社内稟議とは?メリットや書き方のプロセスなど詳しく解説
意思決定プロセスは、企業の成功に大きく影響します。実際、広島大学の『中小企業における意思決定の研究』によると、明確な意思決定プロセスを持つ企業は、そうでない企業に比べて高い業績を築きやすいと報告されています。
社内稟議とは
社内稟議とは、新プロジェクトや外部委託、人事などにおいて、重要な意思決定をおこなうプロセスのことです。口頭での提案とは異なり、文章化されることによって組織の意思決定プロセスが透明化され、結果として効率があがります。組織ごとに稟議に必要なプロセスやフォーマットは多少異なっていますが、関係者の承認をえるという点では共通しています。
利用シーン
実際、組織内で社内稟議が利用されるのはどのような場面でしょうか。ここでは、いくつか代表的な例を挙げてお伝えします。
業務委託契約
外部の業者やコンサルタントに特定の業務を委託する際、稟議書を必要とすることがあります。業務委託する際の契約内容、予算、契約期間などを詳細に記入します。
接待費
顧客との関係維持や商談を目的とした接待に、必要な費用を求める目的で社内稟議が必要となることがあります。
デジタルツールの導入
セールステックや業務効率化のためのデジタルツールなどは、企業の業務に大きな影響を与えます。そのため、導入については慎重に検討されるべきことなので、稟議が必要なことがあります。
参考ページ: セールステックとは?種類や導入時のポイントを解説
社員の採用
新しい従業員を採用したい際に、稟議を必要とすることがあります。具体的には、採用する職種、給与、採用のタイミングなどを稟議書に記入します。
業務標準化したものの変更
業務標準化されていることを変更する場合、社内稟議が必要です。業務標準化とは、業務の手順などについて規定のルールや手順などのことです。これを変更する場合、稟議をとおして業務の効率化や質の向上などを目指します。
参考ページ:業務標準化とは?特徴と手法を解説
社内稟議のメリット
社内稟議を使用することで、いくつかのメリットがえられます。そこでここでは、代表的なものを整理してお伝えします。
会議を減らせる
社内稟議を使うことで、会議を減らすことができます。稟議書は提案内容が文書化されており、関連する詳細情報やデータも整理されています。そのため、会議の数や時間を減らすことに役立ちます。仮に会議を必要とする場合でも、懸念事項について意見交換するなどのことに集中できるため、会議自体を効率化させられます。
リスクを減らせる
社内稟議を利用することで間違った意思決定を減らすことができます。なぜなら、稟議を通すプロセスにおいて、複数人がその内容に目を通し、検討するからです。多くの人が目を通すことで、事前に計画の誤りや見落としを発見することができます。結果として、社内稟議を使用すれば意思決定の精度を高めるこができます。
責任の所在を明確化できる
トラブルが発生した際、責任の所在を明確にできるのも利点の1つです。稟議書は書面でおこなわれ、一定期間保管さることが多いため、記録に残ります。そのため、もし提案内容に問題が生じた場合、どの段階で何が決定され、誰がそれに関与したかを正確に確認することができます。このように、稟議は意思決定プロセスが透明化されるため、問題発生時の迅速な対応につながります。
コミュニケーションの活性化
社内稟議を使うことで、社内のコミュニケーションが活性化する利点があります。例えば、稟議書を作成する際には、提案者が管理職に対して自分のアイデアや視点を伝える機会がえられます。また、管理職はこの稟議書を検討することで提案者の仕事内容を理解し、それが会話のキッカケになります。
社内稟議が決済・実施されるまでのプロセス
ここでは社内稟議がどのようなプロセスで決済にいたるのか、整理してお伝えします。
提案の準備
最初のプロセスは、稟議書の作成・起案から始まります。例えば、新しいプロジェクトや予算の申請、人事関連などについて何らかの提案をおこないます。提案者は、目的や背景、必要な予算、期待される成果、リスクやデメリットなどを詳細に記述した稟議書を作成します。
関係者の閲覧・承認
次に、稟議書を提案者の直属の上司や関連する部署へ提出します。稟議書を受け取った関係者は内容を確認し、必要に応じて提案者に対してフィードバックや修正を伝えます。この段階で、提案内容に対して賛同や懸念事項が判明します。
決済
最終的に、稟議書が最上位の意思決定者に届けられ、問題がなければ決済されます。その後は、関連するチームや部署が集まり、実施計画の詳細をつめ、必要なリソースの配分やタイムラインの設定をおこないます。細部が確定すると、いよいよ提案内容の実施段階に移ります。
実施
決済が完了すると稟議書に記載された提案内容や計画が実施されます。具体的には、プロジェクトの立ち上げ、予算の割り当て、購入や契約締結などが該当します。
社内稟議書の書き方
稟議書は各企業によってフォーマットが異なります。そこでここでは、多くのフォーマットで共通している箇所に絞って書き方をお伝えします。
Step1.タイトルを明確にする
稟議書にはタイトルがあります。このタイトルには提案内容を表す適切な言葉を簡潔かつ明確に記入してください。稟議書の目的や内容が一目で理解できるようにすることが重要です。稟議書を手に取る人が、タイトルを読むだけで文書内容の概要を理解できるように記述します。
例えば「SEOコンサルタント顧問契約の提案」というタイトルにすれば、稟議書がコンサルタント契約に関する内容であることをすぐに理解できます。
Step2.目的や結論から書く
提案内容の詳細欄には結論や目的から書くようにしてください。稟議書の前半で結論や目的を明確にすることで、それを受け取る関係者は素早く内容を把握できます。このように提案から伝える方法は、忙しい管理職にとっても利点が大きいです。管理職は通常、多くの文書や情報に日々接しているため、限られた時間の中で素早くポイントを掴むことが必要だからです。
Step3.メリット・デメリットを伝える
提案内容には、メリットとデメリットの両方を記述する必要があります。提案のプラス・マイナスの両面を伝え、バランスの取れた視点で稟議書を書くようにしてください。メリットを記述することで、提案内容が会社にとってどのような価値をもたらすのかを実感してもらえます。一方、デメリットやリスクを伝えることで、管理職に適切な判断をしてもらうのに役立ちます。
Step4.根拠・データを入れる
提案内容には、可能な限り客観的なデータを入れるようにしてください。こうすることにより、稟議書の信頼性や説得力を高めるのに効果的です。客観的なデータとは、具体的な数値、統計、アンケート調査、市場分析、ケーススタディなどのことを指します。これらのデータを記入することで、提案が単なる意見ではなく、事実に基づいた合理的な内容であることを示せます。
Step5.必要な予算を伝える
稟議書には提案を実施するのに必要な予算を記入してください。予算の記入方法は会社ごとに異なりますが、基本的には総額とその内訳(人件費、材料費、外部サービスの利用料金など)を記入します。予算を伝えることで、提案内容と費用を比較して、妥当かどうかの判断を管理職にしてもらえます。
社内稟議をスムーズに通すための注意点
稟議書を書けば必ずしも決済されるとは限りません。そこでここでは、決済までスムーズに通すためのポイントを解説します。
リスク対策を盛り込む
稟議書を作成した際、事前に想定されるリスクを書き込むことが必要です。しかし、リスクを指摘するだけでなく可能な限り、その対策についても記述してください。リスクが現実化した場合の対処まで検討できていれば、関係者は安心して承認・決済することができます。
関連する部署との調整
稟議書を提出する前に、関連部署と事前調整をおこなうようにしてください。提案が他の部署やチームに影響を与える場合、それらの関係者と事前に連絡をとり、提案内容について話し合うなどのことが必要です。このステップを飛ばしてしまうと稟議書が承認されたとしても、他部署とのトラブルを生むことになるので注意してください。このようなプロセスを踏むことで、承認がスムーズに進む可能性が高く、実施段階での協力も期待できます。
ガイドラインの遵守
多くの組織では、稟議書の作成に関してガイドラインがあります。このガイドラインに従うことで、関係者が稟議書を理解しやすくなり、決済まで効率的に進むことができます。ガイドラインでは一般的に、提案の範囲、必要な情報の詳細度、関連するデータや分析の提示方法などが規定されています。
社内稟議のよくある質問
ここでは社内稟議についてよくある質問とその回答をお伝えします。
Q:稟議をオンライン化するメリットは?
Answer)社内稟議をオンライン化することのメリットは、いくつもあります。例えば、決済までのプロセスが効率化されることだったり、追跡が容易になることなどが挙げられます。また、リモートワークをしている従業員や異なる地域のオフィスにいるスタッフが、稟議を手軽に利用できるという点も大きなメリットです。
Q:承認されなかった場合の対応は?
Answer)稟議書が承認されないということもあります。この場合の対応は、まず承認されなかった理由を確認し、次にその理由に基づいて提案内容を見直すことです。承認されない理由を確認するためには、関係者に直接のフィードバックを求めてください。そうすると、提案の不足点や改善が必要な箇所、懸念されるリスクなどを把握できます。その後、提案を再検討し、必要に応じて内容を修正。改善策を施したあと、再度稟議書を提出してください。
Q:デメリットについても触れる必要はある?
Answer)稟議書ではデメリットにも触れる必要があります。稟議書の目的は、提案されたプランやプロジェクトに関して、その全体像を正確かつ公平に伝えることです。そのため、提案のメリットだけでなく、リスクやデメリットも記述することが望ましいです。デメリットを記述することで、意思決定者がリスクを加味して判断することができます。
Q:承認プロセスはどのように進みますか?
Answer)稟議書の承認プロセスは、組織によって多少の違いがあります。一般的には、まず提案者によって稟議書が作成されその後、関連する部門や責任者に提出されます。提出された稟議書は、承認・否認のフィードバックがおこなわれ、最終的に、最上位の決裁者によって判断されます。承認された場合、提案は実施に移されます。
Q:決済までの期間を短くするには?
Answer)稟議を電子化することによって、決済までの期間を短縮できる可能性があります。従来の紙ベースの稟議書をデジタル化することで、作成、閲覧、承認・否認が容易になり、プロセス全体の効率が向上するためです。また、電子化することによって、プロセス全体の透明性が向上し、追跡できるなどの利点も生まれます。
Q:稟議書の保管期間は?
Answer)社内稟議書の保管期間は、企業の内部ポリシーなどによって決められています。ただし、法律で保存期間が決まっている訳ではありません。理想をいえば永年保存することが望ましいです。ただし、稟議書に添付する契約書や見積書がある場合、法的に定められている保存期間が存在することがあります。
まとめ