カスタマージャーニーマップとは?重要性や種類、作成手順など解説
ECサイトで商品をカートに入れても、多くの人がそのまま購入せずWEBサイトから離脱することがあります。事実、TIDIOが発表した『40+ Essential Shopping Cart Abandonment Statistics (2024)』でも、70%のユーザーがカートに商品を入れても、その後、購入に至らず離脱していることが判明しています。このような離脱の課題を解決し、スムーズな購入プロセスを築くためにはカスタマージャーニーマップが役立ちます。
カスタマージャーニーマップとは何か?
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを知ってから購入するまでのプロセスや体験を指します。そして、これら一連の顧客体験を視覚的に表したものがカスタマージャーニーマップです。カスタマージャニーマップは、横軸に購買プロセスを配列し、縦軸で顧客のニーズや行動、感情、考えなどを記述するのが一般的です。
参考ページ:カスタマージャーニーとは?基本概念からメリットや重要性など解説
カスタマージャーニーマップの重要性
カスタマージャーニーマップは、ユーザーが商品を認知してから購入にいたるまでの流れを一覧や図にするマーケティング手法です。マップを作成することで、企業は購買プロセスを改善でき、ユーザーにより良い買い物体験を提供できます。ここでは、カスタマージャーニーマップの重要性について詳しく解説します。
顧客視点で購買プロセスを見直せる
長年、企業が同じビジネスをしていると、ユーザーが商品を認知し、購入するまでのプロセスが「当たり前」でシンプルなものだと錯覚してしまいます。しかし、ユーザー側から購買プロセスを見直すと、非常に複雑なプロセスを辿っていることが分かります。
例えば、Aさんが理容室でサービスを受けることを考えます。Aさんは理容室のことを考える前に、鏡の前に立ち「髪が伸びてきたので、そろそろサッパリしたい」という問題に気づく必要があります。その後、近所の理容室を探すために、検索や口コミサイトの確認、他社との料金比較など、さまざまな行動が連鎖的に起こります。
このように、企業からすると顧客がすぐに自社商品・サービスを見つけたように捉えてしまいますが、実際には購入にいたるまでさまざまな段階を経ています。そのため、企業視点で購買プロセスを捉えるのではなく、ユーザー視点で見直すことで、さまざまな課題発見やスムーズな購買体験への改善がおこなえます。
購買体験が商品と同等に重要
多くの企業は「良い商品を提供すれば、顧客は満足する」と考えがちです。しかし、現実はそう単純ではありません。顧客は、商品とどのように出会い、企業の担当者や販売者がどう関わったかも重視しています。
実際、Salesforce Researchが14,300人を対象に実施した調査によると、80%の顧客が「企業が提供する体験を、製品やサービスと同じくらい重要と考えている」ことが判明しています。
例えば、あなたが住宅を販売していると仮定します。おしゃれで機能性・安全性に優れた住宅を提供しても、それだけで顧客が満足するわけではありません。顧客に送る広告、見学会の体験、担当者の接し方。こうした企業と顧客が接するあらゆる場面での体験が、販売する住宅そのものと同じくらい重要です。
このように顧客体験は商品と同等に重要なため、カスタマージャーニーマップを使い、再度、購買プロセスを見直すことが肝心です。
参考ページ:What Are Customer Expectations, and How Have They Changed? – Salesforce
カスタマージャーニーマップの種類
カスタマージャーニーマップは、大きく分けて4つのタイプがあります。どれも購買プロセスを整理するという点では同じですが、自社のビジネスモデルや目的により適したものを選び、活用してください。
参考ページ:The 4 Types of Customer Journey Maps – BODINE
現状マップ(Current State)
もっとも標準的なカスタマージャーニーマップは「現状マップ」です。このマップは現在の顧客が企業と接点を持ちながら、どのような体験をしているのかを視覚化したものです。
時間軸(横軸)としては顧客が製品を認知する段階から、購入しアフターサービスを受けるまでを記入します。記入項目(縦軸)としては、顧客の行動や考え、感情を書き出すのが一般的です。このマップは、現時点での顧客体験と改善点が明確になるため、今すぐ課題を見つけたい場合に役立ちます。
日常生活マップ(Day in the Life)
日常生活マップは、顧客の1日の生活を書き出すものです。多くの場合、時間軸(横軸)には「朝・昼・夕方・夜」のような1日の時間を書き出します。その間、顧客がどのような行動や感情、考えを持っているのかを項目別(縦軸)に記述します。日常生活マップを作成することで、企業は未知の顧客ニーズを発見することができたり、新しい商品アイデアのヒントをえることができます。
未来予測マップ(Future State)
未来予想マップとは、製品やサービスを体験する際に、ユーザーにとってもらいたい行動や考え、感情に焦点をあてたものです。未来予想とあるように、基本的にはまだ発売していない商品をこれから市場に提供する際などに使用します。こうすることで、企業がおこなうマーケティング施策をチーム全体で認識でき、場合によっては事前に問題点を発見できるなどの利点があります。
サービス・ブループリント(Service Blueprint)
サービス・ブループリントは、横軸に認知や購入など、ユーザーが体験するプロセスの段階(通常のジャーニーマップと同様)を書きます。一方、縦軸には商品・サービスの提供に関わる各部署や担当者を書き、顧客にどう関与するかを記入します。
縦軸には、フロントステージと呼ばれる顧客と直に接する部署や担当者に加え、顧客から直接みえず、間接的に関わるバックオフィスの部署や担当者も書きます。例えば、顧客からの注文を受け、配送作業をおこなうチームは、顧客と直接的に接することがないためバックオフィスに分類されます。
このようにフロントステージやバックオフィスなど、チーム全体として顧客にどう関わっていくのかを視覚化することがサービス・ブループリントの特徴です。
カスタマージャーニーマップに含める内容
カスタマージャーニーマップを作成するときは、どの情報を含めるかが重要です。適切な要素を盛り込むことで、ユーザー行動や心理を正しく理解でき、マーケティング上の課題を見つけやすくなります。そこで、カスタマージャーニーマップ作成に必要な要素を取りあげ解説します。
購入プロセス
購入プロセスは、カスタマージャーニーマップを作成する際に、要素として含めることが多いものの1つです。一般的には典型的な購買プロセスの段階(認知、検討、意思決定など)を横軸に並べます。さらに詳細を記述する場合は、下記のような項目を記述してもかまいません。
例.購買プロセスの例
- ソーシャルメディアでのエンゲージメント
- コンテンツ記事への流入
- ECサイトへの訪問
- 購入
- カスタマーサポートとのやりとり
- リピート購入
上記の例のように詳細項目を横軸に使う場合、一度、CMSなどにある自社データを確認し、カスタマージューニーマップで正確に再現してください。
ユーザーの感情
ユーザーは理屈ではなく、感情で商品を購入することが多いため、カスタマージャーニーに感情の項目を入れることは非常に重要です。実際、ユーザーは抱えている課題が大きいか小さいかにかかわらず、商品購入にいたるまでの間、恐怖や喜び、不安といったさまざまな感情を抱きます。
これらの感情をカスタマージャーニーマップに追加することで、マーケターは購入プロセスの見直しができたり、新たに提供できる顧客サポートを発見できることがあります。ただし、顧客の感情を推量だけにもとづいて記述することは適切ではありません。客観的な材料として、次のデータを見直してください。
- オンラインのレビュー
- ソーシャルメディアのモニタリング
- 顧客インタビュー
- アンケートデータ
- カスタマーサポートとのやりとり
参考ページ:センチメント分析(感情分析)とは!? 活用目的やメリットについて解説
ユーザー行動
カスタマージャーニーマップには、ユーザー行動を記述することが一般的です。例えば、資料のダウンロードやウェビナーへの参加、カスタマーサポートへの問い合わせなどが該当します。
どの段階でユーザーが特定の行動をとるにいたったかを詳細に記述してください。また、ユーザー行動を調べる際には、次のような情報が役立ちます。
- CTAのクリック
- メールの開封
- メールマガジンへの登録
- 資料のダウンロード
こういった情報はGA4などのアクセス解析ツールを利用すれば、正確に把握することが可能です。
参考ページ:ユーザー行動分析(UBA)とは?概要や進め方を解説
リサーチ行動
主には商品購入前の段階で、ユーザーがどういった検索をするのかを記述します。リサーチ行動はユーザー行動に含めてもかまいませんが、特に重要なアクションのため、極力、これだけに特化して情報を整理してください。例えば、SNSでの検索やGoogle検索、YouTubeでの情報収集などが挙げられます。
また、ユーザーがどういったキーワードで検索しているかまで含め、カスタマージャーニーマップに記述しておくと、課題発見に役立ちます。このプロセスを進める際には、キーワードプランナーなどの利用も検討してください。
課題
ユーザーが購入プロセスの各段階で、どのような課題を抱えているのかを記述します。この課題を洗い出すことによって、今後のマーケティング施策を決定することができます。可能性のある課題はすべて書き出す必要がありますが、できればプロジェクトに関わるチーム全員でアイデアを出すようにします。
カスタマージャーニーマップの作成手順
ここでは、カスタマージャーニーマップの作成手順についてお伝えします。ユーザーが商品に出会い、購入にいたるまでの流れを明確にし、マーケティングの課題を見つけることが目的です。下記の手順に沿って作成を進めてください。
Step1.顧客情報の収集とペルソナ設定
カスタマージャーニーマップは、顧客側から購入プロセスを見直す作業です。そのため、まずはユーザーがどのような人物なのかを明確にすることから始めてください。そして、ペルソナをチームで共有することが肝心です。
また、ペルソナが憶測にもとづいてつくられないよう、アンケート調査などをおこない、できる限り客観的な情報で判断してください。アンケート調査で顧客に確認しておくべきことは次の項目です。
- どのようにして自社商品や会社を知りましたか
- WEBサイトを訪れて最初に注目したものは
- 弊社の商品を活用して解決したいことは何ですか
- 弊社WEBサイトをどれくらいの頻度で利用していますか
- 弊社商品を購入する決め手は
参考ページ:ペルソナとは?マーケティングに必要な理由と設定方法を解説
Step2.どのマップを使用するかを決める
カスタマージャーニーマップには、上述したとおり4つのタイプがあります。そのため、自社の目的に合わせてどの形式を利用すれば良いかを決定してください。既存の購買プロセスを見直すのであれば「現状マップ」が役立ちますし、新商品の発売であれば「未来予測マップ」が適切です。
Step3.顧客とのタッチポイントを明確にする
顧客とのタッチポイントをリスト化します。具体的には「WEB広告を見る」や「カスタマーサポートに問い合わせる」、「ECサイトを閲覧する」などです。これらのやり取りは顧客のタッチポイントといえます。
このタッチポイントを列挙し、カスタマージャーニーマップ内に記述します。こうすることで、顧客行動を掴むことができ、同時に改善点をみつけることにつながります。例えば「顧客の期待よりもタッチポイントが少ないことが、離脱の原因ではないか」などのように改善点を見つけます。
参考ページ:タッチポイントとは?重要性や成功させるポイントについて解説!
よくある質問(Q&A)
ここでは、カスタマージャーニーマップについて、よくある質問を取りあげ解説します。購買プロセスを見直すことはコンバージョン改善に直結するため、WEBマーケティングにおいて非常に重要な手法です。早速、下記のQ&Aで詳細事項を確認してください。
Q:現状マップと未来予測マップの違いは何ですか?
Answer)現状マップは、すでに稼働している購買プロセスの改善を試みるために作成します。一方、未来予想マップは、販売予定の商品に対して作成したり、現状とは大きく異なる購買プロセスを再構築したいときに活用します。
また、未来予想マップの場合、数値やデータが未知数のため、情報の多くが推測に基づいてしまいますが、それでもチームが認識をそろえるのに役立ちます。
Q:カスタマージャーニーマップで課題を見つけるポイントは?
Answer)カスタマージャーニーマップを使い、マーケティングの課題を見つけるのに重要なのは、離脱率を把握することです。どの箇所でユーザーが離脱しているかを把握することで、課題のある箇所を発見することができます。離脱率の高い箇所が見つかれば、タッチポイントを増やしたり、離脱した顧客のフォローアップなどを検討してください。
Q:ペルソナが複数ある場合はどうすれば良いか?
Answer)ペルソナが複数ある場合は、そのペルソナごとにカスタマージャーニーマップを作成するのが望ましいです。なぜなら、ペルソナが異なれば感情や行動などにも違いが生じるためです。異なったペルソナを1つのカスタマージャーニーマップでまとめてしまうと、記載される情報が複雑になり、正しい改善策を検討できなくなります。
まとめ