テレビCMのGRPとは?GRPの計算方法とTRPとの違い
GRP(Gross Rating Point)とは、一定期間に放送されたテレビCMの視聴率を合計した数値のことで、延べ視聴率と呼ばれます。テレビ視聴率には世帯視聴率と個人視聴率の2つがありますが、GRPでは世帯視聴率をベースに視聴率を計算し、CMを配信する際にどの程度効果があるのか、どの程度の費用がかかるのかを算出する際に用いられます。
テレビの視聴率とは
視聴率とは、テレビ番組やテレビCMがどれくらいの世帯や人に見られているのかという視聴量の大きさを示す尺度のことです。視聴率には世帯視聴率と個人視聴率の2つがあり、目的によって使い分けられます。
- 世帯視聴率:一般的に使われる視聴率。テレビを所有する世帯のうち、何世帯でテレビをつけてたかを示す割合で、世帯数を分母に計算する手法
- 個人視聴率:誰がどのくらいテレビを視聴していたかを示す割合で、世帯内の人の数を分母に計算する手法。視聴者を性別、年齢、職業別に分けて、どのくらい見られていたかを知りたいときに使う指標。
GRPとは
GRP(Gross Rating Point、延べ視聴率)とは、一定期間に放送されたテレビCMの視聴率を合計した数値です。放送したCMの分析や新しいCMを放送する際にどの程度流すかを決める指標として用いられます。GRPは、調査地域でどの程度の世帯がそのCMが放送されたチャンネルをつけていたかを意味していますが、対象は後述する世帯視聴率であるため個人への到達を測る指標とは異なります。
※テレビCMにはタイムCMとスポットCMの2種類があり、スポットCMに対して使われるのがGRPです。タイムCMは企業が個別の番組スポンサーとして出すCMであり、スポットCMとは番組を指定せずに流すCMのことです。「この番組は〇〇の提供でお送りします」というメッセ―が流れることがありますが、これがある場合にはタイムCMであり、これ以外がスポットCMです。
スポットCMの基本的な取引単位はGRP1%あたりのコストです。購入するための料金指標をパーコスト(%コスト)と呼び、GRPとテレビ局毎のパーコストを掛け合わせることでスポットCMの金額が決まるため、GPRがテレビCMの予算に大きく影響することになります。
GRPの計算方法
GRPの計算式は視聴率×CMの本数です。例えば、視聴率10%の番組にCMを1本流した場合のGRPは10%です。ただし、CMは15秒CMを1単位としますので、30秒CMを流した場合には20%となります。実際には複数のCMを出すことになりますので、仮に15秒CM(1単位)を流した場合のGRPの例は次のようになります。
視聴率 | CM本数 | 視聴率 × CM本数 |
10% | 10本 | 10% × 10本 = 100% |
7% | 5本 | 7% × 5本 = 35% |
5% | 3本 | 5% × 3本 = 15% |
150% |
上記では、視聴率10%、7%、5%の番組に対して、それぞれ10本、5本、3本の15秒CMを流しています。それぞれを掛け合わせた数値を合計しますので、GRPは150GRP(150%)と出てきます。ここにパーコストを掛けたものが広告費用になるため、仮にパーコストを5,000円の場合には 150 × 5000 = 75万円が広告費用です。
GRPはテレビCMがどの程度の人にリーチしたのかを測る重要な指標ですので、今回は1000GRPを投下する、次回は2000GRPを投下するというような形で使われます。
実際のCM価格はテレビ局側の事情とスポンサー側の要望を照会し、交渉によって決まります。パーコストは局ごとに変わりますが、年末年始、クリスマスなどイベント期間はCM発注が多くなるためパーコストが高騰することがあります。また、出稿エリア、ターゲットにパーコストを掛け合わせることでGRPの投下に対してどの程度のターゲットにリーチできるのかを総合的に判断して予算管理する必要があります。
GRPは大きければ多いほどCMとしての効果が高いものといえますが、一般的なCMを認知してもらうという基準では500GRPが1つの目安とされています。ただし、放映時期、エリア、話題性などで効果は大きく変わるため、予算と商品特性に応じたGRPを決めるようにしてください。
世帯視聴率の計測方法
GRPには世帯視聴率が使われます。世帯単位での計測となりますので、5世帯のうち2世帯が視聴していれば世帯視聴率は40%です。
現代では1世帯に複数のテレビを所有していることもあります。このような場合、1世帯で何台のテレビを所有していても特定の番組を見ていれば世帯視聴率としてカウントされます。例えば、5世帯があり、1世帯はテレビを3台所有し、うち2台で特定の番組を見ていたとしても視聴率が増えることはありません。下図の例では5世帯のうち2世帯が見ているので世帯視聴率は40%のままです。
しかし、現代では1人1台のテレビを所有するケースもあるため、世帯視聴率だけでは正確な現状把握することは難しくなってきています。そのため、テレビ業界では世帯視聴率以外にも個人視聴率やタイムシフト視聴率の数値も参考にするようになっています。
個人視聴率
個人視聴率(Persons Gross Rating Point、PRP)とは、個人の視聴数にもとづいて算出した視聴率のことです。上図のように5世帯のうち、3世帯でテレビを見ていたとします。この場合の世帯視聴率は60%ですが、世帯人数の合計は8人であり、うち4人が視聴していますので個人視聴率は50%と出てきます。
状況は同じであっても計測方法を変えるだけで視聴率が10%も変わることもあり、個人視聴率のほうがより実態に合った数値を出すことができます。また、個人視聴率は調査対象の年齢層、性別、職業などをセグメントして割り出すことができますので、30代女性の個人視聴率のような数値を算出しテレビCMの放映の参考にすることもあります。
タイムシフト視聴率
タイムシフト視聴率とは、特定の番組をどの程度の世帯が録画し、7日間の間に視聴したかを示す数値です。分母は世帯になりますので世帯視聴率に近いものがありますが、リアルタイムで視聴できなかった世帯の数値を拾うことができるため番組の人気度合いを測ることができます。特に放映時間帯次第では外出や勤務中など視聴できなかった場合でも、タイムシフト視聴率であれば計測可能ですので世帯視聴率と比較して大きく数値が伸びることもあります。
視聴率の調査方法
視聴率の調査方法はピープルメータシステム(PM)、オンラインメータ、日記式アンケートの3種類があります。地域やエリア特性によって取られる手法が変わりますが、計測できる数値が異なりますので、それぞれを直接比較することはできません。
ピープルメータシステム(PM)
ピープルメータシステム(PM)は、ピープルメータと呼ばれる測定器を設置して世帯視聴率と個人視聴率を計測する方法です。調査協力を受けた個人宅に設置され、家庭内の最大8台までのテレビ視聴状況を測定することができます。測定機能の付いたリモコンを操作することで誰が、いつ、どの番組を見たかを測定できます。
ピープルメータシステムは関東、関西、名古屋、福岡地区で採用されていますので、これ以外の地域では次に説明するオンラインメータシステムか日記式アンケートが用いられます。
オンラインメータシステム
オンラインメータシステムとは、オンラインメータと呼ばれる測定器を設置してデータ通信回線(インターネット回線または電話回線)を通じて視聴率を計測する方法です。オンラインメータシステムではテレビのON、OFFを元に計測するため世帯視聴率しか計測できません。ピープルメータは手動で測定することになりますが、オンラインメータの場合は自動でデータ集計できる点で異なります。
日記式アンケート
日記式アンケートとは、ランダムに選ばれた世帯に調査票を届け、テレビの視聴情報を記入してもらうことで算出する方法です。アナログな方法ではありますが、個人視聴率を算出することが可能です。民法2局以下のエリアでは、この日記式アンケートのみが用いられます。
GRPとTRPとの違い
TRP(Target Rating Point)とはターゲットの延べ視聴率のことです。GRPは世帯を基準に算出しているのに対し、TRPは個人を基準に算出し、かつ、広告主のターゲットに限定されている点でGRPと異なります。2018年4月からは関東地域のスポットCMはGRP単価ではなくTRP単価で実施されることになりましたので、今後はGRPよりもTRPが重要な概念となることが考えられます。
※TARP(Target Audience Rating Point)と表現することもありますが、TRPと同じ意味です。
ターゲットごとの呼称
男性 | 女性 | |
12歳以下 | C(child)層 | C(child)層 |
19歳以下 | T(Teen)層 | T(Teen)層 |
34歳以下 | M1(Male-1)層 | F1(Female-1)層 |
49歳以下 | M2(Male-2)層 | F2(Female-2)層 |
50歳以上 | M3(Male-3)層 | F3(Female-3)層 |
GRPは世帯視聴率、TRPは個人視聴率をベースに計算していることが異なり、個人の計測ができることで、よりターゲットを限定しやすくなるため、TRPが取り入れられています。以下は総務省の人口推計(2023年(令和5年)10月1日現在)のデータです。
男性 | 女性 | |
0歳~12歳 | 6,164 | 5,873 |
13歳~19歳 | 3,912 | 3,716 |
20歳~34歳 | 9,818 | 9,275 |
35歳~49歳 | 12,151 | 11,776 |
50歳以上 | 28,448 | 33,223 |
(単位:千人)
上記の表を見るとM1層とM3層、F1層とF3層には約3倍の開きがあることがわかります。1GRP(視聴率1%の番組に対してCM1本を放映)を購入した場合、ターゲットをM1層にしてもM3層にしても視聴率が変わらなければ視聴数は約3倍変わることになります。これはCM本あたりの視聴単価が3倍下がることを意味します。このようにTRPはターゲットを特定することで、より効果的なCM配信をするために用いられます。
コア視聴率とCMを流す時間帯
コア視聴率とは、商品やサービスの購入意欲の高い層の視聴率のことです。具体的には13歳〜49歳までの層の視聴率が該当し、T層、M1層、M2層、F1層、F2層のことをまとめてコア層と呼びます。コア層は幅広い年齢層で構成されており、ファミリー層になることが多いため、コア層をターゲットとすることで高いCM効果を見込むことができます。
しかし、コア層以外にもターゲットを分類して配信する方法は複数あります。CMを流す時間帯は線引きと呼ばれる、スポットCMを配信する際に受け取るスケジュール表を用いて決定されます。
全日型(ターゲット:全世代)
全日型はテレビが放映されるすべての時間帯で満遍なく放送されるタイプです。すべてのターゲットに対して情報発信ができ、生活習慣やターゲットを絞るというよりもCMの露出量を増やすという考え方で選択されます。
ヨの字型(ターゲット:成人男女、主婦)
ヨの字型は平日の朝、昼、夜と土日に放送されるタイプです。主婦層に向けて昼間に放送したり、職場での昼休みを狙った際に選択されます。
コの字型(ターゲット:成人男女)
コの字型は平日の朝と夜、土日に放送されるタイプです。出社前や登校前の時間帯を加えている社会人や学生に対して有効な選択です。
逆L字型(ターゲット:成人男女若者)
逆L字型は平日の夜と土日をターゲットに放送されるタイプです。視聴率が高い時間帯に絞っているためコストは高めに設定されています。
深夜のみ
視聴率というよりも限定された時間帯でのCM露出を狙った場合に取られる選択肢です。音楽関係や映画関係など、特に若い世代に向けて情報発信する際に選択されます。
まとめ