するか?」ということが非常に重要です。従来、旅行代理店のツアーといえば観光バスを何台も連ねて、不特定多数の人と旅行にいくことが一般的でした。しかし近年は、小グループや個人など、限られた参加者で旅行にいくことが増えています。例えば、家族、カップル、同じ学校の同級生などです。
そのため、「旅行」などの大きなキーワードではなく「東京旅行 +家族」「信州+ハネムーン」「大阪+卒業旅行」など、旅行に参加するメンバーを表現したキーワードでSEO対策をおこなってください。
宿泊観光旅行同行者(2021年度)
同行者 | 割合 |
家族 | 55.8% |
友人・知人 | 20.9% |
家族と友人・知人 | 3.1% |
職場・学校の団体 | 0.8% |
地域・宗教・団体 | 0.2% |
自分1人 | 17.1% |
参考ページ: 数字が語る旅行業2023 – 一般社団法人日本旅行業協会
旅行目的を含むキーワード
近年、旅行者の間で特定の目的を持って旅行する傾向が増加しています。これには「グルメツアー」、「農業体験」、「研修旅行」、「特定施設の見学」などが挙げられます。
訪日外国人旅行者がしたいこと
目的 | 割合 |
日本食を食べる | 72.2% |
ショッピング | 47% |
繁華街の街歩き | 26.2% |
日本酒を飲むこと | 27.9% |
自然観光 | 45.8% |
日本の歴史・伝統文化体験 | 27.4% |
四季の体験 | 27.6 |
日本のポップカルチャーを楽しむ | 10.9% |
映画アニメのロケ地など訪問 | 8.7% |
参考ページ: 数字が語る旅行業2023 – 一般社団法人日本旅行業教会
このような目的を持つ旅行者は、訪日外国人、国内旅行者ともに同じ傾向があります。そこで、旅行会社や観光地のSEO戦略としては、単に地域名をキーワードとして使用するだけでなく、「地域名+グルメ」や「地域名+農業体験」といった具体的な旅行目的を組み合わせたキーワードに注目してください。
こうすることで、旅行意欲の高い顧客にリーチすることができ、ターゲットを絞った効率的なSEO対策が可能です。
MICE需要
近年、官公庁や各都道府県はMICEに力を入れています。MICEとは「Meeting(会議)」「Incentive(報奨旅行)」「Convention(大会・会議)」「Event(イベント)」の頭文字を取ったもので、特定の目的を持った人々が一箇所に集まって活動することを指します。例えば、仙台市や京都市では、宿泊を伴う会議や研修会の開催を積極的に誘致し、開催する企業や団体に助成金を提供するなどの対策をおこなっています。
参考ページ: 京都を選ぶ4つの理由(なぜ京都がMICE開催地としてふさわしいのか?)
このような制度の存在は、企業にとって研修や視察の開催を検討する際の魅力的な要素です。そのため、SEO対策においても、「地域名+研修」「地域名+視察」といったキーワードに焦点をあて法人・団体客にリーチするようにしてください。
旅行・観光業のSEO対策
ここでは、旅行会社がとるSEO対策について詳しく解説します。基本になるので、この点をしっかり守って対策をおこなってください。
一次情報を公開する
旅行業界と観光業界におけるSEO対策では、独自の調査を行い、その結果を発表することが効果的です。例えば、人気ランキングや特定の地域のグルメランキング、アクティビティに関する調査結果など、独自の情報を提供してください。
こういった情報は顧客が求めている情報でかつ、SEOでの評価を高めるうえでも効果的だからです。検索エンジンは独自のデータやコンテンツを高く評価します。そのため、自社で調査したランキング情報などの一次情報は、上位表示に大いに役立ちます。
参考ページ:一次情報とは?獲得するポイントや具体的な事例を解説
ローカルSEO
実店舗を持つ旅行会社にとって、ローカルSEOの取り組みは重要です。ローカルSEOとは、実店舗がある地域に関連するキーワードを用いた検索エンジン最適化のことです。
例えば、「新宿+旅行代理店」といったキーワードは、新宿周辺に住む人々が旅行代理店を探す際に役立ちます。このようなローカルSEOは、実店舗を持つ旅行会社にとって中核となる対策の1つです。
参考ページ:地域のSEO対策とは?ローカルSEOをするべきケースについて解説
最新情報の反映
旅行会社のWEBサイトにおいては、最新情報を迅速に更新することが重要です。なぜなら、観光地の魅力は季節によって変わるうえ、このタイミングでしか実施されないイベントなども存在するからです。
こういった季節ごとの魅力やイベント、アクティビティなどの情報をタイムリーに更新することで、顧客のニーズに応えることができます。また、検索エンジンは新鮮で関連性の高いコンテンツを好むため、定期的な情報更新はSEOに良い影響を与えます。
旅行・観光業のSEOで注意すべきこと
ここでは、旅行・観光業のSEOで注意すべき点をお伝えします。注意点を守って実務にあたってください。
画像検索最適化
旅行業界においては、画像の検索対策が重要です。多くのユーザーは観光地や旅行先に関する情報を探す際、テキスト検索だけでなく、画像検索を活用しているからです。画像は観光地の魅力を直感的に伝える力を持ち、顧客が目的地を視覚的にイメージするのに役立ちます。
そのため、旅行業界のWEBサイトでは、高品質で魅力的なオリジナル画像を活用するようにしてください。また、これらの画像には適切なキーワードやファイル名を設定することも必要です。
参考ページ:画像SEO(画像検索最適化)とは?SEOに有効な画像の設定ポイントを解説
キャンセル料を丁寧に記述する
日本旅行業協会消費者相談室によれば、顧客から最も多く寄せられる相談はキャンセル料に関するものです。「小さな文字で書いてある」などのことで顧客と会社側で、キャンセル料に関する条件が十分共有されているとはいえません。
また、旅行のキャンセルに際しては、連絡の有無やその時点での日時によって料金が異なるため、顧客とのトラブルにつながりやすいです。このような状況を避けるためには、WEBサイトでキャンセルに関する規定や注意事項を明確にし、かつ繰り返し情報を伝えることが非常に重要です。それは結果として、自社の信頼につながり、リピーター獲得に有効だと考えます。
参考ページ: 平成27年度 JATA消費者相談室対応苦情件数報告分析
旅行・観光業SEOのよくある質問
ここでは、旅行・観光業について、よくある質問の中から代表的なものを取りあげ解説します。
Q:SEO対策を外注することはできますか?
Answer)旅行業界においてSEO対策を外注することは可能で、多くの企業が実際にそうしています。外部の専門企業やコンサルタントはSEOの専門知識と経験を持ち、かつ最新のトレンドに精通しています。こういった情報やスキルを一般企業が通常業務と並行して進めることことは困難です。そのため、外注により、社内リソースの節約、時間の効率化などをおこなうことがおすすめです。
参考ページ:SEO対策会社とは?業者に依頼するメリットと選び方をご紹介
Q:SEO対策の費用は?
Answer)SEO対策の費用は、どのようなサービスを依頼するのかによって異なります。例えば、コンサルティングを依頼する場合、月額20-50万円程度です。コンテンツSEOであれば、数千円から10万円程度です。
参考ページ:SEO対策の費用は? Googleで検索上位に表示するための費用を解説
Q:Googleビジネスプロフィールは活用すべき?
Answer)旅行・観光業においてGoogleビジネスプロフィールの活用は重要です。Googleビジネスプロフィールを利用することで、特にローカル検索での露出が高まります。さらに、企業の営業時間や場所、連絡先情報などを提供できるだけでなく、顧客レビューや写真なども掲載できるからです。
参考ページ:Googleビジネスプロフィールとは?集客ツールとしてのメリットや登録方法などを解説
Q:モバイルフレンドリーなWEBサイトとは?
Answer)旅行業界のWEBサイトでは、モバイルフレンドリーであることは重要です。多くのユーザーがスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を使用してインターネットにアクセスするからです。特に旅行業界では、顧客が移動中や外出先で情報を検索する機会が多いため、モバイルフレンドリーは必須です。また、Googleなどの検索エンジンは、モバイルフレンドリーなサイトを検索結果で優遇するため、SEOにおいてもプラスの影響があります。
参考ページ:モバイルフレンドリーアップデートとは?変更の背景や最適化の方法など解説
まとめ