カスタマージャーニーとは?基本概念からメリットや重要性など解説
近年、企業の収益改善のために、カスタマージャーニーに注目が集まっています。カスタマージャーニーとは、顧客が商品を認知し、評価・購入するといったプロセスを視覚的に捉え、マーケティング施策に活かす試みのことです。
カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーとは企業が自分達の論理でおこなっている事業やマーケティングを、顧客視点に立って捉え直すことです。具体的には顧客が自社商品・サービスの存在を知り、その後、購入、利用に至るまでのプロセスを明確にします。
このように顧客視点で認知から利用するまでのプロセスを捉え直すことで、その段階に合わせた適切なアプローチを検討することができます。
例えば、マーケティング担当者全員でカスタマージャーニーを描いてみると「このプロセスの対応が不十分だった」のような発見も多々あります。その結果、マーケティング戦略・戦術の見直しがおこなわれたり、システムの再構築などにつながります。
どのような業種に適している?
カスタマージャーニーは、どの業種でも利用することができます。以下に業種ごとの活用例をお伝えします。
小売業
小売業では、顧客の購買プロセスにあわせてカスタマージャーニーを設計することができます。顧客が自社の店舗をどのようなプロセスで認識し、商品購入に至るのかなどを設定してください。また、オンラインでの購入も可能なら、それをカスタマージャーニーの中に含めて検討します。
サービス業
サービス業でもカスタマージャーニーを使用できます。特にサービス業の場合、サービスを利用したあと、口コミやリピーターにつなげるための施策が重要です。カスタマージャーニーを設計する際にもその点に配慮してください。
金融業
金融業でのカスタマージャーニーでは、顧客が金融商品を購入したり、口座開設までのプロセスを描くことができます。金融業の場合、他の金融機関と比較検討されることが多いため、このフェーズに力を入れてカスタマージャーニーを設計するようにしてください。
BtoBビジネス
BtoBビジネスにおいても、カスタマージャーニーが役立ちます。BtoBの場合、購入の決定権を持つのは誰なのかを正しく見極めることが大切です。どのようなプロセスで購入決定権をもっている人にアプローチするのかをカスタマージャーニーで検討してください。
カスタマージャーニーは時代遅れ?
カスタマージャーニーは、時代遅れと指摘されることがあります。その理由としては、近年顧客の購入プロセスが複雑になっているからです。
例えば、顧客が自社の商品について知るというプロセス1つをとっても、複数のチャネルを通じて認知されています。何か1つの情報だけで、認知されているとはいえません。
このように顧客が不規則なプロセスを経て、商品の認知や購入、利用をおこなっている環境下のため、従来のカスタマージャーニーモデルでは限界が生じています。市場環境が複雑になっているため、カスタマージャーニーは時代遅れと指摘されることがあります。
しかし、複数のチャネルを通じて顧客が認知や購入に至るとしても、そのチャネルごとにカスタマージャーニーマップを設計するなど工夫をすれば、対応することが可能です。また、企業視点ではなく、顧客視点で購入プロセスを考えることは、ビジネスモデルやマーケティング戦略・戦術を見直すうえで有意義であることは今も変わりありません。
歴史
カスタマージャーニーは、1990年代後半にマーケティング業界で注目を集めた概念です。初期のカスタマージャーニーモデルは、顧客が商品やサービスに接するプロセスを一定のステップに分けて定義し、それぞれのステップで顧客のニーズに応じたマーケティング施策を展開するという活用に留まっていました。
その後、近代マーケティングの父と呼ばれているフィリップ・コトラーの著書によって日本でも有名になり、手法が改善されていきます。2000年代以降、カスタマージャーニーは、より具体的なステップやプロセスを定義し、顧客体験を改善するためのフレームワークとして広く使われるようになりました。
オムニチャネル時代の到来や、デジタルテクノロジーの進化に伴い、現代では柔軟性の高いモデルへと変化しています。
カスタマージャーニーが重要な理由
カスタマージャーニーは、WEBマーケテイングにおいても重要な概念です。その理由としては、次のような点が挙げられます。
顧客視点を理解するため
カスタマージャーニーを描いてみることで、WEB担当者が顧客視点に立って物事を考えるきっかけになります。カスタマージャーニーを描くことによって、顧客がどのように自社商品を認知し、購入し、利用するのかということをイメージすることにつながり、新たなビジネスの課題を発見することに役立ちます。
ビジネスの全体像を把握できる
日々、WEBの仕事だけに専念していると目先の数値を改善することにとらわれがちです。しかし、カスタマージャーニーを描くことで、ビジネス全体を捉えることができます。こうすることで、部分最適ではなく、全体最適を考えることができます。WEB担当者が全体最適を考えて仕事をすることで、短絡的な視点に陥らず、安定した収益増に貢献することができます。
顧客満足度の向上
顧客視点で認知や購入、利用のプロセスを捉え直し、ビジネスの設計図を見直すことで顧客満足度が高まる可能性があります。顧客がよりストレスのない購入体験をすることができればファンの育成に役立ちます。
効果測定に役立つ
カスタマージャーニーを描くことで、顧客体験を視覚化することができます。そして、各プロセスにおいて、どの数値を改善すれば効果的なのかを検討できます。自社にとって大事な数値が何かを把握することは、マーケティング施策の改善に役立ちます。
カスタマージャーニーマップの見方
ここでは、一般的なカスタマージャーニーマップの見方についてお伝えします。まずは下の図を見てください。
カスタマージャーニーマップは、大きく分けて横軸と縦軸の2つの視点があります。それぞれについて解説します。
横軸
横軸は通常時間や段階です。例えば、上図の場合は認知、情報収集、評価・比較、購入、利用という5つの段階で分類しています。
左から右へ時間軸が流れるのが一般的です。このように横軸を設定することで、顧客が商品やサービスに接するプロセスを視覚化し、改善策を立てやすくなります。
縦軸
縦軸は通常、行動、タッチポイント、接触コンテンツなどを設定します。基本的には企業の業態ごとに様々な項目を設定することになります。このように縦軸を設定することで、顧客に起こっていることを把握でき、改善策を検討することができます。
横軸と縦軸の両方を使って、顧客が商品を認知し、利用するまでのプロセスを可視化することができます。顧客の視点に立ちビジネスを見直すことで、改善策を検討しやすくなります。
カスタマージャーニーマップの作り方
カスタマージャーニーマップを作成する際には、次のような段階で進めます。
Step1.横軸(プロセス)の項目を決定
カスタマージャーニーの横軸を決めます。通常、認知、比較、購入、利用、継続利用、退会などの項目をあてはめます。ただし、このプロセスは企業ごとに異なるため、自社にあったプロセスを設定してください。
Step2.縦軸の項目を決定
縦軸に何を設定するのかを決めます。一般的にはフェーズ、コンテンツ媒体(タッチポイント)、感情、施策などの項目をあてはめます。ただし、これも横軸同様、自社が設定したい項目を検討してください。
Step3.コンテンツ・媒体
プロセスの各ステップにおいて、顧客と自社が接するタッチポイントを洗い出します。タッチポイントとは、広告やウェブサイト、店舗、アプリ、カスタマーサポートなどコンテンツ・媒体のことです。顧客と自社が接するあらゆる場面を記入してください。
Step4.顧客のニーズや課題
各ステップで顧客が抱えるニーズや課題を特定します。これにより、WEB担当者が顧客の課題を把握することができ、それに応じた改善策を検討することができます。
Step5.全体を見直す
すべての項目に必要な情報を書き込んだら、カスタマージャーニーマップは完成です。完成させるだけで満足するのではなく、各項目でどのような課題があるかをスタッフ全員で考えます。新たな施策を見つけることができれば成功です。
カスタマージャーニーの活用事例
ここではカスタマージャーニーを活用して、マーケティング施策を改善した事例を紹介します。
Uber
引用:Uber
Uberはアメリカのサンフランシスコに本社をおく、ライドシェアや配車サービスを提供する企業です。Uber社は配車アプリを通じて、顧客が車を呼び出すまでのプロセスをスムーズにし、顧客体験を向上させることに成功しました。
顧客がアプリを利用しているシーンを詳細にカスタマージャーニーマップに描き、到着予定時刻、運転手との連絡サービスなどを用意し、顧客がストレスなくサービスを利用できるよう改善されています。
Amazon
引用:Amazon
Amazonは、カスタマージャーニーの視点から顧客の追加購入を増やすことに成功しています。具体的には、顧客の購入履歴から商品をレコメンド(推薦)し、購入機会を増やしたり取引額のアップを実現しています。また、商品の比較・検討プロセスでは、商品レビューも参考になります。顧客はレビューを参考にすることで、納得できる購入体験につながります。
スターバックス
引用:スターバックス
スターバックスは、世界中で人気のあるコーヒーチェーン店です。スターバックスはカスタマージャーニーを非常に重視しており、顧客にとって居心地の良い体験を提供することに注力しています。具体的には、豊富なメニュー、居心地の良い店内環境、フレンドリーな接客などを実現しています。
また、スターバックスのリワードプログラムでは、カードを使用することでポイントが貯まり、割引クーポンを利用できるようになります。スターバックスでは、カスタマージャーニーを見直すことで、さまざまな販売施策を実現しています。
カスタマージャーニーのよくある質問
ここでは、カスタマージャーニーについてよく寄せられる質問にお答えします。
Q:カスタマージャーニーマップを作る際の注意点は?
Answer)次のような点に注意してください。
- 顧客視点に立つこと
- データも参考にすること
- ステップを細かく分割しすぎないこと
- チームで多角的に議論すること
カスタマージャーニーマップは、それを作ることが目的ではなく、それを元に新たな施策を考えることが大切です。そのため、上記の注意点に配慮してください。
Q:使用するのに役立つツールは?
Answer)チームで議論しながらマップをつくる場合は、ホワイトボードが必要です。また、事前に資料として準備するのならパワーポイントやエクセルなどのツールが使われます。どちらにしても、視覚化することが大切です。
Q:マップ作成の際に役立つデータは?
Answer)カスタマージャーニーマップを作成する際には、データがあるとはかどります。具体的には顧客からのアンケート、WEBサイトの口コミ、顧客の購入履歴などです。こういったデータがあると、非常に正確にマップをつくれます。
Q:カスタマージャーニーは、どのような改善につながりますか?
Answer)顧客のニーズに合わせて自社が適切なアプローチやコンテンツ、サービスを提供できているのかを見直せます。こうすることで、あらたなマーケティング施策を検討したり、顧客満足度を高められることにつながります。
まとめ