統計ダッシュボードとは?メリットや注意点などを解説
事業を展開する上で、市場調査をはじめとしたマーケティング活動は欠かせません。とりわけ、新たに事業参入を計画する際には、調査を通じて参入余地があるかを検討することも大切です。
市場調査時に役立つものとして、統計ダッシュボードというツールが挙げられます。本ツールは、総務省によって提供されていますので、信頼性の高い情報源として運用できます。
統計ダッシュボードとは?
統計ダッシュボードとは、国と民間企業が協力して作った統計データを閲覧できるツールのことです。本ツールを運用しているのは総務省ですので、信頼性が高く、商談やプレゼンといった公の場でも扱いやすいといった利点があります。
また、機能的な特徴としては、国内の各種指標をグラフで参照できて、リアルタイム更新される点が挙げられます。ビジネスのトレンドや傾向をより正確に把握できますので、新たなビジネスチャンスを見つけられるケースもあります。さらに、同ツールに対して民間企業も情報提供に協力しておりますので、マーケティングや財務分析など、さまざまな分野で利用できます。
統計ダッシュボードを利用するメリット
統計ダッシュボードにおけるメリットとしては、下記のような点が挙げられます。
- リアルタイムの情報を確認できる
- データが視覚的でわかりやすい
- 時間やコストを削減できる
- 情報として信頼性が高い
- SEOで有利になる
リアルタイムの情報を確認できる
統計ダッシュボード上に表示される各種データは、常に最新の状態で表示されています。統計データに変化があった場合、その変化が即座にダッシュボードに反映されるため、迅速な判断や対応が可能です。市場の状況や顧客ニーズは常に変化し続けますので、さまざまなマーケティング施策に応用できます。
データが視覚的でわかりやすい
統計ダッシュボードでは、グラフやチャートなどの視覚的な形式でデータが表示されます。グラフやチャートは、文字や数字で表現されたデータと比較して感覚的に把握できます。そのため、データ比較や分析といった作業もスムーズに進む傾向にあります。
時間やコストを削減できる
通常、調査時に情報を集めようとすると、複数の調査方法やツールを横断的に活用する必要性が発生します。しかし、統計ダッシュボードを利用すると各種統計データを一括でチェックできます。そのため、調査時の情報収集に必要な作業時間や人件費を削減できます。
情報として信頼性が高い
統計ダッシュボードには、国と民間企業が協力してデータを作り上げています。さまざまな機関が介入していますので、客観的なデータとして扱うことが可能です。さらに、本ツールは総務省によって管理されていますので、信頼性の高い情報として幅広い場面で利用できます。
SEOで有利になる
WEBコンテンツ作成時に、統計ダッシュボードを引用文献として利用すると、SEO面で有利に働きます。昨今では、SEOでE-E-A-T(Experience / Expertise / Authoritativeness / Trustworthiness)が重要と言われています。E-E-A-Tとは、権威性が高く信頼できる情報を扱うと、Google検索エンジンがコンテンツを評価するといった考え方です。
とくに、総務省のように権威性が高い機関が管理する統計資料をコンテンツ内で扱うと、Google検索エンジンから「信用できる情報を発信しているサイト」と判断されやすくなります。
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統計ダッシュボードを使う際の注意点
統計ダッシュボードでは、確かな情報としてデータを扱えます。ただし、「どうしてこのデータになったのか?」といったデータ解析の部分はサービス利用者が担うことになります。
例えば、統計ダッシュボード上で、とある地域の人口が減少しているというデータがあったとします。この場合、サービス利用者が「なぜ人口が減ったのか?」に対する仮説を立てることになります。このときに立てた仮説に誤りがあると、その後の事業計画に大きな影響を与えてしまう恐れがありますので注意してください。
これは、統計ダッシュボードに限った話ではなく調査全般に対して言えることですが、単一的なデータで仮説を導き出すのではなく、さまざまな切り口で検討を重ねることが大切です。
統計ダッシュボードの機能
統計ダッシュボードには、大きく分けて3つの機能が用意されています。
- 統計データの表示
- 統計データのダウンロード
- APIの提供
統計データの表示
統計ダッシュボードを利用することにより、各種分野のデータ、ないしはグラフ化された状態で確認できます。その際に、地域別や期間別といった細かい絞り込みが可能です。例えば、グラフデータでは、下記のような項目で絞り込みできます。
- フリーワード検索
- 統計調査名
- 検索タグ
- 分野(大分類)
- 分野(小分類)
- 系列
- 都道府県
- 市区町村
- データ周期
扱い分野の一覧
統計ダッシュボードで扱っている分野には、下記のようなものがあります。自社に関連する分野を中心にチェックしてください。
分野(大分類) | 系列名 |
国土・気象 | 総面積、森林面積、自然公園面積 |
人口・世帯 | 総人口、出生数、出入国者数 |
労働・賃金 | 就業者数、完全失業率、現金給与総額 |
農林水産業 | 農業産出額、農家数、耕地面積 |
鉱工業 | 鉱工業生産指数、製造工業稼働率指数、工業用水量 |
商業・サービス業 | サービス産業売上高、小売業販売額 |
企業・会計・経済 | 企業倒産件数、消費者物価指数、消費支出 |
住宅・土地・建設 | 新設住宅着工戸数、公共工事受注額、住宅数 |
エネルギー・水 | 電灯使用電力量、ガソリン販売量 |
運輸・観光 | 新車販売台数、輸送人員、道路平均交通量 |
情報通信・科学技術 | 電話加入数、テレビ放送受信契約数 |
教育・文化・スポーツ・生活 | 小学校数、重要文化財指定件数、睡眠の平均時間 |
行財政 | 行政投資総額、納税義務者数、衆議院議員選挙投票率 |
司法・安全・環境 | 弁護士数、刑法犯認知件数、救急出動件数 |
社会保障・衛生 | 後期高齢者医療費、介護老人福祉施設数 |
国際 | 経常収支、金融収支 |
その他 | 雇用力、稼ぐ力 |
グラフをカスタマイズできる
統計ダッシュボードでは、1つのグラフデータ上で複数の地域や時系列を表示させることが可能です。例えば、国内の人口の推移のグラフデータを閲覧していたとして、東京都と大阪府のデータを同時に表示することができます。統計データをカスタマイズしてグラフ化できますので、調査目的に合致したオリジナルのグラフを生成できます。
統計データのダウンロード
統計ダッシュボードでは、グラフを除いた統計データをCSVファイルとしてダウンロードできます。そのため、閲覧するだけでなく、統計データを手持ちのシステムに反映することが可能です。ダウンロードデータをグラフ化したい場合は、Excelやスプレッドシートで読み込み、改めてグラフを作成する必要があります。
APIの提供
統計ダッシュボードでは、API(Application Programming Interface)が提供されています。APIとは、アプリケーションやソフトウェア同士を連携して、それぞれが有する機能を使えるようにする仕組みのことです。要するに、統計ダッシュボードのデータを自社のシステムに組み込んで利用できるということです。
関連記事 APIとは
統計ダッシュボードの使い方
統計ダッシュボードには、大きく2つのコンテンツが用意されています。それぞれのコンテンツは、本ツールのメニューからチェックできます。
- グラフで見る
- データで見る
まずは、下記URLからアクセスしてください。
参考URL:統計ダッシュボード
グラフで見る
「グラフで見る」では、グラフを用いた統計データの閲覧が可能です。さらに、細かいカスタマイズをすることで、オリジナルのグラフを表示できます。
グラフデータの絞り込み方
メニュー「グラフを見る」を選択すると、「分野別」、「地域別」、「ワード検索」のいずれかからデータを絞り込んでいくことになります。
引用:統計ダッシュボード
このときに、「分野別」で絞り込み、「企業・家計・経済」を選択すると、合致する統計データの一覧が表示されます。
引用:統計ダッシュボード
さらに絞り込みを続ける場合は、「検索条件を変更する」を選択します。
引用:統計ダッシュボード
絞り込みたい条件を設定します。
引用:統計ダッシュボード
グラフデータの操作方法
引用:統計ダッシュボード
項目 | 解説 |
①データ周期・地域など | データ周期や地域などを指定できる |
②グラフ・数値・マップ | タブを変更すると、統計データの表記が変わる |
③その他機能 | データダウンロードやお気に入り機能を利用できる |
④左軸のデータ | 左軸にデータを追記できる |
⑤右軸のデータ | 右軸にデータを追記できる |
⑥統計データ | 統計データが表示される。②で表記を変更できる |
⑦グラフ範囲変更 | シーク操作すると、グラフで表示される期間を変更できる |
データで見る
「データで見る」では、数値表記で統計データを閲覧できます。グラフに対応していない統計データを取得できますので、より広範囲の統計を利用したい場合に利用してください。
データの絞り込み方
メニュー「データで見る」を選択します。
引用:統計ダッシュボード
データ検索します。項目としては、「系列選択」、「地域選択」、「時間選択」の3つが用意されています。このうち、「系列選択」と「地域選択」は、選択必須の項目となっています。選択を終えたら、「表示」をクリックします。
引用:統計ダッシュボード
引用:統計ダッシュボード
すると、数値データが表示されます。このデータはCSVファイルでのダウンロードが可能ですので、必要に応じて利用してください。
引用:統計ダッシュボード
統計ダッシュボードの利用シーン
統計ダッシュボードは、ビジネスの場で利用できるシーンが多々あります。その一例として、下記のような場面が挙げられます。
- 新規事業に参入する際の事業計画のソースとして使う
- 商談時に向けて用意するプレゼン資料のソースとして使う
新規事業に参入する際の事業計画のソースとして使う
通常、企業が新規事業へ参入を検討するときに、事業計画や戦略を練ります。事業計画を打ち立てるときには、「その事業に参入する理由」を裏付ける材料を用意して、経営陣に理解してもらうことが求められます。そんなときに、汎用性が高い統計ダッシュボードを参考資料として提示できます。
商談時に向けて用意するプレゼン資料のソースとして使う
営業目的で商談する際は、訪問先の相手に対して自社サービスを提案していくことになります。一般的には、このときにプレゼン資料を用意して、相手にわかりやすく丁寧に説明することが求められます。
そこで、「自社サービスが貴社にとって有益である」ことを証明する必要があります。この証明とは、往々にして客観的な事実という裏付けが用いられるわけですが、この場面で参考資料として統計ダッシュボードのデータを提示できます。
統計ダッシュボードの活用事例
新規事業を成功させるためには、顧客ニーズを早期キャッチすることが求められてきます。さらに、その裏付けとして統計資料をチェックする癖付けが大切です。
例えば、2020年に新型コロナウイルスが本格流行したことをきっかけに、感染予防の一環として、政府が国民に対して巣篭もり生活することを推奨しました。その結果として、経済に大きな影響を与えましたが、とりわけ飲食店の売上が大きく下落しました。その一方で、飲食店の味を自宅で楽しめるデリバリーサービスの売上が好調に推移しました。
実際に、総務省が発表した家計消費状況調査年報のインターネットを利用した1世帯当たり1ヶ月間の支出 をみると、新型コロナウイルスが猛威を振るう以前の2019年年平均は180円でしたが、2020年には倍近くの356円に伸びています。さらに、加速が続いて、2021年と2022年では500円を大きく突破しています。
この事例では、飲食店としては店舗で提供する料理を利用して、新たにデリバリーという形に変えてサービス提供することで利益を伸ばせることがわかります。
統計ダッシュボードのよくある質問
統計ダッシュボードに関する、よくある質問をFAQ形式でまとめています。
Q:統計ダッシュボード導入に必要な準備は?
Answer)統計データの利用目的により異なります。
例えば、統計データを自社のシステムに組み込みたいのであれば、APIを利用する必要があります。さらに、API連携するシステムを用意する準備があります。
Q:統計ダッシュボードではどのようなデータを閲覧できる?
Answer)国や民間企業が調査している統計データを閲覧できます。
一例を出すと、下記のようなデータが用意されています。
- 経済指標(GDP、インフレ率、失業率など)
- 人口統計(人口数、年齢層別人口、出生率・死亡率など)
- 行政統計(予算、出納、施策別実績、人事情報など)
- 気象(気温、湿度、気圧、二酸化炭素濃度など)
- マーケティング施策を考える際に利用できるデータを多く可視化できます。
Q:統計ダッシュボードはどのような企業に利用されている?
Answer)マーケティングを重視する大手企業から中小企業まで、幅広く利用されています。
このほかでも、特殊な例を出すと、経済誌といったマスメディアが記事を作成する際に、取材と仮説の裏付けとして官公庁が配布する統計データを引用するケースがあります。
まとめ