バリューチェーン分析と3つの経営戦略について徹底解説!
高度経済成長を遂げた日本では、様々な商品やサービスが世に溢れています。
そのため、ただ質が高い商品やサービスを提供するだけでは他社との差別化が難しくなってきています。
顧客から選ばれ続け売上を伸ばしていくためには、自社の強みを理解し、課題点を解決していく必要があります。
自社の強み・課題を把握する上で欠かせないツールがバリューチェーン分析です。
バリューチェーン分析によって無駄なコストの洗い出しや自社の強みが把握できるため、経営戦略や事業計画の見直しに役立ちます。
バリューチェーン分析とは
バリューチェーンとは、アメリカの経済学者であるマイケル・ポーター氏が提唱した概念です。
ここでは、バリューチェーン分析の概要についてご紹介します。
バリューチェーンとは
バリューチェーンは、組織が顧客に価値を生み出すために実行する一連の活動を指します。
バリューチェーン分析とは、企業が内部活動を評価して、それぞれが企業の競争優位性にどのような貢献をしているかを特定する戦略的プロセスです。
バリューチェーンの構成要素
バリューチェーンは大別すると、次の2つの要素で構成されています。
1.主活動
主活動は製品・サービスの提供に直接関わる活動です。
- インバウンド物流:原材料の入手、保管、在庫管理
- オペレーション:原材料・部品を加工し製品化する
- アウトバウンド物流:完成した製品を顧客へ配送
- マーケティングおよび販売:広告、宣伝、価格設定など、認知度を高め顧客に購入を促す
- アフターサービス:製品説明やメンテナンス、保証、修理など製品購入後の顧客満足度を維持する活動
2.支援活動
支援活動は主活動をサポートし、主活動の効率性を高めるための活動です。
- 調達:原材料または固定資産の購入
- 技術開発:効率的な製品作成のための研究開発
- 人材管理:従業員を雇用し、適切かつ効率的なポジションへの配属
- インフラストラクチャー:企業を維持・管理していくための資金調達や財務計画、法律業務など
バリューチェーン分析ではどの過程に課題があるかを特定し、原因を追求し改善を図っていきます。
バリューチェーン分析を行うメリット
バリューチェーン分析は事業運営を最適化し、利益を最大化する鍵となります。
それぞれの活動を効果的に管理することで、自社や関連業者、顧客にとっての価値を最適化できます。
バリューチェーン分析を正しく行うことで、次のようなメリットがあげられます。
- 関連業者とよりよい関係性を確立する
- コスト削減と納期管理の最適化
- 在庫の最適化
- 顧客満足度の改善
- 製造・サービス提供における過程の標準化と最適化
- 競争優位性の向上
なかでも『競争優位性の向上』は最も重要です。
競合他社と同じような製品・サービスを提供することでは、生き残れる企業は多くありません。
企業価値を高めていくためには、競合他社に打ち勝つための競争優位性を見つける必要があります。
バリューチェーン分析は時間がかかりますが、企業の全活動を理解する上で最も信頼できる分析ツールです。
バリューチェーン分析はさまざまな部門において、改善箇所を特定するための最良の方法といえるでしょう。
バリューチェーン分析の流れ
競合他社にどのように勝ちぬくかによって、バリューチェーン分析の実施方法は異なります。
- コストメリット分析
- 差別化メリット分析
ここからは両方の実施方法についてご紹介します。
コストメリット分析
コスト面において競争優位性を確立するには、顧客の期待値以外の全てを下げることが必要です。
コストメリット分析では、生産コストと製品コストの両方の削減を試みます。
企業としてコストメリットを競争優位性として打ち出すのであれば、大量生産が容易でかつ低価格で価値が高い製品が必要になります。
コストメリット分析には5つのステップがあります。
主活動と支援活動の特定
原材料の調達からアウトバウンド物流までの全ての活動をリストアップします。
各活動にかかるコストを算出
製品全体のコストに対して、各活動から発生するコストは何%を占めるのかを算出していきます。
占める割合が高い活動が判明した場合は、その活動の縮小を検討します。
各活動のコスト要因を探る
各活動のコストにおいて、そのコストが発生する要因を探ります。
例えば、アウトバウンド物流のコストが割高なのであれば、車両費やドライバーの人件費などが該当します。
アクティビティ間の関連性を特定
企業活動において、いくつかの活動は関連しており、ある活動でのコスト削減が別の活動でのコスト削減にも繋がる可能性があります。
コスト削減の機会を特定
コストを全て削減することはできませんが、大幅に削減することは可能です。
最大のコストがどこから発生しているのかを確認し、削減を検討していきましょう。
簡単なコスト削減の方法としては、在庫を減らす、原材料や関連業者の見直し、労働力の一部自動化などがあげられます。
差別化メリット分析
コストメリット分析とは対照的に、差別化メリット分析では製品の品質とブランド価値で競争優位性を見い出すことを目指します。
場合によってはコストが増加する可能性はありますが、全体的な利益が増加するのであれば問題ありません。
差別化メリット分析は3つのステップを踏んでいきます。
価値を生み出す活動を特定
全ての活動をリストアップしたら、顧客価値に最も貢献する活動をピックアップします。
活動を改善するための戦略立案
顧客価値がブランドの信頼性に由来している場合は、その活動を高める方法を検討してください。
例えば、サステナビリティへの貢献や慈善団体への寄付が該当します。
持続可能な差別化を特定
全ての顧客価値の向上が持続可能なわけではありません。
長期にわたって利益を生み出し続ける活動の改善を検討してください。
3つの経営戦略とは
バリューチェーン分析で企業の優位性を把握できた後は、最適化のため主に3つの戦略を取ることになります。
ここでは、その3つの基本戦略についてご紹介します。
コストリーダーシップ戦略
コストリーダーシップ戦略とは、製品の製造にかかる経済的コストを抑えることで価格面での優位性を確立する戦略のことをいいます。
製品の生産規模や技術者の経験年数が大きく影響するため、特に資金力のある企業に採用されやすい戦略です。
差別化戦略
差別化戦略とは、製品・サービスやブランドといった経営資源を用いて競合他社との違いを作り出す戦略のことです。
この戦略において重要なのが、『それが本当に顧客にとっての価値に繋がっているのか』をよく考えなければならないことです。
たとえ競合他社よりも優れた自社製品を製造・販売したとしても、それが顧客にとってメリットがなければ購買には繋がらないという結果になってしまうのです。
集中戦略
集中戦略は特定の顧客層や地域などに集中して展開する戦略のことです。
ターゲットを絞り込むことで効率的な価値提供が可能となり、その領域内での優位性を獲得できます。
集中戦略は対象とする市場の規模があまり大きくないことから、資本力があまりない新規参入企業によく採用される傾向にあります。
まとめ