インナーブランディングの成功法則と導入手法
インナーブランディングとは、企業理念やブランド理解などを従業員に向けて、浸透させる活動のことです。
社内からのブランド強化は、外部に対するブランディングにつながっていきます。

インナーブランディングとは
インナーブランディングは会社の理念やブランドを自社の従業員に理解を高める取り組みです。近年では、正社員のみにこの取り組みを行うのではなく、パート、アルバイト、契約社員や派遣社員までインナーブランディングの対象と考えている企業もあります。
この取り組みは1990年代にアメリカのホテルや飲食業界で行われておりました。そのため、実例として多いのは接客業になります。
インターナルブランディングとの違い
結論からいうと、大きな違いはありません。インナー(inner)もインターナル(internal)も直訳すると「内部の」という意味になります。そのため、同じような用途で使われています。
しかし、日本ではインターブランディングという言葉で表現することが多く、英語圏ではインターナルブランディングで表現することが多い傾向にあります。
エクスターナルブランディングとの違い
エクスターナルブランディング(アウターブランディング)は、会社が顧客や取引先、社会など「外部」に対して行うブランド構築活動です。例えば、広報やPRなどの活動がこれに当たります。
主な目的は、企業のイメージ戦略を具体化し、成果(売り上げ)につなげることです。
インナーブランディングによる効果
インターブランディングの主な目的は、組織力強化です。例えば、従業員が自社へのエンゲージメント(愛着や貢献意欲など)が高まると、人材定着につながります。
これにより、早期離脱する従業員が少なくなるため、従業員の経験が豊富になり、新人育成を効率よく行うことができます。
インナーブランディングが注目を集めている理由
数多の商品が市場に出回っており、企業競争が激しくなっています。そんな中で、企業は他社より強いブランド構築を行い、差別化をするかが重要になりました。
また、従来の習慣(終身雇用や年功序列など)が変化し、転職が一般的になりつつあり、流動化したことで、優秀な従業員を確保することが難しくなりました。このような背景から、優秀な人材に選んでもらえる企業になるために、ブランド価値を高めることが重要視されています。
また、企業ブランディングの研究が進むにつれて、企業イメージは広告などにとどまらないことが分かりました。消費者は様々な機会(実店舗での接客やカスタマーサポートでの問い合わせなど)に企業と接触し、イメージを決定しています。
このため、選んでもらえる企業になるため、消費者との接点を持った際に統一感があるメッセージ(企業ブランドや理念)を伝えることが大切です。インナーブランディングに注力することで、このメッセージを消費者へ伝わりやすくすることができるため、注目されています。
インナーブランディングの取り組み方
インナーブランディングを効果的に実施するための手法は様々あります。以下では、大まかな例を紹介します。
勉強会を実施する
経営層から自社ブランドについて従業員に直接話す機会を設けることで、理解への一歩になります。しかし、座学のみの一方的なものだけでは、理解してもらうことは難しいです。
そのため、従業員が自発的に研修を主催する、ワークショップを行うなどの取り組みを行うことで、従業員が様々な意見を交換しやすくなります。従業員が能動的に理解を深めることができる工夫をすることが大切です。
ブランドブックの作成と活用
ブランドを定義づけるには、会社について正しく理解してもらうことが大切です。具体的には以下のようなものが挙げられます。
- 社名の由来
- ロゴの意味
- 起業に至った理由
上記以外にも、様々あります。しかし、これらを確認するために従業員の時間を割いて、研修を実施するのはおすすめしません。また、定期的に確認することで定着することを目的としているため、1度の研修で理解させるのもおすすめしません。
そのため、ブランドブックを作成し、定期的に読んでもらうことで定着化を図ることが可能になります。
社内アンケートを実施する
インナーブランディングの取り組みを通して伝えたことを反映したものをテスト形式でアンケートを取ることで、理解が定着しているかを測ることができます。また、意見を記載できる項目をアンケートに設置することで、ブランドに対する意見を確認することができます。
インナーブランディングによるメリット
インナーブランディングに取り組むことで、企業は様々なメリットを期待することが可能です。
優秀な社員が育成される
インナーブランディングにより企業理解が深まり、企業への愛着が強まることで、人材の定着に繋がります。従業員が賃金や福利厚生で企業を選ぶのではなく、心理的なつながりを強固にすることができるため、人材流出のリスクを少なくすることが可能です。
人材の定着率が上がり、企業の体制が安定すると経験豊富な人材が増え、後続育成を効果的に行うことができます。
また、従業員が企業理念やビジョンを体現できるようになると、その姿を見て共感や憧れを持って入社する人が増え、企業にマッチした人材を確保することができます。
アウターブランディングがしやすくなる
従業員が経営理念やブランドを理解し、同じ方向を向いて行動してくれるようになると、アウターブランディングがしやすくなります。
たとえば、お客様の声を第一に、などのメッセージを掲げている企業が消費者への対応が不適切であると、信用が損なわれます。消費者への接点と掲げるメッセージを一致させることで、信用がはぐくまれます。
競合に対する優位性が高まる
飽和状態の市場に対し、価格だけではなくブランドを体現することができるため、サービスの差別化ができ、消費者に価格だけではないところで比較してもいやすくなり、選んでもらえる可能性が高まります。
リスクマネジメント強化につながる
従業員の企業への理解が深まり、愛着が高まると、企業を守ろうとする動きをしてくれる傾向が高いです。そのため、リスクマネジメントをする動きが高まり、コンプライアンス意識が高まることに繋がります。
インナーブランディングを成功させるポイント
取り組みを行う際に、押さえるべきポイントがいくつかあります。以下では、主なポイントについて解説します。
明確な目標を定める
目標達成のために、問題や課題点を言語化し、解決までのロードマップを考える必要があります。これがインナーブランディングの下地になるため、あいまいなまま初めてしまうと、失敗する確率が上がります。
関連記事:KPIとは?KGI、KSF、OKIとの違いとKPIマネジメントの方法や達成までの手順を解説
長期的な視野で取り組む
一長一短では、インナーブランディングを行うことは難しいです。そのため、長期間での取り組みを想定した計画を立てることがおすすめです。
しかし、長期間の計画だけでは、成果を確認することが困難なため、短期的なタイミングでPDCAを行い、成果確認を行うことが大切です。
関連記事:PDCAとは?概要やメリット、サイクルを回すポイントなど解説
経営層からの理解を得る
見通しやすり合わせが不明瞭のまま進めてしまうと、経営層からストップを指示される可能性があります。それを回避するために、問題、課題点を明確化し、インナーブランディングの取り組みについてすり合わせをしっかりと行う必要があります。
まとめ
