目標管理シートとは?活用のメリットや書き方、記入例などを紹介
目標設定は、企業の生産性向上において重要な役割を果たします。実際、スタンフォード大学の研究では目標を設定している従業員は、そうでない従業員と比較して生産性が21%も高いという結果が出ています。
この事実を踏まえ、今回は効果的な目標管理シートの作成方法やポイント、注意点などについて解説します。目標管理シートを適切に活用すれば、個人やチームの生産性が飛躍的に向上するだけでなく、管理職にとっても部下のサポートやモチベーション向上に役立つ強力なツールとなりえます。
目標管理シートとは?
目標管理シートは、個人やチームが定めた目標の進捗をチェックし、管理するのに役立つものです。標準的な目標管理シートには下記のような項目が掲載されています。
- 達成したい目標
- 目標を達成するための期限
- 進捗度合い
- 評価基準
- 責任者・担当者名
目標管理シートを活用することで、個人やチームの目指す方向性が具体的になり、どれだけ目標に近づいているかが一目でわかるようになります。
また、管理職にとってもチームや個人の進捗状況がはっきりするため、人事評価やサポートなどがしやすくなります。このように、目標管理シートは仕事を効率的に進める便利なツールです。
具体的なイメージとしては次のとおりです。
目標管理シートのメリット
目標管理シートを導入するメリットはさまざまです。ここでは、その代表的なものを取りあげ解説します。
期待と責任が明確化
目標管理シートを活用することで、一般社員と管理職との間で、期待と責任を明確にすることができます。社員は自分が管理職から期待されていることを自覚できるため、どう行動すれば良いのか行動の判断基準がえられます。
一方、管理職は社員に対して期待を明確に伝えることができ、それを達成するために必要なサポートや環境を提供する責任を認識できます。このように目標管理シートがあることで、双方の役割が明確になり、誤解やズレを防ぐことができます。
参考ページ:Setting Goals and Expectations – BostonUniversity
達成に向けての行動基準ができる
個人やチームが目標管理シートを使えば「何をどうすれば目標が達成できるか」という考えを整理できます。仮に目標管理シートを活用せず、業務に取り組めば、行動手順が分からないため、闇雲に業務を進めることになります。
目標管理シートには、このような問題を防ぐために、達成したい目標やその目標に到達するための具体的な手順や行動、ルールなどが書かれています。こうすることで、チームは迷うことなく目標に向けて適切な行動をとることができます。
公平な評価が可能
目標管理シートには、チームや個人がどんな目標を持っていて、それに向けてどれだけ進んでいるかが書かれています。そのため、誰がどの程度仕事をしているのか、成果はどうなのかが一目瞭然です。
結果として、管理職は個人やチームの努力や成果を公平に評価できます。このように、目標管理シートを使うことで「自分がなぜ評価されたのか」「どういった点が評価されなかったのか」ということが明確なり、人事評価や報酬の点で公平感が増します。
主体性を持って仕事に取り組める
最終的な目標管理シートの目的は「社員自ら考えて行動する」という主体性を促進する点にあります。実際、このシートには、何をいつまでに達成すべきか、どのようなリソースを活用できるかといったことがはっきり書かれているため、各人の主体性を発揮しやすいツールになっています。
社員はただ上司の指示を待つだけでなく、自分で段取りを考え、必要な行動を取ることができます。このように、目標管理シートを使うことで、従業員の成長を促進でき、自ら動くチームに変えることができます。
目標管理シートの書き方
ここでは、実際の目標管理シートの書き方についてお伝えします。ただし、目標管理シートは会社ごとにフォーマットが異なりますので、ここでは代表的な記入項目を取りあげ解説します。
目標
目標管理シートには「目標記入欄」があります。目標管理シートのすべての項目は、ここに記載した目標を達成するためのものです。そのため、一番重要な項目といえます。
記入の仕方としては、具体的かつ明確に記述してください。例えば、「売上げを増やす」ではなく、「次の四半期に売上げを前年比で10%増加させる」などのような形です。目標には、数値を含めることが望ましいです。
また、大きすぎる目標は現実的ではありません。過度に高い目標はモチベーションを下げる結果にもなりがちです。リソースや時間の制約を考慮し、達成見込みのある現実的な目標を設定してください。
期限
シートには通常、期限を記入する欄が設けられています。この欄には、いつまでに目標を完了すべきかの具体的な日付や時間を記述してください。
例えば「早めに開始する」などと書くのではなく、「2024年11月30日までにキャンペーンを開始する」のように記述します。このような日付や時間を設定することで、カレンダーなどで業務をスケジューリングできます。
評価基準
「評価基準」は、目標の達成度を管理職と社員とで公正に測定するために設けられている欄です。
例えば「顧客満足度を向上させる」という目標を設定している場合、具体的な評価基準として「顧客満足度調査における平均スコアを前年比で5ポイント向上させた場合、報酬額を3%増加させる」などのように決めることができます。
行動
「行動」は、目標達成のために必要な具体的ステップを明確に記述する欄です。この欄を適切に活用すれば、目標達成のためにとるべき行動をタスクに分解でき、業務を計画的に進めることができます。
例えば、目標が「新規顧客を10%増やす」だとすると、具体的行動としては「週に2回の新規顧客向けプレゼンテーションを実施する」や「毎月1回、業界イベントに参加して人脈を開拓する」といったタスクとして記述できます。このようにすることで、どのような行動をとれば目標達成できるのかを確認でき、道筋が見えやすくなります。
結果とその振り返り
目標管理シートにおける「結果とその振り返り」の部分は、設定した目標に対する達成度とその過程を評価するために重要です。このセクションには、目標に対してどの程度達成できたか、またその過程でえた教訓や改善点を記録します。
例えば、目標が「四半期ごとに売り上げを20%増加させる」とした場合、その期間の終わりに売上げデータを確認し、実際にどれだけの増加があったかを記録します。もし目標を達成できなかった場合は、どのような障害があったのか、どのような改善策が考えられるのかを分析します。
逆に目標を達成できた場合は成功要因を分析し、今後の目標設定に活かします。この振り返りは、自己評価の機会となり、次の目標達成に向けての改善を促進します。
目標管理シート作成に役立つフレームワーク
目標管理シートを作成する際には、いくつか役立つフレームワークがあります。効果的にシートを活用するためにも、ぜひ押さえておきたいポイントです。
SMARTの法則
SMARTの法則は、効果的な目標設定のためのフレームワークです。このフレームワークにしたがって設定された目標は、進捗の追跡がしやすいため、成功の確率を高めることができます。具体的には次の5つの基準を満たした目標を設定してください。
参考ページ:SMART Goals – University of California
Specific(具体的)
目標は具体的であることが望ましいです。曖昧だと、何をもって目標が達成できたことになるのか分からないためです。
例「より多くの顧客を獲得する」→「2月は100名の新規顧客を獲得」
Measurable(測定可能)
進捗を測定できるように、目標に数値を入れてください。数値が入ると、目標達成の度合いを確認できます。
例「売上を増やす」→「売上を20%増加」
Achievable(達成可能)
目標が非現実的なものにならないよう注意します。達成可能なものを設定してください。
例「次の四半期に新商品で市場を独占する」→「次の四半期に新製品の売上で500万円を達成する」
Relevant(関連性)
目標は企業の長期的な目標や価値観と関連している必要があります。
例 ITに強い出版社なら「1年以内にWEB関連の本を10冊出版」
Time-bound(期限)
目標には期限が必要です。期限を設けることで、行動に優先順位が生まれ、効率的に物事を進められます
例「2024年末までに、ブログ記事を100件投稿」
PDCA
PDCAとは、目標設定とプロセス改善のためのフレームワークです。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4つのステップから成り立ちます。PDCAを進めることで業務の効果性が向上し、目標達成できる可能性を高めます。4ステップの詳細は次のとおりです。
参考ページ:PDCA/ Continuous Improvement – University of California San Francisco
Plan(計画)
目標を設定し、それを達成するための具体的な計画を立てる段階です。例えば「顧客の満足度を5%高める」という目標に対して「3月31日までに品質管理プロセスを見直す」などの行動計画を立てます。
Do(実行)
立てた計画を実行します。この段階では、計画にしたがって具体的なアクションを取ります。例えば「3月31日までに品質管理プロセスを見直す」という計画を立てたなら、実際に見直す作業をおこないます。
Check(評価)
行動の結果を評価します。計画どおり行動をとることができたか進捗をチェックします。
Act(改善)
評価をもとに、計画や実行方法を改善します。改善を図ることで、次のPDCAサイクルの効率や効果が向上します。
事例『SEO業務で目標管理シートを記入』
SEOとはSearch Engine Optimization(検索エンジン最適化)の略で、検索エンジンにWEBサイトが表示しやすいように対策をとる業務のことです。今回はこのSEOの業務を例にとり、実際の目標設定シートの記入例を解説します。
参考ページ:SEOとは?検索エンジン最適化のためのSEO対策を詳しく解説【2024年先取り最新版】
目標
目標管理シートを記入する際には、最初に目標欄を記入します。SMARTの法則を踏まえて記入してください。数字で記入できる箇所は数字で書き、具体性に配慮してください。
記入例
6か月以内にWEBサイトの月間トラフィックを15%増加
行動計画と期限
目標達成に向けて、どのような行動をとれば良いのかを記述します。ステップバイステップで記述したほうが、とるべき行動が明確になります。また、各行動には期限を設定ししてください。
記入例
- キーワードリサーチをおこなう。ターゲットとなるキーワードを30個特定(期限1月31日)
- 記事の構成を考え執筆する(期限2月14日)
- ターゲットキーワードのランキングを確認し、目標に届かなかったキーワードを洗い出す(期限2月15日)
- 被リンクを増やすための戦略を実施(期限3月20日)
- WEBサイトの技術的な問題を解決(期限5月15日)
担当者
担当者欄では、だれがどの仕事を担当するのかを記入します。チームで仕事をする場合、この項目が重要です。
記入例
- キーワードリサーチ: SEOマネージャー山田
- コンテンツ最適化: ライター佐藤
- 被リンク: マーケティングチーム全員
- 技術的SEO改善: IT部門全員
結果と振り返り
目標管理シートは、結果を記入し振り返る必要があります。目標に対しての達成度は何パーセントだったのか、次回どの点を改善すれば、状況が良くなるのかを記入します。
記入例
毎月のトラフィックが10%増加。被リンクの獲得が予定を30%下回る。想定していたよりも困難なので、次回は担当する人数を増やす。
目標管理シートのよくある質問
ここでは、目標管理シートについてよくある質問をとりあげ解説します。
Q:KPIというのは目標設定に役立ちますか?
Answer)KPIとはKey Performance Indicatorsの略称で、主要業績評価指標と訳されます。目標に対してプロセスの達成状況を測定する基準のことで、目標設定に役立ちます。
例えば、会社が「月間売上20%増加」という目標を持っている場合、KPIとして「集客で40%増加」という項目を定めることができます。この集客数の増減を確認することで、会社は目標に近づいているのか、それとも遠ざかっているのかを知ることができます。
参考ページ:KPIとは?KGI、KSF、OKIとの違いとKPIマネジメントの方法や達成までの手順を解説
Q:PDCAを活用する際の注意点は?
Answer)PDCAサイクルを活用する際の注意点は、各ステップごとにあります。「計画」では、目標と行動計画がリンクしている点に注意してください。この行動をとれば、目標達成に役立つというものでなければいけません。
次に「実行」では計画どおりに行動しますが、実際にやってみると計画とのズレが生じます。そのズレを感じた際には、その点をメモするようにしてください。
「評価」のステップでは、メモしたことを元に計画と行動を振り返ります。最後の「改善」では、評価からえた学びを次のサイクルに活かして計画します。
参考ページ:PDCAとは?概要やメリット、サイクルを回すポイントなど解説
Q:記事制作に目標設定管理シートを活用する際の注意点
Answer)記事制作に目標管理シートを活用する場合、品質基準に注意を払ってください。特に複数のライターが存在する場合、ライティング能力だけでなくSEOに関する知識にも差があります。そのため、品質基準を明確にし、各ライターに具体的に指示を出す必要があります。
参考ページ:記事制作とは?概要や記事のタイプ、書き方の手順など解説
Q: SMARTの法則を活用する利点は?
Answer)目標管理シートを記入する際に、SMARTの法則を踏まえて記述すると適切な目標設定がおこなえます。
例えば「売上を伸ばす」というのは目標にはなっていますが、漠然としているため何をどう行動して良いのか分かりません。一方、SMARTの法則に沿って「6ヶ月以内に売上を前年比で20%増加させる」という目標を立てると具体的なため、どんな行動をとれば良いのかを検討しやすいです。このようにSMARTの法則を活用すれば、より良い目標管理シートを作ることができます。
まとめ