SEOの社内稟議を通すには?稟議書の作成方法と決裁のコツを解説
SEO対策を外部委託したり、コンサルタントを招く必要があったりする場合、必要となるのが稟議書の作成です。しかし、SEOの稟議書はその性質上、承認されるのが難しい傾向にあります。その理由として、短期間で成果が見えにくいことや、どの会社に依頼するのがよいか判断が難しいことなどの事情が挙げられます。
SEOの稟議書が決裁されにくい理由
SEOの社内稟議書は、一般的な稟議と比較して決裁をえるのが難しいです。それにはいくつかの理由があるのですが、この点について代表的なものを取りあげ解説します。事前に決裁されにくい理由を把握しておくことで、作成時の留意点を把握できるはずです。
WEB広告との違いが理解されていない
決済をえるのが難しい理由として、上層部がWEB広告とSEOの違いを十分に理解していない点が挙げられます。WEB広告は、予算を投入すれば短期間で目に見える成果をえることができるため、即効性が高い施策として認識されやすいです。
一方、SEO対策は、スタートダッシュ時にはコンテンツが充実していないため、トラフィックを集めることが困難なことが多く、軌道に乗るまで一定期の期間がかかります。この違いが理解されていないと、SEOは効果のない投資と見なされ、短期的な成果を重視する上層部からの支持をえるのが難しくなります。
どう外部委託すれば良いか判断できない
2つ目の理由は、何を外部委託すべきか意見がまとまりにくい点が挙げられます。企業がSEOに取り組もうと考えた際、主に次の3つの選択肢があります。
- SEOコンサルティングを依頼し、社内でノウハウを蓄積
- メディア運用自体を外部に任せて業務を効率化
- SEOに詳しい人物を採用して社内リソースを強化
SEOに取り組む際には、主に上記の選択肢が存在します。これらの選択肢の中で最適なアプローチが社内で決まらないため、稟議が通りにくいことがあります。
適切なSEO会社を選ぶのが難しい
3つ目の理由は、担当者がどのSEO会社を選べば良いか判断できないという点が挙げられます。SEO会社によって得意分野や不得意分野が異なるため、適切な会社を選ぶには、社内にある程度、SEOに詳しい人材が必要です。
しかし、社内にそのような専門知識を持つ人材がいない場合、各社の提供するサービスで自社の問題解決が可能なのか正しく評価するのが難しくなります。結果として、稟議書の説得力が不足し、決裁者も判断できない事態になりがちです。
SEOの稟議書作成方法
SEOは専門的で理解されにくいため、稟議書の書き方にも工夫が必要です。そこで、稟議書の説得力を高め、スムーズな決裁を実現するための具体的な書き方をお伝えします。稟議書の項目ごとに記入例を挙げてお伝えしますので、表現や伝え方など参考にしてください。
作成日や起案者指名
作成日には、稟議書を作成した日付を記入します。また、起案者の箇所は部署名や記入者の名前を記載します。詳細は社内の規定に沿って記述してください。
件名
何についての稟議書なのかを一目でわかるようにします。例えば「SEO対策外部委託の件」や「SEOコンサルタント契約の件」といった内容が考えられます。
稟議内容
稟議内容は、SEO対策を外部委託する理由や目的、メリットなどを記載します。ここは重要なポイントで書き方に迷う点ですので、詳細をお伝えします。
結論や目的
稟議書の内容欄は、結論や目的から伝えます。伝え方としては、ベネフィット訴求型と問題提起型の2つのアプローチがあります。ここでは、SEO会社に外部委託するという例をとって解説します。
ベネフィット型の記入例
当社のSEO対策を成功させ、今期のトラフィック目標をより短期間で達成するには、最新の手法を持つ外部のSEO会社に委託することが有効な手段です。
問題提起型の記入例
過去6ヶ月間、競合A社と比較して検索エンジンでのランキングが劣位に立たされており、この遅れを取り戻すにはSEO業務を外部の専門会社に委託することが必要です。
このように、結論や目的を先に伝えることで、提案の重要性や緊急性が強調され、稟議書の承認をスムーズに進めることができます。
申請理由
内容欄には、SEO会社に委託する理由を記載することが必要です。提案に根拠がなければ、決裁者は提案の重要性を理解できないからです。具体的な書き方としては次のようになります。
記入例
現在、競合他社と比較してインデックスされているページ数が約20%不足していることに加え、業界全体でのデジタルマーケティングの競争が激化している背景を踏まえ、SEO対策のスピードアップが必要です。
メリット
SEO稟議書を書く際には、提案がもたらす具体的なメリットも記述します。費用に見合ったメリットがあると決裁者に理解されれば、稟議書が通りやすくなります。
記入例
SEO対策を強化し検索エンジンで順位が向上すれば、トラフィックが増加します。仮に20%のトラフィックが増加すれば、毎月7件のコンバージョン数増加が見込めます。
想定されるデメリット
想定されるデメリットも稟議書に記載します。メリットばかりを強調するのではなく、デメリットも記載することでバランスのとれた文章になります。また、デメリットを記載することで、記載内容の信頼性も向上します。
記載例
外部のSEO会社に委託したとしても、SEOの効果が現れるまでには時間がかかるため、短期的なROIが低くなる可能性があります。
承認してほしい契約内容
承認して欲しい契約内容をSEO稟議書に記入してください。具体的にどの会社とどのような契約を結びたいのかを伝えます。具体的な内容を記載することで、決裁者は理解しやすくなります。
記入例
今回は、ABC SEO専門会社との年間契約を承認していただきたいと考えています。契約内容は、月々のSEOコンサルティングと実行支援、定期的なレポーティング、必要に応じたWEBサイトの最適化作業を含みます。総契約額は年間240万円で、初期費用として50万円が必要です。契約期間中の成果指標として、トラフィックの20%増加と、検索エンジン順位のトップ10入りを目標とします。
SEOの稟議書をスムーズに決裁してもらうコツ
SEO稟議書の承認をスムーズにえるためには、いくつかのコツがあります。これらのコツを活用して、SEO稟議書の承認をより確実に引き出してください。
専門用語を最小限にする
稟議書は、専門用語を最小限にしてわかりやすく書くようにしてください。決裁者は必ずしもSEOの専門知識を持っているとは限らず、専門用語が多いと理解が難しくなり、提案内容が正しく伝わらない可能性があります。
例えば、SERPやバックリンクなどの専門用語は避け、それらを「検索結果ページ」や「他のサイトからのリンク」といった一般的な言葉で説明します。シンプルで、より一般的な言葉を記載することで、決裁者は提案の重要性や効果を理解しやすくなります。
根拠は数字で示す
根拠は数字で示すことが重要です。決裁者は、提案の効果や必要性を客観的に評価するための具体的なデータを求めることが多いからです。
例えば「現在のSEO施策により、WEBサイトのトラフィックは過去6ヶ月で10%増加しましたが、外部の専門会社に委託することで、さらに25%の増加が見込めます」といった具体的な数字を提示することで、提案内容を客観的に判断できます。また、SEOなどのマーケティングは費用対効果を示すことで、決裁を得やすくなる特徴があります。
関係者との事前調整
事前に関係者との調整をすることも、SEO稟議書を通すための重要ポイントです。稟議書を提出する前に関係者や決裁者と話し合い、提案内容についての理解や支持をえておけば格段に決裁されやすくなります。事前調整の際には、担当者の前向きな姿勢を伝え、上層部の懸念点をクリアにしておくことが肝心です。事前調整の具体的なポイントを整理すると次のとおりです。
情熱を伝える
起案者の情熱を伝えることは、稟議書の承認をえる際に重要です。人の心は論理だけで動くわけではありません。人の情熱が伝わって初めて、上層部も本気で検討してくれます。
早めのコンタクト
関係者には早めにコンタクトを取り、稟議書の概要や目的を伝えてください。早期に情報共有しておくことで、適切なフィードバックをえやすいです。
意見の収集
関係者からの意見や懸念点を積極的に収集してください。その収集した意見・懸念されることを稟議書に反映することで、より通りやすいものになります。
準備した資料の共有
可能であれば、見積書などを関係者が事前に確認できるように準備してください。こうすることで、稟議書の内容をより深く理解してらえ、フィードバックもえやすくなります。
SEO稟議書のよくある質問
ここでは、SEOの稟議書を作成する際によくある質問を取りあげ、回答します。これらの内容を踏まえ、より通りやすい稟議書を作成してください。
Q:SEOの稟議書を書くメリットは?
Answer)SEOの稟議書を書くメリットの1つは、決裁者が稟議内容を一目で確認でき、検討できる点です。稟議書には、具体的なデータや根拠が記載されているため、承認するかどうかを検討するのに必要な要素が最大公約数的に含まれています。そのため、検討がしやすく、プロセスの迅速化が期待できます。
参考ページ:社内稟議とは?メリットや書き方のプロセスなど詳しく解説
Q:デメリットを記載する際には、何を書けば良い?
Answer)SEOの稟議書にはメリットだけでなく、デメリットも記載した方がバランスのとれたものになります。具体的な記載例としては次のようなものが挙げられます。
効果が現れるまでに時間がかかる
短期間でSEOの効果は期待できません。通常、6ヶ月以上は必要です。この間、成果が見えにくいことがあります。
アルゴリズムの変更リスク
検索エンジンのアルゴリズムは定期的に変更されます。そのため、SEO施策の効果も変動するリスクがあります。アルゴリズムの変更により施策内容が増えたり、一時的にランキングが下落したりするなども考えられます。
参考ページ:Googleのアルゴリズムとは?概要やアップデートの歴史など解説
Q:根拠となるSEO関連の数値はどのように調べれば良い?
Answer)稟議書を書く際に根拠となるSEO関連の数値を調べるためのいくつかの方法があります。そこで代表的なものを3つとりあげお伝えします。
1.Google Analytics:
GoogleAnalyticsでは過去のトラフィックやページビュー、滞在時間、直帰率などのデータを確認することができます。
参考ページ:GA4(Google Analytics 4)とは?グーグルアナリティクス4の設定方法や旧GAとの違い等
2.Search Console
SearchConsoleでは、検索クエリやクリック数、表示回数、平均掲載順位などのデータを確認できます。検索エンジンでの主なパフォーマンスが分かるため、稟議書作成の際には大いに役立つはずです。
参考ページ:Google Search Consoleとは?グーグルサーチコンソールの導入方法と使い方を解説
3.SEO業界のホワイトペーパー
SEO会社が制作しているホワイトペーパーには、最新のSEOトレンドが掲載されていることが多いです。そのため、検索エンジン対策全体の傾向や動向を把握するのに役立ちます。
参考ページ:ホワイトペーパーとは?基本からリード獲得につながる活用方法を解説
Q:できる限り沢山のデータを入れた方が良い?
Answer)SEO稟議書を書く際には、多くのデータを入れることが重要ですが、紙面は限られているため量よりも質を重視することが肝心です。信頼性の高いデータを示しつつ、簡潔で読みやすい構成を心がけてください。
まとめ