LTV(ライフタイムバリュー)とは?計算方法や事例を解説!
昨今では、企業間の競争や国内の人口減少により市場シェアを広げることが困難になってきています。さらに新規顧客を獲得しようとすると、コストがかさむといったこともあり、どうにか既存の顧客をリピーターにして売上を伸ばそうという企業の動きが見られます。
LTVとは?
LTV(Lifetime Value / ライフタイムバリュー)とは、顧客生涯価値と訳されるとおり、顧客から生涯を通じて得られる企業利益を指すビジネス用語です。生涯というとやや大げさな表現になりますので、現実的には「生涯」の部分を「顧客が自社商品の利用を開始してから終了するまでのライフサイクル」といった具合に置き換えて用いられます。
このほか、LTVはマーケティング活動におけるKPIとしても使われています。KPI(Key Performance Indicator)とは、目標に対するプロセスの達成率を図る指標のことです。マーケティングでは、一連の活動が有意義なものであったかを効果測定して判断するのですが、この場面でLTVという指標が用いられます。
同一の顧客が継続して商品を購入し続けると、LTVが向上していきます。そのためLTVを高める施策としては、リピート顧客を増やしていくことが挙げられます。
LTVが重視される理由
LTVは、もともとサブスクリプション(Subscription)の指標として利用されていました。サブスクリプションとは、料金を支払うことで一定期間サービスを提供されるという、継続利用を前提としたビジネスモデルのことです。よくある例でいうと「年間利用料○○円」という料金体系になっているサービスがあります。
一方、これは業界にもよりますが、昨今では下記のような理由で新規顧客の獲得が難しくなっているケースが目立ちます。
- 企業間の競争激化による市場の飽和
- 国内における人口減少による市場縮小
そこで既存顧客に継続して自社商品やサービスを利用してもらおうと、リピーター顧客を増やす施策に注目が集まっています。このような経緯もあり、マーケティング活動ではLTVをKPIに設定することが増えてきています。
LTVの計算方法
LTVは、一般的に次の計算式で求められます。
- LTV = 平均購入単価 × 利益率 × 購入頻度 × 継続期間
ただしこの計算式は、もっともシンプルな要素のものです。実際には、計算の対象に合致する数値を代入して利用されています。LTVはそれぞれの乗算で求められますので、1つ1つの要素の数値を伸ばす施策がLTVの向上に直結します。この計算式を実用的に運用するためにも、それぞれの要素を分解して考えてください。
平均購入単価とは
平均購入単価は、1回の購入で顧客が支払う総額の平均値を指し、平均客単価ともいいます。平均購入単価の計算式は下記のとおりです。
- 平均購入単価 = 期間中の総売上 ÷ 顧客数
例えば、1年間の総売上が1,000万円で、購入した顧客が1万人いたとします。すると、このときの年間平均購入単価は1,000円になります。
利益率とは
利益率とは、売上に対する利益の割合のことです。細かくいうと、利益や利益率はさまざまな種類に分かれるのですが、原則的に利益率は下記の計算式で求めます。
- 利益率 = (期間中の総売上 – 原価コスト) ÷ 期間中の総売上 × 100
例えば、1年間の総売上が1,000万円で、原価コストを差し引いた利益が200万円だったします。その場合の利益率は20%になります。
購入頻度と継続期間
購入頻度とは、一定の期間内で顧客が商品やサービスを購入した回数のことです。1人の顧客が2回購入した場合、その顧客をリピート顧客と呼びます。一方、継続期間とは、そのままの意味なのですが、「購入頻度」の状況が継続した期間を指します。
例えば、1年間で1万人の顧客が2回購入したとします。さらにその状況が5年続いた場合、継続期間は5年間になります。
LTVとCACの関係性
LTVを計算するうえで、CAC(Customer Acquisition Cost)という重要な指標があります。CACとは、1人の新規顧客を獲得するために発生するコストのことです。CACには、下記のようなものがあります。
- 営業や広告活動に必要な人件費
- 広告やプロモーション費用
通常、新規顧客の獲得ための費用と継続施策のための費用では、前者のほうが大きなコストになります。こうしたコストを把握して目標を立てることが大切なのですが、一般的にはLTVに対してCACを3分の1以下に抑えるべきといわれています。つまり、CACでかけた費用に対して、3倍のLTVを収益目標として設定してください。
LTVを向上させる施策
マーケティング活動のLTVをKPI設定すると、LTVの計算式に基づき活動内容が絞られていきます。LTVを向上させるための方法として、実際に反映される企業活動には下記のようになります。
- 商品のラインナップを増やす(=平均購入単価が上げる)
- 商品の原価を下げる(=利益率が上がる)
- 一定期間ごとに上位互換の商品を開発する(=購入頻度や継続期間が上がる)
- 商品の価値が高いことを顧客にアピールする(=購入頻度や継続期間が上がる)
- 扱い店舗やECサイトを増やす(=購入頻度や継続期間が上がる)
こうした活動のなかから、マーケティングリサーチで得られる結果を考慮のうえで企業活動の方針を決めてください。
商品のラインナップを増やす
商品の種類やラインナップを充実させていくと、いわゆる複数買いといった購入をする顧客が増えて平均購入単価の増加につながります。例えば、黒いセーターを販売していたとして、さらに白いセーターをラインナップに加えたとします。そうすると、ふだんの生活で黒系の服と白系の服を着ることが多い顧客は、2着のセーターを購入する可能性があります。
このほか、平均購入単価を高める施策としては、セット販売や特典をつけるといった方法があります。後者に関してよく目にする例をだすと、「2点以上お買い上げのお客様は3点の商品を無料で提供します」といった文言とともに付加価値を提供するといったものがあります。
商品の原価を下げる
商品の開発や製造に必要なコストを下げることで、商品1点当たりの利益がアップして利益率向上の対策になります。例えば、これまではコストが高い原材料を使っていたが、マーケティングリサーチの結果で「顧客が原材料にこだわっていない」ことが判明した場合などに有効な手段です。
また、利益率を高める方法としては商品単価を上げるといった対策もあります。ただし商品単価を上げると、既存顧客の離脱につながるケースもあります。ここでは、商品に見合った価格設定が求められます。商品単価の変更をする場合は、必ずリサーチして顧客のニーズと商品価値の価格相場を把握のうえで検討してください。
一定期間ごとに上位互換の商品を開発する
一定の期間ごとに現行品の上位互換の商品を投入することで買い替え需要が発生します。買い替え需要を促すことで、購入頻度や継続期間の向上につながります。身近な例としては、一定の季節ごとにスマートフォンやパソコンの新機種が投入されるといったものがあります。
このほかの購入頻度や継続期間を改善するための手法としては、下記のようなものがあります。
- 商品の扱い店舗やECサイトを増やして、顧客と商品が接触する新たな場を設ける
- 季節ごとの広告で商品などをアピールして、他社への乗り換えを防ぐ
アプリにおけるLTVの具体事例
アプリケーション業界を例にして、LTVをKPIにした場合の計算方法や改善施策をご紹介します。
スマートフォンで利用できるアプリケーションのなかでも、とりわけゲームアプリでは下記のような要素が重視されています。そして、これらの数値はLTVの計算式に埋め込まれる要素にもなっています。
- アクティブユーザー数
- リテンション率
- ARPU(Average Revenue Per User)
アクティブユーザー数とは
アクティブユーザー数(AU)とは、指定の期間内にアプリを開いたユーザー数のことです。ただし、厳密にいうと計測される対象は人間の数ではなく、アプリにアクセスしたアカウントや端末の総数が該当します。アクティブユーザー数は、下記のように指定期間ごとに数えられます。
- デイリーアクティブユーザー(DAU):1日間のアクティブユーザー数
- ウィークリーアクティブユーザー(WAU):1週間のアクティブユーザー数
- マンスリーアクティブユーザー(MAU):1ヶ月間のアクティブユーザー数
リテンション率とは
リテンション率とは、ユーザーがアプリを起動した頻度を数値化したものです。リテンション(Retention)とは、日本語で継続と訳されることからもわかるとおり、ユーザーの継続性を確認するための指標です。リテンション率は、下記のように計算されます。
- リテンション率 = 指定期間内のAU数 ÷ アプリのダウンロード総数
例えば、新作アプリをリリースしたのちに10万回ダウンロードされて、DAUが5万人だったとします。つまり、新作リリースから当日までのリテンション率は50%になります。
また前月対比のリテンション率を求めたい場合は、次のように計算します。
- リテンション率 = 当月のMAU数 ÷ 前月のMAU数
当月のMAUが3万人で前月のMAUが5万人だとすると、前月対比のリテンション率は60%ということになります。
ARPUとは
ARPU(Average Revenue Per User)とは、1アクティブユーザーあたりの平均売上(課金額)を指します。これは、1ユーザーがどの程度の金額を課金しているか、ということを平均値として割り出したものです。ARPUには、いわゆる無課金ユーザーも含まれますのですが、課金ユーザーだけの平均額を計算したい場合はARPPU(Average Revenue Per Paid User)という指標を使います。ARPUとARPPUは字面が似ていますので、混同しないように注意してください。
さらに、DAUなどと組み合わせて期間を指定して、下記のように使用することがあります。
- ARPDAU:1日間の1ユーザーあたりの平均課金額
またARPUは、下記のように計算します。
- ARPU = 指定期間内の総売上 ÷ 指定期間内のAU数
例えば、1ヶ月間のアプリの売上が1,000万円として、MAUが10万人とします。このときは、1ヶ月間のARPUは100円になります。少し噛み砕いて説明すると、1ヶ月間で1人あたり100円ほど課金していることになります。
アプリにおけるLTVの計算式
これはアプリに限らず、サブスクリプションにも共通していることなのですが、LTVの計算式は下記のようになります。
- LTV = 指定期間のARPU × 離脱率
例えば、アプリを配信してから1年間のARPUが1,000円でリテンション率が20%だとします。その場合は離脱率が80%になりますので、ライフサイクル全体を指すLTVでは1人あたり平均して800円ということになります。
アプリにおけるLTVを高める主な施策
アプリ業界では、LTVを高める具体的な施策として下記のようなものがあります。
- コンテンツの改善
- 商材開発
- Youtube生放送によるスケジュール発表
コンテンツの改善
ユーザーの口コミや継続性をチェックして、アプリの改善点を検討していきます。極端にリテンション率が低い場合は、ユーザーが離脱する理由を特定してください。改善点を把握できたら、アップデートを実施してユーザーが不満に感じていた課題を解消します。ユーザーの声をコンテンツに反映することで、ユーザーの離脱が減少してリテンション率が高まります。
商材開発
ユーザーの口コミなどを参考にして、アプリに求められる商品を開発して実装します。具体的にはゲーム上のキャラクターといったデジタルデータを指しますが、こうしたアプリに課金する要素を増やすことで、ユーザーが課金する頻度を高めていきます。
Youtube生放送によるスケジュール発表
オンライン上で映像や音声を配信できるウェビナーツールを利用して、アプリの最新情報をユーザーに提供します。アプリのユーザーには、常に最新のアップデート情報を求めているといったニーズがあります。そのため、こうしたアプリの最新情報を提供する場を用意することで、顧客満足度が高まります。さらに最新スケジュールの配信は、新たに販売する課金アイテムの情報拡散になりますので、ARPUの向上施策にもつながります。
LTVに関するよくある質問
LTVに関する、よくある質問をQ&A方式でまとめています。
Q: LTVをマーケティングの指標として取り入れたほうがよいですか?
Answer)LTVを指標とする主な目的は、既存の顧客をリピーター顧客にすることです。新規顧客の獲得施策に力を入れている場合でも、獲得した顧客が離脱してしまうのはもったいないです。売上の最大化を図る意味でも、LTVを観察することが大切です。
Q: LTVの適切な数値をどのように判断するのですか?
Answer)LTVとCACを併用して、健全な状態か、または改善が必要かを判断するといった方法があります。前者は顧客によるライフサイクル全体の利益のことですが、後者は1人の顧客を獲得するための出費を指します。この比率が「LTV:CAC=3:1」を上回っている状態を目指し維持してください。
Q: LTVとARPUの違いは?
Answer)ARPUとLTVは、一見同じような意味に見えますが厳密には異なります。前者が期間で区切った顧客単価を示すことに対して、後者は生涯(=ライフサイクル全体)を通じた顧客単価を指します。そのため、ARPUを離脱率で割ってLTVが計算されます。
まとめ