Google検索アルゴリズム「MUM」とは?特徴と機能とSEOの関係を解説
2021年5月に開かれたGoogle I/O 2021(基調講演)にて、Googleは新しい検索アルゴリズムのMUMの開発に取り組んでいると発表しました。2019年に発表された自然言語処理モデル(BERT)を進化させた次フェーズの検索技術で、テキスト以外にも画像を理解し複数の方法から問題の答えを示すことができるアルゴリズムです。
Google 検索アルゴリズム「MUM」とは?
MUM(マム)は、2018年10月にGoogle社のJacob Devlin氏らが発表した自然言語処理モデル(BERT)のさらに次のフェーズとなる検索技術のアルゴリズムです。MUMは、「Multitask Unified Model(マルチタスク統合モデル)」の略です。
Google検索アルゴリズム「MUM」は、テキストと画像の両方を理解するアルゴリズムで、75以上の言語の翻訳を通じて世界をより深く理解し、ユーザーが必要としている情報を予測しより多く適切に表示するために導入されています。
Googleアルゴリズム「MUM」3つの特徴
「MUM」はテキストだけでは検索しにくいニーズに対しても、さまざまな角度から検索結果を返すことができる新機能となっています。主な特徴を3つ解説します。
- 文字検索から適切な答えを出す
- 検索結果に対し絞り込みと拡張を繰り返す
- MUMは75の言語に基づきBERTより1000倍強力な答えを出す
特徴1.文字検索から適切な答えを出す
現在の検索エンジンは、ユーザーの質問に対して専門家のように答えるには十分に洗練されていません。「MUM」の大きな特徴として、通常の検索だと8回程度かかってほしい情報を入手するものを専門家に聞いて1回でほしい情報がわかるような検索結果を返せることです。ユーザーの状況にあわせて、さまざまな角度から考え必要とされる情報を提示してくれます。
例えば、国内旅行には行ったことがあるが海外旅行に行ったことがないユーザーが、海外旅行の準備に必要なものを検索しているとしましょう。
このユーザーは、海外旅行の準備のため国内旅行とは違った準備をしなければいけないと想定されます。国内旅行と海外旅行で異なる必要であるものを、自分で想定し検索しなければなりません。
「スマホを充電するにはどのコンセントを購入したらいい?」や「パスポートを取るには何が必要?」など何度も検索することになるでしょう。このようなひとつの問題に対し複数の回答が必要になる複雑なクリエに対して、適切な回答を得るためには8回程の検索が必要であるとも考えらえます。
しかし「MUM」では、「国内旅行は行ったことがある。来年は海外旅行に行きたい。前回とは違って必要な準備は何?」のようなあいまいな質問でも検索意図に対し答えを総合的に出してくれます。
参考:Google MUM: A new AI milestone for understanding information
特徴2.検索結果に対し絞り込みと拡張を繰り返す
MUMでは、検索意図に関連する情報をより掘り下げたり、逆に幅広い視野で見たりする技術があります。それが関連する情報から深く詳しく検索する「Refine this search」と関連する情報を幅広く提示さまざまな視点からも提示する「Broaden this search」です。キーワードを絞り込んだり拡張したりする機能です。
この機能が実装されたことで、検索結果に対し詳細な情報や関連する情報が提示され、より深く幅広く理解をすることができます。
特徴3. MUMは75の言語に基づきBERTより1000倍強力な答えを出す
Googleで検索をするユーザーは検索言語圏内にいるとは限らず、また同じ質問であっても言語によって求める答えが異なることもあります。MUMでは75の異なる言語と異なる検索の問題を同時に学習できテキストや画像といった情報も同時に理解します。将来的には、ビデオや音声といった形式にも拡大されます。
自然言語処理モデルである「BERT」の進化系のアルゴリズムですが、MUMはBERTと比べて1000倍強力であるといわれています。決まった地域だけで適応する偏った情報ではなく、さまざまな国や地域に基き答えを導き出してくれるアルゴリズムを備えています。
Googleアルゴリズム「MUM」でできること
GoogleのMUMにできることは主に下記のことが挙げられます。
- Googleレンズと連動し視覚的にニーズを検索できる
- You Tubeや動画にMUMを導入し結果が理解しやすくなる
- サムネイルや画像が表示され情報がイメージしやすくなる
以前はテキストや音声でしか検索できませんでしたが、視覚的な情報でも検索できるようになりました。またMUMによって画像や動画も表示されるので、テキストからは得にくい情報でもイメージしやすく理解できるように進化していきます。
Googleレンズと連動し視覚的にニーズを検索できる
「MUM」はGoogleレンズと連携したことにより、撮影した画像から検索が行える新機能が備わりました。この機能が搭載されたことにより、言葉で表すのは難しい視覚的な情報を、画像を基に検索できるようになりました。
例えば、好きな色を撮影し「同じ色のジャケット」と検索することで同じような色のジャケットが提示され、そのショップのリンクに辿り着くことができます。また、修理したいパーツを撮影し併せて「修理方法」と検索すると、修理を解説した動画やブログなどが表示されます。
Googleレンズと連動した「MUM」新機能とは、言葉では表現することが難しかったニーズも画像とテキストから必要な情報を導き出すアルゴリズムなのです。
そしてGoogleは「できる・できない」だけの答えにとどまらず、新しい選択肢を提案できるアルゴリズムの技術向上も目指しています。
You Tubeや動画にMUMを導入し結果を理解しやすくする
「MUM」の技術は、検索結果を動画にも反映させ関連しているコンテンツも表示してくれるようになります。検索ワードが動画の中にあるか言及することを可能にするという技術で、YouTube内にある動画検索にもMUMを使った処理機能が導入されます。
例えばダイエットを検索した場合、ダイエットするために行う運動の手段や食事の取り方、モチベーションの維持の仕方など、さまざまな関連する動画を提示します。
YouTubeにMUMを導入するメリットは、文章では理解することが難しかった情報でも動画で視覚的な情報も得られることで、よりスムーズな理解へと導けます。
サムネイルや画像が表示され情報がイメージしやすくなる
現在の検索結果はテキストで表示されますが、今後は大小さまざまなサムネイルが取り入れられた表示結果となる予定です。これは画像だけではなく、動画も同じく表示されます。
サムネイル画像や動画が表示されることで、テキストからは得られなかった情報を視覚的に知る機会が得られます。
例えばリビングのインテリアと検索した場合、「北欧風」や「ブルックリン風」などテキストからは色やデザインが想像しにくくても、サムネイルや画像が表示されることでイメージがしやすくなります。これにより知らなかった情報も視覚から得られるようになり、さまざまなことを広く知るきっかけになります。
現在も小さめのサムネイルは表示されイメージを十分に得られますが、今後は大きなサムネイルも表示されるのでより画像の重要性が増します。その為、ユーザーがアイキャッチや商品画像から情報が得られるよう、よりクオリティを上げる必要があります。
Googleアルゴリズム「MUM」を可能にした主な機能
人工知能である「MUM」の機能が導入され下記の機能が備わったことにより、検索結果がより質の高いものに変わっていきます。
- 知っておいた方が良い情報を得られる「Think to know」
- 検索ワードにクエリをプラスする「Refine this search」
- 幅広い情報が得られる「Broaden this search」
知っておいた方が良い情報を得られる「Think to know」
「Think to know」機能は、検索結果に対し知っておくと良い情報をまとめて提示してくれる機能です。例えば、「水彩画」と検索した場合に手順や種類、スタイルやコツまた注意事項などたくさんの関連する情報を提示してくれます。検索ワードに対し、必要な情報を幅広く提示してくれることが特徴です。
「Think to know」機能によって、自分では考えられなかったが知っておいた方が良い情報が発見できるというメリットがあります。
検索ワードにクエリをプラスする「Refine this search」
「Refine this search」機能は、関連する情報を絞り込み詳細な情報を提案してくれます。例えば、同じく「水彩画」で検索した場合に、図案や技法また水彩画の技術を習得するためのスクールなども表示されます。検索ワードに関連するワードをプラスすることで、より掘り下げた情報が得られることになるのです。
「Think to know」と似たような機能と思う方も多いですが、「Refine this search」は関連する新たなクエリをプラスし再度検索することを提案することにあります。
幅広い情報が得られる「Broaden this search」
「Broaden this search」は、「Refine this search」と逆に拡張する機能を持っており、クエリに対し幅広い視野で情報が得られます。
例えば「水彩画」と検索した場合、有名な水彩画の画家や水彩画を描くための集まりなども提示してくれます。水彩画に繋がることを幅広く表示してくれることで、もし水彩画が何なのか知らなったとしても、さまざまにある情報から水彩画を理解しすることができるのです。
「Broaden this search」はクエリに含まれる関連するトピックも幅広く表示してくれるので、検索結果の質がより上がると考えられます。
MUMが実装された上でのSEO対策
MUMが実装されると、先ほども述べたようにテキストだけではなく画像でも検索できるようになります。そして、1つの検索クエリに対して深く掘り下げるのと共に幅広い提案もしてくれるので、検索の質そのものが上がります。
Googleは言語に依存せずにデータを採掘し必要な情報を世界中から収集し融合していきます。したがって、コンテンツ管理者はコンテンツ内のキーワードの収集や変更などではなく、トピックの視点をより探る必要性が高まります。顧客行動に沿ってコンテンツをマーケティングしできるだけコンタクトタッチポイントをユーザーに提供することも重要です。
Googleは以前のようなユーザーの質問に答えるだけのコンテンツでなく、ユーザーに関連性のある商用トラフィックも獲得し市場のシェアを広げていきます。
MUMが実装された上でのSEO対策はキーワード対策というよりも、コンテンツの質を上げることが重視され、顧客行動に沿ってコンタクトタッチポイントも提供できることが重要だと考えられます。
Google 検索の未来と SEO がそこから学べること
MUMが導入されることによりGoogle検索の未来はどのように変化するのか。MUMはユーザーの検索意図をより深く幅広く理解をします。GoogleはMUMに対し現在不足しているアルゴリズムを大規模なトレーニングを行い独自のシステムを開発することを目指しています。
商用利用可能な量子コンピューターのブレイクスルーは2029年と予測されていますが、Googleの新しい技術により質の高い検索エンジンになることが可能だと想定できます。
MUMの導入により検索エンジンは大幅な進化が期待され、未来のGoogleに対し、SEOは新たな対策を考慮しなければならなくなるでしょう。
まとめ