PDCAとは?概要やメリット、サイクルを回すポイントなど解説
PDCAという言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。PDCAは、個人レベルからチームで仕事に取り組む段階まで、幅広く機能する強力なフレームワークです。
PDCAとは
PDCAとは、企業における生産管理、品質管理などの業務を効率よく、円滑に進めるためのフレームワークです。具体的には下記4つのステップを繰り返すもので、PDCAサイクルと呼ばれることもあります。
- Plan(計画)
- Do(実践)
- Check(点検・評価)
- Action(修正)
上記4つのステップを順番に実施し、最後のActionまで到達したら最初のPlanに戻ります。これを繰り返すことで、従来あった問題を徐々に改善し、円滑な商品・サービスを生み出す仕組みとなります。
元々は第二次世界大戦後、エドワーズ・デミング博士らが提唱したもので、古典的なフレームワークの1つです。
PDSサイクルとの違い
PDCAサイクルのCheck(点検・評価)とAction(修正)をSee(評価・検証)としてまとめ、PDSサイクルと表現されることもあります。
また、一説によれば、PDSサイクルが発展してPDCAサイクルになったともいわれています。現在では、どちらもあらゆる業種で使用される汎用性の高いフレームワークと評価されています。
Plan-Do-Check-Actionの詳細
ここでは、PDCAの各項目について詳しく説明します。4つのプロセスをきちんと理解することで、良質なサイクルを作るようにしてください。
Plan
何かの仕事を始めるとき、闇雲に進めてもうまくいきません。ゴールを設定し、そのために何をすれば良いのか計画を立て、施策を考えることが必要です。PDCAにおいては、このことをPlan(計画)と呼んでいます。
Planに取り組むときは、最初にゴールを明確にします。例えば、今期の営業目標が1,000万円ならば、それがゴールです。ゴールを明確にしたら、現状との差を確認します。現時点で600万円の売上があるのなら、その差は400万円です。これがPDCAサイクルのゴールとなります。
このようにゴールと現状との差を確認し、それを埋めるための課題を抽出します。ここまでがPlanの段階で取り組む内容です。
Do
PDCAのDは「Do(実践)」のことで、Planを確認しながら施策を実行し、問題が発生すればそれに対処することを指します。
Planの段階で立てた施策を細分化し、スケジュールに落とし込みます。具体的にその施策をいつまでにやるのかを決め、実務にあたります。
ただし、実務をおこなっても全てが正しくできるわけではありません。
ときには間違いやトラブルが発生することもあります。このような問題が生じたときは、その問題の原因を突き止め、解決を進めます。そして、問題が再発しないよう、部署や会社内で情報を共有することなども必要です。
Check
Checkとは、計画に沿った施策の検証・評価をおこなうことです。具体的には、PlanとDoのギャップを確認します。
例えば、600万円の売上目標に対して、200万円しか売上がないということであれば、PlanとDoの間に現在400万円のギャップが生じていると把握できます。
また、このCheckにおいてよくある誤解は、検証・評価をする代わりに、ただの感想になってしまうことです。本来は、数値にもとづいてどの程度の成果になっているのかを確認する必要があります。それが「うまくできた」や「好調です」のような感想で終わると、Checkとして役に立ちません。Checkの段階では、客観性をもたせるようにしてください。
Action
Action(修正)は発見した改善点を是正し、今よりもっと効率的にすることです。Actionに取り組む際には、マインドも大切です。
多くの人は、改善点を把握しても「できない理由」や「やらない理由」を考えがちです。しかし、そこからマインドを切り替え「どうすればできるか?」に注目してください。また、一気に改善できなくても、段階を追って少しずつでも物事を進めてください。
PDCAのメリット
このPDCAを利用してマーケティングや事業を進めれば、以下のメリットがあります。
1.目標やタスクが明確になる
1つ目のメリットは、ゴールやタスクを明確にして実務にあたれることです。目標や計画が明確なので、あとはそれを実直に日々の行動に移すだけです。
逆に、目標やタスクが不明瞭なら、無駄な動きが多くなり、日々の行動が目標達成に役立つことなのかどうかさえも分からなくなります。PDCAで業務に取り組めば、無駄な動きがなく効率的に業務を進めることができます。
2.問題や欠陥が明白になる
2つ目のメリットは、PDCAで業務遂行することで課題や不足している点が明確になりやすいことが挙げられます。
例えば、PDCAのCheckの段階ではPlanで立てた計画が、適切にDoで遂行されているのかを振り返ります。このように振り返る機会が設けられているので、問題点を把握しやすいです。
また、目標や達成を数値で管理するのもPDCAの特徴です。そのため、どれだけ計画が達成できているかを客観的に把握できます。
このようにPDCAサイクルを回すだけで、自然に問題や欠陥を把握でき、修正に取りかかれるというのは大きなメリットです。
PDCAのデメリット
PDCAサイクルは継続的な改善を目指す手法です。そのため、各サイクルは短期的な結果に焦点をあてています。逆に言えば、PDCAだけで業務を遂行するのは、長期的視点が欠けてしまう可能性があります。
例えば、家電メーカーA社がPDCAサイクルで冷蔵庫の生産をしているとします。PDCAサイクルを回すことで、コストを下げ、製品の微調整を繰り返します。結果としてA社は生産性を最大限高めることができます。
しかし一方で、市場ではIoT化した冷蔵庫があふれ、旧来の冷蔵庫を生産し続けたA社の売上が下がるなどのことが考えられます。
このように効率や効果性を高めていくPDCAサイクルに取り組むだけでは、中長期的な市場の変化に対応できないことがあります。
PDCAを効果的に回すポイント
PDCAは誤って理解している人も多く、効果のない枠組みになってしまっているケースもあります。そこでここでは、このPDCAを効果的に回すポイントを紹介します。
数字で目標を決める
PDCAを回して業務を遂行する際には、誰がいつ確認してもわかるように進捗状況や成果を数値化します。また、ゴールの達成までの期日も決めるようにしてください。
このように数値で決めておくと、CheckやActionの段階に入ったとき客観的に確認しやすく、具体的な行動改善などにもつながりやすいです。
具体的な目標の決め方として、良い例と悪い例は次の通りです。
- 次の3ヶ月で売上を110%に向上させる(○)
- 売上をできる限り上げる(×)
「次の3ヶ月で売上を110%に向上させる」は期日や目標数値が入っているため、そのために何をすればよいのか行動計画を立てやすいです。一方「売上をできる限り上げる」は、どこまで売上を向上させれば良いのか分かりません。
Doを記録する
Doの状況を細かく記録するようにしてください。そうすることで、Cehckの段階でPlanの達成率を検討しやすいです。
例えば、Planの段階で、商品の生産性を20%アップさせるということを目標としているとします。そして、Doのところで実際の商品の生産性を記録しておけば、どの日が目標を達成していて、どの日に生産性が下降したのかを正確に掴むことができます。
このように、Doの段階では業務を遂行しながらも同時に結果を記録することを忘れないようにしてください。
PDCAが失敗する要因
PDCAを導入していても、失敗することは多々あります。ここでは、このPDCAの各ステップにおける失敗要因についてお伝えします。
Planの失敗要因
Planのステップでよくある失敗は、高すぎるゴールを設定することです。ゴールが高すぎると、そもそもどう行動をとってよいのか判断できないという状況に陥り、先に進むことができません。
また、仮にPDCAサイクルを開始したとしても、目標と結果の差異が大きすぎて、打てる手段が限られてしまいます。そのため、Planの段階で現実的なゴールを設定する必要があります。
Doの失敗要因
Doのステップでよく起きる失敗要因は、見える化が不十分なことです。Doの行動記録が不明瞭な場合、現状把握ができません。
そのため、行動記録を書く際には漠然とした事実ではなく、より解像度の高い事実を記述するようにしてください。できれば、数値と文章の両方を記録する必要があります。
Checkの失敗要因
CheckはPDCAサイクル全体の中で、もっとも壁にぶつかりやすいポイントです。よく起きる失敗要因は、振り返り自体をおこなわないというものです。
多くの人はどちらかというと新しいことを好みます。新しいPlanを立てれば気分もポジティブになるからです。そして、Doも比較的モチベーションを保ちやすいです。
しかし、Doの後で結果を真正面から受けとめ、チェックをするというのは面倒くささがあり、気分もネガティブになりがちです。結果としてPlanとDoだけを進め、その後なにもせず「やりっぱなし」ということが頻繁に起こるので注意してください。
Actionの失敗要因
Actionのステップでは、修正するための視点を持ち合わせていないという点が挙げられます。問題点や原因が分かっても、どう修正すればよいのか見当がつかないのです。
そこで、Actionの段階では次のECRSというフレームワークを思い出してください。ECRSとは、下記4つから構成されています。
- Eliminate(排除)
- Combine(結合と分離)
- Rearrange(入れ替えと代替)
- Simplify(簡素化)
Eliminateとは、問題の原因になっていることを排除するという視点です。Combineは別のもの同士を結合させたり、元々1つのものを分離したりします。
Rearrangeは、別のものへの置き換えをすることで改善を図ります。Simplifyは、手順を減らしたり、省略することによってシンプルにします。
PDCAサイクル全体を見通し、ECRSの視点で修正できないか検討してください。
PDCA以外の関連フレームワーク
PDCAと併用して使用することで、効果を高めることができるフレームワークがあります。そこでここでは、PDCA以外のフレームワークをお伝えします。PDCAに慣れてくれば、次の段階として導入を考えてください。
OODA
OODAは、Observe(観察)、Orient(判断・分析)、Decide(決定)、Act(行動)の4つのステップで構成されるフレームワークです。主に意思決定をおこなう際に使用されるものです。
PDCAサイクルと併用して使用することで、多角的に業務を遂行することができます。以下、各ステップについて解説します。
Observe(観察)
今の状況を観察します。情報を収集し、その情報がこれ以降のステップの元となります。また、動きがあるものについては、継続的な観察をおこなう必要があります。
Orient(判断・分析)
前段階の観察を経て分析します。メリットやデメリット、弱点や強みなどを中心に分析します。分析結果は、数値や文章で記述します。
Decide(決定)
分析にもとづいてどのような行動をとるか決定します。決定には計画を含みますが、目的を達成するための最短ルートを考えることが多いです。
Act(行動)
決定された計画にもとづいて実際の行動をとります。行動中や行動後は、効果や成果を確認し、新たな情報をもとに次のサイクルに進みます。
以上がOODAについての概要です。元々は軍事戦術において考案された方法ですが、現在ではビジネスやスポーツなどさまざまな分野に活用されています。
SMART
SMARTとは、目標設定のフレームワークです。次の5つの視点を満たした目標を設定することで、実現の可能性を高めることができます。PDCAでは、Planの段階で活用します。
Specific(具体的に分かりやすい)
目標を設定するときには具体的でなければいけません。漠然とした目標は、好ましくありません。
Measurable(測定可能)
目標は数値で明確にする必要があります。例えば「次回キャンペーンで売上を30%アップする」などのように決めます。
Achievable(達成可能な)
数値が明確でも「売上を10倍にする」などのように、実現不可能なものを設定してはいけません。使える時間や労力、資金などを踏まえて、現実的な目標を設定します。
Result-oriented(結果重視の)
目標が実現したら、その結果は社内や自分にとってプラスになることが大切です。目標を達成しても自分や会社にとってプラスにならない場合、その目標は適切ではありません。
Time-bound(期限)
いつの期限までに目標を達成するのかを決めます。無期限だと、モチベーションを保てないので注意してください。
GTD
GTDは、普段の仕事の効率化に役立ちます。PDCAサイクルでいえば、Doの段階で活用します。GTDは、米国のコンサルタントデビッド・アレンが提唱したもので、具体的には次の手順です。
収集
今日やるべきことや気になっていることを全て書きだします。具体的には、Todoリストをノートに書き出します。
処理
書き出した項目について、仕分けのルールを決めます。例えば「複雑そうなアクションは分解してリスト化する」、「1分以内で完了することは、すぐに実行する」などのことです。
整理
作ったリストを使い慣れた手帳などに整理して記述します。
レビュー
自分が置かれている状況や中期的な予定などを把握し、今できること、すべきことを判断します。
実行
優先順位の高いものから行動に移します。
この5つのステップを繰り返すことで、日々の業務を効率的に進めることができます。
PDCAのよくある質問
ここではPDCAについて当社に寄せられる質問の中から、よくあるものをお伝えします。
Q:PDCAはどのような状況で使用しますか?
Answer)PDCAは主に品質管理などの分野で使用されることが多いですが、大半の業務で使用可能です。それほど汎用性の高いフレームワークです。例えば、部署内で何かのプロジェクトを遂行したい場合もこのPDCAが役立ちますし、WEBマーケテイングのSEOや広告運用などの場面でも役立ちます。
Q: PDCAサイクルにおいて注意すべきポイントは?
Answer)もしPDCAサイクルをチームで取り組む場合、情報を共有する事が大切です。例えば、Planの段階ではチームメンバー全員がその目標や計画を把握する必要があります。
全員が目標や計画を把握していなければ、業務を遂行しようとしても、それを何のためにやっているのか理解できず、ミスや誤解が生じかねません。
Q:PDCAサイクルを実施する上で難しい部分は?
Answer)困難な箇所はケースバイケースですが、データの収集と分析は多くの人がつまずきやすい点です。事前に、どのようなデータを収集するのかを決めておかなければ、CheckやActionの段階で状況を客観視することができません。何のデータをとれば改善に結びつくのかを事前に十分検討してください。
Q: PDCAのゴールは何ですか?
Answer)PDCAのゴールはPlanで立てた目標を達成することです。しかし、これを読んでいるあなたは、もう一歩先を見据えることも覚えておいてください。それは仕事の型をつくることです。この型を作ることで、人員が変わったり新しい支店ができても、いつでも再現できるからです。PDCAサイクルが確立すれば、それが会社の資産となります。
まとめ