プル戦略とは?基本から効果的な活用方法まで丁寧に解説!
消費者のニーズや嗜好性が多様化している昨今、自社の製品やサービスを選んでもらうためには、消費者のニーズに「刺さる」広告や販促を行うことが欠かせません。
最近では、インターネットやSNSによって消費者が自分で商品やサービスについて知りたい情報を事前に調べ、口コミなどを見て購入するかどうかをを決めることが当たり前になっています。そんな時代だからこそ、生産者やメーカーが自社の商品を買ってもらうための方法として、「プル戦略」が注目されています。
今回は、そもそも「プル戦略」とは何か、どういった時に効果を発揮するのか等について解説します。初めて「プル戦略」という言葉を知った方、自社の製品やサービスを消費者にどのように伝えていくべきかを悩んでいる方は、ぜひ最後までお読みください。
プル戦略とは
プル戦略とは、消費者の購買意欲を刺激することでニーズを引き出す(プル)戦略であり、いわゆる「指名買い」を狙うマーケティング手法の一つです。
プル戦略では、広告や販促活動などを通じて製品やサービスの魅力を世の中に広く発信し、消費者が自ら情報を調べた時、自社の製品やサービスに関する情報がすぐに目に入るようにしておくことがポイントです。そして、消費者の自主的な行動を促す戦略であるため、世の中のニーズを確実に捉えてアピールすることが戦略を成功させる鍵となります。
プッシュ戦略との違いは?
プル戦略と対象となるものに「プッシュ戦略」があります。プッシュ戦略とは、消費者に対して企業などが自社製品やサービスについて積極的にアピール(プッシュ)し、販売する手法です。テレアポや訪問などの営業活動、DMによる商品購入の案内などがこれにあたります。
そもそも、マーケティング活動は「プル戦略」と「プッシュ戦略」に大別することができます。多くの企業はそれぞれの戦略の強みと弱みを理解した上で、どちらか片方の戦略ではなく両方をバランスよく活用して補い合うことで、うまくマーケティング活動を行っているのです。
プル戦略とプッシュ戦略の違い
(プッシュ戦略の流れ)
(プル戦略の流れ)
プル戦略のメリット・デメリット
プル戦略を立案する上で、メリットとデメリットにはどのようなことがあるのでしょうか。
プル戦略のメリット
プル戦略のメリットは、次の4つです。
- 消費者の潜在的な購買意欲を引き出す
- 価値づくり(価値向上)が期待できる
- 小売業者や卸売業者に交渉しやすくなる
- 消費者からのフィードバックを受けることができる
それぞれ、以下の通り解説します。
消費者の潜在的な購買意欲を引き出す
プル戦略は、消費者に直接アクションを起こすことが特徴です。広告やSNSなどを活用して情報を発信するため、見込み客や顕在的なニーズを持つ人だけでなく、顕在的なニーズを引き出すことが期待できます。
結果、消費者の購買意欲を引き出し消費者主体の行動を促すことにつながります。
価値づくり(価値向上)が期待できる
製品やサービスの情報を発信することで、多くの人に対してベネフィットが伝わります。競合他社との違いや独自性を知ってもらえるほか、新しいブランドや製品、サービスであれば新たな価値づくりを、既存のものであれば価値の向上が期待できます。
小売業者や卸売業者に交渉しやすくなる
プル戦略が成功して、消費者の購買意欲やニーズが上がれば上がるほど、小売業者や卸売業者に自社の製品やサービスの取り扱いを交渉しやすくなります。すでにニーズがあり、「使いたい」「買いたい」「取り扱って欲しい」というリアルな声があればあるほど、それが何よりも強い交渉材料となるのです。
消費者からのフィードバックを受けることが期待できる
製品やサービスのテストや改良を行う段階でプル戦略がうまくいっていれば、消費者からフィードバックを受けることが期待できます。口コミやSNSでの評価は、とても貴重なデータとなります。製品やサービスをよりよくするために、消費者の声はとても貴重です。
プル戦略のデメリット
プル戦略のデメリットは、次の3つです。
- 類似している製品やサービスが選ばれてしまう可能性がある
- 市場環境によっては厳しい戦いになる
- 消費者の心を掴むメリットやベネフィットを発信しなければ負ける
それぞれ、以下の通り解説します。
類似している製品やサービスが選ばれてしまう可能性がある
自社の製品やサービスに競合が多いと、広告やSNSによって情報発信をしてもすでに口コミや売り上げ実績のあるものに負けてしまう可能性があります。ターゲット層はどこを狙うのか、他にない独自性のあるところをどう押し出すかを意識した戦略を心がけましょう。
市場環境によっては厳しい戦いになる
自社の属する業界、製品やサービスによっては市場競争が激化していることがあります。プル戦略だけでは市場競争を勝ち抜けないため、「プッシュ戦略」と「プル戦略」をバランスよく使い分けることが重要です。
消費者の心を掴むメリットやベネフィットを発信しなければ負ける
自社の製品やサービスを顧客に一番に選んでもらうためには、かなりの努力が必要です。他の競合のなかに自社の製品やサービスが含まれたとしても、それは選択肢の一つでしかないため、「最初から自社の製品やサービスを選んでもらえる」ようになるためには、広告やSNS発信、プッシュ戦略の活用などが欠かせません。また、相応に時間もかかると考えておきましょう。
プル戦略を効果的に行うために
プル戦略を立案し、効果的に実行するためにできることには、何があるのでしょうか。ここでは、明日からでもできる効果的な施策について解説します。
前提条件
効果的なプル戦略を実行するためには、見込み客や顕在的・潜在的なニーズを持った顧客に「行ってみたい」「利用してみたい」「買いたい」といった、消費者が主体的に動こうとする意思を持ってもらうことが重要です。
これらの前提条件をクリアするには、それなりに時間と努力が必要です。マーケティング担当者や広報担当者が協力して、消費者への情報発信を積極的に行っていく必要があります。
明日からでもできること
効果的なプル戦略を実行するために、明日からもできることには次のようなことが挙げられます。
- 展示会やイベントへの参加、セミナーの企画・実施
- Webメディアの運営(記事や動画などのコンテンツ)
- 広告(インターネット、テレビなど)
- SNSの発信
- メールマガジン(メルマガ)配信
以下、それぞれについて解説します。
展示会やイベントへの参加、セミナーの企画・実施
展示会は、自社の属する業界や製品分野に特化した展示会への出展、イベントは販促イベントとして、スーパーマーケットやショッピングセンターなどでの出店を企画、実行してみましょう。製品やサービスによっては一般消費者に対してのアプローチは難しいかもしれませんが、そういった場合には展示会に集中してアピールする企画を工夫することで、競合他社との違いを明確に出すことを心がけます。
このような展示会やイベントは、製品やサービスに興味・関心を持つ人とのコミュニケーションが期待できます。見込み客や顕在的なニーズを持った人を中心に、購買意欲を増加させるだけでなく実際の購入等に繋げましょう。また、イベント出店は潜在的なニーズを持つ人への情報発信やアピールの重要なチャンスです。
また、セミナー(ウェビナーなど)は、全国どこからでも見込み客や顕在的ニーズを持つ人に対してのアプローチが可能です。こちらも、積極的に行うと良いでしょう。
Webメディアの運営
プル戦略の一つとして、Webメディアの運用が挙げられます。自社製品やサービスに関する記事や動画、関連することや読者にとって役に立つであろうコンテンツを発信することで、Webメディアを通じて「ファン」を増やしましょう。
また、コンテンツはテキストや動画など様々なものが生まれますが、どれも自社の「資産」として重要なものとなります。
ただし、Webメディアは競合他社も運営している可能性があります。SEO対策やどの媒体を活用して運営するかは、慎重に検討するようにしましょう。
広告(インターネット、テレビなど)の発信
テレビやインターネットなどへの広告出稿も、プル戦略には効果的です。他の方法と比べるとコストがかかってしまいますが、様々な角度や視点から工夫を凝らすことで、「バズる」広告を出すことができれば、それだけでもかなりの効果が期待できます。
SNSの発信
SNS(X、インスタグラム、TikTokなど)は、現代人にとって欠かせない情報習得ツールの一つです。今や、飲食店探しや商品の口コミはECサイトよりもSNSを見る人の方が多いのではないかと思われるほどとなっています。
SNSは、基本的にはアカウント発行は無料で行えます。さらに、発信の仕方を工夫すれば、低コストで幅広い対象に情報を伝えることができます。
メールマガジン(メルマガ)配信
メールマガジンは、「リードナーチャリング」と呼ばれる見込み客の購買意欲を高め、実際の購入に繋げるためのマーケティング手法の一つです。
メールマガジンを送る相手は、自分からアドレスという情報を提供してくれた人たちで、基本的には製品やサービスに興味があったり購入・利用の意思があることがほとんどであると言えます。
プル戦略成功のポイント
プル戦略を成功させるためのポイントは、主に次の3つです。
- プッシュ戦略と柔軟に使い分ける
- ターゲットを明確にする
- 同業他社の成功例を参考にする
プッシュ戦略と柔軟に使い分ける
プル戦略は、プッシュ戦略と柔軟に使い分けることが重要です。例えば、製品やサービスが販売されたばかりのタイミングではプル戦略を、興味を示した(顕在的、見込みのある)顧客に対してはプッシュ戦略でアプローチするなどの使い分けができます。
また、潜在的ニーズのある顧客を顕在的・見込み客に変化させることで、販売力強化にもつながります。
ターゲットを明確にする
これは、プル戦略に限ったことではありません。ターゲットが定まっていないと伝えたいことは伝わらず、最適な施策が選べないため、顧客に行動を促すことはできません。
同業他社の成功例を参考にする
プル戦略を成功させるためには、同業他社の成功事例を調べることは不可欠です。
「どのような手法で戦略を立案し活用しているのか」「プッシュ戦略との連携やバランスは?」など、実際の成功例をそのまま真似することは避けなければなりませんが、参考にして自社独自の戦略を立てましょう。
プル戦略に関するよくある質問
Q:プル戦略とは?
Answer)消費者に対して直接的に製品やサービスの魅力を伝えることで、相手の購買意欲を刺激します。そして、消費者が自ら自社の製品やサービスを「指名買い」するように行動を促す戦略のことです。
Q:プル戦略の効果が発揮されるのはどういった場面?
Answer)例えば、以下のような環境や状況では効果が発揮されやすいと言えます。
- 製品やサービス自体の認知度が高い
- 自社ブランドの知名度が高い
- 他社製品との差別化が明確にできている
- 日用品などの消耗品を扱う場合
Q:プル戦略を成功させるためのポイントは?
Answer)プル戦略を成功させるポイントは、次の3つです。
- プッシュ戦略と柔軟に使い分けること
- ターゲットを明確にしておくこと
- 同業他社の成功例を参考にすること
まとめ