バンドリングとは?アンバンドリングとの違いやメリットを解説
バンドリングとは、複数の製品やサービスをひとまとめにして一つのパッケージとして提供する販売戦略です。近年ビジネスおよびマーケティングの分野で注目される手法で、いまやたくさんの企業がこの戦略を活用し、利益を最大化しています。
中でもデジタル商品やサービスの提供においては、とくに有効な手段として使われており、各社が創意工夫によってしのぎを削っているのが現状です。
一方で「アンバンドリング」という逆の戦略も存在しており、それぞれの特徴が異なるため、適切な選択が求められることもあります。
バンドリングとは?
「複数の商品やサービスをひとつのパッケージとして提供し、顧客にまとめて購入させる販売戦略」のことを指します。
異なる商品を組み合わせてセット価格を設定することで、単体購入よりもお得感を演出し、消費者の購入意欲を高める狙いがあります。実際に家電やソフトウェア、さらには通信サービスなど、さまざまな業界で広く採用されています。
たとえばインターネットプロバイダがインターネット回線とテレビ、電話サービスをセットで提供するプランなどは、典型的なバンドリングの一例です。これにより顧客は複数のサービスを個別に契約する手間を省けます。そして企業側としても、複数のサービスをまとめて買ってもらうことで、顧客の離脱を防ぎやすくなります。
またセット価格が単品購入よりも割安に見えるため、顧客がコストパフォーマンスを高いと感じることから、購入率が向上する効果も期待できます。さらには、あまり売れ行きの良くない商品を人気商品と組み合わせて販売することで、両方の売上を伸ばせるというメリットもあります。
このようにバンドリングは企業にとって、売上増加や在庫管理の効率化にもつながるだけでなく、顧客にとっても時間とお金を節約できる利点があります。
アンバンドリングとの違いは?
バンドリングとアンバンドリングは、まったく逆の手法であり、大きな違いがあります。
アンバンドリングとは、「本来セットで提供されている商品やサービスを個別に分けて販売する手法」のことを指します。顧客が自分の必要な商品やサービスだけを自由に選んで購入できる点がメリットです。
たとえば本来「インターネット回線+テレビ+電話」がセットで提供されていたものを、「インターネットのみ」「テレビのみ」で契約可能になるといった具合です。
一方、バンドリングは複数のアイテムをまとめて顧客に一括で提供し、金銭的かつ時間的なお得感を全面に出した、企業側の売上向上を狙う手法です。
なので両者の違いは、消費者の選択の自由度とコストパフォーマンスに対するアプローチがまったく対照的という点です。
バンドリング戦略の具体例3つ
具体例として代表的なのが、以下の3つです。
- パソコンのセット販売
- モバイルWi-Fiとスマホのセットプラン
- ファーストフード店のセットメニュー
それぞれ順を追って紹介します。
パソコンのセット販売
ハードウェアとソフトウェア、周辺機器などその他もろもろを組み合わせ、まとめて提供する典型的な一例です。
たとえばパソコン本体に加えて、オフィスソフトやウイルス対策ソフト、プリンター、スキャナーなどの周辺機器を一緒に販売することで、顧客はそれぞれを別々で購入する必要がなくなります。
セット販売では、多くのケースで実際に「個別に購入する場合よりも価格が割引される」ため、コストパフォーマンスを感じやすいのが特徴です。また顧客が個別に商品を選ぶ手間を省くことで、購入決定までの時間を短縮し、ストレスを軽減する効果も期待できます。
加えて企業側にとっては売上を一度に上げるチャンスとなり、在庫管理の効率化にも寄与します。ちなみにこういったセット販売は季節ごとのキャンペーンや新製品の発売時に活用されることが多いです。
モバイルWi-Fiとスマホのセットプラン
モバイルWi-Fiとスマホのセットプランは、いまやスタンダードと言っても過言ではないほど、通信業界でよく採用されています。スマートフォンとモバイルWi-Fiルーターを一緒に契約することで、通信費を抑えながら利便性を向上させることを目的としています。
たとえばスマホの契約時、モバイルWi-Fiを追加することで、外出先でも快適にインターネットを利用できる環境が整います。
セットプランの魅力は、個別に契約するよりも月額料金が割引される点です。そのため消費者は必要なサービスを経済的に利用できるようになるので、若年層や頻繁に移動するビジネスパーソンから指示されています。
またデータ通信量が多いユーザーに対しては、追加のデータ容量を提供することでさらなる顧客満足を追求できます。
通信業界におけるバンドリング戦略は競争が激しいため、企業は常に新しいプランや特典を提供し続けています。
ファーストフード店のセットメニュー
ファーストフード店のセットメニューも身近な例です。たとえば某ハンバーガーチェーンでは「ハンバーガー+ポテト+ドリンク」の組み合わせが一つのパッケージとして提供されており、お得感が全面に出ていることから多くの人々に利用されています。
セットメニューの魅力は、価格設定の巧妙さにあります。個別に購入するとそれぞれの価格が合計されるのに対し、セットでの価格は実際に少し安く設定されています。そのため消費者は結果として、お得感を感じて購買意欲が向上します。
またファーストフード店はそれ以外にも、新商品のプロモーションや季節限定メニューをセットにすることで、消費者の興味を引いて購買を促進する戦略を取ることもあります。
バンドリング戦略を行うメリット
バンドリング戦略を行うメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 売上向上が期待できる
- 売れ行きが小さい商品のPRになる
- ユーザー離脱や流出の防止になる
それぞれ紹介します。
売上向上が期待できる
最大のメリットは、売上の向上が期待できることです。複数の商品やサービスをまとめて提供することで、単品販売では得られない付加価値を生み出し、魅力を高めてくれるからです。
この戦略では、まとめて購入することで得られるお得感や手軽さが、消費者の購買意欲を引き出す要因となります。
さらにバンドリング戦略は、新規顧客の獲得にも寄与します。とくに初めて商品を試す消費者に対しては、複数の製品を一度に体験する機会を提供することで、リピーターに変わる可能性が高まります。
売れ行きが小さい商品のPRになる
通常あまり売れない商品やサービスを効果的にPRする手段としても強い効果を発揮します。セット販売によって、消費者があまり関心を示さない商品を人気商品の脇に添えることで注目を集めることができ、売れ行きが小さい商品に新たな市場機会を提供できるようになるからです。
それに伴って、売れ行きが小さい商品の在庫の回転を促進することも可能になります。
ユーザー離脱や流出の防止になる
ユーザーの離脱や流出を防ぐためにも効果的な手段になります。複数のサービスや商品のセット提供は、顧客に対して「全て揃っている」感を与え、競合他社への移行を思いとどまらせる効果があるからです。
とくに通信業界やソフトウェアサービスといった継続的な利用が重要な分野では、この戦略が重要な役割を果たします。たとえばインターネットプロバイダーがインターネット回線、電話、テレビをセットで提供する場合、顧客は一度に多くのサービスを利用していることから、解約することに対する心理的なハードルが高くなります。
このようにバンドリングによって提供される利便性は、顧客のロイヤルティを高め、継続利用を促進する要因となります。
バンドリング戦略を行うデメリット
一見メリットが大きいバンドリング戦略ですが、デメリットも一部存在します。この章では、以下の3つをご紹介します。
- 単品販売に比べると利益率は下がる
- バンドリングが向いていない商品もある
- ユーザーがネガティブな反応を示すことがある
単品販売に比べると利益率は下がる
単品販売に比べて利益率が下がる可能性がある点はデメリットです。
複数の商品をセットにすることで、消費者に対する魅力を高めることが目的ですが、同時に各商品の価格を実際に下げる必要があるため、利益率が圧迫されることがあります。
人気商品と不人気商品を組み合わせる場合、利益の高い人気商品で得られる利益が、不人気商品の割引で相殺されるということです。
たとえば通信サービスを提供する企業が、スマートフォンと低価格のアクセサリーをセット販売する際、アクセサリーの価格を割引することで、全体のパッケージ価格を適切に調整する必要があります。こうなると人気商品の利益を犠牲にして、セットの魅力を維持しなければならないということです。
バンドリングが向いていない商品もある
セット販売が向いていない商品も存在します。たとえば単体でも十分な魅力をもつ商品や、消費者のニーズがはっきりしている商品などが挙げられます。
たとえばiPhoneのようなブランド価値のある商品、特定のニッチ市場向けの商品などは単品購入を希望する顧客が多いので、セットで販売すると逆に価値が薄れてしまいます。
またセット販売による複雑な選択肢が生まれることで、消費者が混乱するケースもあります。たとえば技術的な知識が必要な商品や、選択肢が多い商品群を無理にセット販売すると、消費者はどのパッケージを選べば良いのか分からなくなり、結果的に購入を避けることもあります。
セット販売を実施するなら、商品特性や市場のニーズを考え、最適な戦略を練る必要があります。
ユーザーがネガティブな反応を示すことがある
ユーザーがネガティブな反応を示すリスクも考慮する必要があります。「自分に必要のない商品を強制的にセットで購入させられている」と感じる顧客も存在し、企業への信頼感を損なう原因になるからです。
またセットで売られた商品が消費者にとって適切でない場合、期待していた価値が得られず、購入後に後悔することもあります。たとえば食品業界では複数の商品のセットが消費者に合わない場合、味や品質に対するネガティブな意見が広がり、評判の悪化によってブランド全体に影響を及ぼすケースもゼロではありません。
また選択肢も多数ある現代では、複雑なセット販売のルールを設けることで、顧客が選択肢をうまく整理できず購入を諦めるケースも見受けられます。
よくある質問(Q&A)
ここでは、よくある質問に回答していきます。
Q:バンドリングが向いている業界や商品は?
Answer)通信、ソフトウェア、飲食などが挙げられます。
とくに通信業界では、スマートフォンとデータプランを組み合わせたパッケージなどが一般的です。またソフトウェア業界では、特定のツールのほかあらゆるサービスをセットにして販売することで利便性が高まり、ユーザーの満足度が向上します。
またハンバーガーや牛丼、ピザなどのチェーンでも、サイドメニューのセット販売がよく活用されています。
Q:小規模事業がバンドリング戦略を行うときの注意点は?
Answer)まず市場調査を行い、ターゲット顧客のニーズを正しく把握することです。顧客が本当に求めている商品やサービスの組み合わせをまず理解しなければ、魅力的なセットを提供することは難しくなるからです。
また小規模事業の場合だととくに、セット販売によってコストが増加し、利益率が低下する可能性があるため、収支管理の徹底が必須です。
Q:バンドリングでとくに注意すべきリスクは?
Answer)顧客の反発リスクに注意が必要です。顧客が必要としない商品を含むセット販売を行うと不満を招き、購買意欲を損なう可能性があるからです。
また利益率の低下も重要なリスクとなります。割引を適用して価格を魅力的に設定すると、個別販売時よりも利益が減少することがあります。
さらに商品のブランド力や場合によっては、ブランドイメージを傷つけることになり、顧客の満足度低下につながることも視野に入れることが大切です。
まとめ