セールス・イネーブルメントとは?基礎知識や導入手順、事例など解説
セールス・イネーブルメントは、営業チームの効果・効率を向上させるアプローチのことです。
しかし、日本ではまだ十分に浸透した概念ではないため、その具体的な取り組み方や効果などについて、よく分からない点が多いのではないでしょうか。
セールス・イネーブルメントとは?
セールス・イネーブルメントの概念は比較的新しく、マーケティング先進国のアメリカでもまだ正確な意味は確定していません。イネーブルメント(Enablement)というのは、enable(できるようにする、容易にする)という意味の名詞形なので、単語のイメージ的には「営業活動をより効果的にする取り組み」といったところです。
そこで、東京SEOメーカーではセールス・イネーブルメントを「営業担当者やチームが成果を達成できるよう各部署がさまざまな支援をすること」と定義します。
例えば、社内トップの営業担当者がもっているノウハウや経験、事例などを全員で共有できるようにすることは、セールス・イネーブルメントの1つです。
ただこれだけでは、まだセールス・イネーブルメントの意味を掴みにくいと思いますので、以下にいくつか具体例を挙げて解説します。
参考ページ:What Is Sales Enablement? – HubSpot
セールス・イネーブルメントの具体例
ここでは、セールス・イネーブルメントについて理解してもらうために、具体的にどのような活動を指すのか、例を挙げて解説します。
営業トレーニング
営業トレーニングは、セールス・イネーブルメントの1つです。具体的には、製品開発部門が、営業担当者に製品やサービスに関する正しい知識を伝えるなどのことが該当します。
その他、販売技術やコミュニケーションスキルを磨くなどのことも営業トレーニングに含まれます。
コンテンツ制作
営業担当者が使用するさまざまなコンテンツを制作することは、セールス・イネーブルメントの1つです。例えば、プレゼンテーション用資料やデモ動画、ケーススタディなどをマーケティング部門などがまとめておくなどのことを指します。
ITツールによる支援
営業担当者が顧客とコミュニケーションをとるために、ビデオ会議ツールを使用したり、チャットツールを使用することがあります。あるいは、複数の顧客を管理するためにCRMシステムなどを使用することもあります。
こういったデジタルツールを組織が導入し、営業担当者を支援することはセールス・イネーブルメントの1つです。
参考ページ:CRMとは?顧客管理システムについて解説!おすすめのCRMもご紹介
ラーニング環境の整備
大半の企業では、営業担当者の教育は現場任せになっています。そのため、営業部全体の底上げができず、いつまでも成果をトップ営業担当者に頼っているのではないでしょうか。
セールスイネーブルメントでは、成功した営業事例やトップ営業担当者の手法を分析、それらの情報を新人営業担当者が学べる仕組みを作ります。こういったスキル向上や人材育成の仕組みをつくることがセールス・イネーブルメントの1つです。
以上、セールスイネーブルメントのいくつかの例を挙げて解説しました。従来、営業部門が単独でおこなっていたことを、各部署が支援をおこない、会社全体で営業チームの売上を向上させる取り組みがセールス・イネーブルメントです。
セールス・イネーブルメントのメリット
ここでは、セールス・イネーブルメントを導入することにより、どのようなメリットがあるのかを整理してお伝えします。
即戦力となる人材育成が可能
セールス・イネーブルメントの取り組みにより、社内トップの営業担当者が培ったスキルや成功事例などを全員で共有できます。そのため、新人営業担当者でも、比較的すぐに成果を上げやすい仕組みができます。
また、これはトップ営業担当者にもメリットがあります。これまで暗黙知となっていた売れるスキルが言語化されることによって、自分自身の成長につながるからです。
各部門との連携強化
セールス・イネーブルメントは、営業と他部署との連携を強化します。例えば、マーケティング部門が集客した顧客情報を営業部門が引き継ぐことによって、営業担当者は顧客に最適な提案ができます。これは結果として、営業成績の向上につながるだけでなく、顧客にとっても満足度向上につながります。
セールスの見える化
セールス・イネーブルメントでは、CRMなどのツールを導入します。そのため、売上の推移や新規見込み客の数、商談の進捗状況などの情報が可視化され、数値で状況を分析しやすくなります。
ツールの種類によりますが、グラフやダッシュボードなどにデータがわかりやすくまとまっているため、営業効率を向上させるためのさまざまなヒントが見つかります。
セールス・イネーブルメントの導入手順
ここでは、どのようにしてセールス・イネーブルメントを自社に導入すれば良いのかステップバイステップで整理してお伝えします。導入手順は次のとおりです。
- 目的を明確化とツールの選定
- 導入担当者の選定
- 営業部門と各部門の連携
- 営業部門の継続的なトレーニング実施
- 組織全体の変革
1.目的の明確化とツール選定
企業の取り組みとしておこなわれる営業活動やマーケティングについての課題を明確にし、セールス・イネーブルメントを導入する目的や期待する成果を明確にします。
目的や期待する成果に応じて、MAツールやCRMなど使用するツールを選定します。
2.導入担当者の選定
セールス・イネーブルメントの導入にあたり、専任の導入担当者を選定することが望ましいです。
導入担当者は、セールスについての知識のみならず、マーケティングや市場トレンド、競合他社の事情などに精通していることが望ましいです。また、プロジェクトを遂行する管理能力やリーダーシップも求められます。
3.営業部門と各部門の連携
営業部門とマーケティングなど、他部門との連携体制を強化します。
例えば、導入目的を共有したり、今後どう情報を共有したり、コミュニケーションを図るのかなど仕組みをつくります。また、それぞれの部署で所有している営業レポートや顧客データを、共有するツールを必要に応じて選定します。
4.営業部門の継続的なトレーニング実施
営業トレーニングプログラムを策定します。トップ営業担当者のノウハウや、成功・失敗事例などをデータベース化し、すべての営業担当者がそれらの情報をいつでも確認できるようにします。
また、継続的な営業スキル向上のためには、営業部門管理者によるコーチングを導入できないか検討してください。コーチングの導入が難しい場合は、チームでの勉強会などを実施することでも代用可能です。
5.組織全体の変革
セールス・イネーブルメントを組織に根づかせるためには、継続的に取り組む姿勢が肝心です。各部門間の情報交換や研修制度などを取り入れることで、変革を推進します。
セールス・イネーブルメントに役立つツール
セールス・イネーブルメントに取り組む際にツールは必須です。ツールを使用することで、データを一元管理でき、営業と他部署との連携がしやすくなるからです。
そこでここでは、使用できるツールをお伝えします。営業部門はもちろん、マーケティング部門などとも協力し、自社にとって最適なツールを選定してください。
Bigtincan
参考ページ:Bigtincan
Bigtincanは、簡単に情報共有でき、生産性を高めるのに役立つ機能が備わったツールです。営業で使用するパワーポイントやPDFなどの共有が一瞬でおこなえます。また、AIが頻繁に利用されているコンテンツを分析し、何が営業担当者に役立つのかを掴むことができます。
ナレッジワーク
参考ページ:ナレッジワーク
ナレッジワークは販売資料やマーケティング資料を一元管理することが可能なツールです。また、営業担当者のスキル向上をサポートする仕組みが豊富で、さまざまな学習コースをつくることができます。営業担当者は、スキマ時間でスキルアップを図ることができ、管理者は各営業担当者がどこまで学習を進めているのかを確認できます。
セールス・イネーブルメントの成功事例
ここでは、現在進行形でセールス・イネーブルメントに取り組む企業の成功事例を紹介します。
株式会社セールスフォースドットコム
参考ページ:Salesforce
株式会社セールスフォースドットコムは、CRM(顧客関係管理)などのクラウドプラットフォームを提供している会社です。米国では1999年に、日本では2000年に設立し、成長を続けています。
経営層は、セールス・イネーブルメントに取り組むうえで、主に次のことを期待しています。
1つ目は新入社員が即戦力となることです。具体的には、ブートキャンプと呼ぶ約1ヶ月間のセールストレーニングや、トレイルヘッドというオンライン学習プラットフォームを整備しています。こういった人材育成環境を整え、セールス・イネーブルメントを実現しています。
2つ目は社内の協力体制の確立です。会社の戦略を全員で理解し、かかわる部門の人が縦にも横にもコミュニケーションをとることができ、ノウハウの共有、情報の共有が進むことです。
セールスフォースドットコムは、セールス・イネーブルメントに取り組むことで、随時入社する中途社員の立ち上がりを早め、人材開発、営業、テクノロジー担当者などの横断的な営業支援を実現しています。
Sansan
参考ページ:Sansan
Sansanはクラウド名刺管理サービスという市場を新規で開拓し、急成長した会社です。同社でイネーブルメント部門ができたのは、2018年4月。当時、営業担当者はまだ30人ほどでしたが、今後の成長プランを考えたとき、必要不可欠なものと判断し取り組みました。
イネーブルメント部門では、主に育成をおこなっているトレーナー3名と、営業業務のサポートを担当する5名の計8名で構成されています。
イネーブルメント部門を立ちあげる前にすでに、セールスフォース社のSFAを導入していましたが、うまく稼働していませんでした。そこで、営業ステップを7つに分け、それぞれの管理項目やKPIなどを設定し、SFAが自然に営業担当者に馴染むように促したのです。
こういったSFAの整備に加え、新入社員が動画を観てトレーニングできる仕組み、月1回の事例共有会などを実施しています。このような取り組みからSansanでは、新入営業担当者の立ち上がりが加速し、マネージャークラスの新人育成にかける負担を大幅に減らすことができたのです。
セールス・イネーブルメントのよくある質問
セールス・イネーブルメントについてよくある質問をピックアップして解説します。
Q:導入にどれくらい期間が必要?
Answer)会社の規模によって、必要な期間は異なります。各部門を横断的に連携していくため、少なくとも数ヶ月から1年ほどの期間を予定しておくのが妥当です。
最初から完璧なものを目指すのではなく、計画を練り、段階的に導入することを検討してください。
Q:外部の専門家を招いた方が良い?
Answer)専門家を招くかどうかは、企業の人材や規模によって異なります。企業内に専門知識をもっている人材がいれば、自社のみで導入が可能です。また、実際に専門知識を有している社員が存在しても、時間や労力を割くリソースがあるのかも確認してください。
そういった人材やリソースがない場合は、外部の専門家を招くことも検討してください。
Q:BtoBだけに活用できることですか?
Answer)BtoBでも、BtoCでも、セールス・イネーブルメントを導入することができます。
BtoCの場合は、顧客と接点を持つ営業部門はもちろん、カスタマーサポートを巻き込んで導入することが多いです。例えば、カスタマーサポートに対して営業スキルを伝え、アップセルなどにつなげるといった事例もあります。
まとめ