ブランド戦略とは?取り組むべきタイミングや立案手順などを徹底解説
競合他社の商品に埋もれたり、価格競争などに巻き込まれて困っていませんか。そのようなときに役立つのがブランディングです。ブランド戦略を立てることができれば、その他多数の商品から差別化された特別な企業・商品として顧客に認知されます。
SEOにおいて上位表示されることもブランド効果があります。
ブランド戦略とは
ブランドとは売り手から買い手への約束のことです。そして、ブランド戦略はその約束を市場に知らせ、根付かせるための長期的・複合的な取り組みのことを指します。
約束というのは、例えばこのロゴがついている商品は、一定の基準を満たしている商品であるというようなメッセージです。この企業が発するメッセージを顧客が認識している場合、ブランド戦略がうまくいっていると判断できます。
ブランド戦略の重要性が高まっている背景
市場で類似商品があふれるようになると、次第に自社の存在感が薄れてきます。顧客に認知してもらえない、たとえ認知されたとしてもその他多数の商品と何が違うのか分かってもらえないという事態になります。
このように市場に商品があふれるようになったため、大企業だけでなく中小企業でも今、ブランド戦略の価値が見直されるようになってきました。
ブランド戦略に取り組むべき4つのタイミング
ブランド戦略が大切と分かっていても、いつのタイミングで取りかかれば良いのかと頭を悩ませているのではないでしょうか。そこでここでは、企業がブランド戦略に取り組むべき適切なタイミングを整理してお伝えします。
脱・安売りを目指すとき
競合他社が増え始めると、必ず価格競争が発生します。このような状況になると、資本力のある大企業だけが生き残ります。こういった価格競争から脱するための1つの手段はブランド戦略を立てることです。
商品を生まれ変わらせたいとき
ブランド戦略を考えるべきタイミングの1つは、自社商品をギフト商材として生まれ変わらせたいときです。ギフト商材として生まれ変わらせることができれば、高価格帯で販売できるようになり利益率が上昇します。
輸入商材を日本市場にフィットさせたいとき
輸入商品を扱っている会社であれば、それを日本向けに改良して販売したいと考えることが多いと思います。その場合も、ブランド戦略を考えるべきタイミングです。輸入商品を日本市場でどう認知してもらうのかが、販売数・価格・収益に大きく影響します。
採用活動を強化するとき
フラッグシップになるような企業の商品をつくることができれば、採用活動が楽になります。企業としての知名度が向上するからです。そこで、優秀な人材を集めたいと思ったときは、ブランド戦略に取り組む適切なタイミングの1つです。
ブランド確立によるメリット
自社がブランド戦略に取り組み、市場に独自の存在として認知されれば、どのようなメリットがもたらされるのかについて解説します。
安売りが不要になる
ブランディングとは、自社が取り扱う商品などに好感度やインパクトを加えることです。ブランディングに成功すれば、無数に並んでいるライバル企業の商品・サービスと比較して、自社のものだけが顧客にとって特別に感じられます。結果としては、安いから選ばれるのではなく、少し割高でもこの企業の商品なら納得できるというパワーを生み出します。
セールスが不要になる
ブランドが認知されるようになれば、商品力で顧客を引きつけられるようになるためセールスが不要です。ブランド戦略が機能するようになれば、マスコミが自社の商品を扱ってくれますし、口コミも起こりやすくなるからです。
ブランド戦略構築のポイント
ブランド戦略を構築するうえでの重要ポイントを4つ解説します。
他社との差別化
ブランド戦略の究極の目的は差別化です。いい換えれば顧客が次のような認知をすることです。
- 他社の商品ではなく、この企業の商品でなければいけない
- 他者商品だと不安だが、この企業の商品なら安心できる
こういった競合との違いを顧客に認識してもらうことが、ブランド戦略の最終目的です。
企業活動の一貫性
ブランド戦略を決めることができれば、企業活動に一貫性をもたらすことができます。例えば、接客、WEBサイトのメッセージ、SNSへの取り組み、商品の価格帯、電話応対などが1つのブランド戦略に基づいてなされます。
例えば、富裕層向けの高級商品を扱い、デザイン性のよいものを訴求するというブランド戦略が決まれば、WEBサイトで発信する情報も、接客姿勢もそれに応じたものにします。
この点が一致しないとブランド戦略はうまく機能しません。
デザインを重視
ブランド戦略は、デザインの要素を考慮する必要があります。商品のロゴや梱包、それに伴うカラーを的確なものにしなければ顧客に適切なイメージが伝わらないからです。
ただ、闇雲にデザイン性だけを高めたり、外注に丸投げするのは控えるようにしてください。自社が設定しているペルソナに対して、どうすればデザインで喜んでもらえるのかを考えます。
ストーリーを語る
ブランディングにはストーリーが必要です。ストーリーは、それを聞いた顧客が自社や商品に対して特別な感情を持ってくれるものです。このストーリーを聞くことによって、この価格は決して高くないと思えたりします。ストーリーには具体的に次のような種類があります。
- 商品名の由来
- 商品開発の苦労話
- 製造過程で関わってくれている人たちのこと
- 今だから笑える開発と営業の失敗談
- お客様との感動体験
このようなトピックで自社だけのユニークなストーリーを考えてください。
ブランド戦略立案のための5ステップ
ブランド戦略を立案しようと思ったら、具体的にどのような手順で知り組めばいいのでしょうか。ここでは5ステップにわけて解説します。
Step1.何をブランディングするのか目的を決める
ブランド戦略を立案する場合、最初に何をブランディングするのかを決めます。ブランディングの対象になるものは次の4つがあります。
コーポレート・ブランディング
ブランディングの対象が、企業そのものになることがあります。会社自体の見せ方を変えたり、強化したりするなどのことが考えられます。企業ブランディングに成功すれば、人材の採用から、商品・サービスの販売までが非常に楽に進められます。
パーソナル・ブランディング
誰か個人をブランディングすることがあります。いわば会社・商品の顔として顧客にイメージしてもらうようにします。例えばソフトバンクグループ代表の孫正義氏などは、Twitterで積極的な発言をおこなうことによって知名度を上昇させ、結果として企業全体にプラスのイメージをもたらしています。
商品・サービスブランディング
もっとも一般的なブランディングの対象は商品・サービスです。商品・サービスの価値を高く見せ、脱・安売りなどを目指します。例えば扇風機市場は以前、価格競争が激しく差別化も難しい状況でした。しかし、ダイソンのDyson Pure Coolが登場し、圧倒的な商品ブランド力により、高価格帯で販売することに成功しています。
地域ブランディング
地元密着型のビジネスをしていたり、観光業などを営んでいる場合、市町村や名所、産地、商店街などがブランディングの対象になることがあります。
例えば香川県高松市丸亀町商店街は、以前はシャッター通りの商店街で1日あたり通行者が9500人まで落ち込んでいました。しかし、デザイン・ビジネス・スキームの3ポイントを的確に組み合わせたブランディングを行い、現在2万5000人まで上昇しています。
Step2.ポジショニングの確立
ブランディングの世界ではよく「そこに旗を立てる」といわれます。つまり、市場の中でポジショニングを確立することが大切です。
そこで一度、ブランディングしようと思っている会社や商品をポジショニングマップで確認してみてください。顧客からみて、自社や商品がどのように認知されているのかを確認すれば、目指すべき方向性が掴めるからです。
Step3.ブランドメッセージの構築
何をブランディングするのかを決めたら、次に顧客にどう認知してもらうのかを決めます。
例えば映画スターウォーズでは、ジョージルーカスが「これはスペース・サムライ・ムービーだ」ということを告げ、そのメッセージが周囲の人に刺さることで大ヒットとなりました。
Step4.デザインに取り組む
ブランド戦略においてデザインは重要です。ブランドメッセージを適切な見込み客に伝えるには、デザインが果たす役割が大きいからです。
考え方としては、次のとおりです。
- ブランドメッセージを表現するために効果的なデザインは?
このような視点で適切なデザインを構築していきます。ただ、自社でデザインに取り組むことは、それに強い社員がいれば別ですが、基本的には良い成果に結びつきません。そこで専門会社に外注するようにしてください。ブランディングに長けたデザイン会社に依頼することで、ブランド戦略の成功をより確実なものにしてくれます。
Step5.コミュニケーション戦略の選定と実行
ブランドは顧客とのコミュニケーション活動を通じて認知してもらいます。コミュニケーション手段としては、下記のようなものがあります。
実店舗
実店舗では次のようなコミュニケーション手段・媒体があります。
- ディスプレイ
- POP
- ポスターやリーフレット
- ユニフォーム
- 販売員との接客
インターネット
WEBマーケテイングに取り組む企業の場合、次のようなコミュニケーション手段・媒体があります。
- WEBサイト
- SNS
- YouTubeやTikTokでの動画
- メールによる顧客対応
- WEB広告
メディア関連
広報などを通じて、ブランディングをおこなう場合、次のようなコミュニケーション手段・媒体があります。
- 雑誌・新聞
- TV・ラジオ
- 著名人からの推薦
印刷物
オフラインでのブランディングを考える場合、次のようなコミュニケーション手段・媒体があります。
- パンフレット
- ポスターやチラシ
- 商品パッケージ
- 名刺や会社用封筒
- 営業時のプレゼン資料
以上、こういったコミュニケーション方法を用いて自社のブランド認知を高めていきます。
ブランドエクイティを高める3つの取り組み
本来、ブランドとは形のないものですが、これを証券・不動産・機械設備などと同様に1つの資産と見なし、それを高めていくことをブランドエクイティといいます。
ブランド戦略の発展的な取り組みとして、ブランドエクイティを高める3つの取り組みをお伝えします。
ブランドアーキテクチャー(ブランド体系)に取り組む
自社内で複数のブランドを構築した場合は、それらの役割を明確にし、整理する必要があります。
これをしなければ、ユーザーがブランドの区別をつけられなくなりファンの喪失につながるからです。逆にブランドアーキテクチャーを適切におこなえば、相乗効果で多様なユーザーを自社のファンにすることができます。
ブランドアライアンスに取り組む
同程度のブランド力を持つ企業とジョイントすることをブランドアライアンスといいます。共同で新商品を開発するなどのことが考えられます。また、それぞれの販売ルートを活用できることなども大きなメリットです。M&Aとは違って、企業同士が統合されるわけではなく、あくまでも提携関係に留まります。
ブランドエクステンションに取り組む
自社が築いたブランドを拡張することをブランドエクステンションといいます。
例えば、自社が開発した会計ソフトがヒットして、一定のブランドを構築できているとします。この会計ソフトは元々一般企業用としてつくられたものです。そこで、この会計ソフトと同じ名前で今度は個人事業主向けに改良して販売するなどの取り組みは、ブランドエクステンションの例です。
ブランド戦略を実施するときの注意点
ブランド戦略を実施する際に注意点が1つあります。それは最後の10%のツメです。どこの会社でも周囲の企業の力を借りるなどして9割くらいブランディングを完成させることはできます。
しかし、明暗を分けるのは最後の1割へのこだわりです。ポスターや広告、接客やWEBサイトでのメッセージなど、細部にこだわる必要があります。具体的には下記のような項目です。
- 梱包する際の段ボールの印刷
- ハイクオリティなWEBサイトの写真
- 開発者の顔
- 印刷物のフォント
- 文章の語り口
1つずつ解説します。
段ボールについては、こだわっている企業は少ないです。しかし、顧客が商品を受け取る第一印象は段ボールで決まります。デザイナーと一緒に、顧客が自社のブランドを認知してくれやすいデザインを検討してください。
WEBサイトの写真については、何枚も撮影しその中から自社ブランドにぴったりな写真を選定するようにしてください。開発者の顔は、可能な限り印刷物やWEBサイトに公開します。このように作り手の顔が見えることで顧客は親しみを持ってくれるからです。
印刷物のフォントや文章の語り口は、統一感を持って選定するようにしてください。構築したいブランドとズレていると印象が悪くなってしまいます。どれも「こんなことは顧客に気づかれないのではないか」という疑問もあるかも知れません。たしかに顧客の10人に1人しか気づかない点かも知れませんが、それでもその細部にこだわって改善を繰り返してください。これが顧客に選ばれるブランドになるための注意点です。
ブランド戦略の成功事例
ここではブランド戦略の成功事例をお伝えします。
セブンプレミアム
セブン&アイホールディングスは2007年にセブンプレミアムというプライベートブランドを開始しました。開始当初は49アイテムでしたが、2023年1月現在では約4000アイテムまで増えています。2009年にはコミュニティマーケティングを活用し、プレミアムライフ向上委員会を設立。2010年にはセブンゴールドを販売するようになりました。ロゴやパッケージなどのデザインにも凝り、セブンプレミアムの販売額は2021年時点で1兆3千億円(累計で13兆円)を超えています。
Googleは、2015年にドローン、自動運転車、ウェアラブルなどのプロジェクトに使う予算の透明性を図るために、親会社アルファベットのもとで再ブランディングを行い新しい企業体を作り出しました。Googleは、テクノロジーを使って、個人がより多くの情報を得て、つながり、組織化されたことを実感できるようにすることを使命としています。
Googleの様々なサービス(マップ、クローム、Google Home、YouTubeなど)にユーザーは素早くアクセスすることができます。
Googleのマーケティングは、製品の技術的な側面に焦点を当てるだけでなく、そのおかげでユーザーの生活が豊かになることをブランディングで強調しています。このような人間味のあるブランド戦略が、「Google」のブランド戦略です。
Googleは、自問自答することでブランドを維持しています。どうすれば、ユーザーが世界とつながっていると感じられるかをブランド戦略の中心概念に置き、現在の大企業まで成長しました。
まとめ