不動産業界にオウンドメディア運用が重要な理由は?始め方も紹介
不動産業界には、オウンドメディアを運用する企業があります。オウンドメディアを運用することで、どのような成果を得られるのでしょうか?
不動産業界がオウンドメディア運用を通じてコンテンツを制作すると、ニーズが顕在化していない潜在顧客にもアプローチできるメリットがあります。そのため、集客力を高めたいと考えている不動産会社にこそ、運用を検討する価値があるのです。
不動産業界にオウンドメディア運用が重要な理由
不動産業界にオウンドメディア運用が重要な理由は何でしょうか?
信頼を獲得しやすい
オウンドメディア運用では、検索ユーザーの悩みや不安を解決するコンテンツを制作することで、顧客の集客から購入・リピートまでつなげるのを目標にします。この検索ユーザーの不安や悩みを解決するコンテンツは、顧客からの信頼を獲得しやすいメリットがあります。
たとえば、不動産仲介会社のオウンドメディアで「アパート 探し方」の検索クエリに対するコンテンツをつくると想定します。このコンテンツでは、次のような情報が記載されているとします。
- 優良なアパートの探し方
- 住んではいけないアパートの特徴
- アパートの相場費用
- 契約してはいけない不動産仲介会社の特徴
- 前もって知っておきたいアパートに関するプチ知識
入居するアパートを探している検索ユーザーにとって、このような情報がわかりやすく、また専門的に解説されていると、信頼を寄せやすくなります。これが不動産仲介会社選びの決め手となる可能性もあるのです。
このように新規顧客からの信頼を獲得するにも、オウンドメディアは必須の媒体といえます。
顧客獲得単価を下げられる
不動産業界が潜在顧客をアプローチできるオウンドメディアには、顧客獲得単価(CAC)を下げられるメリットがあります。
不動産業界において、顕在顧客向けのリスティング広告の顧客獲得単価(CPA)は高い傾向にあります。たとえば賃貸仲介の「物件お問い合わせ」のCPAでも、おおむね10,000~15,000円程度です。これは粗利率の高い不動産業界において、競合他社が高くクリック単価を設定しているため、自ずと高くなってしまうからです。
競争に強い不動産会社なら問題ないかもしれませんが、中小や零細企業にとってはコンバージョンまで至らず、広告費が積み重なっているケースも多いかもしれません。
対照的に、オウンドメディアのコンテンツで数多くの”潜在顧客”にアプローチし成約につなげられれば、リスティング広告よりも顧客獲得単価を下げられる可能性が十分にあります。さらにリスティング広告と違い、オウンドメディアのコンテンツは半永久的に残り続けます。そのため集客力のあるコンテンツをつくれると、より顧客獲得単価を下げられるのです。
オウンドメディアの始め方
オウンドメディアを始める手順について紹介します。
戦略を設計する
オウンドメディアをつくる前に、まずは戦略を設計します。オウンドメディアの戦略設計は、企業が商品やサービスを世に売るためのマーケティングと変わりありません。
挙げ始めたらキリはありませんが、最低限、次のような点は決めておきます。
- 市場調査…ターゲットとする市場にどれほどの規模があるのか、充足できていないニーズはないか、など
- オウンドメディアの目標…売上○○円、お問い合わせ件数月○件など
- ペルソナ…自社オウンドメディアのターゲットとなる人物像
- エディトリアルカレンダー…いつどのようなコンテンツをつくるのか、どれほどの頻度で投稿するのか、など
- 運用体制…コンテンツ投稿や内部対策などの各担当者決め、どこまで内製、外注するか、など
オウンドメディアがうまくいかない原因の1つに、戦略を決めずに運用しているケースがあります。オウンドメディア運用を考えるときは、まず運用の目標や細かな体制を決めることから始めます。
オウンドメディアを制作する
オウンドメディアを制作する場合、その方法は次の2つにわけられます。
- Web制作業者やフリーランスに制作を依頼する
- 既存のツールを使って自社で構築する(WordPress)
もっともオーソドックスなのは、Web制作業者やフリーランスにサイト制作を依頼する方法です。Web制作会社の場合、料金は高くなるものの、安定した質でサイトを制作できます。
一方でフリーランスに依頼する場合、サイトの質は個人の腕に左右されるものの、価格を抑えながら制作可能です。
また外部に依頼するのではなく、既存のツールを使って、自社でサイトを構築する方法もあります。もっとも有名なツールは「WordPress」です。WordPressを使えば「サーバー代」と「ドメイン代」の2つのコストのみで、オウンドメディアを構築できます。
ただし、最低限のHTMLやCSSの知識が必要なので、慣れていない方は外部に制作を依頼するのがおすすめです。
不動産系オウンドメディアの具体的な運用手順
不動産業界が対策できるキーワードを例に、オウンドメディアの具体的な運用手順について紹介します。
- ペルソナをつくる
- カスタマージャーニーマップを作成する
- 検索クエリを洗い出す
- 検索意図に答える記事を書く
- アクセス解析で改善を繰り返す
ペルソナをつくる
まずはオウンドメディアがターゲットとするユーザー像を明確にします。この具体的なユーザー像を「ペルソナ」といいます。たとえばリフォーム会社がオウンドメディアを運用する場合、次のようなペルソナを設計できます。
性別 | 男性 |
年齢 | 37歳 |
職業 | 会社員 |
収入 | 400万円 |
会社 | 製造業 |
既婚・未婚 | 未婚 |
居住地域 | 長野県 |
学歴 | 4年制大学卒 |
趣味 | 野球観戦 |
このようなプロフィール情報を設定して、具体的な人物像を決めていきます。なおペルソナを設計するには、既存顧客を分析したり、実際に顧客にインタビューしたりする方法があります。
カスタマージャーニーマップを作成する
上記で設定したペルソナの情報ニーズをもとに、カスタマージャーニーマップを作成します。カスタマージャーニーマップとは、顧客が購入まで至る一連の流れを、旅(ジャーニー)のように可視化したものです。
上記のペルソナをカスタマージャーニーマップに当てはめると、次のようになります。
- 認知…家が寒い原因を探しており、Webサイトを通じて「断熱リフォーム」で解決できることを知った。
- 情報収集…「断熱リフォーム」以外にも、家の寒さを改善できる方法を調べたくなった。
- 比較検討…詳しく調べると「断熱リフォーム」以外にも2つ、家の寒さを改善できることを知った
- 購入…コストパフォーマンスを考えると「断熱リフォーム」がベストな方法だとわかったので、依頼を検討。
このようにカスタマージャーニーマップを作成することで、どの情報ニーズの段階に対して、どのようなコンテンツを提供すればいいのか明らかになります。
検索クエリを洗い出す
コンテンツを制作するために、まずは検索クエリを洗い出します。検索クエリとは、GoogleやYahoo!などの検索ボックスに入力する単語(の組み合わせ)です。検索クエリを洗い出す際、自社のターゲットとなるユーザーがどのような単語を検索するかを想像します。
たとえば、断熱リフォームの存在を認知してもらうコンテンツを目的とした場合、次のようなクエリを洗い出せます。
- 家 寒い
- 夏 家 暑い
- 家 床 冷たい など
このような検索クエリを洗い出し、次に書く記事を決めていきます。
検索意図に応える記事を書く
洗い出した検索クエリの中から、記事を執筆するキーワードを決めます。このとき、キーワードごとに「検索意図」を分析してください。
ユーザーが検索ボックスに単語を入力する目的を「検索意図」といいます。この検索意図に対し、最適な答えを返すのがコンテンツの役割です。
たとえば「家 寒い」と検索するユーザーには、次のような検索意図があると推測できます。
- 冬の寒い時期にエアコンで暖房を入れているが、家が寒いままで居心地が悪い
- 家が寒くなる原因を知りたいと考えている
- 簡単にできる対処法から実践したいと考えている
このような検索意図に対し、次のようなコンテンツで返します。
- 家が寒い原因の1つには、家の断熱機能が弱っている可能性がある
- 断熱リフォームを実施することで、長期間、冬でも暖かい家に住めるようになる など
このようにユーザーの検索意図に対し、最適な答えを返せるようなコンテンツづくりを意識してください。
関連記事: SEOにおける検索意図の重要性!調べ方から利用方法まで
アクセス解析で改善を繰り返す
コンテンツを投稿したら、それで終わりではありません。アクセスを解析して、改善を繰り返して質の高いオウンドメディアを目指します。
サイト訪問数や成約数を分析し、数値のよいコンテンツを参考にして、アクセス状況の悪い記事を見直すやり方がおすすめです。なお、アクセス解析には次の2つの無料ツールが必須です。
- Googleアナリティクス…サイトへのアクセス状況を解析できるツール。PV数やUU数など、細かな数値を分析できる。
- Google Search Console…ページの検索結果の表示回数や、被リンクなどを解析できるツール。またサイトのインデックス状況なども解析できる。
不動産系オウンドメディアで成果を出すための3つのポイント
不動産系オウンドメディアを運用するうえで、ぜひ知っておきたい3つのポイントを紹介します。
コンバージョンポイントを意識する
不動産系のコンテンツをつくるとき、コンバージョンポイントを意識します。コンバージョンポイントが明確になると、オウンドメディアの戦略や、コンテンツの内容などが明確になります。
コンバージョンとは、サイトの最終目標です。たとえばリフォーム会社がオウンドメディアを運用する場合、たとえばコンバージョンポイントは「リフォームの受注」です。自社の潜在顧客を集客し、コンテンツを通じてリフォームを受注できるまで育成します。
生活に役立つコンテンツをつくる
不動産系オウンドメディアでは、検索ユーザーの生活に関わるようなコンテンツづくりを意識します。不動産業界はBtoCとなるケースが大半なので、ユーザーが生活を送るうえで直接メリットになるようなコンテンツが不可欠になります。
たとえば不動産投資会社であれば、ただ商品のメリットを勧誘するだけのコンテンツではいけません。「不動産投資」というコンテンツをつくる場合、次のようなポイントを意識するのが重要です。
- 不動産投資をする人がどのような生活を送っているのかを分析
- 不動産投資をすることで、生活上どのようなメリットがあるのかを提示
- 不動産投資は、どのようなデメリットがあるのかも説明
このように自社商品を購入するとユーザーの生活にどのように影響するのか、相手の気持ちになってコンテンツをつくるのが重要です。
信頼獲得を重視する
不動産業界では、顧客から信頼を獲得することは非常に重要です。それはオウンドメディア運用でも同じで、検索ユーザーから信頼を得ることが成約率を高めることにつながります。
オウンドメディア運用で信頼を獲得するには、次のような点を意識します。
- 検索ユーザーの不安や悩みに対し、最適な答えを返す
- 正しい情報で執筆する(必要に応じて信頼のおける情報元を明記する)
- 著者のプロフィール情報を明記する
- 運営会社を明記する など
特に不動産業界の単価は高いことから、上記のようなユーザーが安心できる情報を記載し、信頼獲得に努めます。
オウンドメディア運用の3つの注意点
オウンドメディア運用の注意点を知らないと失敗する可能性が高いので、ぜひ理解してください。
すぐに成果は出ない
オウンドメディアは、運用を始めてからすぐに成果が出るものではありません。継続が非常に重要なので、長期で計画を組むのがオウンドメディア運用の鍵です。
Webメディア「MarkeZine」を運営する株式会社翔泳社が「オウンドメディアで成果を感じるまでにかかった期間」について調査したところ、35.1%が「1年以上~2年未満」と回答しました。逆に「6ヶ月未満」と回答した企業は、全体の8.8%しかいません。
このようにオウンドメディア運用で成果が出るまで、早くても6ヶ月以上、通常1年以上かかります。そのため短期で成果を求めるのではなく、1年スパンで予算やコンテンツ戦略などを計画してください。
出典:BtoB企業の6割がオウンドメディアに積極的/運営中の3割が効果実感までに1年以上【ベーシック調査】:MarkeZine(マーケジン)
SEOへの理解が必要
オウンドメディア運用で成果を出すには、SEOへの理解が必要です。SEOの知識が不足していると成果が出ない可能性があるので、注意が必要です。
SEOとは「Search Engine Optimization」の略称で、日本語で「検索エンジン最適化」と呼ばれます。検索からサイトへの訪問数を増やすマーケティング手法です。SEOの施策は、主に「内部対策」と「外部対策」の2つにわけられます。
- 内部対策…サイトの内部を調整する施策。ページの表示速度の向上や、内部リンクの最適化などを行う。
- 外部対策…被リンクを獲得するための施策。
このように専門の知識が必要なため、自社でSEOに関する知識が不足する場合は、専門の人材を採用したり外注したりするなどの工夫が必要です。
コンテンツ制作のリソースを確保する必要がある
オウンドメディア運用で重要なのは、コンテンツの制作です。コンテンツの制作には時間がかかるので、リソースを確保するようにしてください。
コンテンツ制作のリソースを確保するには「内製化」または「外注」の2つの方法があります。可能であれば、コンテンツ制作を内製化するのがおすすめです。商品・サービスに一番詳しいのは自社の社員なので、内製化できるのが理想的です。
ただし社内でリソースが不足していたり、SEOに関する知見がなかったりする場合は、外注化を検討してください。