サブスクリプションビジネスとは?基礎知識や成功させるポイントを解説!
マーケティングの世界でサブスクリプションという言葉を耳にすることが増えているのではないでしょうか。実際、さまざまな業界でこのモデルの導入が進んでいます。
サブスクリプションビジネスとは?
サブスクリプションビジネスとは、顧客が製品やサービスの使用権を定期購入するビジネスモデルのことです。
従来の一般的な買い切り型と違って、顧客は契約期間のみ製品・サービスを利用できます。買い切り型のように所有せず、必要なときだけ必要なだけ製品・サービスを使い、不要になれば契約を終了できるのが顧客にとっての魅力です。
また、事業者としても、顧客と信頼関係を構築することで長期間にわたり収益が生まれ、未来の販売予想を立てやすいなどのメリットがあります
サブスクリプションビジネスが普及した背景
近年、サブスクリプションビジネスが国内・海外問わず普及してきていますが、その背景にはどのような要因があるのでしょうか。いくつか取り上げて解説します。
高速インターネットの普及
音楽や動画、サーバーなどさまざまなコンテンツ・サービスをオンラインで利用できるよう変化したことが、サブスクリプションビジネスの普及要因です。
例えば、従来は企業がサーバーを利用しようと思えば、会社の建物内に設置するオンプレミス形態が主流でした。しかし、今は物理的なサーバーを購入・設置しなくても、クラウド上のオンライン化されたサーバーを利用できるように変化しました。
また、ユーザーが音楽を聞こうと思えば、今まではCDという物理的な商品を購入する必要がありました。しかし、高速インターネットの普及により、WEBに接続すればいつでも好きな曲を聴ける環境が整いました。
このように高速インターネットの環境が整ったことで、サブスクリプションビジネスが普及しました。
シェア意識の高まり
2008年のリーマンショック以来、モノが売れない状況が続きました。さらに地球環境への配慮などの相乗効果もあり、顧客がモノを買わずにシェアするという節約意識が高まってきたのです。
こうした背景から、製品・サービスを購入してもらうのではなく、必要な期間だけユーザーに利用してもらうというサブスクリプションビジネスが普及してきました。
代表的なモノが動画配信サービスのNetflixや音楽配信サービスのSpotifyなどです。
サブスクリプションビジネスのメリット
ここでは、サブスクリプションビジネスを展開する際のメリットを整理してお伝えします。
他社への乗り換えが防止できる
サブスクリプションビジネスの場合、一度、契約してもらえれば、他社への乗り換えが防止できるという特徴があります。
例えば、スマートフォンのキャリア変更を考えてください。キャリアを変更した方がいくらかでも料金が安くなると分かっている人も多いはずです。しかし、手続きの煩雑さや費やす時間などを考えれば、このままで良いと判断してしまうことも多いのではないでしょうか。
このようにサブスクリプションビジネスは、他社への乗り換えを防ぐ効果があります。
価格訴求しやすい
サブスクリプションの場合、顧客に価格訴求しやすいという利点があります。
例えば、Microsoftの場合、買い切りタイプであればPersonal 2021年版で29,502円です。(2023年2月現在の価格)
一方、サブスクリプションタイプの365 Personalであれば、月額1,284円です。
長い年月使用すれば買い切りタイプの方が安いと分かっていたとしても、やはり多くの人がサブスクリプションタイプの方が割安に感じてしまうのではないでしょうか。
このようにサブスクリプションの方が価格訴求の点で強いという特徴があります。
売上を予想しやすい
通常の買い切り型の商品を販売する場合、新商品を開発するたびに広告費などのコストがかかります。そして、その売上がどの程度になるのかやってみないと誰にも分かりません。
しかし、サブスクリプションの場合、一定期間の継続的な収益が見込めるため未来の売上を予想しやすいというメリットがあります。
サブスクリプションビジネスのデメリット
サブスクリプションビジネスはメリットばかりではありません。デメリットも存在するため、この両方を検討して導入をするか検討してください。
投資費用回収期間(リードタイム)が長い
サブスクリプションビジネスを始める場合、初期投資が必要です。例えば、洋服や鞄をサブスクリプションのモデルで販売する場合、最初にそれらの物品を購入する費用がかかります。
しかし、サブスクリプションは、毎月の費用を抑えて長い期間をかけて収益を回収するというビジネスモデルのため、リードタイムが非常に長いです。万が一、退会率が高い場合は、キャッシュアウトするリスクがあります。
退会を忘れてイメージダウンになることも
顧客がサービスを利用する必要がなくなったにもかかわらず、退会手続きを忘れてしまうことがあります。この場合、顧客からしたら無駄な費用を支払ったことになります。
利用規約に返金しないことを告げておけば企業側に問題はありませんが、顧客からすると企業に対して悪いイメージを持ってしまうことがあります。
サブスクリプションビジネスの成功ポイント
ここでは、サブスクリプションビジネスを展開する際の成功のポイントを3つあげて解説します。
顧客満足度を高める
サブスクリプションは、契約を継続することで収益を上げるビジネスモデルです。そのため、短期間で解約されてしまうと、収益の確保が難しいです。
新規顧客獲得も大切ですが、何より解約率を下げることが大切です。そして、少しでも長くサービスを利用してもらうには、顧客満足度を高めることが最重要課題の1つです。
顧客の声を吸い上げる仕組み
一度、サブスクリプションを契約した顧客でも、サービスを継続利用していたら何らかの不満を抱くことが多いものです。
こういった不満が蓄積されれば、解約に発展します。そのため顧客の声を常に吸い上げる仕組みが必要です。
具体的には、問い合わせをしやすくする、アンケートを実施するなどの方法が考えられます。またこのように顧客の声を直接聞くことによって、製品・サービスの改善に結びつけることが大切です。
フリーミアム戦略を活用する
サブスクリプションは、1件あたりの収益が比較的少ないため、多くの顧客を獲得する必要があります。その際に役立つのがフリーミアム戦略です。
例えば、基本機能を無料にして、より高度な機能を利用する際には有料にするといったことや初月無料にするなどの施策が考えられます。
サブスクリプションビジネスの成功事例
ここでは、サブスクリプションビジネスの成功事例を紹介します。有名企業のサービスを取り上げているため、あなたもいくつか利用したことがあるかもしれません。
音楽ストリーミングSpotify
従来はCDを購入して音楽を聞くということが一般的でした。しかし、音楽定額聴き放題サービスのSpotifyは全世界の音楽約4000万曲をいつでも自由に聞くことができます。
Spotifyが画期的だったのは、一部を除く大半の機能を無料会員でも利用できるという点です。こういったフリーミアム戦略が功を奏し、2023年3月現在会員数4億8,900万人に達しています。
雑誌読み放題サービスdマガジン
NTTドコモが運営するdマガジンは月額数百で人気雑誌の最新刊250誌、バックナンバー1600冊以上が読み放題です。2014年にサービスを開始し、その1年後には早くも130万人の会員を獲得することに成功しています。
WEB版新聞ニューヨークタイムズ
紙媒体の新聞は年々売上が減少傾向です。印刷所で印刷した新聞が読者の手元に届くには、どうしてもタイムラグが発生することが原因です。
こういった状況に一石を投じたのがアメリカの大手新聞社ニューヨークタイムズです。
ニューヨークタイムズでは、業界に先駆けていち早く新聞の電子版を格安料金で提供しました。これまでの高品質な情報はそのままで、インターネット上からスピーディーに情報を取得できることが反響を呼び、サービス開始後すぐに紙媒体の購読者数を上回る会員数を獲得しています。
エンターテイメントU-NEXT
U-NEXTは月額1,990円で、動画、本、雑誌・音楽まで楽しめるオールインワンエンターテイメントサービスです。2006年から動画配信事業を手がけ、日本のサブスクリプション型動画配信の草分けとも言える存在です。
2015年以降はシステムリニューアルをおこない、会員数を着実に増加させています。
スーツレンタルサービス着るだけ
大手アパレルメーカーレナウンが月額スーツレンタルサービス「着るだけ」を手がけています。スタートアッププランで月額4,800円で利用できます。
スーツ上下2着・2シーズン分が利用できます。着るだけサービスの特徴は新品のスーツが送られてくるという点です。また、スーツの裾上げまでしてくれるため、顧客は到着後、すぐに使用することができます。
サブスクリプションビジネスで使うマーケティング用語
LTV(顧客生涯価値)
LTVは顧客生涯価値のことです。1人のお客様がどれだけの収益を企業にもたらしてくれるかということを測定した数値です。
CAC(顧客獲得コスト)
顧客獲得にかかる総コストを新規顧客数で割ったものです。1人あたりの顧客を獲得するのにどれくらいの費用がかかっているのかを示しています。
ユニットエコノミクス
顧客あたりの経済性を示している数値です。計算方法はLTVをCACで割った数値です。このユニットエコノミクスが3以上であれば、経営が健全であることを示しています。
チャーン率
サブスクリプションにおける解約率のことです。このチェーン率が高ければ、収益が下がります。
サブスクリプションビジネスのよくあるQ&A
Q: LTVを向上させるにはどうすれば?
Answer)LTVを挙げるには顧客数を増やすか、価格を上げて単価を高めるかのどちらかです。このLTVを最大化することを考え、価格設定やマーケティング予算を決めていきます。
Q: SMARTサブスクリプションとは何ですか?
Answer)SMARTサブスクリプションは株式会社サブスクリプション総合研究所が提唱する概念です。連続性、相互性、変質性、促音性、転用性の5つの要素がこれからのサブスクリプションには欠かせないという内容です。
参考URL: 株式会社サブスクリプション総合研究所
連続性というのは、購買を連続的に起こすということです。継続契約はもちろん、クロスセルやアップセルなどを導入することも大切です。
相互性は企業と顧客がつながることを意味しており、ニーズなどを聞き取りサービスに反映させることが求められます。
変質性はモノを売ることからコトを売るなどのビジネスモデルの転換を示しています。即応性は、企業が提供するサービスを顧客に最適化することです。転用性はサブスクリプションビジネスによって知り得た経験値を、新しいサービスにつなげることを指しています。
Q:チャーン率を下げるにはどうすれば?
Answer)大切にしたいのは、顧客とのコミュニケーションです。顧客が自分のことを大切にされていないと感じるとサービスの解約につながりやすいからです。
また、BtoBよりも、BtoCの方がチャーン率は一般的に高いため、小まめな連絡を取るように心がけてください。
Q:サブスクリプションの購入率を高めるには?
Answer)フリーミアム戦略をとることや解約のしやすさを訴求することが大切です。
顧客は「なかなか解約できないのではないか」という不安が大きいと、購入を控えるからです。逆にいつでも解約できるという安心感があれば、初めてのサービスであっても契約することに抵抗は少ないです。
Q:費用をかけず加入者数を増やすには?
Answer)紹介プログラムなどを導入することがお勧めです。例えば、クラウドストレージサービスのDropBoxは、当初検索連動型広告で集客をおこなっていましたが良い成果に結びつきませんでした。
そこで、既存客に新規顧客を紹介してもらう紹介プログラムをおこなったところ、短期間で大量に顧客を獲得することができました。既存客に一定のインセンティブを出すことによって紹介率を上げることができます。
まとめ