オムニチャネルとは?メリットデメリットと戦略について解説
インターネットやスマホの普及により、買い物は店舗だけでなくECサイトなどのオンライン上で完結するようになりました。このような購入方法が広まり、オムニチャネルという手法が注目を浴びています。
オムニチャネルとは、店舗、ECサイト、アプリなどの複数のチャネルを統合する手法です。顧客は場所や受け取り方法に制約を受けることなく、自由な買い物を楽しめるため、顧客満足度の上昇にもつながります。
オムニチャネルとは
- チャネル間の一貫性: オンライン(ウェブサイト、モバイルアプリ、ソーシャルメディア)やオフライン(店舗、電話)のすべてのチャネルで、ブランドメッセージや価値提案が一貫していることが求められます。
- データ統合: 顧客データを横断的に収集し、統合することで、顧客の行動や好みに基づいたパーソナライズされたコミュニケーションやプロモーションを実施できます。
- シームレスな体験: 顧客がどのチャネルを使用しても、シームレスで継続的な体験ができるように、チャネル間の移行をスムーズにすることが重要です。例えば、オンラインで商品を見つけ、店舗で試着し、最終的にモバイルアプリで購入するといった一連のプロセスが円滑に行えることが求められます。
- 顧客中心のアプローチ: オムニチャネル戦略では、顧客のニーズや期待に焦点を当て、顧客が最も適切だと感じるチャネルでの対応やサポートを提供することが重要です。
オムニチャネルが注目されるようになった背景
オムニチャネルは、アメリカで注目されたのちに日本でも注目されるようになりました。アメリカではじめてオムニチャネルという言葉を使ったのは、老舗百貨店のメイシーズです。メイシーズは2010年からECで購入した商品のピックアップから配送までを最寄りの店舗で行う「シップ・フロムストア」をテスト導入していて、それが始まりと言われています。
営業活動や物流、広報などが一体となっているオムニチャネルの性質から、インターネットやスマホなどの多種多様な端末が世間に広がりはじめ、普及しました。
O2Oとの違い
O2Oとは、SNSやWeb広告、アプリなどのオンラインから集客し、店舗への導線をつくる手法です。コンビニや飲食店のアプリで割引クーポンを配る、SNSで新商品やセールなどの情報を発信するなどがO2Oにあたります。マルチチャネルと同じく、インターネットやスマホなどの端末の普及により認知されていきました。
このように、オンラインからオフラインへ誘導するO2Oと、購入までの行動をできるだけオンラインで完結させるマルチチャネルでは、顧客に求める行動が違います。
クロスチャネルとの違い
クロスチャネルとは、実店舗やECサイト、SNSなど、さまざまなチャネルを確保していて、なおかつ顧客データや在庫をすべてのチャネルで一体化している状態を指します。
これだけ聞けば、オムニチャネルと変わりないように感じますが、営業活動や物流、広報などが一体となっているオムニチャネルはクロスチャネルを発展させた手法であると言えます。
オムニチャネルとCRM
オムニチャネルの性質上、複数のチャネルに存在する顧客情報を集め、チャネル同士を連携させなければなりません。そこで、その役割を担うのがCMRです。CMRは顧客情報を管理する手法で、顧客の欲しいものを好きな方法で提示することが可能になります。
そのため、顧客は購入までの行動を好きなように選択でき、満足度も上がります。
オムニチャネルのメリット
ここまでの解説で、オムニチャネルの概要や似ている手法との違いについて理解できたかと思います。
ここでは、オムニチャネルのメリットについて解説していきます。得られるメリットは以下の3つです。
- 顧客満足度が上昇する
- 顧客一人ひとりへのマーケティングに一貫性が生まれる
- 機会損失を減らせる
それぞれ詳しく解説します。
顧客満足度が上昇する
顧客の希望に合わせて効率よく商品を届ける仕組みであるオムニチャネルは、顧客に負担をかけず商品を購入させられるため、顧客満足度が上がります。
たとえば、欲しいものを店舗まで買いに行き、目当ての商品が売り切れていれば、買いに行くという行動は無駄となり当然満足度は下がってしまいます。しかし、オムニチャネルにより在庫の有無がわかれば、店舗に足を運ぶことなく、在庫があればそのままスムーズに購入できます。
このように、顧客の負担をへらし、好きな方法で購入できるので顧客との関係性は良好を保てます。
顧客一人ひとりへのマーケティングに一貫性が生まれる
オムニチャネルは、あらゆる買い物のプロセスのなかで、制約を受けず自分の都合や好みに合わせてオンライン、オフライン、スマホなどの販売経路を選べます。これは、すべてのチャネルを連携させているので、顧客一人ひとりに一貫したマーケティングが可能になるのです。
たとえば、スマホの広告で見た商品がSNSで見た商品と同じで、アプリから配信されたクーポンにその商品が入っていれば、顧客は1つの販売経路に依存することなく、好きな購入方法を選べます。
機会損失を減らすことができる
ECサイトが普及してからは、店舗で商品を確認してからECサイトで購入する顧客が多くなっています。これは、ショールーミングとよばれる消費者行動で、商品を確認してからECサイトで価格の低いものや違うデザインのものを購入するため、さまざまな企業の間で問題となっています。
このような問題もオムニチャネルに対応していれば解決できます。各チャネルを連携させ、好きなタイミングで好きな方法を選び購入できるため、機会損失を防ぎ顧客を囲い込むことが可能です。
オムニチャネル戦略実施までの流れ
ここでは、実際にオムニチャネルを実施するまでの流れについて詳しく解説していきます。
実施までの流れは以下の通りです。
- 調査と検討を実施する
- 組織体制を構築する
- 実績配分をルール化する
- 在庫情報を一元管理する
- 顧客情報を一元管理する
それぞれ詳しく解説していきます。
調査と検討を実施する
まずは、自社が置かれている状況や他社競合の調査を行い、実際に競合が行っているオムニチャネルの現状や動向について把握しましょう。
その調査から自社がアプローチする顧客を割り出し、使用するチャネルや販売方法を模索します。
組織体制を構築する
次に、オムニチャネルで必須となる在庫情報を一元化をするために、詳細な在庫情報をリアルタイムに把握しておく組織体制の構築が必要です。
実績配分をルール化する
オムニチャネルを実施すると、店舗やECサイトなどの部門の垣根を超えた販売が行われます。そのため、ECサイトから購入した商品を店舗で受け取るときなどは、売り上げをどの部門の実績にするかはあらかじめ決めておかなければなりません。
在庫情報を一元管理する
在庫情報の一元化はオムニチャネルを成功させるうえでとても重要です。これにより、A店の店頭、B店のバックヤード、物流センターなど、それぞれ商品の場所や店舗の状況が違うものでも、それぞれの量と位置情報を含めて、ほぼリアルタイムで把握できます。とくに、ネットショップからの注文とその在庫がひもづけされていることが重要です。
このような在庫の一元化ができると、これまでは物流センターになければ在庫切れとなっていたものが、他の店舗やバックヤードなど、どこかにその商品があれば在庫として販売可能になります。
顧客情報を一元管理する
最後に、オムニチャネルは販売経路にとらわれない販売方法のため、これまで店舗やオンラインショップで使われていた、購入履歴やポイント、ペルソナなどを一体化させるため、一元管理システムを導入しましょう。
これにより、さまざまな販売経路の境界線がなくなり、どの方法で購入しても顧客情報を一元管理することができます。
オムニチャネルを成功させるために重要なポイント
次に、オムニチャネルを成功させるために重要なポイントについて解説します。
ポイントは以下の通りです
- 環境分析とロードマップの策定
- 社内体制
- PDCAを回す
それぞれみていきましょう。
環境分析とロードマップ策定
自社を取りまく環境の分析から、どのような顧客を狙い、どのような準備をしていくかロードマップを作りましょう。いつ、だれが、どこで、などできるだけ詳細につくることで、次に何をするべきかがはっきりと見えてきます。
また、オムニチャネル実施することで、どのようなゴールを目指しているのかを1番初めに決めておかなければ、方向性が定まらず失敗する可能性が高くなってしまいます。
社内体制
オムニチャネルを実施していない企業では、販売経路を部門ごとに分け展開しているのが一般的ですが、この体制は、オムニチャネルを実施するにあたって足かせになります。在庫や顧客管理を一元化し、なるべくリアルタイムで共有しなければならないので、部門ごとに分け展開していれば、時間がかかってしまうからです。
そのため、なるべくスムーズに対応できるような社内体制づくりをして、必要であれば部門の解体や見直しをしましょう。
PDCAを回す
オムニチャネルはすぐに効果が出る手法ではありません。そのため、成功させるためには定期的に戦略やシステムの見直しが必要です。ここまで解説してきたロードマップの策定や社内体制の見直しを行い、PDCAを回しましょう。
また、顧客のニーズも一定ではなく変わっていきます。そのため、ペルソナや効果的な施策の見直しも定期的に行いましょう。
オムニチャネル戦略で検討すべき課題とは
ここまでの解説でオムニチャネルに関する理解が深まったかと思います。しかし、起こりうるべき課題についても知っておかなければなりません。
オムニチャネルは事業自体を大幅に見直し、改善する必要があります。そのため、巨額の投資が必要です。システムの維持費などランニングコストもかかることを理解して実施しましょう。
また、オムニチャネルは実施後にすぐに成果が出づらいです。そのため、長期的なプランを練る必要があり、定期的な施策の見直しも大切です。
オムニチャネルの事例
最後に、オムニチャネルを実施している企業の事例をみていきましょう。
大手流通企業であるセブン&アイ・ホールディングスでは、2015年11月にネットショッピングサイト「オムニ7」を立ち上げました。グループ企業であるセブンイレブンやイトーヨーカドー、西武、そごう、アカチャンホンポなど、さまざまなジャンルの商品を、宅配やセブンイレブンで受け取れます。
全国約19,000店舗のネットワークを活かし、グループ内の売り上げを増やしています。
まとめ