インテグレーションとは?用語の意味やビジネスで役立つ知識を解説
情報やシステムがバラバラに存在することで、不便を感じたことはありませんか。例えば、マーケティング部門と営業部門で顧客データを共有できれば便利なのに、別々で管理しているなどのことです。
こういったバラバラに存在していたものを統合することによって、以前より格段に効率的になることがあります。このことをインテグレーションといいます。
インテグレーションの意味
インテグレーション(Integration)は、統合や統一、融合、一体化などの意味で使われる言葉です。異なるシステムや要素を結合して一体化するプロセスや概念を指します。
従来、バラバラで考えたり使用していたものを、1つのものとして結合することでメリットが生まれることが期待されます。例えば、マーケティング部門と営業部門がバラバラに扱っていた顧客データを、部署をまたいで一元管理し効率化を図ることはインテグレーションの一例です。
インテグレーションは、異なる要素を個別に扱うよりも、相互に連携させることにより、より高度な機能性やパフォーマンスを実現するための手段です。特にビジネスやIT関連分野において、さまざまなインテグレーションの手法が用いられています。
インクルージョンの違い
インテグレーションと似た言葉にインクルージョンという用語があります。これは、似ていますが異なる概念です。インクルージョンは多様な背景を持つ人々に対して、個々の違いを尊重しながら、包括的な社会を築くことを目指す概念です。
例えば、近年よく耳にするようになったLGBTQという言葉があります。これは多様な人々がいることを認め、平等に社会参加をすることが大切であるという概念であり、インクルージョンの一種といえます。
一方、インテグレーションは主にシステムやプロセスに対して使われる言葉で、統合することを指します。例えば、2つの異なるシステムを統合して1つにまとめることができれば、それはインクルージョンということです。
インテグレーションが使用される分野・業界
インテグレーションは様々な分野で使用される用語です。実際にどのような分野で使用されているのか、代表的なものを取り上げ解説します。
IT
IT分野では、さまざまなインテグレーションがおこなわれています。例えば、API(アプリケーション・プログラム・インターフェース)を使用することで、異なるソフトウェアやシステム間でデータや機能を共有するなどのことが実現しています。このことをAPIインテグレーションと呼ぶこともあります。
教育
学校教育では、数学・国語・理科・社会といったように個別の教科として学生に教えることが一般的です。しかし、それでは教科間の関連性が分かりづらく、学生の興味・関心を削ぐというネガティブ一面がありました。
そこで近年、教科間の垣根をなくし統合的に学ぶというアプローチが注目を浴びています。事実、2022年度より高校では新たな科目として「総合的な探求の時間」が設けられるようになりました。これは、教科にこだわらず統合的に学ぶことで、知識や技能、判断力を高めるという試みです。
医療
医療分野ではこれまで、患者の診療記録や検査結果、服薬情報などを病院ごと、あるいは外科や内科、耳鼻科などの専門分野ごとにバラバラで管理していました。これを電子カルテや医療情報システムを用いてデータを一元化し、より効率的な診療を患者に提供する試みがあります。これをデータインテグレーションと呼んでいます。
製造
製造業では、ある特定の商品を生産するために工場内で一連の工程や設備を配置しています。いわゆる生産ラインと呼ばれるもので、加工や検査、梱包などに分かれます。
こういった工程をより効率的に連携させる取り組みは「生産プロセスの統合」と呼ばれており、インテグレーションの一例です。
金融
金融機関では、顧客情報、取引履歴など多くのデータを扱います。従来はこれらを複数のシステムやデータベースで個別に管理していました。そこで、これらのデータを一元管理し、取引データなどをリアルタイムに把握することで、顧客行動をより細かく分析できるようになりました。このように金融分野でもインテグレーションが進んでいます。
ビジネスにおけるインテグレーションの種類
ビジネスにおいて、インテグレーションは次の3つの意味で使われることが多いです。
- システムインテグレーション
- プロセスインテグレーション
- データインテグレーション
1つずつ解説します。
システムインテグレーション
システムインテグレーション(System Integration)は異なるシステムやアプリを統合し、1つのシステムとして利用できるようにすることです。このように別々のシステムを統合することで、効率的な処理が実現したり、手間を削減することができます。
例えば、マーケティング活動を自動化するMAツールと、営業担当者を支援するSFAツールを連携させるといったことは、システムインテグレーションに該当します。
このようにシステムインテグレーションをおこなうことで、マーケティングと営業活動が一体化し、より効率的な顧客管理や営業活動が実現します。
参考ページ:What is application integration? – IBM
プロセスインテグレーション
プロセスインテグレーション(Process Integration)とは、異なるプロセスや業務を統合して、より効率的なプロセスを構築することです。
例えば製造業では、生産ラインを管理するためのシステムと品質管理のためのシステムが、それぞれ別々に稼働しています。そのため、商品が製造されるまでに多くの時間がかかっていました。
しかし、このシステムを統合することにより、不良品を減らし、かつ効率的に生産量を増やすことを実現できます。こういったことをプロセスインテグレーションと呼んでいます。
データインテグレーション
データインテグレーション(Data Integration)は、異なるデータを1つのものに統合することを指します。
例えば、これまではECサイトの受注とリアル店舗の受注、そして商品の在庫状況が個別で管理されていたとします。この場合データが同期されないため、既に在庫切れになっているにもかかわらず、受注を受けてしまうなどのトラブルが発生することがあります。
しかし、データインテグレーションをおこない、ECサイトとリアル店舗、在庫状況のデータが統合されれば受注トラブルを減らすことが可能です。
インテグレーションの関連用語
インテグレーションという言葉は、さまざまなシーンで使われる用語です。そのため業種や分野によって、さまざまな派生語があります。そこで、ここではよく使われる用語について解説します。
インテグレーションツール
インテグレーションツールとは、複数のシステムやアプリケーション、デバイスを統合するために使用されるソフトウェアやサービスのことを指します。統合することによって、タスクの自動化や作業の効率化を実現できます。
具体的にはZapierなどはインテグレーションツールに該当します。Zapierは、APIを使用して複数のアプリケーションの連携します。ユーザーにプログラミング知識がなくても、簡単にインテグレーションを実現できます。
参考ページ:Zapier
インテグレーションテスト
インテーグレーションテストとは、複数のシステムを統合した際、全体が正しく作動するのかを確かめることです。
元々個々のシステムとしては正しく稼働していたとしても、統合することによって不具合が生まれることがあります。このようなシステム・エラーをみつけるのが主な目的です。
インテグレーションテストを実施するツールの例としてはJUnitがあります。これは、Java言語で稼働するアプリケーションを統合した際、正しく作動するのかを確認できるものです。
参考ページ:JUnit
クラウドインテグレーション
近年、多くの企業がクラウドサービスを利用しています。そして、異なる環境にあるクラウドサービスを統合することをクラウドインテグレーションと呼んでいます。主には専用のAPIを利用し、データや機能の相互連携をおこないます。
ビジネスインテグレーション
企業内の様々な部署を統合して、組織全体の効率化を図ることをビジネスインテグレーションと呼んでいます。部署を分けることで非効率的になっている場合、ビジネスインクルージョンをおこなうことがあります。組織のスリム化をおこなうことで、競争力を向上させることが目的です。
参考ページ:business integration – TechTarget
ワークライフインテグレーション
ワークライフインテグレーションとは、仕事とプライベートを調和させながら、バランス良く生活を送るという意味です。働き方に関する1つの考え方です。例えば、フレックスタイムやリモートワークなど柔軟な働き方を導入し、個々の生活スタイルを尊重します。
また、働く時間そのものよりも成果に重点をおいたり、仕事の時間とプライベートの時間を厳密に区別しないなどの特徴があります。
インテグレーションのよくある質問
ここでは、インテグレーションについてよくある質問と答えをお伝えします。
Q:システム間でインテグレーションをおこなうメリットは?
Answer)どのシステムをインテグレーションするかによって、えられるメリットは異なります。代表的なメリットとしては、データを共有することによって多面的な分析ができるようになることや、タスクが自動化されることで業務の効率化が実現するなどがあります。
Q:システムインテグレーションを請け負う業者は?
Answer)自社だけでシステムインテグレーションを実現することが難しい場合、専門業者に依頼することができます。その専門業者をシステムインテグレーターといいます。通称SIer(エスアイアー)とも呼ばれています。
SIerに依頼すると自社の課題や実現したいことを踏まえ、システムインテグレーションを実現するための支援をおこなってくれます。コンサルティングで支援してくれる場合もありますが、多くの場合、システムの企画やプログラムの開発など実務で請け負ってもらうことが多いです。
Q:事前にどのような準備が必要ですか?
Answer)インテグレーションをおこなう際には事前に準備が必要です。
まずは、インテグレーションをおこなうことによってどのような変化を期待するのかについて、最初に明確にしておかなければいけません。
その後、何を対象にインテグレーションをするのかを決めます。例えば、システムインテグレーションをおこなうのであれば、どのシステムを統合するのかを検討します。プロセスインテグレーションの場合なら、どの工程を対象にするのかを決めます。
その後、計画を立て、その手順に沿って進めていきます。ただし、データインテグレーションの場合は、事前にバックアップをとることを忘れないようにしてください。
Q:データインテグレーションを進める際の注意点
Answer)データインテグレーションを進める際には、セキュリティ対策が大切です。データの統合や送信、保存時に暗号化やアクセス制御できるようにしてください。個人情報の保護を最優先し、情報漏洩がないよう注意します。
Q:プロセスインテグレーションの注意点
Answer)プロセスインテグレーションは、異なる業務などを統合することです。プロセスとインテグレーションを進める際には、一度で完結するとは考えないようにしてください。一定期間、継続的な調整が必要です。計画段階では想定していなかったトラブルが発生することがあるためです。定期的な観察と評価をおこない、問題がある場合は、改善策を講じるようにします。
まとめ