クロスマーケティングとは? クロスメディアとクロスチャネルの手法を解説
クロスマーケティングとは、さまざまな施策を組み合わせて相乗効果で広告宣伝やプロモーションの強化を目指す手法です。
組み合わせる施策としては、メディア露出、コンバージョンまでのチャネル構築などが挙げられます。訴求したい商品やサービスと相性がよい組み合わせを考慮して、あくまで相乗効果を獲得できるかを重視するマーケティング手法です。
クロスマーケティングとは
クロスマーケティングとは、2種類以上のメディアを組み合わせることで相乗効果を狙いコンバージョン率を高める戦略のことです。
一般的なマーケティングでは、広告宣伝やプロモーション活動を通じて認知拡大やブランディング効果で商品やサービスの販売を促進することが目的です。一方、クロスマーケティングは、その名のとおり、2つ以上の施策を連動させて相乗効果を発揮することで商品やサービスなどの販売促進につなげる考え方です。
クロスマーケティングの種類
クロスマーケティングとして、主に下記の2種類の手法が用いられます。
- クロスメディア
- クロスチャネル
クロスメディアの手法と効果
クロスメディアは、2種類以上のメディアを連携してメディアAに接触した消費者をメディアBへ誘導するマーケティング手法です。複数のメディアを通じて消費者にメディア横断させることで、商品認知とともに商品に対する興味関心や理解を深めさせるといった効果を期待できます。
こういったマーケティング手法の特徴から、消費者にアクションを促す必要があります。そのためには、消費者に興味を引く企画立案や広告コンテンツの制作が求められます。まずは訴求対象のターゲットになるユーザー属性を設定して、利用するメディアや広告クリエイティブといった方向性を定める必要があります。
クロスメディアで活用する媒体
クロスメディアに使用される媒体は、主に下記のとおりです。
- オンラインメディア
- マスメディア
- OOH(Out Of Home)
オンラインメディアの特徴
オンラインメディアとは、WEBサイト、ソーシャルネットワークサービス(SNS)、動画といったデジタルコンテンツを指します。
オンラインメディアに対する広告出稿費は年々増加しています。2022年に電通が発表した2021年 日本の広告費によると、「インターネット広告費」が「マスコミ四媒体広告費」を2021年に初めて上回っています。広告出稿先のメディアとして好調に推移していて、とりわけ近年では動画広告やソーシャル広告が著しく伸びています。
特にSNSコンテンツは、一般消費者が情報発信する能動性やコミュニティといったユーザー参加型の側面を持ちます。消費者に行動を促すことを狙いとするクロスメディア戦略と相性がよいので、訴求したい商品やサービスとユーザー属性が合致する場合は活用を検討してください。
マスメディアの特徴
マスメディアとは、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4媒体を指し、マスコミ四媒体と呼ばれます。またオンラインメディアの台頭から、旧マスメディアとも呼称されています。
2021年 日本の広告費をみると、マスメディアに対する広告出稿費は近年オンラインメディアに吸収される傾向にあります。その一方でマスに対する出稿費の内訳をみると、テレビ広告が大半以上を占めていて、かつ近年の前年比ベースでもっとも維持率が高く影響力の強さを証明しています。
テレビを中心としたマスの特徴はリーチの長さにあります。長年、娯楽大衆の王者として親しまれてきた歴史がありますので、オンラインメディアでは届かない属性のユーザーを取り入れたいときに効果を発揮します。
事実、2010年代にブームとなったソーシャルゲームを訴求するための広告媒体として、テレビ広告が高い効果を発揮しました。とりわけ、普段スマートフォンでゲームプレイしない層を新規獲得できるという点から、多数のゲームメーカーがテレビ広告に大量出稿を始めた時期があり、広告業界内でも話題を呼びました。
OOH(Out Of Home)
OOH(Out Of Home、アウトオブホーム)とは屋外メディアを指します。主に交通、店舗などに設置されたデジタルビジョンや看板などが主力媒体となっています。そのほかでは、ダイレクトメールや折込チラシ、イベント会場、店頭POPといった媒体があります。
このうち、人が集まりやすい主要都市や主要駅では大々的な広告キャンペーンの一環に採用されるケースが多々あります。駅構内や屋外、車内に設置されたデジタルサイネージの台頭により、インターネット配信を実現して、リアルタイムの情報を広告として出稿できる点も大きな特徴です。
メディアミックスとの違い
メディアミックスとは、複数のメディアに出稿することで認知度を高めるためのマーケティング手法です。認知を広げるために消費者が広告に接触する面積を増やすことを重視しています。
一方、クロスメディアでは、あくまでメディア間の相乗効果を活用して訴求対象の商品やサービスに対する深い理解を促すことを目的としています。
クロスチャネルの手法と効果
クロスチャネルは、複数のチャネル間でデータ共有することでコンバージョン率を高める施策です。そもそもチャネルとは経路を指します。消費者が商品やサービスに到達する経路を用意していないと、どんなに素晴らしい商品であっても購入されません。
例えば、ECサイトを運営している場合、実店舗とECサイトというチャネルがあるとします。消費者は、実店舗かECサイトのいずれに来店しても商品を購入できます。しかし、ECサイトに訪れた消費者は、実店舗で販売されているが、ECサイトで販売されていない商品は購入できません。そこで、実店舗とECサイトの顧客情報や商品在庫データを共有することで、消費者はECサイトで目的の商品を予約販売のシステムを利用して購入できるようになります。
このように、まずは実店舗以外にも、ECサイトというチャネルを作って流入経路を充実させます。そのうえで、消費者が商品やサービスに到達するまでの導線を整備し、消費者がコンバージョンに到達できる環境を整えます。
クロスチャネルで活用する主な経路
クロスチャネルとして、下記のような経路が設置されます。
- 実店舗
- ECサイト
- アプリ
- SNS
- WEB広告
実店舗の特徴
実店舗は、商品やサービスを提供する中核となるチャネルです。
その場で試せる試供品や販売員による説明などのプロモーションで商品の魅力を伝えられます。消費者が自分の目で商品を見てから購入を判断できるといったメリットがあり、商品やサービスによっては相性がよいチャネルです。また、現金で決済できることから、クレジットカードや電子マネーといったキャッシュレス決済を扱わない属性の消費者にとって購入の敷居が低い点も特徴です。
ECサイトの特徴
ECサイトは、オンラインを通じて商品などを提供するチャネルです。
ECサイトを設置する際に、立地条件に制限がないことから実店舗と比較して費用が安価で済むメリットがあります。SEO知識に長けている場合は、効率的に集客することも可能です。その場で手軽に商品閲覧や購入できることから、実店舗の遠方に居住する消費者などもターゲットに設定できます。
アプリの特徴
公式アプリを配信してスマートフォンにインストールさせることで、新たな経路を構築できます。
電通が2022年に発表した7割以上がキャッシュレス決済を利用!シニア×スマートフォンのリアルを調査によると、若年層だけでなく、デジタルに弱いと思われがちな60代のシニア層でさえ、利用率70%を超えているほどスマートフォンが社会に普及しています。
アプリはスマートフォンのホーム画面に設置されるので、より身近なチャネルとして消費者がショップにアクセスできるようになります。さらに、プッシュ通知を利用して商品の新着情報を消費者に伝えることも可能です。そもそも公式アプリをインストールするほどですから、商品やサービスに高い関心を持つ消費者を確保することにもつながります。
SNSの特徴
SNSは商品やサービスの情報を発信して、興味関心を持った消費者をECサイトやアプリに誘導できるチャネルです。
特に、商品の魅力を伝えるうえで有効なのが口コミによる情報拡散です。商品やサービスの情報を発信するだけでなく、利用者の口コミを拡散することでコミュニティも形成できます。
WEB広告の特徴
WEB広告を出稿することでSNSと同様、消費者を直接的にECサイトやアプリへ誘導できます。WEB広告は多種に渡るクリエイティブや商材が開発されていますので、誘導したいサイトやアプリの特性に応じて広告戦略を組み立てられます。
WEB広告の一例として、下記のようなものがあります。
- 検索連動型広告(商品に興味関心が高い属性にリーチできる)
- コミュニティやメディアとのタイアップ広告(リーチしたい属性が多く集まる)
- 動画広告(商品の魅力を訴求しやすい)
- プレイアブル広告(アプリを触らせてインストールを促す広告)
マルチチャネルやオムニチャネルとの違い
複数のチャネルを用意したものの、それぞれのコンバージョン地点が独立している状態をマルチチャネルと呼びます。クロスチャネルは、その独立した複数の経路間でデータ共有して、どの経路からでも消費者がコンバージョンに到達できる仕組みを構築することです。
さらに経路を増やしてチャネル間データの統合が進むと、ブランディングが形成されていきます。「どの経路からでもA社の商品を購入した」と消費者が認知できている状態をオムニチャネルと呼びます。
クロスマーケティングに期待できる効果
クロスメディア、クロスチャネルともに共通していることは、下記のとおりです。
- 相乗効果でコンバージョン率が高まる
- 未開拓の属性にリーチできる
相乗効果でコンバージョン率が高まる
複数の施策や手段を連携することで、消費者に商品への知識を与えることができて、さらに商品を購入する機会の創出につながります。その結果として、コンバージョン率が高まります。
クロスマーケティングでは、あくまで施策を組み合わせることで相乗効果が生まれるか否かが重要です。訴求商品と出稿先のメディアの特性、さらに連動させるメディアの相性まで考慮することが大切です。
未開拓の属性にリーチできる
商品訴求するための出稿メディアを増やせば各々のメディアの利用者に、チャネルを増やせば各々のチャネルの利用者に商品情報や購入の場を広げることができます。施策や手段の連動により、単一では届かない属性に対するリーチ拡大につながります。
リーチ先を考慮する際にもっとも重視したいのは、商品やサービスの新規顧客になる可能性が高い属性かどうかです。まずは商品のターゲットを把握して、その新規顧客を獲得する方法を検討します。そのために宣伝戦略やコンバージョンまでの経路作りが必要です。
クロスマーケティングの具体事例
次にクロスマーケティングの事例をご紹介します。
クロスメディアの具体事例
クロスメディア施策を展開すると、消費者をメディアからメディアに誘導できます。その具体的な事例は、下記のようなものがあります。
テレビCMからWEBCMへ誘導する
もっとも有名なクロスメディアの手法は、テレビCMのぶら下がりでWEBメディアに誘導を促す事例です。
テレビCM内では、商品やサービスを訴求しつつ、あえて「気になる終わらせ方」をクリエイティブ面で演出して「続きはWEBで!」の文言とともにWEBアクセス誘導する手法です。WEBアクセスした消費者に対して、複数回に分けて商品やサービスを訴求することで商品理解を深めさせることができます。
WEBサイトから資料請求へ誘導する
WEBサイトにアクセスした消費者に資料請求を促す事例も代表的なクロスメディアの手法です。
まずはキーワード検索やSNSなどを経由してWEBサイトに到達した消費者に記事文言で商品やサービスを訴求します。記事の最後に、商品やサービスに興味を持った消費者に対して資料請求させることで、改めて紙メディアで訴求して一層の商品理解を深めてもらいコンバージョンを狙います。
イベントと紙メディアのQRコードを経由してECサイトに誘導する
イベント会場で配布するパンフレットのような紙メディアにQRコードを印刷する方法もクロスメディアの手法です。
もともと消費者は興味があってイベント会場に来場しています。そこで消費者に商品やサービスの魅力を訴求したパンフレットを配布すると、消費者はスマートフォンを利用してQRコードを読み込みECサイトなどにアクセスします。
クロスチャネルの具体事例
クロスチャネル施策では、チャネルを拡大してデータを整理することで、消費者をコンバージョンできる環境に誘うことになります。その事例は下記のとおりです。
実店舗の在庫をECサイトで購入させる
実店舗とECサイトの商品在庫データを共有することで、実店舗で在庫状態となった商品をECサイトで販売できます。その結果、実店舗の遠方に住む消費者に対して、ECサイトを通じて実店舗の在庫商品を購入する機会を与えられます。
ゲームアプリ間コラボで相互送客して課金させる
同一の企業で複数のゲームアプリを配信している場合、大型のプロモーション費用をかけずともコラボ企画と称してアプリ間で相互送客できます。
とくに同じ会社内で開発したアプリだと、同ジャンルかつ同システムであることが多々あります。顧客情報のデータ収集につながることに加えて、同ジャンルのアプリに合致する属性の消費者を送客することで確度が高いコンバージョンへの経路を形成できます。
まとめ
クロスマーケティングでは、施策の組み合わせでプロモーションやコンバージョン率が強化されます。そのためには、訴求したい商品やサービスの特性とターゲットの属性を正しく設定していることが前提条件になります。そのうえで、どのようなメディアを連携して訴求していくのかを検討して、合わせて、コンバージョン経路の構築が万全であるかをチェックしてみてください。