生成AI「Bard」の大型アップデートで何が変わったか?
2023年9月19日にGoogleの生成AIであるBardの大型アップデートがおこなわれました。
Bardは、深層学習モデルと大規模トレーニングデータを活用し、自然言語での会話をはじめ、さまざまな用途に使用できる文章生成AIです。このアップデートでは、特徴となる高度な文章生成能力と広い応用範囲がさらに強化されました。
2023年10月現在、日本ではまだ試験運用中ですが、現状でも十分に活用可能なサービスです。今回の記事では、Bardの概要、同じ文章生成AIであるChatGPTとの違いを紹介したうえで、2023年9月19日におこなわれたBard大型アップデートの内容を詳しく解説します。
Google Bardとは
Google Bardは、Google AIが開発した対話型AIシステムです。自然言語での会話が可能で、ユーザーの質問に対して回答を生成することができます。
Google Bardは、Googleが開発した大規模言語モデルであるLaMDA(Language Model for Dialogue Applications)をベースにしています。LaMDAは、テキストとコードの膨大なデータセットでトレーニングされており、自然言語を理解して生成することができます。
Google Bardは質問に対して答える、テキストを生成する、言語を翻訳する、などのさまざまな用途に使用することができます。2023年10月時点では試験運用中ですが、Googleアカウントがあれば誰でも無料で利用することができます。
Google Bardの特徴は、以下のとおりです。
- 自然言語での会話が可能
- ユーザーの質問に対して回答を生成できる
- さまざまな用途に使用できる
同じ生成AIであるChatGPTと比較されることが多いものの、ChatGPTは有料版があるのに対してBardは無料であること、ChatGPTは会話に重点を置いているのに対してBardは検索情報を取り入れていることなどで違いがあります。
また、ChatGPTはOpenAIが開発していますが、Microsoftが出資しているためMicrosoftサービスに組み込みやすく、Googleが運営しているBardはGoogleドキュメントやGmailと連携されているという点でも違いは見られます。
2023年9月アップデートの追加機能
2023年9月19日に大型アップデートがあったBardでは、次のような機能が追加されています。
- さらに機能が充実した Bard の最新モデルが登場
- 「Google で検索 v2」を使って Bard の回答を再確認
- 共有された会話をさらに広げる
- すべての対応言語で、追加の機能が利用可能に
試験運用版の最新情報(Bard)より抜粋
新しい言語モデルの導入
Google AIが開発した新しい言語モデル「PaLM 2」が導入されました。PaLM 2は、テキストとコードの膨大なデータセットでトレーニングされています。これにより、Bardはより複雑な言語を理解し、より幅広い質問や要望に答えられるようになりました。
また、今回のアップデートにより直感的かつレスポンシブな対応が可能になりました。クリエイティブな共同作業、40以上の言語への展開、詳細なコーディングサポート、多様な視点にもとづく新しいトピックの学習などの点で改良されています。
さらに日本語の文法や表現の理解が深まり、より自然な日本語を生成できるようになりました。日本語のニュアンスや表現をより正確に理解できるようになったため、より質の高い回答を提供できるようになっています。
「Google で検索 v2」を使った回答の再確認
「Googleで検索 v2」を使ってBardの回答をGoogle 検索で再確認できるようになり、より正確な情報を提供できるようになりました。従来の生成AIの回答は出典がなかったり、回答の信憑性に疑問があったりしましたが、この機能により回答に関連する検索をすることができ、自身で確認することで、より正確な情報を取得することができるようになりました。
上図のように、Bardの回答の最下部に「Googleで検索」のアイコンが出てくるため、クリックすることで「関連トピックを検索」が表示されるようになります。
ただし、すべての回答に「Googleで検索」のアイコンが表示されるわけではなく、2023年10月時点では質問内容次第では関連する検索を手動で調べる必要があります。
共有された会話の拡張
以前の会話を共有し、さらに広げることができるようになりました。また、特定のスレッドに対して、引き続き利用したい場合は会話自体に名前をつけて固定することも可能です。これにより、会話の履歴をより簡単に参照できるようになりました。
こちらも回答最下部の共有より公開リンクを作成することで簡単に共有が可能です。
追加の機能が利用可能に
その他、Googleレンズでの画像のアップロードや英語に限ってBard Extensions(Googleのアプリとサービスへの接続ができる機能)も追加されています。Bard Extensionsを使うことでGmail、Googleドキュメント、Googleドライブ、Googleマップ、YouTubeなどのGoogle関連ツールにまたがる情報を検索して表示できるようになります。
例えば沖縄旅行を計画する場合、複数のツールや情報源を見比べることが多々あります。そうした場合に Bard に頼めば、Gmail から全員に都合の良い日付を選んだ上で、リアルタイムのフライトとホテルの情報を検索することができます。もちろん、Google マップで空港までの道順を確認したり、旅行先でできることを YouTube 動画で視聴したりすることも、すべて同じ会話内で行なえます。
引用:Bard が高性能なモデルにアップデート(Google Japan Blog)
また、Bardへの質問に対して、画像を使った回答をしてくれるようになったことも今回の改善点として挙げられます。「トレンドの帽子」のように文章よりも画像で見たほうが理解が早いものは質問の際に指定をしなくてもBardが自主的にアップしてくれます。
さらにBardからの回答に対しては、短くする、長くする、シンプルにする、カジュアルな表現にする、専門的な表現にするの5つの形式に書き換えるよう注文することができるため、情報粒度を揃えた情報を取得することもできるようになりました。
Bardの課題
2023年9月アップデートにより機能が充実したBardですが、現時点でも生成AI特有の課題は残っています。BardとChatGPTで顕著に違いが出てくることが確認できましたので、こちらもご紹介いたします。
Bardで次のように一般的な回答がむずかしい質問や医療問題のように答えのない質問については、Bardは原則回答をしません。これは情報の信憑性やユーザー体験を重視するGoogleらしい対応ではありますが、ある意味では関連する情報や正しい情報の取得方法などのアドバイスがないことが不親切ともいえます。
まったく同じ質問をChatGPTに投げかけたところ、考慮すべき点や正しい相談先を明示しつつも、具体的な回答が返ってきます。Bardと比較すると質問者には一定の回答を出しているものの、ChatGPTの回答には嘘が混じっていることがありますので、情報の正確性を担保するためには自主的に調べなおす必要があるのも特徴です。
ただし、BardもChatGPTも回答がむずかしくとも、一般的に知られていることであれば回答は返ってきます。例えば、宇宙について質問すると、わかっていないことがあるという前提で具体的な数字を添えた返答があります。
Bardでの対応の違いは、情報の正確性、センシティブな情報かどうか、情報が拡散された際のリスクなどを総合的に判断して回答しているものと推測されますので、Googleの検索結果にも類似する、企業としての一貫性を感じることができます。
特に2024年にはSGEの試験運用が終了し、SGEの本番化がなされた際には、現在のBardの対応がSEOにも反映されてくることが想定されます。
まとめ