セールステックとは?種類や導入時のポイントを解説
ここ数十年におけるテクノロジーの発展は目覚ましいものがあり、社会や生活が大きく変化しました。企業活動においても同様です。企業で重要な役割を担う営業活動も、テクノロジーの影響で変化の兆しが見られています。
その要因となっている存在が、セールステックと呼ばれるITツールです。セールステックを導入することで、営業活動の大幅な効率化を図れます。
セールステックとは?
セールステック(Sales Tech)とは、営業活動の効率を高めるために導入するITツールの総称を指します。もともとは、Sales(セールス)とTech(テクノロジー)の造語として世に広まりました。そんなセールステックのツールには、下記のようなものがあります。
- CRM(顧客管理)ツール
- SFA(営業支援)ツール
- MA(マーケティングオートメーション)ツール
関連記事:CRMとは
関連記事:MAとは
セールステックが注目される背景
2016年頃から国内でもセールステックが注目され始めて、導入する企業が増えてきました。この背景には、次のような理由があります。
- 人材不足が問題視されている
- 働き方が多様化している
人材不足が問題視されている
昨今では、企業の人材不足が叫ばれています。とりわけ、中小企業では、人材不足の傾向が顕著に現れています。
経済産業省の外局にあたる中小企業庁は、2023年版中小企業白書・小規模企業白書を2023年4月28日に発表しました。それによると、国内における中小企業の半数以上は人手不足を感じているという調査結果が出ています。
さらに、その対応方法として、人材不足を感じている中小企業のうち3割近くが「IT化設備投資による生産性向上」を目指しているとアンケートに回答しています。
このような状況のなかで、企業の営業活動においては、セールステックの導入による生産性の向上が期待されています。例えば、セールステックとして有名なCRM(顧客管理ツール)というツールがあります。CRMは、営業部門による顧客情報の管理作業を簡易化できます。こうした利点から、セールステックを導入する企業が増加しています。
働き方が多様化している
2020年に国内でも本格流行した新型コロナウイルスの影響で、テレワークという新たな働き方が浸透しました。テレワークとは、働く場所を指定せずに、自宅勤務やモバイル端末を利用したモバイルワークという手段を用いて実務の作業をすることです。
テレワークの性質上、オンラインの利用シーンが多く、それに適したITツールが普及しました。ときを同じくして、企業の営業部門でも、顧客の獲得や管理をオンラインやITツールで進める必要に迫られました。このように、コロナ禍によってセールステックの導入が加速していき、営業スタイルが大きく変化しました。
セールステックのカテゴリー
セールステックとは、営業活動を支援するシステムやツール全般を指します。その利用用途は、下記のようなカテゴリに分けられます。
- 営業加速ツール
- 顧客管理ツール
- 顧客体験ツール
- カスタマーサポートツール
- インテリジェンス・解析ツール
- コンタクト・コミュニケーションツール
- 人材開発・コーチングツール
営業加速ツール:営業活動全般の支援
営業加速(Sales Enablement & Acceleration)ツールとは、営業活動の効率化を図るためのITツールです。
営業活動の全域を支援するツールであることから、多様な機能が搭載されています。具体的には、リード管理、売上の予測などの多岐にわたる営業業務をカバーできます。
このカテゴリーの代表的なツールとしては、SFA(Sales Force Automation / 営業支援)というものが挙げられます。SFAとは、主に営業部門の活動内容を保存して、「営業活動として、なにをすべきか」を探っていくためのものです。そして、今後のスケジュールや業務設計に反映していきます。
顧客管理ツール(CRM):顧客分析や顧客データ抽出
顧客管理(CRM / Customer Relationship Management)ツールとは、顧客との関係性を管理するためのセールステックツールを指します。
管理する顧客情報としては、下記のようなものが挙げられます。
- 顧客の名称や属性
- 購入や問い合わせ履歴
こうした情報を蓄積して分析することで、顧客が求める商品や嗜好性を推測できます。そして、分析して得た情報を新商品の開発や営業の業務設計などに役立てます。
関連記事:CRMとは
顧客体験ツール:顧客満足度の向上やリピーター創出
顧客体験(Customer Experience)ツールとは、顧客体験の価値を高めて、リピーター顧客へ育成するためのITツールを指します。さらに、既存の顧客を大切にして、1人の顧客が生涯を通じて自社にもたらす利益の最大化を狙います。そして、このことを「LTV(Lifetime Value / ライフタイムバリュー)を高める」と表現します。
関連記事:LTVとは
本ツールの代表例としては、CRMやMA(Marketing Automation)といったツールが該当します。後者のMAとは、リードで獲得した見込み顧客を管理するためのツールのことです。
関連記事:MAとは
カスタマーサポートツール:顧客サポートや顧客満足度の向上
カスタマーサポート(Customer Support)ツールとは、顧客満足度や継続率の向上を目的としたセールステックツールを指します。
近年の企業におけるカスタマーサービスを見てみると、電話やメール対応だけでなく、WEBサイトやSNSなどのオンライン上の窓口も増えています。カスタマーサポートツールを利用すると、FAQサイトやヘルプデスクコンテンツといったWEB上のサポートコンテンツを作成できます。
インテリジェンス・解析ツール:データによる現状把握や分析と改善
インテリジェンス・解析(Intelligence & Analytics)ツールとは、営業上のデータを解析したり、分析するためのITツールのことです。解析したデータをグラフや図で表示して可視化できます。
代表的なツールとしては、BI(ビジネスインテリジェンス)といったものがあります。BIとは、複合的なデータを組み合わせて解析して、営業時の意思決定をサポートするツールのことです。
コンタクト・コミュニケーションツール:顧客とコミュニケーション図る
コンタクト・コミュニケーション(Contact & Communication)ツールとは、顧客との良好な関係を築き、コミュニケーションを促進するためのツールを指します。
本ツールを利用して、顧客が相談できる場を用意することで、顧客の疑問や不安を解消していきます。そして、コンタクト・コミュニケーションツールの代表例としては、チャットツールやWEB会議ツールといったものがあります。
人材開発・コーチングツール:営業職の育成教育
人材開発・コーチング(People Development & Coaching)ツールとは、営業部門の従業員を教育することに特化したITツールを指します。
営業の人材育成というと、ロールプレイングという教育手法があります。人材開発・コーチングツールでは、こうした教育過程のログを保存できたり、上長がフィードバックを返せる機能が搭載されています。このほかでは、営業向けの教材を集めたプラットフォームといったものがあります。
セールステックのツールを選ぶときのポイント
セールステックを導入する際は、下記のようなポイントをチェックしてください。
- 導入の目的を明確にする
- 導入済みのシステムやツールとの相性を確認する
導入の目的を明確にする
まず、営業部門が抱えている課題を把握します。そのうえで、セールステックを導入する目的を明確にしてください。そして、導入の目的に応じて、いずれのカテゴリーのツールを使うべきか判断していきます。
例えば、「リード(見込み顧客)獲得からクロージングまでのフローを強化したい」のであれば、CRMやMAが適しています。さらに、新規開拓に特化したツールを求めるならば、MAの導入を検討してください。
導入済みのシステムやツールとの相性を確認する
自社内にて、すでに導入しているシステムやツールと相性がよいかどうかも、セールステックのツール選びで大切なポイントです。
仮に、すでにMAを導入しているとします。さらにリード(見込み顧客)周りの業務を強化しようと思ったときに、CRMを導入するとMAと連携効果を発揮することがあります。CRMでは、既存顧客の属性を分析できるのですが、この情報をMAに反映すると、より精密にリード獲得やリード育成が可能になります。
有名なセールステックのツール
セールステックのツールは、その利用目的に応じて、さまざまなカテゴリーに分かれます。さらに、それぞれカテゴリー内に多種多様なサービスがあります。そんなセールステックのツールのなかでも、有名なサービスとして下記のようなものがあります。
- Salesforce Sales Cloud
- GeAIne
Salesforce Sales Cloud
Salesforce Sales Cloud(セールスフォース・セールス・クラウド)は、アメリカのSalesforce, Inc.(セールスフォース・ドットコム)社が提供するSFA(営業支援)ツールです。そして、国内では日本支社のセールスフォース・ジャパン社が日本向け商品として提供しています。その名のとおり、クラウドベースでデータが保存されますので、機動力が求められる営業担当が外出中にアクセスできます。
このSFAツールでは、顧客や案件情報を一元管理できます。これまでの商談メモや取引先との対話ログといった詳細な情報をまとめられます。「次のアクションとして、なにをすべきか」を確認できますので、営業活動の漏れを防げます。また、それぞれの情報をグラフや数値データをダッシュボードで表示する機能があります。
GeAIne
引用:GeAIne
GeAIne(ジーン)は、国内のエッジテクノロジー社が提供する問い合わせフォーム営業ツールです。大きな特徴としては、新規獲得の営業活動に特化している点が挙げられます。
新規獲得の営業活動では、企業サイトの問い合わせフォームにメールを送付してアポイントをとることがあります。GeAIneには、こうしたアポイントの作業を自動化する機能があります。さらに、既存の顧客リストを基に、AIが自社に合ったアタックリストを作成する機能のほか、営業メールの文面を最適化してくれます。
このように、GeAIneでは、新規獲得に必要な営業上の作業を大幅に簡略化できます。
セールステックが変えた営業担当の必要スキル
セールステックを導入すると、営業部門の業務効率化につながります。その一方で、営業担当者には、ツールを使いこなすための知識が求められることになります。セールステックを導入することで、営業担当に求められるスキルが変化します。
まず、営業担当として求められるスキルには、下記のようなものがあります。
- コミュニケーション能力
- ヒアリング能力
一般的には、BtoBにおける法人担当のセールスマンには、見込み顧客の課題をヒアリングして、適切な商品やサービスを提案する力が求められます。さらに、商談の場面では、コミュニケーションを通じて信頼されることが大切です。セールステックを導入すると、こうした基本的な営業力に加えて、下記のような能力が必要になります。
- ツールの知識
- ITリテラシー
- データ分析力
セールステックを使いこなすためには、ツールの知識が必須です。そのうえで、デジタルツールに対するリテラシーやデータを読み取るスキルが求められます。
セールステックのよくある質問
セールステックに関する、よくある質問をFAQ形式でご紹介します。
Q:セールステックの課題は?
Answer)使いこなすためには、ツールの知識が不可欠となる点が挙げられます。
セールステックは、利用目的に合致している場合は、高いパフォーマンスを発揮します。ただし、利用者にツールを使いこなすスキルがないと、効果を発揮しにくい側面を持ちます。
Q:セールステックの導入コストは?
Answer)サービスによって利用料金が異なります。
一般的には、複数プランが用意されています。なかには、無料トライアルのプランが用意されているケースもありますので、気になったツールを見つけたら試してください。
まとめ