クライアントワークとは?定義や具体的な職種、仕事の進め方など解説
近年、働き方が大きく変わってきました。「クライアントワーク」という言葉が一般的になり、フリーランスやプロジェクトベースで働く人々が市場でその存在感を増してきています。
事実、内閣官房日本経済再生総合事務局が2020年5月に発表した「フリーランス実態調査結果」によると、国内のフリーランス人口は約462万人にも上ることが明らかになりました。
また、世界最大級のクラウドソーシングサービスを提供するUpworkによる「Freelance Forward 2022」レポートによると、米国労働人口の39%、約6000万人が過去1年間にフリーランスとして仕事をしていたと報告されています。この数字は、フリーランスやプロジェクトベースの働き方が、ただの流行ではなく、世界的にも新たな働き方として定着しつつあることを示唆しています。
クライアントワークの定義
クライアントワークとは、特定の顧客のためにおこなわれる専門的な仕事やサービスを指します。一般的なビジネスとは異なり、顧客の要望やニーズに応じてカスタマイズしたコンテンツやサービスを提供します。
また、多くの場合、クライアントと事業主(ベンダー:製品やサービスを提供する企業や個人)との間で契約が結ばれ、特定の期限や目標を設定し業務が遂行されます。
クライアントとカスタマーの違いに注目
クライアントワークの定義を理解する際、顧客が「クライアント」か「カスタマー」かの違いに注目すると分かりやすいです。
クライアント | カスタマー | |
関係の深さ | 深い | 浅い |
取引の期間 | プロジェクトごと | 必要に応じて、その都度 |
商品・サービス | カスタマイズされている | 標準的・同一 |
カスタマーは、一般商品を購入する顧客のことです。例えば、スーパーで買い物をしている顧客は、クライアントではなくカスタマーといえます。そのため、スーパーが顧客に対しておこなっているビジネスはクライアントワークとはいえません。
一方、SEOコンサルティングという専門的なサービスを受ける顧客は、クライアントといえます。契約に基づいて、高度な専門知識やカスタマイズされたサービスを受け取るからです。そのため、SEOコンサルティングはクライアントワークといえます。
参考ページ:Clients vs. customers – LesRoches
クライアントワークの職種例
近年、クライアントワークといえる職種は年々増えていますが、具体的にどのようなものがあるのかについて整理してお伝えします。
WEBデザイナー
WEBデザイナーは、WEBサイトのデザインやインターフェースの設計・改善をおこなう専門職で、クライアントワークの1つです。主な仕事内容は、魅力的で直感的に操作できるWEBサイトの作成です。
具体的にはグラフィックデザイン、レイアウトの配置、色彩・フォントの選択、画像設置などが挙げられます。WEBデザイナーにはクリエイティブな能力はもちろん、HTML、CSS、JavaScriptなどの技術的なスキルも必要です。
動画編集者
動画編集者は、映像素材を編集する専門職でクライアントワークの1つです。主な仕事内容は、撮影した映像や音声素材を切り取り、並べ替え、合成するなどして魅力的な動画に仕上げることです。
動画編集者には、映像編集ソフトウェア(Adobe Premiere Proなど)が自由に操作できる技術力と、映像に関するセンスが求められます。
ライター
ライターは、さまざまな媒体でテキストコンテンツを作成する専門職です。クライアントの依頼に基づいて仕事をおこなうため、クライアントワークの1つです。
業務範囲は幅広く、ブログ記事やレポート執筆、電子書籍作成、広告コピーの作成、技術文書の記述、WEB広告文の作成などがあります。ライターには、豊かな語彙力、編集能力、筋道を立ててメッセージを伝える論理力などが必要です。
プログラマー
プログラマーは、コンピュータプログラムを開発したり、バグの改善、保守などをおこなう専門職です。通常、クライアントからの依頼をうけ業務をおこなうため、クライアントワークに該当します。
プログラマーはJavaScriptやPythonなどの専門的な言語を駆使して、アプリケーションやシステムを開発し、ユーザーの問題解決をおこないます。必要なスキルとしては、プログラミングスキルはもちろん、チームで仕事をおこなう必要があるため、コミュニケーション能力も重要です。
クライアントワークの魅力
クライアントワークにはいくつもの魅力がありますが、ここではその代表的なものを取りあげて解説します。
満足度が高い
クライアントワークにおける最大の魅力の1つは、仕事の満足度が高いことです。クライアントとの距離が近いため、成果物に対して、生の声を聞くことができます。そして、クライアントが成果物に満足していると、事業主はやりがいを感じることができます。
経験が実績となる
さまざまなプロジェクトやクライアントとの作業を通じてえた経験は、そのまま事業主の実績となります。特に成功したプロジェクトは、ポートフォリオとして提示することができ、新しいクライアントを獲得する際に実力証明として役立ちます。このように、クライアントワークで積み重ねた経験は、事業主の実績となり市場価値を高めます。
参考ページ: How To Make A Portfolio That Stands Out? – UNIVERSITY OF THE PEOPLE
専門性の向上
クライアントワークは、仕事を通して専門性が向上するという魅力があります。クライアントからのさまざまな要求や課題に対応することで、事業主は新しいスキルを学び、既存の知識を発展させることが可能です。経験を積むほど、専門家としての能力を高めることができ、より複雑でハードなプロジェクトにも対応できるようになります。
クライアントワークに必要な知識やスキル
実際にクライアントワークの業務をおこなうには、どのようなスキルが必要となるのでしょうか。ここでは、その主なものを取りあげ解説します。
コアになる専門スキル
クライアントワークでもっとも基本となるスキルは、成果物を作りあげるのに必要な専門知識と技術力です。これは、事業主のもっともコアとなるスキルです。例えば、デザイナーであればグラフィックデザインの技術、コンサルタントであれば市場分析や戦略立案能力などが該当します。
また、ほとんどの業界において専門スキルは、技術の進歩や市場の変化に対応できるようアップデートする必要があります。例えば、SEOコンサルティングになれば、常に最新の検索エンジン事情について学ぶ必要があります。
ブロクジェクト管理スキル
クライアントワークでは、複数のプロジェクトを同時に進めることがあるため、限られた時間とリソースを最大限に活用できるよう、それらを管理するスキルが必要です。具体的には下記のようなものです。
- タスクの優先順位付け
- 時間管理
- 作業の自動化
- 仕事の分担指示
- プロセスの最適化
こういった効率的に業務をこなす能力があることで、納期を守り、高品質な成果をクライアントに提供することができます。
クライアント業界の知識
業種にもよりますが、クライアントが属する業界や市場に関する知識が必要です。クライアントの多くは「依頼する事業主が自社の業界について理解しているか」という点をとても気にするからです。
例えば、事業主がSEOコンサルティングで、クライアントが歯科医院であれば、どういったキーワードで検索されているのか、歯科業界で注目されている治療法はなにかといった事柄について、基礎的な事柄を把握しておく必要があります。
提案力
クライアントワークでは、単にクライアントの要望に応えるだけでなく、提案力も重要です。これは、クライアントが自社の業界には詳しくても、事業主の専門分野には詳しくないことがあるからです。
例えば、クライアントがECビジネスを運営していても、デザインに関しては専門的な知識があるとは限りません。そのため、クライアントが伝えた要望が、デザインの観点から見ると最適でないこともあります。このような場合、事業主が専門家として、より良い解決策をクライアントに提案することが大切です。
クライアントワークの一般的な業務フロー
クライアントワークの業務は、どのような手順で進められるのでしょうか。ここでは、一般的な業務フローをお伝えします。
ヒアリング
クライアントワークの最初の業務は、クライアントの要望をヒアリングすることです。どのようなニーズや要望があるのかを正確に理解しておく必要があります。
ヒアリングすべき内容としては、下記のものが挙げられます。
- 最終的にどういう結果を望んでいるのか
- 制約事項はあるのか
- 期限はいつまでか
- 優先事項は何か
ヒアリングを通じてこういったことを確認します。その後、クライアントのニーズに応えることができると判断したら、契約を結び、実務に移ります。
実務
クライアントからの要望やニーズを満たすための具体的な作業をおこないます。このステップでは、ヒアリングでえた情報を基に、どのような手順で業務をおこなうか判断し、成果物の開発や実際のサービス提供をおこないます。
また、チームで業務をおこなう場合は、緻密なスケジュール管理をしながら進めます。チーム同士、小まめに連絡を取り合って作業の進捗状況を確認しつつ、業務を遂行してください。
成果物の納品
実務を通じて作成された成果物は、納期までにクライアントに提供します。完成した成果物が、要望や仕様を満たしていることをクライアントに確認してもらいます。
また、プログラミングなど作業量が膨大な業務については、納品前に繰り返し途中経過を報告し、成果物の方向性を間違えていないかクライアントに確認をとってください。
フィードバックと修正
成果物を納品すれば、それで完了とはなりません。クライアントからフィードバックを受けることも重要です。
納品後、クライアントは成果物を評価し、追加の要望や修正点を伝えることがあるからです。もしそのようなことがあれば、柔軟な対応を心がけ再度、納期を決めて実務のステップに戻ります。
クライアントワークを始める前に知っておくべきこと
ここでは、クライアントワークをする際に知っておくべき注意点を挙げて解説します。
参考ページ: 5 Things You Need to Know About Working with Clients – HerzingUniversity
迅速なレスポンスは信頼を築く
クライアントワークをおこなう際には迅速なレスポンスが重要です。クライアントから問い合わせや要望がきても、それを何日も放置してしまうことは適切ではありません。
できる限り早く対応することで、クライアントの不安や疑問を解消することができ、信頼につながります。また、進捗状況の定期的な報告や、必要な情報の共有にも気を配ってください。こうすることで、クライアントとの誤解を防ぐのに役立ちます。
クライアントの望みを明確にする
実務に取りかかる前には、クライアントが何を望んでいるのかを明確にしてください。サービスや成果物に対して、クライアントがどのような欲求やニーズをもっているかを正しく理解することで、満足度の高い成果物やサービスを届けることができます。
クライアントワークのよくある質問
ここでは、クライアントワークについてよくある質問を取りあげ、詳しく解説します。
Q:チームで実務を進める際の注意点
Answer)チームで効果的に実務を進めるには、いくつかの重要なポイントがあります。まず、プロジェクトの目標設定や期限の管理に注意してください。スケジュールを立て、それに沿って進行し、納期を守ることでクライアントの期待に応えていきます。
また、チーム内でのコミュニケーションを定期的にとり、問題が発生した際には迅速に対応できるよう、リーダーが指示を出すことも必要です。予期せぬトラブルはつきものなので、リーダー役を務める人は冷静な判断が求められます。
Q:ポートフォリオは必要ですか?
Answer)事業主の専門性を示すために、ポートフォリオは重要です。例えば、WEBサイトの構築サービスをおこなっているなら、これまで手がけたWEBサイトのサンプルを表示してください。このように過去のプロジェクトや実績を示すことで、事業主のスキル、専門知識、経験を示すことができます。
Q:クライアントワークの価格設定方法は?
Answer)クライアントワークの価格設定はプロジェクトの性質や市場により異なります。一般的には、競争力、コスト、どのような価値を提供できるのかを考慮して価格設定をおこなう必要があります。
また、そのような検討が難しい場合は、時間単価などで判断することもできますが、クライアントワークの場合、時間単価は実情にそぐわないことが多いです。できる限り、成果物(結果)に対して、価格を設定できるようにしてください。
Q:契約書を作る際に注意すべきことは?
Answer)クライアントと契約書を結ぶ際に注意すべき点は2つあります。
1つ目は基本的なことですが、契約条件と交渉内容が一致しているかどうかです。契約書と実際に合意した内容にズレがある場合、どちらかが不満足な結果になります。例えば、交渉の際には「毎月25日までに成果物を納品する」と決めていたのに、契約書にはその日付が抜けているといったことです。
2つ目は、契約書に曖昧な点がないかを確認します。取引条件の中に曖昧な項目があると、予期せぬトラブルが発生した際、問題になることがあります。例えば、下記のような項目です。
- 納期が遅れた場合はどう対応するのか
- 品質基準はどういった視点で評価するのか
- バグやエラーが見つかった場合の対処
こういった曖昧さを残すことなく定めてください。契約を細かく決めておくことで、クライアントとのトラブルを最小限に抑えることができます。
参考ページ:How to Write a Contract -HarvardLawSchool
まとめ