アンケート調査とは?概念や調査の進め方、種類などについて詳しく解説
アンケート調査は、意見や情報を収集するための手法です。ビジネス目的の一般企業による実施だけでなく、学術機関、政府機関などでもおこなわれています。
アンケート調査の概念
アンケート調査とは、ある「もの」や「こと」について、人々がどう感じているかを聞き、それを統計的に処理して、全体としてその思いを数字やグラフで表現したものです。
ごくシンプルにいうと、アンケート調査というのは質問紙を使っておこなう調査法です。調査はあらかじめ作成しておいたアンケート用紙(質問紙)にしたがって進められます。
例えば、内閣の支持率や野球選手のファン投票などが該当します。情報化社会の到来によって、私達はこのようなアンケート調査を毎日のように目にしています。
語源
アンケートの語源は「質問」とか「調査」という意味のフランス語ですが、今やアンケートという言葉を聞いて、その意味が分からないという人は稀です。それくらい日常生活の中でこの言葉が浸透しています。
アンケート調査を実施するメリット
アンケート調査を実施することで企業には多くのメリットがあります。
例えば、自社が提供している商品やサービスに対して、どの程度顧客が満足しているのかを把握することができます。これらの満足度を把握することで、商品やサービスの改善につなげることができます。
また、アンケート調査によって顧客のニーズを掴むこともできます。こういった顧客心理を知ることができれば、新商品開発などのヒントをえられます。
メリットをえるには準備やスキルが必要
後ほど詳しくお伝えしますが、アンケート調査を闇雲に実施しても、企業が求めているメリットをえられるとは限りません。
アンケート調査は、あくまでヒントや手がかりを知るための1つのアプローチ法に過ぎないからです。つまり、アンケート調査をおこなうときには、質問内容をあらかじめ設計しておく準備や調査結果を読み取るスキルやが必要です。
こういった準備やスキルが伴って初めて、アンケート調査を活かすことができます。
アンケート調査の種類
一口にアンケート調査といっても、いくつかの種類に分れます。そこでここでは、アンケート調査にはどのような種類があるのかを一通り解説します。
実施主による分類
アンケート調査は、誰が実施するのかによって分類することができます。主には「政府機関・マスコミ」と「一般企業」の2種類があります。
政府機関やマスコミが、国民や地域住民の実情や考えを把握する目的でおこなうアンケート調査を社会調査と呼びます。5年に1度おこなわれる国勢調査や、内閣支持率の調査などが該当します。
一方、一般企業が自社の商品やサービスについて、回答者の意見を聞くためにおこなうアンケートを市場調査と呼びます。例えば、来店したお客様にアンケート調査をするなどは代表的なものです。
実施方法による分類
アンケート調査は、実施方法によって対面型調査と非対面型調査に分けることができます。
対面型の調査はさらに、次のように分類されます。
- 訪問アンケート
- 会場アンケート
- 街頭アンケート
訪問アンケートというのは、回答者の自宅などに訪問し、担当者が質問を読み上げ回答してもらいます。もし質問の量が多い場合は、一旦アンケート用紙を預けておいて、後日回収と確認をおこなうということもあります。
会場アンケートは、ある特定の場所に集まってもらい実施する方法です。街頭アンケートは、通行人に声をかけその場でアンケートをおこないます。
非対面型の調査としては次のような実施方法があります。
- 郵送アンケート
- 電話アンケート
- FAXアンケート
- メール・LINEアンケート
いずれも回答者と顔をあわせることなく実施するアンケート調査です。対面とは異なり、質問のフォローがきちんとおこなわれないため、回答の精度が落ちるという弱点があります。
回答法による分類
アンケート調査は、回答法によっても分類することができます。主にはプリコード回答法、自由回答法、段階評価の3種類があります。
プリコード回答法は、回答内容をあらかじめ選択肢として用意し、該当するものを回答者に選んでもらいます。選択肢が2つの場合を二項選択法と呼び、3つ以上の場合を多項選択法と呼びます。
自由回答法は、質問に対して文章や数字で回答者に記入してもらうものです。一般的にプリコード回答法よりも返答しにくいという点がありますが、回答者の生の声を拾うことができるのは大きなメリットです。
段階評価は、評価を3段階~7段階くらいで回答者に評価してもらうものです。一般的には「満足、どちらともいえない、不満」などの選択項目があります。
アンケート調査の手順
アンケート調査を実施する際には、適切な手順通りに進める必要があります。手順が不適切だと、アンケート結果の集積までに膨大な時間・手間がかかる恐れがあるからです。
ここでは、アンケート調査の手順について具体的に解説します。
目的を決める
まずは、アンケート調査を実施するゴールや目的を決めましょう。「自社製品への評価を集計したい」という目的と「新たな商品開発のために顧客の悩みを知りたい」という目的の場合とでは、適切なアンケートの種類や方法が異なります。
目的に合った方法を選べないと、時間だけを浪費することになりかねません。自社では何を目的としてアンケート調査をおこなうのか最初に決めてください。
どの方法や種類で実施するか決める
設定した目的に併せて、アンケート調査の方法や種類を決めていきます。数値として集計したいのであればプリコード回答法、意見を集めたいなら自由回答法がおすすめです。
また、若い年代の顧客に向けてアンケート調査をおこなう場合はアンケートフォームやLINEを利用する非対面型が適しています。一方、シニア層をターゲットにするのであれば、対面型のアンケート調査が向いています。
調査票を作る
次に、実際にアンケート調査で使う調査票を作成します。設問の文章をわかりやすくしたり、設問を少なめに設定することで、回答率が向上します。質の高い回答を集めるために、調査票づくりは慎重におこなう必要があります。
また、曖昧な表現では的確な回答を集めにくいため、具体的な表現を用いるようにしてください。
アンケート用紙やフォームを作成する
調査票を作成したら、アンケート用紙やフォームに落とし込みます。直観的にわかりやすく、回答への工程が少ないアンケート用紙やフォームを作成してください。
結果を集計する
アンケート調査を実施したあとは、結果を集計します。スムーズに集計をおこなうには、あらかじめ計画を立てて対応スタッフごとに役割を設定しておきます。いき当たりばったりで集計をおこなうと、膨大な時間がかかるリスクがあるので注意してください。
また、集計結果をまとめる際には、表やグラフなどを活用し、わかりやすさを心がけてください。
ゴールや目的と照らし合わせて効果測定をする
事前に決めたゴールや目的に応じて効果測定をします。アンケート調査の実施によってゴールや目的を達成できたか評価してください。
効果測定で手を抜いてしまうと、せっかく質の良い回答を集められても事業の拡大や売り上げの向上につながりにくいです。
報告書にまとめる
アンケート結果を誰かに報告する場合はもちろん、それをしない場合も結果を報告書としてまとめておくことが肝心です。まとめておくことで、状況を整理できるからです。報告書に記載すべき事柄としては次のような項目があります。
- テーマとその背景
- アンケートの目的
- 質問項目
- 調査方法
- 調査規模
- 質問文と回答結果
- 分析結果(グラフや表)
- 結論
以上の項目を報告書にまとめて、アンケート調査は完了です。
活用したいおすすめツール
オンラインで効率的にアンケート調査を進めるには、ツールの活用がおすすめです。場合によってはコストがかかりますが、時間や手間を大幅に減らせます。
特におすすめな3つのツールについて、特徴や機能を紹介するので導入を検討してください。
GoogleForms
GoogleFormsを活用すれば、無料かつ簡単にアンケートフォームを作成できます。そのため、多くの企業がアンケート調査を実施する際に使っています。また、集めた回答をGoogleスプレッドシートで集計することもできるため、手間を削減してスピーディーに集計ができます。
参考ページ:GoogleForms
SurveyMonkey
SurveyMonkeyでは、既に用意されたテンプレートを使っていち早くアンケート調査を実施することができます。テキスト質問、複数選択肢、評価スケールなど、さまざまな質問形式にも対応しています。また、集めた回答データを分析、グラフや統計情報として表する機能も標準で備えています。
参考ページ:SurveyMonkey
Microsoft Forms
Microsoft Formsもアンケート調査の実施を強力にサポートしてくれるツールです。質問形式は、テキスト、複数選択肢、評価スケールなど一通り対応しています。
また、回答者の選択によって、質問内容を変えるロジック分岐にも対応しています。その他、注目すべき点としては、Microsoftが提供しているため、OutlookやTeamsなどの他のMicrosoft製品と連携できることです。
参考ページ:Microsoft Forms
実施前の確認ポイント
ここではアンケート調査を実施する際、よくある間違いを取り上げ解説します。自社でアンケート調査をする際に、下記の点を確認してください。
必要な質問項目が設定されているか
アンケートを回収し、集計する段階になり「あれも質問しておけば良かった」と思うことが少なくありません。しかし、通常、同じ人を対象に2回、3回とアンケートを実施することはできません。つまり、アンケートは1回勝負です。質問項目を何度も繰り返し確認し、アンケート調査の目的を達成できるものになっているのか確認してください。
質問が具体的な表現になっているか
質問文が抽象的では、回答者が戸惑ってしまい回答を中断する恐れがあります。未回答が多くなると、精度の高い集計ができなくなる危険性もあるので注意してください。
また、専門用語を使って質問文を作るのも危険です。顧客が意味を理解できず、未回答につながるためです。そのため、質問文はできる限り多くの人が確認し、具体的かつ誰が読んでも理解できるように作成していきます。
時系列に沿った設問を用意する
時系列に沿って質問文を作成することで、自然な流れで回答でき、回答者の心理的負担を抑えられます。例えば、以下の質問文は時系列に沿っているといえます。
- これまでに動画サブスクリプションを使ったことはありますか?
- これまでに使った動画サブスクリプションに不満はありますか?
- いまも動画サブスクリプションを使っていますか?
- 今後も動画サブスクリプションを使いたいですか?
- 動画サブスクリプションに求める機能はどのようなものですか?
上記を参考に、回答者が自然な流れでアンケートを進められるよう設定してください。
設問が多すぎる
できる限り沢山聞いておこうと思い、アンケートが非常に長くなってしまうことがあります。質問が多すぎると、質問途中での離脱が増えたり、適当な回答が増えるるので注意してください。できる限り無駄な質問を省き、全体として5-10分程度で回答できるよう配慮してください。
アンケート調査に関するQ&A
ここでは、アンケート調査に関してよくある質問と回答をお伝えします。あらかじめ頭に入れておくことで、スムーズにアンケート調査に取り組めます。
Q:回答率を上げるためにすべきことは?
Answer)アンケート調査を実施するからには、多くの回答を集めたいものです。回答率を上げるためには、適切なターゲットを絞り込んだうえで顧客への心理的負担を減らすことが大切です。
ターゲットによって、適切なアンケート方法が異なるため、ある程度ターゲットを絞る必要があります。また、心理的負担を減らすためには、設問数を少なくしたり質問文をわかりやすくするのが適切です。
Q:アンケート調査でやってはいけないことは?
Answer)アンケート調査では、絶対にやってはいないこともあります。それは、答えを誘導するような質問や選択肢を含めることです。答えを誘導してしまうと、正確な回答を集められません。
例えば、次のようなアンケートです。
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【問】あなたは店内の雰囲気についてどう感じますか?あてはまると思う番号に○をつけてください。
1.たいへんよい 2.よい 3.ややよい 4.普通 5.よくない
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この場合、選択肢に「よい」と含まれるものが3つあるのに対して、「よくない」が1つです。プラスの評価の方が選択肢として多いため、調査結果としてプラス評価の方が多くなります。
このように、質問の仕方や選択肢の作り方で、店側に都合の良い結果をいとも簡単に作れてしまいます。
Q:オンラインでアンケート調査を実施するメリットは?
Answer)オンラインを利用してアンケート調査をするメリットには、次のような項目があります。
- 調査費用が安くなる傾向
- 早く結果を得られる
- 大規模な調査ができる
- アンケートに音声や動画を挿入できる
- 自動で集計できる
このようにオンラインでアンケート調査を実施することで、手間や費用を抑えることができます。また、専用のツールを利用することで集計が簡単になる点も大きなメリットです。
Q:記名と無記名はどちらが良いか?
Answer)アンケート調査は記名式のものと、無記名式のものがあります。記名してもらうと、いい加減な回答を防ぐことができるというメリットがあります。しかし、アンケートの内容がデリケートなものだと、記名式では本音を出してもらえないというリスクがあります。どちらが良いかは、十分に検討をしてください。
まとめ