顧客経験価値マーケティングとは?具体的な手法のカスタマージャーニーについて解説
現代のデジタル環境の進化にともなうマーケティングは、顧客中心主義に移行しています。顧客とのタッチポイントが無数となり、オムニチャネルでの対応が必須となっています。
顧客経験価値マーケティングとは
顧客が製品やサービスを購入する前に体験することを意図的にマネジメントすることで、顧客に様々な価値を提供し、結果として商品やサービスを選んでもらう、カスタマーセントリック(顧客中心主義)の発想によるマーケティングです。
現代は、企業と顧客(消費者)のタッチポイント(接点)がオンライン(webサイトやSNSなど)からオフライン(店舗など)まで無数に増加しています。
フィリップコトラー4.0から顧客中心のマーケティングが提唱されているが、顧客経験価値マーケティングでは、より顧客を中心にマーケティングを考える必要があります。
消費者に提供するものは、商品に関する情報だけではなく、その商品が関係しそうな顧客体験の全てを考え、様々な価値を提供していく設計をしなければいけません。
消費者に、価値のある体験を提供し、この体験を得るには、この商品の存在が必要であると納得させることが必要です。
何が本当に商品を購入してもらえる重要なタッチポイントであるかを見極めることも必要です。
顧客経験価値の構成要素
コロンビア大学ビジネススクールのバーンド・H・シュミット教授は、マーケティング戦略は、顧客と製品や企業の関係をマネジメントする顧客経験価値マネジメントに変化していると提唱しました。SEM(戦略的経験価値モジュール)というフレームワークでマネジメントできるとしています。
SEM(戦略的経験価値モジュール)は5つの構成要素からなります。
- Sense(感覚的経験価値)
- Feel(情緒的経験価値)
- Think(創造的・認知的経験価値)
- Act(肉体的経験価値)
- Relate(集団や文化との関係)
です。
SENSE(感覚的経験価値)
センスとは五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)を通じて感じる経験です。感覚的経験価値で顧客は良いと思えば、ファンになり、ブランド力が向上します。視覚では、デザインや色に訴え、聴覚では音やリズム、触覚では手触りなど高い質で感覚を刺激して心地よい経験を提供します。
Feel(情緒的経験価値)
情緒的経験価値は、顧客が企業やブランドに愛着を感じ感情移入する価値です。気分や感情部分です。顧客がホテルやレストランで心地よい接客を受けて満足すれば、情緒的経験価値を提供したことになります。
Think(創造的、認知的経験価値)
創造的、認知的経験価値とは顧客が、深く思考し、サービスや商品に評価を下す元になる情報や体験を提供することです。新しい知識や価値観で顧客が自ら勉強し始めるのに十分な情報を提供することが必要です。
Act(肉体的経験価値)
顧客が現実に体験したり、他社と接触した時の経験の価値のことです。店舗に来店してもらった時に、ここちよいクッションの商品に座って購買意欲が増すなど肉体的経験価値と言えます。
Relate(集団や文化との関係)
同じ集団や文化を共有している感覚は経験価値となります。帰属意識を経験価値として提供します。あこがれているインフルエンサーと同じものを買ったりすることはこのRelateに入ります。
顧客経験価値マーケティングの実施
顧客経験価値マーケティングは、顧客中心主義(カスタマーセントリック)で考えることが重要です。カスタマージャーニーマップを1つ作成し、SEM(戦略的経験価値モジュール)のフレームワークで顧客の行動を把握し、様々なタッチポイントを洗い出します。以下のステップで進めます。
- ブランド戦略と情緒的経験価値(Feel)を定義する
- ペルソナを設定する
- ペルソナからカスタマージャーニーマップを作る
- 真実の瞬間(moment of truth)をピックアップする
- 真実の瞬間に対して具体的なアクションプランを策定する
- 見直し、カスタマージャーニーマップの質の向上
- PDCAを繰り返す
ブランド戦略に基づき、自社にとって最も購買してくれるペルソナを設定する。最も多くのタッチポイントを持ちそうなペルソナにします。カスタマージャーニーマップの作成では、時系列に、ペルソナの行動によって起きた感情と思考を書き出します。
真実の瞬間とは、マーケティング用語ですが、顧客が満足し、購買の意思決定をする瞬間を指します。オンラインで商品の情報収集をする起点や商品を実際に使う瞬間も「真実の瞬間」です。これらの瞬間が、顧客の経験に大きな影響を与えるタッチポイントであると言えます。この真実の瞬間を発見することが顧客経験価値マーケティングの根幹となります。
顧客経験価値マーケティングの注意点
顧客経験価値マーケティングを行うにあたって、あまりにも細かいワン・トゥ・ワン・マーケテイングをしてはいけません。一人一人の違いにこだわりすぎるとうまくいきません。グルーピング化されたペルソナのあくまでも行動の1つ1つに注目して対応することが大切です。重要なことは、顧客の行動とそれに伴って起きる顧客の経験と顧客経験価値です。顧客との関係は1つ1つの顧客経験の積み重ねによって生み出されます。
まとめ