STP分析とは?マーケティングのフレームワークとSTP分析を使ったSEO対策を解説
STP分析をおこなうことにより、市場や競合他社、顧客について分析できます。STP分析は段階的に分析をおこなうため、利用しやすく、マーケティング戦略を考えるうえでとても有効です。質の高いマーケティング戦略を見いだすには、正しい認識で分析する必要があります。
STP分析によるマーケティングは「絞り込みマーケティング」とも呼ばれています。STP分析は、まずセグメンテーションで市場の全体像を把握し、ターゲティングで狙うべき市場を決定し、ポジショニングで競合他社との位置関係を決定するフレームワークのことです。SEO対策においても、有用です。Googleアナリティクスによりサイトへの流入の全体像を把握し、その中から特に狙うべきターゲットを決めて、そのターゲットに対し他社とのポジショニングを確認して、勝てるSEO対策を施します。
STP分析とは
STP分析とは、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の頭文字をとった略称です。
セグメンテーション | 市場の細分化 |
ターゲティング | 細分化した市場のなかでどの市場を狙うか |
ポジショニング | 狙った市場での立ち位置を決める |
どのような市場も常に変化しており、市場の変化に伴い、顧客のニーズや競合他社の動向も変化します。市場を変化させる要因は、物価や世界情勢の変化など多岐にわたります。
市場が変化することにより、商品やサービスに対する顧客からの評価も変化すると考えることが重要です。さまざまな変化に対応し、市場について分析し、適切な戦略をたてることが重要です。そのためにSTP分析を活用することで、効果的に市場に参入でき、顧客に向けて適切にアプローチできます。
また、STP分析はターゲットを絞り込むマーケティングであるので、マスメディアを利用した幅広い層にアピールするマーケティングとは真逆の方法です。
STP分析がマーケティングで重要な理由とメリット
STP分析がマーケティングで重要である理由は様々ありますが、主な理由について解説します。
- 顧客の確認
- 自社の強みを明確化
- 競合他社との差別化ポイントの把握
- プロモーション戦略の基礎を構築
顧客の確認
STP分析のフレームワークを活用することにより、市場における顧客や顧客のニーズを確認できます。
市場を細分化する過程(セグメンテーション)で、顧客が市場にどれほど存在しているのか確認が可能です。自社の商品やサービスなどの顧客となりうる層を把握でき、顧客ニーズやペルソナを具体的にイメージできます。
細分化された市場における顧客について、具体的にイメージし、商品やサービスなどのPR方法を見いだせます。
自社の強みを明確化
STP分析で市場の細分化をおこない、顧客の確認をすることにより自社の商品やサービスの特徴が顧客へのアピールポイントとして成り立つかなどを確認でき、自社の強み(USP)を明確化できます。
自社の商品やサービスの強みを明確にすることにより、効果的なマーケティングをおこなえます。また、強みを明確にしておくことにより、組織的にも統率がとれたマーケティングをおこなえます。
競合他社との比較と差別化要素の把握
STP分析ではポジショニングの段階で、市場における自社の立ち位置を確認するため、自社と競合他社の比較をします。商品やサービスの内容や価格などの特徴を比較するため、競合他社との差別化ポイントを把握できます。
また、自社と競合他社の立ち位置を把握することにより、不利な争いを回避できることできます。
プロモーション戦略の基礎を構築
STP分析では顧客のニーズや市場における自社の立ち位置を確認できるため、プロモーション戦略の基礎を構築でき、具体的な方針を考えることも可能です。
具体的に練られたプロモーション戦略は、組織内で共通認識として浸透させられるため、統率のとれたプロモーション戦略へ展開できます。
STP分析の各段階の指標
STP分析は、基本的には1: セグメンテーション(Segmentation)2:ターゲティング(Targeting)3:ポジショニング(Positioning)の順番もしくは同時進行で分析をおこないます。それぞれの段階別の解説をします。
1:セグメンテーション(Segmentation)
セグメンテーションでは、以下の指標を用いて市場の細分化をおこないます。
- 人口統計的変数(性別・年齢・職業・家族構成など)
- 地理的変数(地方、気候、人口密度、文化など)
- 心理的変数(性格・価値観・ライフスタイル・趣味など)
- 行動変数(買い物の頻度・買い替えのタイミング・使用用途など)
これらの指標がよく使われますが、共通のニーズがあれば、セグメントする切り口は何でも構いません。
例えば、新しいビールを販売すると仮定します。お酒は20歳以上から飲め、ビールは夏場に飲まれることが多いため、年齢と気候などで市場を分割でき、購入頻度などを考えるとさらに市場を分割可能です。
さまざま指標で市場を分割することにより、商品やサービスを必要としているユーザー層とターゲットは一致するかなどを分析できます。
そのほかにも、独自の指標を設けることにより、効果的な分析がおこなえます。自由にセグメントしてみましょう。
2: ターゲティング(Targeting)
ターゲティングとは、市場で狙うユーザー層を絞る作業で、セグメンテーションと同時並行におこなわれることが多いです。セグメンテーションは市場を分ける作業であるのに対し、ターゲティングは絞る作業です。
ターゲティングを効果的におこなう3パターンを紹介します。
- 無差別型ターゲティング
- 差別型ターゲティング
- 集中型ターゲティング
無差別型ターゲティング
セグメンテーションで細分化された市場間の違いを考慮せず、商品やサービスを幅広く展開する手法です。ターゲットとなるユーザー層が幅広い食品などのターゲティングの場合やプロモーション戦略のための予算が潤沢にある会社などがおこなう方法です。
具体的なターゲティングをしない手法として考えられます。資金力にものを言わせた強者の論理で市場を席巻します。
差別型ターゲティング
細分化した複数の市場のニーズに沿った商品やサービスなどを展開する手法です。それぞれの市場ニーズに沿って、商品やサービスなどに対する具体的な設定をおこないます。そのため、市場にあわせた複数の料金設定や商品ジャンルなどを設定して展開します。
例えば、新商品のビールを販売することを考えます。地域によってビールのジャンルやパッケージ内容を変更したり、料金設定を変更したりすることにより、地域で分けられたターゲットにそれぞれに好まれる最適なプロモーションが可能です。
差別型マーケティングは多くの企業が採用している手法です。
集中型ターゲティング
集中型ターゲティングはセグメンテーションによって細分化された特定の市場に対してマーケティングをおこないます。他の市場では成果を期待できないが、特定の市場にプロモーションをおこなうことにより、大きな成果を得られると考えられるときに有効な手法です。
例えば、ビールは多くの方が手に取りやすい料金や質であることが重要ですが、地域を絞って高級ビールや特別な方法で作られたビールなどを販売することを考えます。他の地域では成果が期待できない商品でも、地域を限定的にすることにより、大きな成果につながることは少なくありません。
このように特定の市場に対して、マーケティングをおこなう手法です。ニッチなマーケットを狙う手法です。
3:ポジショニング(Positioning)
ポジショニングは、細分化された市場において、自社のポジションを設定する作業です。ポジショニングで重要なことは、競合他社と比較することを常に考えることです。商品やサービスの内容や料金、販売方法など、多くの指標を活用して比較します。
市場で競合他社と比較することにより、参入して成果をあげられる見込みがあるかを考えられます。例えば、市場の代表格となるような大手企業が競合他社である場合、成果を上げられる見込みがなければ市場を変える必要があります。競合他社が少ない市場や成果を上げられそうな市場で、自社の立ち位置を決定することにより市場を独占できる可能性があります。
適切なポジショニングをおこなうために、さまざまな指標をもとに競合他社と比較する必要があります。
STP分析の手順
STP分析を正しい手順でおこなうことにより、正しいマーケティング戦略を考えられます。
- 目的の明確化
- 市場の細分化(セグメンテーション)
- 市場の決定(ターゲティング)
- 市場内で位置関係の把握(ポジショニング)
- マーケティング戦略の決定
1.目的の明確化
STP分析をおこなう前に、分析をおこなう目的や目標を明確にしてください。例えば、既存の商品やサービスのマーケティング方法を改めるなどの目的を明確にします。また、売上金額や個数を数値化するなど、具体的な目標の設定もおこないます。
STP分析前に考える目標や目的を、分析を行ううえでの軸とします。
2.市場の細分化(セグメンテーション)
セグメンテーションをおこないます。マーケティングをおこなうために重要である要素で市場を細分化します。細分化する指標は、人口統計的変数、地理的変数、心理的変数、行動変数など、もしくは必要に応じて独自の要素で細分化してください。共通のニーズがあればそのニーズを指標としてセグメントします。
3.市場の決定(ターゲティング)
セグメンテーション後もしくは同時並行でターゲティングします。こちらも前述したような手法でターゲティングしてください。
マーケティングする商品やサービスなどが勝てる市場の決定をおこないます。市場が成長している、もしくは競合他社が少ない市場を選ぶことがポイントです。
4. 市場内で位置関係の把握(ポジショニング)
決定した市場で競合他社と自社の比較、分析をおこない、立ち位置を決定します。競合他社の立ち位置や市場規模に応じて立ち位置を決定してください。マトリックス表を用いて、立ち位置を可視化する方法が有効です。
5. マーケティング戦略の決定
STP分析によって、市場調査や競合他社などとの比較で得た内容をもとに、具体的なマーケティング戦略を決定します。
商品やサービスのプロモーション方法や商品開発などについて考え、設定している目標や目的を達成できるかを判断し、具体的なマーケティング戦略を考えます。
マーケティング戦略が決定すれば、実行するのみです。
STP分析を実施する前に必要な準備
STP分析は、あらかじめ多くの情報を準備しておくことにより、見いだせるマーケティング手法の質が向上します。
- 顧客把握
- 競合把握
- 過去の自社実績把握
準備した情報をいかしたり、改めたりすることにより、効果的なマーケティング手法を見いだせます。
顧客把握
ターゲットと仮定している顧客の数や性別、属性などを把握します。把握している要素が多いと、セグメンテーションを効果的におこなえます。
競合把握
市場や顧客に対する競合情報を把握します。競合情報をもとに、シェアや過去の実績、動向の変化などを把握します。ターゲティングやポジショニングの作業で重要な内容です。
過去の自社実績把握
自社の商品やサービスなどの顧客情報や実績をもとに、ターゲット層を仮定します。過去の実績をもとに仮定した顧客とSTP分析によって見いだせたターゲット層を比較し、有効なマーケティング手法を考えられます。
STP分析を使った有名企業の事例
STP分析を効果的におこなったマーケティング手法により、成功している企業は多く存在し、代表的な事例が以下のとおりです。
- マクドナルド
- トヨタのレクサス
- ヤッホーブルーイング
それぞれの企業でセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングがどのようにおこなわれているか解説します。
マクドナルド
マクドナルドは誰もが知る大企業ですが、STP分析のフレームワークに当てはめてみるとそのマーケティング戦略がよくわかります。
セグメンテーション
飲食業界をセグメントしていくと、マクドナルドはハンバーガー、フライドポテト、コカ・コーラを提供しており、意識的に豪華な高級レストラン市場から遠ざかり、アクセスしやすい場所で予算に優しいブランドとしての地位を確立しています。
また、マクドナルドでは、「デリバリー」や「デジタル」「未来型店舗体験」などでも最近はセグメンテーションしており、時代とマッチしたことにより大きな成果につなげています。
ターゲティング
マクドナルドは商品を提供するスピードと安さが特徴であると考え、30代から40代の家族層をターゲットとしています。マクドナルドのターゲット層は低所得層から中所得層であることがわかります。
家族層をターゲットとすることにより、一度に利用する顧客数を増やし、販売数や単価アップにつなげています。
ポジショニング
ハンバーガーのお店は多く存在しますが、マクドナルドは「提供スピード」や「安さ」「モバイルオーダー」などのサービスで独自のポジションを築いています。
トヨタのレクサス
ラフな格好で乗れる高級車として、独自のブランディングに成功しているトヨタのレクサスをSTP分析してみます。
セグメンテーション
レクサスは「国」や「年齢層」「消費者所得」でセグメンテーションしています。大衆高級車として売り出すことを目的としています。
ターゲティング
高級車は成功者のシンボルとした価値観で利用されることが多いですが、レクサスはそのような価値観とは違う感覚をもった、カジュアルな高級車を求める層をターゲットとしています。
ポジショニング
ターゲティングからレクサスのポジションはある程度定められますが、先進的で高品質な車というポジションでマーケティング戦略を行っていることがわかります。
ヤッホーブルーイング
ヤッホーブルーイングは、クラフトビールメーカーで、ユニークなネーミングとキャッチーなパッケージにより、注目を集めています。
セグメンテーション
ヤッホーブルーイングは、ビール離れしている層を意識したセグメンテーションをおこなっています。そのため、パッケージや商品名はキャッチーなものが多いです。
ターゲティング
アラサー男子を設定しており、ビールは嫌いじゃないけど、おしゃれな飲み物でないと考える層をターゲットとしています。
ポジショニング
個性的なネーミングであることにより、飲む人が他の人に自分らしさを伝えられるビールとしての立ち位置を築いています。
STP分析とSEO対策
サイトのSEO対策を行うときにもSTP分析のフレームワークは使えます。GoogleアナリティクスでWebサイトへのトラフィックの属性をセグメントして確認します。ユーザー<ユーザーの分布で年齢や性別までセグメントできます。
また、ユーザー<ユーザーエクスプローラーで実際のターゲットとなるペルソナの抽出ができます。サイトへの訪問ユーザーの動きがわかります。
これらのデータを元に、セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングを考えます。
40代男性の訪問者が多く、実際のコンバージョンデータも同じペルソナであることから、ターゲティング属性は40代男性に決まります。競合とのポジショニングを考えるには、SEO対策の場合、各キーワードで何位に表示されているか競合との比較をすることが必要です。ポジショニングを考える良いデータとしてSEMRUSHのマーケティングツールが有用です。
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競合と自社のサイトの検索クエリの順位と流入を比べることで、ターゲティングした市場でのポジショニングを考えていきます。競合が強すぎればその市場を避けることも考えます。
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このように、STP分析のフレームワークは、常に、セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングを確認してマーケティング戦略に役立てます。
まとめ
STP分析は市場における競合他社と自社の立ち位置の把握やターゲットを考えるうえで効果的な方法です。マーケティング戦略を考えるうえで、さまざまな内容についての分析は重要で、STP分析以外にも4C分析やSTEP分析など多くの分析方法があります。売り出したい商品やサービスなどによって、どのような分析を行うのかの判断もマーケティング戦略を考えるうえで重要です。さまざまな分析方法を知っておくことは、成果をあげるためにも重要なことです。