ロジックツリーとは?課題解決の使い分けとテンプレートをご紹介
ロジックツリーとは、特定の問題や課題を要素分解し、論理的に深掘りしていくフレームワークです。この手法を用いることで複雑な問題でも構造を明確にし、解決策を導き出しやすくなります。ロジックツリーは問題解決や意思決定のための強力なツールとして知られており、Whatツリー(要素分解ツリー)、Whyツリー(原因追求ツリー)、Howツリー(問題解決ツリー)、KPIツリーを使い分けることで段階的に解決策の導出が可能になります。
ロジックツリーとは
ロジックツリーとは、樹木が枝分かれするように、特定の物事や問題を要素分解して考えていくフレームワークのことです。難しいことであっても要素分解をしていくとイメージできる構造として理解できるようになります。ロジックツリーとは問題解決をするために論理的に深堀していくための手段です。
要素展開をしていくという点ではマインドマップとも似ていますが、マインドマップは自由に発想してブレーンストーミングをするときに使われることが多く、構造が異なります。ロジックツリーを考える際には次の2つを意識する必要があります。
- MECEであること
- 正しく要素分解すること
MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive、ミーシー)とは、漏れなくダブりなくという意味です。要素を分解する際にはこのMECEの考え方が極めて重要ですが、MECEに分解することが難しいものが多いため、まずはMECEを正しく理解するところからはじめてください。
例えば、売上という項目を分解すると顧客単価と顧客数という視点で分けることができますが、顧客単価が地域によって大きく異なる場合、売上はエリアで分けたほうが意味のある切り口になることがあります。どちらも全国の売上を最初の要素として持ってきており、MECEに分けていますが、状況によって意味のある切り口が変わることがあるということを覚えておいてください。
マインドマップとの違い
ロジックツリーとマインドマップは形式は似ていますが、ロジックツリーがツリー上になっており、論理的な関係を理解したり、特定の目標に対して深堀するために使うのに対し、マインドマップは放射状であり、自由なアイデアを視覚的に把握するために利用するという点で異なります。
そのため、マインドマップは特にブレスト(ブレーンストーミング)に使われることが多く、論理的に物事を捉えているかどうかは関係なく使えます。
ピラミッドストラクチャーとの違い
ロジックツリーと似たものにはピラミッドストラクチャー(ピラミッド構造)もあります。どちらも論理的に物事を捉えるという点では同じですが、利用目的の点で異なります。
ピラミッドストラクチャーは話の論点であるメッセージを頂点に配置し、そのメッセージを支える根拠を下に追加することで主張の正しさを主張していく説得のためのフレームワークです。対して、ロジックツリーは課題や問題を設定し、構成する要素や原因を分解していくことで解決策に導くフレームワークです。
ロジックツリーの種類
ロジックツリーには次の4種類があります。
- Whatツリー(要素分解ツリー)
- Whyツリー(原因追求ツリー)
- Howツリー(問題解決ツリー)
- KPIツリー
ロジックツリーの作成目的は課題解決です。課題によってどのツリーを使うかは異なりますので、そのときどきで使い分けてください。
Whatツリー(要素分解ツリー)
Whatツリー(要素分解ツリー)は問題の発生個所を特定するためのツリーです。問題が発生した際に、要素分解を通じて網羅的に洗い出すことでどこに問題があるのかを特定するときに利用されます。
会社の売上を例にとると、顧客数と平均顧客単価に分けることができ、それぞれ新規顧客数と既存顧客数、商品単価と購入数という分け方ができます。これをできるだけ細かく分けることで問題点を見つけることができます。
WEBサイトの流入という観点で見ると、例えば、検索流入、広告流入、SNS流入などに分けることができます。また、検索流入は指名検索、非指名検索に、広告流入はリスティング広告、ディスプレイ広告に、SNS流入はX経由、Facebook経由、TikTok経由、YouTube経由などに細分化できます。
Whyツリー(原因追求ツリー)
Whyツリー(原因追求ツリー)は問題発生の原因を特定するために利用されるツリーです。問題の発生個所が特定されたあと、なぜ問題が発生しているのかを特定するのに役立ちます。
会社の利益減少という事例で考えると、売上の減少とコスト増という分け方ができ、売上減少は顧客数の不足、商品単価の問題のように細分化され、コスト増は原価の高騰、販売管理費の増加のように細分化し、それぞれの項目をより詳しく見ることで課題を解決することができます。
WEBサイトであれば、検索流入の減少という課題がよく浮上しますが、原因としては次のようなものが考えられます。
- Googleのコアアルゴリズムアップデートが実施された
- 自然検索流入が多い記事の検索順位が落ちてしまった
- サイトリニューアル時にURL構造が変わった
上記のように問題が特定されている場合、アップデートの対策は何か、自社よりも検索順位の高いサイトはどのようなページなのか、URL構造や転送設定に問題はないのかなどを確認することで問題を解決することができます。
Howツリー(問題解決ツリー)
Howツリー(問題解決ツリー)は問題解決策の洗い出しと優先度をつけるためのツリーです。Whyツリー(原因究明ツリー)で原因がわかったあとに、どのように解決するのかを検討する際に役立ちます。
顧客数を増やすという観点では、新規顧客か既存顧客(リピート)のどちらかですが、それぞれに対するアクションを細分化して解決手段を出すことで優先順位がより鮮明になります。WEBメディアでいえば、検索流入を増やすために新しいキーワードを取得する、取得済みキーワードに該当する記事をリライトする、外部リンクを増やす活動をするなどの施策が考えられます。
KPIツリー
KPIツリーはKGIを達成するための要素分解をするツリーです。KGIは組織の最終目標のことで、多くの場合は利益、売上、成約数などが該当し、KPIはKGIを達成するための中間目標ですので、リード数や成約単価などが該当します。
例えば、WEBメディアでリードを獲得する場合、最短でもランディングページ、問い合わせフォーム、問い合わせという順で遷移します。問い合わせ1件を取るためには問い合わせフォーム入力率を10%としてフォームには10件、問い合わせページへの遷移が10%としてランディングページへのアクセス100件、クリック率10%として検索数は1000件なければなりません。この数値はすべて仮の割合で出していますが、クリック率10%を維持するためには検索順位で1位〜3位は取らなければ達成できないため、コンテンツにはかなり注力した対応が必要になってくることがわかります。
ロジックツリーを活用するメリット
ロジックツリーは特定の物事や問題を要素分解して考えていくフレームワークですので、課題や原因の特定に役立ちます。課題や原因を細かく分類していくということは結果的に、現状の可視化をすることができ、細かい課題が出てくるということは解決策が導きやすいというメリットがあります。
現状の課題や原因を特定できる
ロジックツリーを活用するメリットは現在の課題や原因の特定に役立つことです。問題解決をする場合、現実と理想のギャップをもとに、解決すべき課題や問題を洗い出すところから始める必要があります。
問題解決とは、ひらたくいえば、「現状を正確に理解し」「問題の原因を見極め」「効果的な打ち手まで考え抜き」「実行する」ことです。
引用:世界一やさしい問題解決の授業(ダイヤモンド社、2007年、渡辺健介)
例えば、WEBメディアを運営していて課題を感じているとき、問題をメディアのアクセス数が足りないことだと判断した場合にはアクセス数を伸ばす手法を考えれば問題は解決します。方法論としては広告を出す、SNSで情報発信をする、コンテンツを増やす、SEO対策をするなどが挙げられます。しかし、本当の課題が売上を上げることだった場合にはアクセス数の増加は要素の1つであって、より効果的な対策方法が出てくる可能性があります。
特にWEBメディアではコンテンツを量産し、SEO対策することでアクセス数を伸ばして満足することがありますが、WEBメディアの最終目的が利益確保だった場合にはアクセス数を伸ばすことよりもCVRを伸ばすことのほうが優先度が高い可能性があります。
認識の共有がしやすい
ロジックツリーを作ることで原因や結果までのプロセスが可視化され、情報共有がスムーズになります。チームにメンバーが追加されるために説明したり、文書を読むよりも焦点が絞られている分、より効率的にロジックが伝わり、認識のずれが起こりにくくなります。
解決策が出やすい
ロジックツリーは問題を要素分解して可視化するフレームワークですが、問題を分解していくと個々の解決策が鮮明になり、解決策を導きやすくなることが一般的です。要素が細かく出ることでそれぞれの解決策をリスト化し、できること、できないことを分け、優先度をつけることで必然的に解決策を出すことにつながります。
この段階で具体的な解決策が出ていれば、そのあとのアクションにつながりやすく、リソース配分や人員配置の検討にも役立ちます。
ロジックツリーを活用する際の注意点
計画通りに進まない
ロジックツリーは原因を追求し、問題を解決する際に有効な手法ではありますが、WhyツリーとHowツリーを作成したとしても因果関係が複雑な場合や外的要因が強すぎる場合には計画とおりに進まないことも往々にしてあります。そもそも、ロジックツリーを作るためのMECEの考え方が難しく、理解しているつもりでロジックツリーの作成にかかっても短期間で、かつ、一度で完成することはまずありません。
ロジックツリーを使えば解決できると思い頼りすぎると結果的に予想外の失敗をしてしまい、結果的に遅くなってしまうということがありますので注意が必要です。
ロジックツリー作成が目的になってしまう
ロジックツリーは課題を特定し、解決するためのフレームワークです。作っただけでは何の意味もなく、作った後に問題を特定して解決するための補助的なツールです。しかし、問題点の可視化ができたことに満足したり、施策の優先度を付けたりすることまでは行うものの、その先のアクションにつながらないことがあります。ロジックツリーを作ることに満足するのではなく、必ず問題を解決するための具体的なアクションまで見越したスケジュールを組むようにしてください。
新規事業には向かない
ロジックツリーは問題の発見と解決に役立ちますが、前提となるのは既存の考え方と分析対象です。逆を言えば、過去の成功事例に捉われない自由な発想や斬新な視点の考え方には不向きなフレームワークといえます。また、論理的な考えは物事の整理には役立ちますが、経営判断という観点では必ずしも論理的に考えるだけでは成功しないことがあります。その意味では新規事業や経営判断のようなファジーなものには適用できないことがあります。
ロジックツリーのテンプレート
ロジックツリーは非常に簡単な構造のフレームワークです。左(または最上部)にメインメッセージを置き、そこから枝分かれして要素分解をしていくだけの構造であるため、特別なテンプレートを使わずとも、エクセルやパワーポイントのSmartArt機能や無料ツール(XmindやMindMeister)を利用することで作成、共有が可能です。
SmartArt
Microsoftオフィスのエクセル、パワーポイントにあるSmartArt機能から階層構造、横方向階層を選ぶことで簡単に作ることができます。デザインに課題感は出てくる可能性はありますが、そもそもは問題を特定するための社内ツールであることを考えれば、SmartArtでも十分に作成は可能です。また、行数が多くなる場合には、描画機能を使うのではなくエクセルのセルに直接入力して自由に記述したほうが拡張性が高く、より深いロジックツリーになります。
Xmind
Xmindはマインドマップ作成のためのツールですが、マインドマップとロジックツリーは目的が異なるだけであり、構造としては非常に似ています。メインメッセージから分岐するという点では同じ形になるため代用可能であり、拡張面や共有性が高いため有用です。
参考:Xmind
MindMeister(マインドマイスター)
MindMeisterもXmind同様にマインドマップを作るツールです。日本ではXmindよりもメジャーで使いやすく、共有しやすいという点でもロジックツリー作成に重宝します。
参考:MindMeister
まとめ