OMOとは?OMOを実現するための条件と必要なインフラや売上を上げるためのポイント
マーケティングをするにあたって「OMO」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。このOMOとはどのような意味なのでしょうか?
OMOとはOnline Merges with Offlineの略でオンラインとオフラインの統合を意味します。オンラインとオフラインを統合し、顧客体験を最大化させるマーケティング手法のことです。特に小売業界で注目を集めており、DX化をうまく取り入れた販売施策となっています。
OMOとは
OMOとは、Online Merges with Offline(オンライン マージズ ウィズ オフライン)の略でオンラインとオフラインの統合を意味します。つまり、オンラインとオフラインの境目をなくし、顧客体験(CX)を最大化させるマーケティング手法のことです。
オンラインやオフラインという考え方を使ったマーケティング手法では、オムニチャネルやO2Oなどもありますが、両者を統合や誘導させることで境目をなくすという観点ではOMOがもっとも進んでいます。
たとえばスターバックスやマクドナルドでは、事前にアプリで注文し、店舗で受け取る仕組みを整えています。「注文や会計はオフラインでするもの」という固定観念を取り払い、移動中に前もって注文できる仕組みを整えたことで、顧客の利便性をさらに伸ばしました。
このようにオンライン・オフラインをわけるのではなく、垣根をつくらないのがOMOの手法です。お互いによいところを利用しつつ、オフラインとオンラインを明確にわけないことで、顧客の利便性を上げる手法が「OMO」なのです。
OMOと李開復
OMOは李開復(Lee Kai-fu、リー・カイフ)氏が2017年に提唱したことが始まりといわれています。李開復氏は論文では以下のように書いています。
ソファに座って口頭でフードデリバリーを注文することや、家の冷蔵庫にあるミルクが足りないことを察知してショッピングカートへの追加をサジェストすることは、もはやオンラインでもオフラインでもない。この融合された環境をOMOといい、ピュアなECからO2Oに変わった世界をさらに進化させた次のステップである。
上記のとおり、オンラインでもオフラインでもない、融合された環境のことをOMOといい、互いの垣根を取り払うことで消費者の購買意欲を起こす施策となっています。
2017年に提唱された概念ではありますが、世界のなかでも特に中国で進んで取り組まれ、日本ではOMOと言っていますが、中国では既にOMOが当たり前になりつつあるため、用語として使われていないというくらいの差が出ています。
そのため、日本でも積極的に導入が急がれています。
OMOとオムニチャネルの違い
マーケティング用語には、OMOと混同しやすい言葉がいくつかあります。そこで、混同しやすいマーケティングの用語「O2O」と「オムニチャネル」の意味と、OMOとの違いについて解説します。
OMOと似た言葉に「オムニチャネル」があります。オムニチャネルとは、オンライン・オフラインを問わず、あらゆる販売チャネルを指します。「オムニ」とは「すべて」の意味です。
たとえば、オフラインで在庫がなかった商品をオンラインで購入できたり、逆にオンラインで購入した商品をコンビニで受け取ることなどは「オムニチャネル」の施策の一環です。このように顧客の利便性を重視し、あらゆる販売チャネルで顧客に商品・サービスを提供するように努めるのが「オムニチャネル」です。
一方でOMOとは、オンラインとオフラインの垣根をなくし、あらする施策を講じることで顧客の購買意欲を上げるマーケティング手法です。似たような言葉ですが、OMOのが「オンラインとオフラインの融合」を指すのに対し、オムニチャネルは「すべての販売チャネル」です。このようにニュアンスは異なるので、この違いは理解しておくようにしましょう。
オムニチャネルはあらゆる販路を使って消費者と接点を持ち購買に促すことが目的ですので、ECサイト、公式サイト、アプリ、SNS、テレビショッピング、チラシ、デジタルサイネージなどで接点を増やし、さらに消費者のデータを集約させることで戦略を作るための分析をおこなうことができます。
一方、OMOでは購買行動も含めた顧客体験(カスタマーエクスペリエンス、CX)を最大化させることを目的としています。
O2OとOMOの違い
OMOと似た言葉にO2Oがあります。O2OはOnline to Offlineの略ですのでOMO(Online Merges with Offline)と非常に似ていますが、O2Oはオフライン(インターネット)をきっかけにオンライン(実店舗)への来訪を促す販売活動のことです。
WEBやアプリでクーポンを配布したり、TwitterやInstagramを使って情報を配信して来店を促す効果的な手法ではありますが、オフラインはオフライン、オンラインはオンラインと区別している点でOMOと異なります。
なお「O2O」は「OtoO」または「On2Off」と表現することもあります。
一方でOMOとは、オンラインとオフラインの垣根をなくし、あらゆる施策を講じることで顧客の購買意欲を上げるマーケティング手法です。オンライン・オフラインをわけるのではなく、お互いによいところを利用しつつ垣根をなくしていくことで、顧客の利便性を上げる手法を「OMO」といいます。
いわばO2Oは「顧客の流れ」を指すものであり、オンラインでの施策でオフラインでの購買行動に促す、あるいはオフラインからオンラインの購買行動を促す手法を指しています。オフラインとオンラインの垣根をなくす「OMO」とは区別するようにしましょう。
なぜOMOが重要なのか?
なぜ現代社会において、OMOが重視されているのでしょうか?その理由を3つ紹介します。
そもそもオンラインとオフラインの垣根がなくなってきているから
そもそもの理由として、オフラインとオンラインの垣根がなくなっていることが背景にあります。そのためOMOは、当然の流れといっても過言ではないでしょう。
たとえばZoffやJINSなどのメガネを販売する企業では、Webサイトの情報と店のシステムを連携し、顧客が過去に店舗で購入したメガネの度数や購入履歴などを洗い出せるようになっています。そうすることで、メガネの購入の際に忘れがちな度数の情報を店舗がすぐに把握できるので、顧客体験の満足度は向上していくことになります。
このように現代では当たり前と思われる技術も、実はOMOによってオフラインとオンラインの融合が進められているケースもあります。これからの企業は発達した技術に対応するのが必須であり、OMOへの対応も必要不可欠といえるでしょう。
オンラインのデータをオフラインにも活用できるから
OMOによってオフラインとオンラインの融合が進めば、オンラインで得た顧客データをそのままオフラインにも活かすことが可能になります。これまで難しかったオフラインの顧客データの取得も、OMOによって活用しやすくなっているのです。
たとえばキャッシュレス決済の導入で、現金決済に比べてより高度なマーケティング施策を打てるようになりました。過去の購入履歴や購入商品、単価などの細かなデータを抽出することで、顧客の購買行動を可視化できるようになっています。
顧客の購買データを活用することで、商品の在庫を最適な数に調整したり、顧客属性にあったクーポンなどを発行したりすることが可能になります。このようにOMOによってオフラインとオンラインと融合が進むほど、より効果的、かつ効率的にマーケティングを実施できるようになるのです。
顧客のストレスを軽減できるから
OMOによってオフラインとオンラインの融合が進めば、顧客のストレスを軽減できるようになります。オフラインでは不便なことをオンラインに代替してもらうことで、顧客体験の満足度はより向上していくことになります。
たとえばマクドナルドは、注文から決済までアプリ上で行えるようになっており、あとは店舗で受け取るだけで一連の流れは完了します。「レジに並んで会計をする」という、顧客のオフラインの面倒な作業をアプリで代替することで、顧客はより便利にマクドナルドを利用できるようになりました。
このように、意外にもオフラインの面倒な作業をオンラインで代わりに行うことは可能なのです。また従業員のオフライン作業のオンラインに代替してもらうことで、人手不足の解消、および人件費の削減も可能になるのです。
OMOの具体的な手法例
OMOとはオフラインとオンラインの融合を指しますが、具体的になにをすればよいのでしょうか?OMOの代表的な手法を3つ紹介します。
アプリで注文や決済などを可能に
注文や決済など可能にするアプリを開発・導入するのは、OMOの1つです。オフラインの面倒な作業をアプリに代替してもらうことで、顧客の満足度を引き上げることが可能になります。
たとえばスターバックスコーヒーは、アプリで注文して決済まで可能にしています。アプリで決済まで済ませてしまえば、あとは店舗で商品を受け取るだけです。レジに並ぶ必要がなく、顧客のストレスを軽減することに成功しています。またレジの負担を下げることにもつながっており、一石二鳥ともいえる施策です。
また海鮮寿司の「スシロー」は、アプリで持ち帰りの注文ができるようになっており、時間になれば店舗で受け取るだけです。ほかにも、店内でタッチパネルではなく、アプリからも商品を注文できるようになっています。
大人数でスシローに訪れた場合、タッチパネルの取り合いとなってしまい、なかには思ったように商品を注文できない人がいるでしょう。そこで個々のアプリから注文できるようにすることで、顧客の満足度を引き上げながらも、寿司を注文したい機会損失の削減にもつながっています。
このようにアプリで注文や決済ができるシステムを整備することで、顧客の満足度を引き上げながらも、売上を伸ばすことが可能になります。
ネット注文で店舗から商品を配送
ネット注文で店舗から商品を発送するのも、OMOの施策の1つです。オンラインで購入した商品が、近くの店舗から発送される仕組みです。オンラインとオフラインをうまく融合したシステムで、消費者の利便性を高めています。
たとえば最近多いものでいえば、スーパーマーケットの宅配配送があります。インターネットで食品や日用品などを購入すると、近くのスーパーマーケットから発送されます。利用者にとっては家から出なくても日々の生活に必要なものを受け取れるので、忙しい現代人にとっては便利なサービスです。
このようにオフラインの良さを活かしながらも、オンラインの利便性を活用した宅配サービスは、今後も伸びていく事業でしょう。
LINEで注文や商品受け取りなどを可能に
OMOではアプリで注文や決済ができるのは便利ですが、開発費用がかかるのも現実。そこで予算に余裕がない企業におすすめのツールが「LINE」です。LINEで注文を受け付けたり、席を予約したりできます。
たとえば飲食店舗用に「Lモバイルオーダー」があります。テイクアウト注文から事前注文、店内注文までLINEで対応できるようになっています。月額6,000円で利用できるため、少額のコストで始められるのもLINEのメリットです。
もちろん、飲食店以外にも導入できるLINEのツールがあります。まず低コストで気軽にOMOを始めてみたい企業は、LINEの導入を検討してみましょう。
OMOで売上を上げるポイント
OMOで売上を上げるには、いくつか重要なポイントがあります。そこで、OMOで売上を上げるポイントについて3つ紹介します。
顧客のストレスをオンラインで軽減する
OMOで重要なことは、顧客のストレスを軽減することにあります。オフラインでは煩わしい作業をオンラインで代行したり、逆にオンラインでは難しい接客やサポートなどをオフラインで集中するのがOMOの意義です。
たとえばこの記事で紹介している「マクドナルド」や「スターバックスコーヒー」なども、アプリによって顧客のストレスをなるべく軽減することを重視しています。この施策によって、顧客はより快適に店舗を利用できるようになり、結果根強いリピート客となります。
また宅配サービスでは「わざわざ店舗まで買いに行く」というストレスをなくし、顧客の手を煩わせることなく商品を届けられます。特に食料品や日用品などは頻繁に購入する必要があり、多忙な現代人にとっては買い物をする時間のない方も多いでしょう。そこでこのような現代のストレスを解決した宅配サービスが、今人気を博しているのです。
このようにOMOの施策は、忙しい現代人が多い日本社会にとって、今後より重要なものとなってくでしょう。OMOによってオフラインとオンラインを融合することで、お互いのよいところを活かしながら、快適に顧客に商品・サービスを利用してもらうことを意識してください。
オンラインで蓄積した情報をオフラインに活かす
オンラインで得た情報は、オフラインに活かすようにしましょう。オンラインで得た情報を、オフラインに活かすのはOMOの意義とも言える部分です。たとえばOMOでは、次のようなオンラインデータの獲得を見込めます。
<OMOによって獲得でいるオンラインのデータ>
- キャッシュレス決済による購入履歴や顧客の情報
- LINEの個人アカウント
- SNSの利用者情報 など
このようなオンラインのデータは、オフラインの売り場を最適化するのに役立ちます。たとえば顧客の属性や嗜好などを把握できれば、お客様の求める商品を売り場に用意できるようになります。
このように、オンライン・オフラインの融合によって、オンラインのデータをオフラインにも活かせるのがOMOの強みです。オンライン・オフライン間のデータ統合も、OMOでは意識してみましょう。
オフラインを軽視しない
オフラインとオンラインを融合するのがOMOだからといって、オフラインを軽視してはいけません。オフラインの商品・サービス力があってこそのOMOです。単にOMOによって利便性を高めることを求めるのではなく、商売の基本である商品力を見落としてはいけません。
たとえば、アプリで注文~決済までできる仕組みを整えても、出てきた飲食が美味しくなければ、今後飲食店にその顧客が訪れることはないでyそう。宅配サービスによって店舗から商品を届ける仕組みをつくっても、肝心の商品の質が悪ければ顧客がリピートすることはありません。
結局のところ、どれだけ利便性が高まっても大切なのは商品で顧客を満足させることです。OMOでオンラインとオフラインを融合するのは大切ですが、決してオフラインを軽視しないようにしましょう。
OMOの施策によって期待を上げても、肝心の商品の質が悪ければ顧客の信頼を失うだけです。
OMOのメリットはCXの最大化
OMOのメリットは昨今、注目されている顧客体験(CX)やユーザー体験(UX)を最大化できることです。
OMOには前提としてCXやUXの向上させる考え方が含まれていますのでOMOマーケティングを実施することで、より優れた顧客体験を創出することが可能です。これはユーザーへのナーチャリングにつながりますので、結果的に売上を増やしたり、ビジネスを拡大させる効果があります。
※顧客体験(CX)は購買者の体験であることに対して、ユーザー体験(UX)はサービスを利用している、まだ購買に至っていない人も含まれる点で異なります。
顧客体験の向上
OMOは顧客にパーソナライズされた体験を提供しますので、CXやUXが向上します。
さまざまな市場で商品の一般化が進みすぎている現在では、自社商品と他社商品の明らかな差異を示すことはむずかしくなっています。
しかし、顧客体験を最適化し、よりパーソナライズされた体験を創出することで販売活動を促進させることができます。
LTVの向上
LTVとはLife Time Value(ライフタイムバリュー)の略で顧客生涯価値のことです。顧客体験が高まるということは、顧客との継続的な関係性が続く可能性を高めることができ、売上につなげることができます。つまり、LTVを向上させることができます。
OMOを実現にする条件
OMOの提唱者である李開復氏によれば、OMOを実現するためには4つの条件が必要です。Understanding the Driving Forces Behind OMO and M&A Waveでは次のようにあります。
- rapid smartphone uptake
- frictionless mobile payment systems
- cheaper and better sensors
- advances in AI
すなわち、スマートフォンの普及、簡単なモバイル決済システム、安価で高品質なセンサー、AIの進歩の4つです。
スマートフォンの普及
スマートフォンの普及とモバイルネットワークの普及はOMOでは欠かせません。モバイル端末を持つことにより、事実上、常にオンライン常態にいることになりますのでオンラインとオフラインを統合するためには必須といえます。
簡単なモバイル決済システム
オンラインとオフラインとの統合ということは、いつでも、どこでも、どんなに少額でも簡単に決済ができるということです。そのためにはモバイル決済を簡単にできるだけのシステムが必要です。
安価で高品質なセンサー
高性能なセンサーが導入されることで人の行動をデータ化することができます。このセンサーにより、店舗の入り口でスマホ認証をおこない、商品を手に取りゲートをくぐるだけで自動的に決済することができるようになります。
AIの進歩
人工知能が進歩することで最終的にサプライチェーンのプロセスの自動化をおこなうことができるようになります。
※サプライチェーンとは、製品の材料、部品調達、製造、在庫管理、輸送、販売までの流れのことを意味します。
OMOマーケティングの準備に必要なインフラ
OMOマーケティングは効果的な販売手法ですが、実施するためには次の4つの準備が欠かせません。
- データベースの準備
- マルチチャネル化
- データ分析
- 盤石なセキュリティ
データベースの準備
企業が保有するWEBサイト、ECサイト、SNS、実店舗などのあらゆる顧客データと商品データを一元管理するためのデータベース構築が必要です。構築後も頻繁にデータの追加、修正ができ、現場と連携できるだけのシステムの用意も必須です。
マルチチャネル化
OMOではオンラインもオフラインもありませんので、顧客と接点を持てる場所はすべてをチャネル化しなくてはなりません。OMOマーケティングで効果を出すにはあらゆる顧客行動をデータ化して施策を検討するため、さまざまなチャネルからデータを集める必要があります。
データ分析
正しくOMOマーケティングを実施できていれば、多種多様なデータが集まるようになります。大量のデータを分析して改善に努める必要があり、データ分析ができなければ顧客体験の質が上がらないため非常に重要な役割を持ちます。
盤石なセキュリティ
マルチチャネル化により顧客の詳細データを管理するということは、それだけ盤石なセキュリティが必要になるということです。情報漏えいの防止、個人情報の保護などの観点で万全な対策ができているかどうかはサービスの継続性にかかわる非常に重要な事柄です。
李開復氏もOMOではプライバシーと安全を保護する方法を見つける必要があると指摘しています。
OMOの未来
OMOの考え方は世界的に浸透しつつありますが、日本ではOMOの導入が遅れているというのが実態です。もともと日本にはおもてなしの精神があり、オフラインでの顧客体験が高度に発達していたため、OMOを早急に導入する必要性がなかったことが要因のようです。
OMOが特に進んでいる国としては中国が挙げられますが、中国ではOMOの概念が出てくる以前からモバイル決済が浸透していたため、OMOを受け入れやすかったという背景もあります。日本でもキャッシュレス決済は進んでいますが、世界的にはまだ課題が山積しています。
しかし、2019年の新型コロナウイルスの流行により、皮肉にも日本のDX化(デジタル化)が加速化し、結果的にOMOを受け入れやすい環境は整いつつあるといえます。
まとめ
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