カスタマーサクセスとは?求められる背景や具体的な業務、成功事例など詳しく解説
カスタマーサクセス(Customer Success)は、顧客の成功を最優先に考えるアプローチです。顧客が自社製品を最大限活用し、目標達成ができるよう支援することで、顧客満足度向上や解約率の減少、LTVの向上などさまざまな成果を生んでいます。
カスタマーサクセスとは?
米国カスタマーサクセス協会によると、カスタマーサクセスとは「顧客と企業の収益を最大化するために、長期的、科学的な視点で設計されたビジネス戦略」と定義されています。平たくいえば、顧客が自社製品を利用するすることで、達成したい目標を実現できるよう支援することです。
主なアクションとしては、次のような項目があります。
- 顧客の課題や目標を把握
- 顧客への情報提供やサポート
- 顧客が目標達成できるよう支援
実際にカスタマーサクセスを適切におこなえば、顧客満足度の向上や解約率の低下、アップセルやクロスセルの向上など、さまざまな成果をえられます。
参考ページ: The Definition of Customer Success – CustomerSuccessAssociation
カスタマーサポートの違い
カスタマーサクセスは、カスタマーサポートとは異なります。カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせに応じて問題を解決することが主な役割で受動的な姿勢です。一方、カスタマーサクセスは顧客の目標達成を実現するために、積極的に関わります。
例えば、顧客の課題を先回りして解決したり、どう製品を活用すれば良いのかをトレーニングするなどのことが挙げられます。このように、受動的な関わりをするのか、能動的な関わりをするのかという点に大きな違いがあります。
カスタマーサクセス | カスタマーサポート | |
目的 | 顧客の成功 | 問題解決 |
姿勢 | 能動的 | 受動的 |
指標 | 売上・解約率 | 対応件数 |
カスタマーサクセスが求められる背景
なぜ今、カスタマーサクセスが注目されるのでしょうか。その背景には次の2つのことが関わっています。
ビジネスモデルの変化
カスタマーサクセスが注目を浴びる理由は、ビジネスモデルの変化にあります。
以前は、多くのビジネスで「売り切り型モデル」が主流でした。このモデルでは、商品やサービスを売った後、企業と顧客の関係は終了することが一般的で、問題がなければ連絡を取り合うこともほとんどありませんでした。
しかし、今では売り切り型モデルよりも、サブスクリプションモデル(例:SaaS)が主流になっています。
サブスクリプションモデルでは、顧客が商品やサービスを購入(契約)しても、それで関係が終わるわけではありません。むしろ、購入後に企業と顧客の関係がスタートします。さらに、サブスクリプションモデルでは、1回の支払いが少額なため、顧客に長期間サービスを利用してもらうことが重要です。
こうした変化から、顧客の成功をサポートし、長期間にわたる関係を築くというカスタマーサクセスのアプローチが重要視されるようになりました。
参考ページ: サブスクリプションビジネスとは?基礎知識や成功させるポイントを解説!
営業スタイルの変化
従来の営業スタイルでは、初回契約が主な目標であり、その後の顧客との関わりは限られていました。しかし、近年は契約後も顧客との関係を時間をかけて築くことで、アップセルやクロスセルなどのチャンスをつくるようシフトしつつあります。
このように、初回契約にとどまらず、その後のフォローアップを含めたプロセス全体で収益を最大化しようという意識が高まってきました。これが、カスタマーサクセス普及の一因になっています。
カスタマーサクセスで重視されるKPI(成果の指標)
カスタマーサクセスの成果を測る際に、重要になる指標がいくつかあります。そこでここでは、代表的な指標を取りあげ解説します。
解約率(チャーンレート)
カスタマーサクセスでは、解約率(チャーンレート)が重要なKPIの1つです。
解約率が高い場合、顧客が競合他社の提供するサービスに移行したり、提供される価値に満足していない可能性があります。カスタマーサクセスでは、こういった不満を解消し、継続率を高めることが重要な役割になります。
アップセル率・クロスセル率
アップセルとは、顧客に上位版のプランやサービスを提案し、契約してもらうことです。クロスセルは、既存顧客に契約中のサービス以外の新たな商品を提案し、契約してもらうことです。
カスタマーサクセスに取り組んだ結果として、アップセル率やクロスセル率の向上が期待できます。
参考ページ: アップセル・クロスセルとは?基本事項や実施するメリットなど解説
NPS(顧客ロイヤリティ)
NPSとは、顧客が企業やサービスをどれだけ満足しているのかを測る指標です。具体的には積極的に他人に紹介するかどうかで計測します。
NPSスコアが高ければ、顧客は企業に対して高い信頼感や満足していると判断でき、今後も継続してサービスを利用してくれる可能性が高いといえます。
参考ページ: NPSとは?基本事項やメリット、算出方法などを解説
カスタマーサクセスの具体的な業務
ここでは、カスタマーサクセスに取り組む際、具体的にどのような業務があるのかを整理してお伝えします。
オンボード支援
オンボード(Onboard)支援とは、新規顧客がサービスを初めて活用する際にスムーズな導入がおこなえるようサポートすることです。
具体的には初期設定やアカウントのセットアップ、操作スキルのトレーニングなどが該当します。特にSaaS(Software as a Service)などのテクノロジーサービス系の業界では、オンボード支援が顧客満足度に大きく影響するといわれています。
コミュニティの運営
カスタマーサクセスの業務として、コミュニティの運営が挙げられます。顧客同士や企業と顧客との間で、情報共有やコミュニケーションを促進します。コミュニティは所属意識を高めるため、解約率を下げることに役立ちます。
参考ページ: コミュニティマーケティングとは?メリットや実施方法、注意点などわかりやすく解説
モニタリング
カスタマーサクセスの業務として、サービス利用状況などをモニタリングすることが挙げられます。顧客が製品やサービスをどのように活用しているかを定期的に追跡し、そのデータを分析して顧客の成功を支援します。
例えば、定期的なモニタリングによってある顧客がサービスを利用していないと判明すれば、サービス・製品の利用方法などについて積極的にレクチャーするなどの対応が検討できます。
カスタマーサクセスの成功事例
カスタマーサクセスという言葉は米国で生まれたもので、日本ではまだ浸透していません。しかし、既にカスタマーサクセスの成功事例が生まれています。
そこでここでは、メルカリサロンとスタディサプリの事例をとりあげ解説します。
メルカリサロン
参考ページ: メルカリサロン
メルカリは、日本を中心に活動するオンラインフリマアプリです。このプラットフォームは、ユーザー同士が自分の不要なアイテムを売買できる場として、2013年に始まりました。
カスタマーサクセスの一例として、メルカリサロンが挙げられます。このメルカリサロンは、2022年10月に「売買の楽しさを共有しよう」というコンセプトで始まったコミュニティです。
ここでは顧客同士の交流や情報共有が活発におこなわれています。このコミュニティを通じて顧客同士のつながりが深まり、メルカリに対する愛着やロイヤルティを高めることに成功しました。
スタディサプリ
参考ページ: スタディサプリ
リクルートが提供するスタディサプリは、主に生徒向けのサービスを提供していますが、実は学校向けのサービスも展開しています。学校向けのサービスを初めて提供した当初、リクルートは営業努力により契約数を増やすことに成功しましたが、その後の離脱率が非常に高い状態が続いていました。
しかし、リクルートはカスタマーサクセスのアプローチでこの問題に取り組み、教師がスタディサプリをどう効果的に活用できるかを検討しました。その結果、離脱率を大幅に下げることができたのです。
実際に取り組んだ内容としては、生徒と教師の連携機能を強化し、学習へのモチベーションを向上させると同時に、教師が効果的なサポートをおこないやすい環境を整備しました。学習管理や進路指導など、教師のさまざまな活動をサポートできるようスタディサプリを改良したのです。
教師の成功を追求する姿勢によりネガティブなフィードバックは減少し、非常に高いリピート率を達成しています。
カスタマーサクセス運用におすすめのツール
カスタマーサクセス運用を効率的かつ効果的におこなうためには、さまざまなツールを活用することが重要です。以下に、カスタマーサクセス運用におすすめのツールを紹介します。
Gainsight
参考ページ:Gainsight
カスタマーサクセスのオペレーション全般をサポートするプラットフォームで、データ分析、顧客コミュニケーション、タスク管理などの機能が統合されています。Gainsightの主な特徴は次の通りです。
顧客エンゲージメントを増やす
顧客の属性や行動に基づいて、パーソナライズされたコンテンツ配信をすることができます。顧客は自分に関連性の高い情報を受け取れるのでエンゲージメントが高まります。
分析機能を活用した顧客理解
顧客の行動データやアンケートデータなどを収集・分析する機能が備わっています。これにより、顧客のニーズや課題を理解できます。
顧客利用状況の把握
顧客の製品利用状況データ、フィードバックを収集して分析します。これにより、顧客のサービス利用状況や満足度に応じたサポートをおこなうことができます。
KARTE
参考ページ:KARTE
株式会社プレイドによって開発・提供されています。顧客の行動を可視化・分析し、パーソナライズされたコミュニケーションを実現できます。顧客の満足度やロイヤルティを向上させることが目的のツールです。主な特徴は次のとおりです。
顧客行動の可視化
顧客のWEBサイトやアプリの利用状況、SNSの投稿、アンケート結果などのデータを収集して分析します。これにより、顧客の行動を可視化し、利用状況に合わせたサポートが可能です。
パーソナライズされたコミュニケーション
顧客の属性や行動に基づいて、パーソナライズされたコミュニケーションを実現できます。これにより、顧客にマッチした情報を届けることができ、エンゲージメントを高めることができます。
Onboarding
参考ページ:Onboarding
株式会社オンボーディングが開発・提供しているツールです。ノーコードでプロダクトツアーやチュートリアルを作成することができます。主な特徴は次のとおりです。
プロダクトツアーの作成
ドラッグ&ドロップで簡単にプロダクトツアーを作成することができます。
チュートリアルの作成
マニュアルや動画などを組み合わせて、チュートリアルを作成することができます。この機能で、プロダクトの利用方法や目的などを、具体的に説明できます。
データ収集と分析
プロダクトツアーやチュートリアルの利用状況を収集して分析することができます。
カスタマーサクセスのよくある質問
ここでは、カスタマーサクセスについて弊社に寄せられる質問の中から、代表的なものを取りあげ解説します。
Q:導入するメリットは?
Answer)カスタマーサクセスを導入することには多くのメリットがあります。顧客満足度やロイヤリティの向上、リピートの増加、口コミによる新規顧客獲得、競争優位の確立などが挙げられます。
Q:主な業務は何ですか?
Answer)カスタマーサクセスの具体的な取り組みは、さまざまです。一般的には、定期的なコミュニケーションや進捗確認、製品導入支援、トレーニングの提供、ニーズの把握などが該当します。また、顧客からのフィードバックを製品改善に反映させる役割もあります。どの業務をおこなうかは、企業の目的やニーズによって異なります。
Q:導入に必要なステップは?
Answer)カスタマーサクセスを導入するには、最初に顧客のニーズと自社の目標を整理します。その後、カスタマーサクセスチーム組み、実際に顧客とのコミュニケーションをとる計画を立てます。同時に、各種ツールを利用して顧客データを収集してください。
Q:適している業界は?
Answer)カスタマーサクセスは、さまざまな業種において導入可能です。いくつか例を挙げおきます。
ソフトウェア業界
SaaS(Software as a Service)やアプリケーション開発などの分野で、顧客がソフトウェアを最大限に活用するための支援が必要です。顧客がサービス内容を理解し、操作できるようトレーニングしたり、トラブルを解決するなどのサポートが必要です。
教育業界
オンライン教育プラットフォームでは、生徒や教師が学習をスムーズにおこなえるよう支援が必要です。生徒の進捗管理や教材の最適な活用法をトレーニングするなどが考えられます。
フィットネス業界
フィットネスアプリや健康関連サービスでは、顧客の健康目標達成を支援することがカスタマーサクセスを考える上で重要です。個別の健康プランやアドバイスを提供するなどが考えられます。
まとめ