ブランドアライアンスとコ・ブランドとは?メリット・デメリット・成功のポイント
ブランドアライアンスやコ・ブランドといったブランド提携はビジネス拡大に有効で、実施したいと考える企業も多数です。しかしながら、両者には多数のメリットがある反面、デメリットもあります。実施しようとするも、実行に移すべきか悩んでしまうケースは多くあります。
適切な判断を行うためには、ブランドアライアンスやコ・ブランドの基本的知識の習得が大切です。
ブランドアライアンスとは?
ブランドアライアンスは、それぞれのブランドの認知向上や製品の販売提供を目的とした企業間契約です。
ブランドアライアンスの種類には、以下の3つがあります。
- コ・ブランド
- ブランドライセンス
- クロスマーケティング
ブランドアライアンスの目的は双方のブランド価値・利益・認知度の向上です。それぞれ方法は異なりますが、複数社間の経営資源やターゲットを共有し、目的達成を図る点で両者は共通しています。
コ・ブランド
コ・ブランド(共同ブランド)とは、1つの製品に対し2つ以上のブランド名を使用するブランド戦略です。
その一例に、DELLのラップトップの販売やマーケティング活動が挙げられます。実際に、DELLの販売活動やラップトップPCには、IntelやMicrosoft Windowsのロゴステッカーが用いられており、1つのパソコンに複数のブランドが明示されているとわかります。
業種が異なるブランドによる協業で、新たな価値の提供やイメージアップを行えるのがコ・ブランディングの魅力です。
ブランドライセンス
ブランドライセンスは、販売・提供する商品やサービスの名前にブランド名の使用許可を与え、その対価として使用料を得るものです。
その一例に、オリエンタルランド(東京ディズニーランド)がディズニー・エンタプライゼズ・インクからブランド名の使用ライセンスを受け、運営している事例が挙げられます。
クロスマーケティング
クロスマーケティングは、両社のブランドの宣伝を目的とした形態です。
一例に、A社はB社が提供するブランドやサービスのクーポンを発行し、販促活動を行い、B社はダイレクトメール等でA社が販売する商品の宣伝をするケースが挙げられます。
ブランドアライアンスのメリット
ブランドアライアンスのメリットは多くあります。
- それぞれの知識やノウハウを共有できる
- コストを削減できる
- 販売層を拡大できる
以下の見出しでそのメリットを解説します。
それぞれの知識やノウハウを共有できる
ブランドアライアンスは複数社間での協業関係です。そのため、下記のようなリソースを共有可能です。
- 知識
- 人材
- 資金
- 設備
両社がこれまで持っていたリソースや価値観を共有すれば、前例のない新しい商品やサービスの開発、価値観の獲得も期待できます。
例えば、ベンチャー企業が大手企業とブランドアライアンスを組むことで以下のような変化が起こりえます。
- 大手企業の充実した資金や販路、人材、技術を共有することによるベンチャー企業の販路拡大
- ベンチャー企業のスピード感、トレンドに対する感度の高さ、柔軟性に触れることによる大企業の独自性の強化
コストを削減できる
ブランドアライアンスにより知識・資金・人材を共有した結果、コストを削減できる可能性が生まれます。
例えば、大規模発注を行うことで、割引を受けられるようになるケースがその一例で、ブランドアライアンスにより削減できる費用は様々です。
- 営業費用
- 開発費の節約
- 配送費
経営リソースの共有により、あらゆる方面でのコストカットが可能となります。
販売層を拡大できる
ブランドアライアンスにより、それぞれの顧客層への販促活動が可能になります。
- 違うエリア(地方、海外の販路)
- 違う年代の顧客層
- 異なる業界・部署の顧客層
- 異なる規模の企業(エンタープライズ、スモールビジネス)
新しい顧客層への販促活動の結果、増益や認知範囲の向上を見込めます。
ブランドアライアンスのデメリット
ブランドアライアンスには多くのメリットがある一方、デメリットもあります。
- 情報が漏洩する可能性がある
- 事業運営が複雑になる
以下の見出しで、デメリットを解説します。
情報が漏洩する可能性がある
ブランドアライアンスには情報が漏洩するリスクがあります。例えば、複数社間での技術開発の結果、自社の技術が流出してしまい、市場での独自性が失われるケースが一例です。
ブランドアライアンスはあくまで一時的な協力体制にすぎません。後にも述べますが、共有する情報の絞り込みや秘密保持に関する取り決めなどを行い適切な情報管理を行うべきです。
事業運営が複雑になる
ブランドアライアンスは事業運営が複雑になりがちです。
複数社での事業運営となるため、意思決定やコミュニケーションが円滑にならず、責任の範囲が明確でないがためにトラブルが起こるケースがあります。
また、企業間での優位性が異なり、公平な関係性を維持しにくいケースも想定されます。暗黙の領域で見えない主従関係があるために、得られる利益が著しく偏るなど、一方的な関係性になってしまうケースです。
後にも述べますが、契約段階での詳細な打ち合わせとアライアンスガバナンスで対策すべきです。
ブランドアライアンスを行う流れ
ブランドアライアンスを行ううえでの流れは以下の通りです。
- アライアンスを行う目的を明確化する
- パートナー企業を選定する
- パートナー企業と協議する
- 契約書を作成し契約締結する
以下、流れを解説します。
アライアンスを行う目的を明確化する
ブランドアライアンスを行う目的を明確にするには、自社の状況とこれからのビジネスプランの深堀りが欠かせません。
ヒト・モノ・カネ・ノウハウ・技術や情報など、これからの目標に向けて何が足りないのかを整理すべきです。
整理した情報から自社に合ったアライアンス企業を定義と、適切なパートナー選定が肝要です。
パートナー企業を選定する
パートナー企業を探す方法には、自社で公募する他にもいろいろな方法が考えられます。
- 金融機関や弁護士など第三者からの仲介
- 経営者向けコミュニティサイト
- マッチングサービス
- 業界団体
- 商工会議所
「アライアンスを行う」で述べた、自社の目的と合致しているかや相手企業の経営状況を鑑みて選定するべきです。
パートナー企業と協議する
パートナー企業が見つかったら、具体的な契約について協議をしていくこととなります。
パートナー企業のニーズに合った提案を行い、お互いのメリットの有無を確認するのが最優先です。
この時点から、自社の技術や業界の状況をパートナー企業へ説明することも考えられます。秘密保持契約を結んでおくなど、情報管理も徹底するべきです。
契約書を作成し契約締結する
パートナー企業とブランドアライアンスを行うこととなったら、具体的な契約手続きに入ります。
- 業務範囲
- 契約期間
- 解除方法
- 責任の範囲
- 情報の管理方法
上記の項目などを確認した上での、疑問点の修正と事前協議に沿った契約締結が大切です。
ブランドアライアンスやコ・ブランドを成功させるには?
ブランドアライアンスやコ・ブランドを成功させるために重要なポイントは以下の通りです。
- それぞれの目的を確認する
- 情報の取り扱いに留意する
- アライアンスガバナンスを行う
- 信頼関係を構築する
以下の見出しで解説します。
それぞれの目的を確認する
「企業のイノベーション・企業間アライアンスに関する動向調査」によると、アライアンスにより期待以上の成果を出せた企業の多くは、「アライアンスの目的が一致している」「ビジョンが似ている」ことが成功の要因と考えているということでした。
このことから、アライアンスパートナーと共同し、躍進するには双方の目的の一致が大切であるとわかります。
目的が合致したブランドアライアンスを行うには、自社の目的の深堀りを行うとともに、他社の目的の理解も大切です。
パートナー企業選定時に、今後実現したいことやビジネスプランを確認し、自社の考え方と合致しているか判断しましょう。
参考:企業のイノベーション・企業間アライアンスに関する動向調査
情報の取り扱いに留意する
ブランドアライアンスでは情報管理が大切です。適切な情報管理ができずに、自社の機密情報や技術ノウハウが流出することは当然避けるべきです。
- 秘密保持契約を行う
- 伝えてもいい情報とそうでない情報を区別する
なお、秘密保持契約を結ぶ際は、経済産業省が作成している雛形を活用するのも効果的です。
契約条項の確認やおおまかな内容把握に有効です。
参考:各種契約書等の参考例(第4 業務提携の検討における秘密保持契約書の例より)
アライアンスガバナンスを行う
アライアンスガバナンスを行い、企業間のコミュニケーションや責任の範囲を定めることは重要です。
「アライアンス・ガバナンスがアライアンス成果に与える影響」によると、アライアンス成果を向上させるためには、詳細なアライアンス契約書と明確なプロジェクト組織体制がアライアンス成果を高めるうえで重要であるということでした。
このため、アライアンス契約時には契約条項に加えて組織体制について明確に規定するべきです。
参考:(43)アライアンス・ガバナンスがアライアンス成果に与える影響
信頼関係を構築する
ブランドアライアンスでは、パートナー企業との信頼関係構築も大切です。
同じく、「アライアンス・ガバナンスがアライアンス成果に与える影響」によると信頼関係やコミュニケーションによる関係的なガバナンスは限定的ではあるものの、アライアンス成果にプラスの影響を及ぼすということでした。
企業間でのやり取りといえども、究極的には人と人とのやり取りであることに変わりありません。そのため、柔軟で好感を得る対応が重要です。
ブランドアライアンスの成功事例
ブランドアライアンスは企業間の契約によるブランドイメージ向上施策です。
以下の見出しでは、その具体的な成功事例をご紹介します。
AppleとNikeによるブランドアライアンス事例
2006年、NikeとAppleはNike+ipod Sport Kitを販売しました。シューズにセンサーを取り付け消費カロリーや運動時間を見える化し、音楽も楽しめる当時としては画期的な商品でした。
Nike+ipod Sport Kitはスマートシューズ市場の先駆けであり、発売当初から人気を博するデバイスとなったと言われています。
「運動」と「音楽」という全く異なる分野が合わさった、真新しい商品で成功を掴んだ事例といえます。
AppleとMastercardによるブランドアライアンス事例
2014年にリリースされたApplePayは、クレジットカードの持ち歩きを無くせるスマホ決済サービスです。
そんなApplePayの最初のクレジットカードキャリアとなったのがMastercardで、先行的にMastercardユーザーがApplePayを利用できる流れとなりました。
Appleには決済手段確保のメリットがあり、Mastercardには利用者の確保や最先端を行く企業との関係作りができた事例といえます。
ブランドアライアンスに関するよくある質問
Q:ブランドアライアンスによく似ている用語は?
Answer)ブランドアライアンスによく似ている用語に、アライアンスがあります。
アライアンスは、企業間で行う業務提携を指す用語で、ブランド認知の向上を目的としたブランドアライアンスはアライアンスの一種といえます。
さらに、アライアンスに似た言葉にM&Aがあります。
アライアンスが企業間で行う資本・技術・業務提携であるのに対し、M&Aは複数の企業が買収されたり合併する行為で、経営権の移転を伴います。アライアンスでは経営権の移転は伴わず、両者はこの点で異なります。
Q:ブランドアライアンスを成功させるために、他に気をつけるべきことは?
Answer)ブランドアライアンスを成功させるための注意点には、記事内で説明したもの以外に以下が挙げられます。
- 提携前に収支計画を立てる
- 事業のマイルストーンを設定し、進捗管理をする
- 事業のアクションプランを設定する
- 弁護士・会計士・コンサルタントといった専門家の意見を活用する
- 単独の組織を形成し、意思決定を行う
失敗を避け、適切なブランドアライアンス実施を行うために上記の注意点も要確認です。
参考:企業のイノベーション・企業間アライアンスに関する動向調査(株式会社NTTデータ経営研究所)
Q:他企業の業務提携やブランドアライアンスの成功事例を調べるには?
Answer)経済産業省が運営している中小企業向け補助金・総合支援サイトのミラサポPlusが便利です。こちらからアクセスし、「事例を探す」をクリックし、気になる条件で検索すれば、他社の協業事例を閲覧可能です。
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まとめ