市場投入戦略 (GTM) とは?マーケティング初心者にもわかりやすく解説
現代の社会では、商品やサービスが溢れていて、新商品を投入する際に確保できる市場のシェアが限られています。制限が課される市場シェアのなかでは、いかに効率よく商品を認知させて流通させられるかが重視されます。
そこで重要となるのが、「どのように商品を消費者に届けるのか」といったGTM (Go To Market / 市場投入戦略)と呼ばれる戦略です。
市場投入戦略 (GTM) とは?
GTM (Go To Market / 市場投入戦略)とは、商品やサービスを市場に投入する方法のことです。具体的には、下記のような商品の売り方に関するフローを指します。
- 市場分析
- 販売経路の選定
- 価格設定
- プロモーション戦略
GTMとマーケティングの違い
GTMとは、あくまで、どのように商品やサービスを消費者に届けるかをまとめた戦略のことです。ですので、商品の存在感をアピールして、市場を拡大することが狙いとなります。
その一方で、マーケティングとは、商品やサービスの売る仕組みを構築する一連の戦略を指します。ここには、商品の売り方だけではなく、売上を確保するためのあらゆる戦略が含まれます。
つまり、GTMは、マーケティングの1つの手段として位置付けられます。
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GTMが必要なケース
原則的には、商品を市場に投入するときにGTM戦略を取り入れます。具体的には、下記のようなケースが挙げられます。
- 新商品やサービスを市場に投入するとき
- 新たな地域や市場に進出するとき
- 既存商品をリニューアルするとき
このうち、後者の2つのケースでは、GTMの見直しが求められます。
新たな地域や市場に進出するとき
既存商品を新たな地域や市場に投入するとなると、地域性を考慮したGTM戦略が必要です。
地域ごとに、そこに居住する生活者の属性が変わります。そもそも、衣食住といった生活スタイルが異なるケースもありますので、今一度、商品のニーズがあるか否かを調査することが求められます。さらに、地域によって、流通経路や支持されているメディアにも違いがあります。どのような販売チャネルで、どのようなプロモーションを展開するのかを、改めて検討してください。
既存商品をリニューアルするとき
既存商品をリニューアルすると、商品を改良して商品価値を高めることにつながります。このとき、GTMを見直すことになりますが、チェックポイントはリニューアルの目的によって異なります。
例えば、商品の顧客満足度を高めることがリニューアルの目的だったとします。こうした場合は、商品の変化した部分を顧客に伝える必要があります。そのため、商品パッケージや店頭ポップ、広告宣伝を強化します。さらに、広告クリエイティブを差し替えて、「これまでよりも価値が高い商品に生まれ変わった」ことを訴えていきます。
GTMに活用されるデータ
新商品やサービスを市場に投入するためには、さまざまな切り口からデータを調査や分析する必要があります。そして、調査分析の対象となるのは、下記のようなデータが該当します。
- 市場の人口統計データ
- 競合商品のデータ
- トレンドに関するデータ
市場の人口統計データ
ここでいう市場の人口統計データとは、商品ターゲットとなりえる総合人口のことです。さらに、年齢層や性別、可処分所得といった属性を精査していきます。
こうした事前調査や分析で得た情報を、GTMにおける下記のステップで役立てます。
- ペルソナの設定
- 商品価格の設定
- 目標売上高の設定
競合商品のデータ
競合商品のデータには、競合商品に関する特徴や価格、売上といったものが挙げられます。さらに、そこから導き出される競合の戦略も大きなチェックポイントです。このほか、こうした情報から、競合に不足した部分を推察して、自社商品で訴求すべき点を洗い出します。
トレンドに関するデータ
トレンドデータの代表的な事例としては、SNS(Social Networking Service)やGoogleがピックアップしているトレンド情報があります。このほか、テレビやラジオ、雑誌、新聞といったメディアが取り上げている対象も参考になります。
こうしたトレンド情報からは、市場ニーズを把握するうえで役立ちます。
GTMで用いられるフレームワーク
市場調査で取得したデータを分析する際に、フレームワークと呼ばれる考え方を利用します。フレームワークとは、考えや情報を整理するために使われるテンプレート(枠組み)のことです。フレームワークは、マーケティングで利用されることが多々あります。
ただし、GTMはマーケティングにおける「売り方」に対する役割を担いますので、GTMでもフレームワークが採用されるケースがあります。そして、GTMでは、下記のようなフレームワークが役立ちます。
- 4P分析
- AIDMA
4P分析
4P分析とは、商品の売り方を決めるためのフレームワークを指します。そして、4P分析は、下記の4つの「P」の頭文字が名称の由来となっています。
- 商品(Product)
- 価格(Price)
- 流通(Place)
- 価値訴求(Promotion)
市場調査のデータを基準にして、「なにを」、「どこで」、「いくらで」、「どのように」売っていくべきかを判断していきます。
AIDMA
AIDMA(アイドマ)とは、「なぜ消費者が商品を購入するにいたったのか」を分析するためのフレームワークのことです。AIDOMAでは、下記の5つのプロセスが語源になっています。
- Attention(認知)
- Interest(興味)
- Desire(欲求)
- Memory(記憶)
- Action(購入)
つまり、どのような謳い文句で商品を認知させていくか、というプロモーションの組み方を決める際に用いられます。
GTM戦略の組み立て方
GTM戦略を組み立てるうえでは、いくつか抑えるべきポイントがあります。具体的には、下記のような点をチェックしてください。
- 市場が商品に期待することを確認する
- ターゲット決める
- 商品コンセプトを決める
- バイヤージャーニーを把握する
1.市場が商品に期待することを確認する
商品やサービスが消費者に受け入れられるための条件として、今の市場にはない新しい価値を提供して、市場が抱えている課題を解決することが挙げられます。そこで、まずは市場が商品に期待することを確認します。
さらに、この市場ニーズには、消費者自身も気付いていないものの、内面的には存在しているニーズも含まれます。こうした潜在的なニーズのことを顧客インサイトと呼びます。この顧客インサイトを掘り起こすことで、新たな市場のニーズを生むことも可能です。
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2.ターゲット決める
商品のターゲットを決めていきます。このとき、「商品を購入する典型的な人物像」を明確にしていきます。こうした人物像をペルソナと呼ぶのですが、ペルソナごとに、それぞれ生活スタイルや嗜好性などが異なるという特徴があります。ペルソナを設定することで、「商品が消費者へ届く経緯」に対するイメージが湧きます。
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3.商品コンセプトを決める
商品コンセプトとは、だれが、どこで、どのように利用するのかをイメージ化したアイデアのことです。こうしたアイデアと、市場が「どのような商品を求めているか」を組み合わせて商品の売り出し方を決めていきます。ここでは、市場のニーズとペルソナを正しくキャッチしているか否かが問われます。
4.バイヤージャーニーを把握する
バイヤージャーニーとは、「商品がどのように購入されるのか」の経緯を指します。バイヤージャーニーの仮説を立てることで、具体的にどのような流通経路で、どのようなプロモーションを展開すると効果的かが見えてきます。そこで、まずは、ペルソナの特性や行動パターンを基に、商品が購入されるまでの流れをストーリー立てて考えていきます。
例えば、商品のターゲットが下記のようなペルソナだったとします。
- 一人暮らしが多い(ペルソナの特性)
- 外食することが多い(ペルソナの行動パターン)
- コンビニの利用者が多い(ペルソナの行動パターン)
こうしたことから、商品ターゲットのペルソナは、コンビニエンスストアを生活圏内としていることが伺えます。そのため、スーパーマーケットではなくて、コンビニエンスストアに商品を厚めに流通させるべきということが判断できます。
さらに、ペルソナには、下記のような特徴があるとします。
- 20代の男性が多い(ペルソナの特性)
- テレビ視聴者が少ない(ペルソナの行動パターン)
- WEBコンテンツの利用者が多い(ペルソナの行動パターン)
このケースでは、広告としては、テレビCMではなくて、WEBコンテンツに集中した方が高い費用対効果を見込めると推測できます。
GTM戦略の具体事例
スマートフォン向けゲームメーカーのコロプラ社は、GTM戦略を取り入れて成功した事例を持っています。
コロプラ社は、スマートフォン向けのゲームアプリ「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」を2013年3月に配信開始しました。
当時のスマートフォン向けゲームアプリの市場では、男性ユーザーをターゲットとした作品が大半を占めていました。しかし、スマートフォンは、老若男女を問わず、幅広い層が利用している情報機器です。つまり、潜在的には「スマホで本格的なゲームを楽しみたい女性」がいたものの、こうした市場のニーズを満たすゲームアプリがありませんでした。
そこで、コロプラ社は、新たなゲームアプリ市場を形成しようと、女性でも楽しめるゲームの開発を目指すことになりました。具体的には、「クイズ」という万人に受け入れられるゲーム要素を盛り込みつつ、ゲーム内に登場するキャラクターや世界観をやわらかくデザインしています。その結果、「女性でも気軽に楽しめるスマホ向けの本格RPG」という新たなニーズを切り開き、同7月には200万ダウンロードを達成するほどに成長しました。
次の手として、コロプラ社は、同社としては過去最大規模の2億円もの広告予算を組んでテレビCMを流しました。テレビCMは、幅広い層にリーチできますので、スマートフォン向けアプリと親和性が高いと言われています。さらに、「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」の場合は、男女問わずターゲットにしていましたので、万人に受け入れられるアプリに仕上がっています。このように、戦略と商品の相性のよさもあって、翌年の2014年1月には、同アプリは1400万ダウンロードされるまでにいたりました。
GTMのよくある質問
GTMに関する、よくある質問をFAQ形式でご紹介します。
Q:GTMとは何のこと?
Answer)商品やサービスを市場に投入して、「どのように消費者へ届けるか」の戦略を練ることです。
具体的には、事前の市場調査やターゲット設定、販売経路の選択などの一連の流れを指します。GTM戦略を適切に実行することで、市場内で商品やサービスのポジションを確立させることができます。
Q:なぜGTMがビジネスで重要なのか?
Answer)市場シェアを拡大することで、売上を伸ばすことにつながるためです。
そもそも、企業とは、利益を追求して確保するための組織です。そのため、最終的には商品やサービスの売上に直結するGTM戦略が注目されています。
Q: GTMで重要なことは?
Answer)商品に合った戦略を練ることです。
相性がよいGTM戦略を組めるかどうかで、商品投入が成功するか否かが決まります。そのため、商品を広めるために、どのような手段が適しているのかを考えることが大切です。
Q: GTMを成功させるために必要なツールは?
Answer)プロジェクト管理ツールが挙げられます。
プロジェクト管理ツールでは、タスクの進捗を管理して、メンバー間で共有できます。商品の市場投入にあたり、現在どのような状況にあるかを監視しながら、GTM戦略を進めてください。
まとめ